科目 | (汽力発電費) (款)松浦火力発電所 |
部局等の名称 | 電源開発株式会社本店 |
契約名 | 松浦火力発電所2号機用主要機械装置売買ならびに請負契約(蒸気発生装置)ほか1契約 |
契約の概要 | 松浦火力発電所2号機の機械装置(これらの予備品を含む。)の設計、製造等 |
契約の相手方 | 株式会社日立製作所ほか1会社 |
契約 | 平成4年11月指名競争見積合わせ |
契約額 | 943億7890万円 |
上記のうち予備品の取得額 | 4億4704万余円 |
節減できた予備品の取得額 | 9459万円 |
1 機械装置取得の概要
電源開発株式会社(以下「電発会社」という。)では、平成11年3月末現在、全国で火力発電所7箇所及び水力発電所58箇所、計65箇所の発電所のほか変電所4箇所及び変換所3箇所を維持管理している。また、現在着工準備中あるいは工事中のものが火力発電所5箇所、水力発電所6箇所及び変換所2箇所、計13箇所ある。
電発会社では、発電所、変電所等(以下「発電所等」という。)で使用する機械装置(以下「発電設備等」という。)の取得に当たり、次のような手続により購入、製造請負等の契約(以下「購入・請負契約」という。)を締結し、発電設備等の仕様を確定している。
〔1〕 契約先の選定に当たって、取得する発電設備等の一般的な仕様及び契約条件を定めた標準購入仕様書等を基に、各発電設備等の個別の見積りに必要な条件を定めた購入仕様書等を複数の見積依頼先に提示して見積りを徴取する。
〔2〕 最適な条件を示した見積依頼先と価格交渉を行い、確定見積書を提出させた後契約を締結する。
〔3〕 契約した会社は、受注した発電設備等の基本的な仕様を明らかにした契約仕様書等を作成し、これに基づいて各発電設備等について順次詳細設計を行い、電発会社の承認を得て、製造する発電設備等の仕様を確定する。
そして、電発会社の各発電所等では発電設備等の不具合によって電気の供給に支障を生じさせないため、不具合の発生時に速やかに各発電設備等の交換を行うことができるように予備品を保有している。電発会社では、この予備品を発電設備等の購入・請負契約に含めて取得しており、その納入も本体の引渡しに併せて行わせている。
各発電所等が保有する予備品の品目及びその数量(以下「定数」という。)については、電発会社制定の予備品管理要領等に基づき、同種の発電設備等が近隣の発電所等にある場合は予備品を共用することなどを考慮して、発電所等ごとに決定することとされている。
2 検査の結果
電発会社では、前記のとおり多数の発電設備等を維持運用しており、また、今後も発電設備等を取得することが見込まれることから、発電所等における予備品の取得が適切かつ経済的に行われているかに着眼して検査した。
電発会社本店では、電発会社松浦火力発電所(以下「松浦発電所」という。)1号機については昭和57年12月に総額642億9300万円で、2号機については平成4年11月に総額943億7890万円でそれぞれ購入・請負契約を締結し、これらについて契約どおり引渡しを受けた後、1号機は2年6月、2号機は9年7月に運転を開始している。そして、発電設備等の予備品として、1号機179品目、2号機125品目(取得額4億4704万余円)、計304品目を取得していた。
検査したところ、上記予備品の取得について、次のような事態が見受けられた。
すなわち、松浦発電所2号機の予備品は、発電設備等本体の購入・請負契約に含めて契約していたが、前記の本体の場合と同様に契約締結時には仕様が確定していなかった。そして、その後の詳細設計により本体及び予備品の仕様が確定したが、電発会社では、設計が確定した予備品について1号機用のものとの共用の可能性を検討しないまま、発電設備等と併せて引渡しを受け、松浦発電所に保有させていた。
しかし、電発会社本店では、松浦発電所について、2号機の運転開始後1、2号機を併せた予備品の定数を決定した結果、前記304品目のうち2号機用の37品目については1号機用の予備品と同じものであることが判明したため、10年3月、37品目を減じた267品目を松浦発電所の予備品の定数として同発電所に通知していた。 これを受けて松浦発電所では、2号機の予備品37品目を共用することとして、不用となった1号機の予備品37品目(残存簿価40,897,613円)を、同年同月、除却していた。
このように、電発会社においては、予備品が既設の発電設備等の予備品と共用できる場合があるのに、共用の可能性について検討することなくそのまま納入させていたため、予備品が過大に取得される事態を生じていた。
したがって、発電設備等の予備品について、経済的な取得が図られるよう、取得手続を適切なものとする要があると認められた。
松浦発電所2号機の購入・請負契約により取得した予備品のうち、同発電所1号機の予備品と共用できる37品目については、共用できるか否かの判断を適時に行っていれば取得の要がなく、契約額のうち、これら予備品の取得額に相当する9459万余円が節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、発電設備等の購入・請負契約において、共用できる予備品の有無について契約時にあらかじめ判断することが困難なことから、その後の詳細設計の段階で共用できるものの有無について検討が行われるような取扱いとすべきであったのに、契約上このことについて明確にする取扱いにしていなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、電発会社では、11年10月に、取得する発電設備等に予備品が含まれる場合は、次のような取扱いとするよう通達を発し、標準購入仕様書等を変更するなどして、同年同月以降締結する契約から適用する処置を講じた。
〔1〕 発電設備等の詳細設計の段階で、既に保有している予備品と共用できるか否かを確認する。
〔2〕 共用できる予備品がある場合は、契約変更により当該予備品を契約の範囲から除外して契約金額を減額する。