ページトップ
  • 平成10年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第11 日本電信電話株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(2)電気通信事業者に対する鉄塔の賃貸に当たり、通信用アンテナの増設及び更新に応じた賃貸料を適切に収受するよう改善させたもの


(2) 電気通信事業者に対する鉄塔の賃貸に当たり、通信用アンテナの増設及び更新に応じた賃貸料を適切に収受するよう改善させたもの

科目 営業収益
部局等の名称 日本電信電話株式会社(平成11年7月1日以降は「東日本電信電話株式会社」)
契約名 空中線鉄塔の賃貸に関する個別契約
契約の概要 日本電信電話株式会社が保有する鉄塔を、通信用アンテナを設置する電気通信事業者に賃貸するもの
契約の相手方 エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社
契約期間 平成10年4月〜11年3月
鉄塔の賃貸料 15億3570万余円
収受できた賃貸料 2820万円

1 電気通信設備の賃貸の概要

(電気通信設備の賃貸)

 日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)では、第一種電気通信事業者から鉄塔等の電気通信設備の賃借を求められた場合、NTTの本来業務に支障がないことなどを条件にこれを賃貸することとしている。そして、NTTはエヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社(以下「ドコモ」という。)に対し、ドコモが通信用アンテナ(以下「アンテナ」という。)を設置するために必要とする鉄塔の一部を賃貸している。平成10年度においてドコモから収受した鉄塔の賃貸料は総額で15億3,570万余円となっている。

(賃貸の契約手続)

 NTTは、ドコモとの間において、次の手続により鉄塔の賃貸借契約を締結している。そして、ドコモがアンテナの増設及び更新(以下「増設等」という。)を行うなどのために契約内容を変更する場合も、同様の手続により賃貸借契約の変更を行うこととしている。

〔1〕  契約担当部門は、ドコモからアンテナの設置希望位置を示す図面等が添付された賃借調査依頼書(以下「依頼書」という。)を受け付ける。そして、依頼書の記載内容に不備等がない場合、契約担当部門は、設備担当部門に対して鉄塔にアンテナを設置することが可能であるか否かなどについての調査・検討を依頼する。

〔2〕  設備担当部門は、この依頼に基づきアンテナの荷重等を調査・検討の上、鉄塔の賃貸が可能である場合には、その旨等を記載した賃貸調査回答書(以下「回答書」という。)を作成し契約担当部門に提出する。

〔3〕  契約担当部門は、これを受けて鉄塔の賃貸の可否を総合的に判断し、回答書をドコモに送付する。そして、ドコモから図面等が添付された賃借申込書を受け付け、その後ドコモと賃貸借契約を締結する。

(賃貸料の算出)

 鉄塔の賃貸料は、鉄塔の建設費等から算定された年間の経費に、鉄塔に搭載可能な荷重に対するアンテナの荷重の割合を乗ずるなどして算出している。

(アンテナの増設等)

 ドコモがアンテナの増設等の工事を行う際には、NTTの局舎管理担当部門の許可を得て局舎に入り設備担当部門に連絡してアンテナの増設等を行うこととしている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 近年、携帯電話加入者が急激に増加し、また、通信技術の一層の発展によりアンテナの著しい高度化が進み、従前よりも短期間で陳腐化するようになってきている。これに伴ってドコモによるアンテナの増設等の工事が増加していることから、NTTにおいて、ドコモによるアンテナの増設等に対応して鉄塔の賃貸料を適切に収受しているかに着眼して検査した。

(検査の対象)

 神奈川支店ほか6支店(注1) において、11年3月末日現在でアンテナの設置のためにドコモに賃貸している241箇所の鉄塔のうち176箇所の鉄塔について検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、神奈川支店ほか5支店(注2) で賃貸した35箇所の鉄塔(収受していた賃貸料8750万余円)においてドコモがアンテナの増設等を行っているのに、NTTでは、契約担当部門がその事実を知らなかったり、契約変更手続が遅延したりしていた。このため、鉄塔の賃貸について適切な契約変更が行われておらず、アンテナの増設等に応じた賃貸料を収受していなかった事態が見受けられた。

(収受できた賃貸料)

 上記の35箇所の鉄塔について、適切な賃貸料を算出すると1億1580万余円となり、上記の8750万余円との差額約2820万円の賃貸料をドコモから収受できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、ドコモにおいてアンテナの増設等を早急に行う必要があるとして所定の手続を執らなかったり、依頼書に添付した図面等に不備があったりしたことにもよるが、NTTにおいて、次のことによると認められた。

(ア) 設備担当部門及び局舎管理担当部門と契約担当部門との間の連絡調整が適切に行われる体制になっていなかったため、契約担当部門はアンテナの増設等の工事が行われていることを知ることができず、適切な契約変更を行っていなかったこと

(イ) 設備担当部門が管理する鉄塔の図面、資料等の一部には、現況を正確に記載していないものがあったことなどから、依頼書の確認・審査に多くの時間を要し、回答書の送付など契約変更手続が遅延するなどしていたこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、11年7月にNTTの地域電気通信事業のうち東日本の地域における事業を引き継いだ東日本電信電話株式会社では、同年10月に各支店に対して指示文書を発し、次のとおり、賃貸料を適切に収受できるよう賃貸借契約手続の適正化を図ることとする処置を講じた。

(ア) アンテナの増設等の状況を契約担当部門が的確に把握できるよう、契約担当部門が許可書を発行するとともに、担当部門間の相互連絡を強化することとした。

(イ) 鉄塔の図面、資料等の整備など所定の事務処理が的確に行われていることを確認できる体制とした。

(注1)  神奈川支店ほか6支店 神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、山梨各支店

(注2)  神奈川支店ほか5支店 神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、山梨各支店