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私立大学等経常費補助金の経理が不当と認められるもの〔日本私立学校振興・共済事業団〕(221)-(227)


(221)−(227) 私立大学等経常費補助金の経理が不当と認められるもの

科目 (助成勘定)補助金経理 (項)交付補助金
部局等の名称 日本私立学校振興・共済事業団(平成10年1月1日以前は「日本私学振興財団」)
補助の対象 私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費
補助の根拠 私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)
事業主体 学校法人北星学園ほか6学校法人
上記に対する事業団の補助金交付額の合計 3,075,236,000円
不当と認める事業団の補助金交付額 40,074,000円

1 補助金の概要

(補助金交付の目的)

 日本私立学校振興・共済事業団(以下「事業団」という。)は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、国の補助金を財源として、私立大学等(注1) を設置する学校法人に私立大学等経常費補助金を交付している。この補助金は、私立大学等の教育条件の維持及び向上並びに学生の修学上の経済的負担の軽減を図るとともに私立大学等の経営の健全性を高めることを目的として、私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費に充てるために交付されるものである。

(補助金の額の算定資料)

 この補助金について、事業団では、私立大学等経常費補助金交付要綱(昭和52年文部大臣裁定)等に基づき、補助金の額を算定する資料として、各学校法人に補助金交付申請書とともに次の資料を提出させている。

〔1〕 当該年度の10月末日現在の専任教員等(注2) の数、専任職員数及び学生数に関する資料

〔2〕 学校法人会計基準(昭和46年文部省令第18号)に基づき作成した前年度決算の学生納付金収入、教育研究経費支出及び設備関係支出などに関する資料

(補助金の額の算定方法)

 事業団は、上記の資料に基づき、補助金の額を次のとおり算定している。

(ア) 経常的経費を専任教員等給与費、専任職員給与費、教育研究経常費等の経費に区分し、それぞれの経費ごとに専任教員等の数、専任職員数又は学生数等に所定の補助単価等を乗じて補助金の基準額を算定する。

(イ) 各私立大学等の教育研究条件の良否によって補助金の額に差異を設けるため、次の割合に基づいて調整係数を算定する。

〔1〕 収容定員に対する在籍学生数の割合

〔2〕 専任教員等の数に対する在籍学生数の割合

〔3〕 学生納付金収入に対する教育研究経費支出と設備関係支出との合計額(以下「教育研究経費支出等の額」という。)の割合

 そして、教育研究経費支出等の額の算定に当たり、非常勤講師の給与については他の専任教員等の給与と同様に人件費支出に計上し、また、教室の用途変更など建物の量的又は質的向上に係る支出並びに大規模な空調設備など建物附属設備及び構築物の設置工事費については施設関係支出に計上し、いずれも教育研究経費支出等の額には含めないこととなっている。

(ウ) (ア)で算定した経費ごとの基準額に(イ)で算定した調整係数を乗ずるなどの方法により得られた金額を合計して補助金の額を算定する。

(補助金の額の算定の対象となる専任教員等及び専任職員の要件)

 補助金の額の算定の対象となる専任教員等及び専任職員については、次の要件のすべてに該当する者となっている。

(ア) 当該私立大学等の専任教員等又は専任職員として発令されていること

(イ) 当該学校法人から主たる給与の支給を受けていて、所定の額以上の給与を補助金申請年の1月から10月までの各月において支給されていること

(ウ) 当該私立大学等に常時勤務していて、専任教員等にあっては、1週間の割当授業時間数が所定の時間数(6時間)以上であること

(特別補助)

 上記のほか、教育研究経常費については、私立大学における学術の振興及び私立大学等における特定の分野、課程等に係る教育の振興のため、特別補助として、補助金を増額して交付することができることとなっている。
 この特別補助の対象となるものに「科目等履修生」の項目があり、これは、科目等履修生(注3) のうち単位取得を希望する社会人の受入れを行っている大学等に対し、その受入人数に応じて段階的に所定の額を増額するものである。
 そして、事業団では、各学校法人に、特別補助の項目ごとに、算定対象となる学生等の数や所要経費に関する資料を提出させて、特別補助の額を算定し、これらの合計額を特別補助として増額している。

(注1)  私立大学等 私立の大学、短期大学及び高等専門学校

(注2)  専任教員等 専任の学長、校長、副学長、教授、助教授、講師及び助手

(注3)  科目等履修生 当該大学等の学生以外の者で一又は複数の授業科目を履修する者

2 検査の結果

 事業団が補助金を交付している学校法人のうち71学校法人について検査したところ、7学校法人において、制度の理解が十分でなかったなどのため、前記の資料に、補助金の額の算定の基礎となる教育研究経費支出等の額には含めないこととされている支出額を計上するなどしているのに、事業団では、これに基づいて補助金の額を算定していた。このため、補助金が過大に交付された結果となっていて、補助金40,074,000円が不当と認められる。
 これを学校法人別に示すと次のとおりである。


事業主体
(本部所在地)
年度 補助金交付額 不当と認める補助金額

(221)

学校法人 北星学園
(北海道札幌市)

10
千円
368,227
千円
5,316

 上記の学校法人は、事業団に提出した資料に、北星学園女子短期大学に係る平成9年度の教育研究経費支出等の額を157,329千円と記入しており、事業団では、この数値等に基づき、10年度の同学校法人に対する補助金を368,227,000円と算定していた。
 しかし、上記の教育研究経費支出等の額には、これに含めないこととされている非常勤講師の給与8677千円が含まれていた。
 したがって、これを除外して算定すると、学生納付金収入に対する教育研究経費支出等の額の割合等に基づいて算定した調整係数が下がることになるので、適正な補助金は362,911,000円となり、5,316,000円が過大に交付されていた。

(222) 学校法人 関東学園
(群馬県館林市)
8
9
276,018
344,793
6,839
1,616


小計 620,811 8,455

 上記の学校法人は、事業団に提出した資料に、関東短期大学に係る平成7年度の教育研究経費支出等の額を165960千円と記入していた。また、関東学園大学に所属する9年10月末日現在の補助金の額の算定の対象となる専任職員の数を38人と記入していた。そして、事業団では、これらの数値等に基づき、8年度及び9年度の同学校法人に対する補助金をそれぞれ276,018,000円、344,793,000円と算定していた。
 しかし、上記の教育研究経費支出等の額及び専任職員の数については、次のとおりとなっていた。

(ア) 上記の同短期大学の教育研究経費支出等の額には、これに含めないこととされている事務室の用途変更のための改造工事費2616千円及び外灯の設置工事費1274千円、計3890千円が含まれていた。
 したがって、これらを除外して算定すると、学生納付金収入に対する教育研究経費支出等の額の割合等に基づいて算定した調整係数が下がることになる。

(イ) 上記の同大学の専任職員のうち2人は、所定の額以上の給与を支給されていない月があり、補助金算定の対象とはならない。
 したがって、これらの職員を除外して算定すると、専任職員給与費等に係る補助金の基準額が減少することになる。

 これらの結果、適正な補助金は8年度269,179,000円、9年度343,177,000円となり、8年度6,839,000円、9年度1,616,000円、計8,455,000円が過大に交付されていた。

(223) 学校法人 暁学園
(三重県四日市市)
9 208,611 10,333

 上記の学校法人は、事業団に提出した資料に、四日市大学短期大学部に係る平成8年度の教育研究経費支出等の額を98756千円と記入しており、事業団では、この数値等に基づき、9年度の同学校法人に対する補助金を208,611,000円と算定していた。
 しかし、上記の教育研究経費支出等の額には、これに含めないこととされている大規模な空調設備の設置工事費53479千円が含まれていた。
 したがって、これを除外して算定すると、学生納付金収入に対する教育研究経費支出等の額の割合等に基づいて算定した調整係数が下がることになるので、適正な補助金は198,278,000円となり、10,333,000円が過大に交付されていた。

(224) 学校法人 追手門学院
(大阪府大阪市)
9 583,162 1,809

 上記の学校法人は、事業団に提出した資料に、追手門学院大学に所属する平成9年10月末日現在の補助金の額の算定の対象となる専任教員等の数を114人と記入しており、事業団では、この数値等に基づき、9年度の同学校法人に対する補助金を583,162,000円と算定していた。
 しかし、上記の専任教員等のうち1人は、1週間の割当授業時間数が所定の時間数未満であり、補助金算定の対象とはならない。
 したがって、この教員を除外して算定すると、専任教員等給与費等に係る補助金の基準額が減少するので、適正な補助金は581,353,000円となり、1,809,000円が過大に交付されていた。

(225) 学校法人 プール学院
(大阪府大阪市)
8
9
77,196
101,168
1,500
1,500


小計 178,364 3,000

 上記の学校法人は、事業団に提出した資料に、プール学院大学及びプール学院大学短期大学部の科目等履修生に係る特別補助の額の算定の対象となる科目等履修生の数を、平成8年度はそれぞれ12人、22人、9年度はそれぞれ11人、15人と記人していた。そして、事業団では、これらの数値等に基づき、同特別補助の額を8年度4,000千円(大学分1,500千円、短期大学部分2,500千円)、9年度3,000千円(大学分1,500千円、短期大学部分1,500千円)とするなどして、同学校法人に対する補助金を8年度77,196,000円、9年度101,168,000円と算定していた。
 しかし、上記の科目等履修生のうち同大学及び同短期大学部の8年度のそれぞれ5人、11人、9年度のそれぞれ7人、9人は、単位取得を希望する科目等履修生ではなく、同特別補助の額の算定の対象とはならない。
 したがって、これらの者を除外して算定すると、同特別補助の額は8年度2,500千円(大学分1,000千円、短期大学部分1,500千円)、9年度1,500千円(大学分500千円、短期大学部分1,000千円)に減少することになる。この結果、適正な補助金は8年度75,696,000円、9年度99,668,000円となり、8年度1,500,000円、9年度1,500,000円、計3,000,000円が過大に交付されていた。

(226) 学校法人 行吉学園
(兵庫県神戸市)
8 705,090 2,342

 上記の学校法人は、事業団に提出した資料に、神戸女子短期大学に所属する平成8年10月末日現在の補助金の額の算定の対象となる専任教員等の数を47人と記入しており、事業団では、この数値等に基づき、8年度の同学校法人に対する補助金を705,090,000円と算定していた。
 しかし、上記の専任教員等のうち1人は、所定の額以上の給与を支給されていない月があり、補助金算定の対象とはならない。
 したがって、この教員を除外して算定すると、専任教員等給与費等に係る補助金の基準額が減少するので、適正な補助金は702,748,000円となり、2,342,000円が過大に交付されていた。

(227) 学校法人 ノ−トルダム清心学園
(岡山県岡山市)
8 410,971 8,819

 上記の学校法人は、事業団に提出した資料に、ノートルダム清心女子大学に所属する平成8年10月末日現在の補助金の額の算定の対象となる専任教員等の数を91人、専任職員の数を74人と記入していた。そして、事業団では、これらの数値等に基づき、8年度の同学校法人に対する補助金を410,971,000円と算定していた。
 しかし、上記の専任教員等のうち1人及び専任職員のうち2人は、所定の額以上の給与を支給されていない月があり、補助金算定の対象とはならない。
 したがって、これらの教職員を除外して算定すると、専任教員等給与費等に係る補助金の基準額が減少し、また、専任教員等の数に対する在籍学生数の割合等に基づいて算定した調整係数が下がることになる。この結果、適正な補助金は402,152,000円となり、8,819,000円が過大に交付されていた。


(221)−(227) の計
3,075,236 40,074