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  • 平成10年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第2森林開発公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

大規模林道の関係地方公共団体への移管を舗装工事等の完成後速やかに行うことにより、維持補修費の低減を図るよう改善させたもの


大規模林道の関係地方公共団体への移管を舗装工事等の完成後速やかに行うことにより、維持補修費の低減を図るよう改善させたもの

会計名及び科目 (林道勘定) (項)林道開設改良費
部局等の名称 森林開発公団(平成11年10月1日以降は「緑資源公団」)
移管を行う区域の概要 大規模林道事業において、舗装工事等が完成して一般に供用することが可能となった区域
移管が速やかに行われていなかった区域数及び延長 24区域 延長計92.5km
低減できた維持補修費 1億9710万円(平成9、10両年度)

1 大規模林道事業の概要

(大規模林道事業の実施)

 森林開発公団(以下「公団」という。)では、森林開発公団法(昭和31年法律第85号)に基づき、昭和48年度から、地勢等の地理的条件が極めて悪く、かつ、豊富な森林資源の開発が十分に行われていない地域において、大規模林道事業を実施している。
 この事業は、高生産森林への転換と森林の有する公益的機能の増大を図り、林業を中心とする総合的な地域開発を推進することを目的として、当該地域の林道網の枢要部分となるべき大規模林道(道路の構造は幅員7m2車線、アスファルトコンクリート舗装)32路線(計画延長計2,256.3km)の開設又は改良を行うものである。
 そして、公団では、大規模林道事業の実施に当たり、関係する道・県又は市町村等との間で協議や意見の聴取を行った上で、路線ごとに実施計画を定め、農林水産大臣の認可を受けて事業を実施している。

(大規模林道の維持管理)

 公団が開設又は改良した林道の維持管理については、「森林開発公団法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(昭和40年3月10日衆議院農林水産委員会)により、地方公共団体等が行うこととなっており、大規模林道についても、工事完成後、公団から関係地方公共団体に無償で移管され、移管を受けた地方公共団体が一般に供用して維持管理することになっている。

(大規模林道の移管)

 大規模林道の移管については、公団が制定した「大規模林道移管事務処理要領」(昭和57年57森公業第724号。以下「事務処理要領」という。)により行うこととなっており、移管の要件は、〔1〕大規模林道の区間が完成したこと、〔2〕区間の一部が公道等に両端を接続して完成したことなどとなっている。公団は、この要件を満たす区間又は区間の一部について関係地方公共団体と協議を行い、その同意を得た上で「覚書」を締結し、移管を完了することとしている。
 そして、平成10年度末までに、北海道地方建設部ほか7地方建設部(注) が開設又は改良した大規模林道の延長は計889.4kmであり、このうち移管が完了したものは計767.8kmとなっている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 大規模林道は、前記のように、公団が開設又は改良工事を実施し、維持管理は移管を受けた関係地方公共団体が行うことになっている。しかし、舗装工事等が完成して供用が可能な状態となっていても、関係地方公共団体に移管するまでの間は、一般に供用されないままで公団が維持管理し、その費用も負担することになる。そこで、大規模林道の関係地方公共団体への移管の時機が適切なものとなっているかという点に着眼して検査した。

(検査の対象)

 前記の8地方建設部が開設又は改良した大規模林道のうち、その移管が9年度以降となっている区間の一部、87区域(延長計214.2km)を対象として検査を実施した。

(検査の結果)

 検査したところ、上記87区域のうち、舗装工事等が完成し供用が可能となった後も公団において維持管理を行い、法面補修、除草等の経費(以下「維持補修費」という。)を負担しているものが24区域(延長計92.5km)見受けられた。そして、これら24区域において、舗装工事等が完成してから移管までに要した期間(10年度末現在で未移管のものは、その時点までの期間)は、平均で3年11箇月、最長で13年1箇月となっていた。 
 上記の24区域について、公団において長期間にわたり維持管理が行われていた主な理由は、次のとおりである。

(ア) 事務処理要領において、両端が公道等に接続することを移管の要件としているため、一方が公道等に接続していない区域については、舗装工事等が完成した後も移管の協議を行っていなかった。

(イ) 両端が公道等に接続した区域について、工事の完成時期が事前に判明しているにもかかわらず、移管に関する関係機関との事前協議を進めていなかったり、完成後の移管の事務手続に必要以上の時日を要したりしていた。

 しかし、大規模林道は、森林資源の開発を主な目的として建設している道路であり、一方が公道等に接続しない場合であっても、もう一方は既に供用中の大規模林道等と接続しており、その目的に即した供用が可能なものである。
 また、大規模林道事業は関係地方公共団体等の強い要望もあって実施しているものであるから、関係機関との事前協議を早期に開始するなどすれば、速やかな移管が可能であると認められた。
 したがって、大規模林道の舗装工事等が完成したにもかかわらず、一般に供用されることなく長期間にわたって公団が管理し、維持補修費を負担することとなっている事態は適切とは認められず、改善の要があると認められた。

(低減できた維持補修費)

 前記24区域の大規模林道について、関係地方公共団体への移管が舗装工事等の完成後速やかに行われていたとすれば、これらに係る9、10両年度の維持補修費が約1億9710万円低減できたと認められた。
(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、関係地方公共団体の大規模林道の移管に対する認識が十分でないことにもよるが、主として次のことによると認められた。

(ア) 事務処理要領において、両端が公道等に接続することなどを移管の要件としていることから、それまでの間は、舗装工事等が完成して供用が可能な状態となっていても、移管の協議を行っていなかったこと

(イ) 移管の事前協議の方法や事務手続の迅速化について、各地方建設部に対し指導を徹底していなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、11年9月に、事務処理要領の改正を行うとともに各地方建設部等に対して通達等を発し、大規模林道の移管を舗装工事等の完成後速やかに行うこととするなど、維持補修費の低減を図るための処置を講じた。

(注)  北海道地方建設部ほか7地方建設部 北海道、盛岡、会津若松、岐阜、松江、広島、高知、宮崎各地方建設部