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  • 平成10年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第6 日本下水道事業団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

終末処理場の沈殿池に設置する汚泥かき寄せ機のチェーン等の機材費の積算を設計に適合したものとするよう改善させたもの


終末処理場の沈殿池に設置する汚泥かき寄せ機のチェーン等の機材費の積算を設計に適合したものとするよう改善させたもの 科目 (受託業務勘定) (項)受託工事業務費 部局等の名称 日本下水道事業団本社 工事名 紫波町紫波浄化センター水処理設備工事その3ほか78工事 工事の概要 終末処理場の最初沈殿池及び最終沈殿池等に汚泥かき寄せ機等の機械設備を設置する工事 工事費 337億8,700万余円 請負人 株式会社荏原製作所ほか22会社 契約 平成8年9月〜10年12月指名競争契約、随意契約 チェーン等の機材費の積算額 5億9,776万余円 低減できた機材費の積算額 2,040万円

1 工事の概要

(工事の内容)

 日本下水道事業団(以下「事業団」という。)では、下水道事業を実施している地方公共団体等の委託を受けて、平成9、10両年度に、終末処理場の最初沈殿池、反応タンク及び最終沈殿池等に汚泥かき寄せ機、攪伴機等の機械設備を設置する工事を79工事(工事費総額337億8,700万余円)施行している。

(汚泥かき寄せ機の概要)

 最初沈殿池及び最終沈殿池(以下「沈殿池」という。)には、沈殿池の底に沈殿した汚泥を外部に排除するため、チェーンフライト式汚泥かき寄せ機(以下「汚泥かき寄せ機」という。)が設置されている。この設備は、ステンレス製のエンドレスチェーン(以下「チェーン」という。)に一定間隔で合成木材製等のフライト(以下「フライト」という。)を取り付け、これを駆動装置等により池底面に沿って移動させて汚泥を池端のホッパ内にかき寄せるものである(参考図1参照)

(チェーン及びフライトの機材費の積算)

 汚泥かき寄せ機を構成するチェーン及びフライトの機材費(以下「チェーン等の機材費」という。)については、事業団制定の「機械設備機器及び材料標準価格表」(以下「積算基準」という。)に基づき、次のとおり積算することとしている(参考図2参照)

(ア) チェーンの機材費は、チェーンが沈殿池の側壁に沿って長方形に据え付けられるものとして、汚泥かき寄せ機の水平軸心距離(汚泥かき寄せ機の機長。本件79工事では、5.8m〜70.6m。)に垂直軸心距離として3.5mを加えたものを2倍するなどして求めた1列当たりのチェーンの周長に基づきチェーンの長さを算出し、これにチェーン1m当たりの単価を乗じて算定する。

(イ) フライトの機材費は、(ア)の1列当たりのチェーンの周長をフライトの取付け間隔である3mで除するなどしてフライトの数量を算出し、これにフライト1本当たりの単価を乗じて算定する。
 そして、事業団では、本件79工事で施行している280沈殿池について、積算基準に基づきチェーンの長さを延べ28,549.3m、フライトの本数を5,181本と算定し、チェーン等の機材費を5億9,776万余円と積算していた。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 事業団では、下水道の整備を推進する地方公共団体等から多くの終末処理場の建設の委託を受けており、これに伴い汚泥かき寄せ機も多数設置されてきていることから、チェーン等の機材費の積算が設計を反映した適切なものとなっているかという点に着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、チェーンの形状等について、事業団における実際の設計と積算基準が異なっており、チェーン1列当たりの周長が次のとおり過大に算定されることになっていた。

(ア) 沈殿池には、側壁上部の中央部から端部にかけて汚水を処理した上澄水を流出させるための越流ぜきが設置されるため、チェーンの形状は積算基準で想定している長方形ではなく、越流ぜきの手前から底部の端部にかけて傾斜した台形として設計されていること

(イ) 沈殿池の水深は、事業団において3m又は3.5mを標準として設計されていることから、水面下に据え付けられるチェーンの垂直軸心距離は、積算基準で定めている3.5mより短くなるものであり、実際に、検査した280沈殿池についても平均は2.5mであったこと

 また、上記のようにチェーン1列当たりの周長が過大に算定されていたことから、一定間隔でチェーンに取り付けられるフライトの本数についても過大に算定されることになっていた。
 したがって、汚泥かき寄せ機のチェーン等の機材費の積算に当たっては、チェーンの周長を垂直軸心距離の2.5mを高さとする台形の周長とするなどして算出し、これにより積算する要があると認められた。

(低減できたチェーン等の機材費)

上記により、本件各工事におけるチェーン等の機材費を修正計算すると、チェーンの長さは延べ27,464.1m、フライトの本数は5,023本となり、その積算額は5億7,730万余円となることから、前記積算額を約2,040万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、チェーン等の機材費の積算に当たり、設計に適合したチェーンの周長を積算基準に反映させる配慮が十分でなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、事業団では、11年10月に、チェーン等の機材費の積算に当たり、チェーンの周長の算定が設計に適合したものとなるよう積算基準を改正し、同年11月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。

(参考図1)

(参考図1)

(参考図2)

(参考図2)