科目 | (款)鉄道事業営業費 (款)建設勘定 (款)受託工事勘定 |
部局等の名称 | 大阪、神戸、金沢各支社及び大阪建設工事事務所 |
工事名 | 和泉府中・久米田牛滝川B改築ほか14工事 |
工事の概要 | 線路下を横断するボックスカルバート等、河川改修に伴う橋りょう等を築造する工事 |
工事費 | 117億2813万余円 |
請負人 | 大鉄工業株式会社ほか3会社及び大鉄・佐藤共同企業体ほか2共同企業体 |
契約 | 平成7年11月〜10年10月 随意契約 |
鋼管の材料費 | 3億5979万余円 |
節減できた鋼管の材料費 | 3080万円 |
1 工事の概要
西日本旅客鉄道株式会社(以下「JR西日本」という。)大阪支社ほか2支社(注1)
及び大阪建設工事事務所では、平成9、10両年度に、地方公共団体等から委託を受け、線路下を横断するボックスカルバート等の築造工事を9工事、河川改修に伴う橋りょう等の築造工事を6工事、計15工事(工事費総額117億2813万余円)施行している。
これらの工事のうち、ボックスカルバート等の築造工事では、線路下に水平に並列設置して線路を支える部材(以下「パイプルーフ材」という。)として、橋りょう等の築造工事では、橋脚等の構造物を支える基礎杭などとして、それぞれ多量の鋼管(1工事当たり50t以上)を使用している(参考図参照)
。
そして、各工事ごとに仕様書、図面等により使用する鋼管の種類、材質等を示している。
鋼管の種類及び材質は、次のようになっている。
(ア) 鋼管には、製造方法により、鋼板をら旋状に成形し接合部を溶接したスパイラル鋼管、幅広の鋼板を筒状に成形し接合部を溶接したU.O.E鋼管等の種類がある。そして、スパイラル鋼管はU.O.E鋼管に比べて安価なため建築物の柱や鋼管杭等として広く使用されている。
(イ) 鋼管には、材質により、引張強さが400N(注2) /mm2 以上のもの(以下「400材」という。)、490N/mm2 以上のもの(以下「490材」という。)などがある。490材は400材に比べて単位重量当たりの価格が高価となるが、引張強さが大きいため、厚さを薄くすることにより経済的な設計が可能となる。
(ア) パイプルーフ材について
ボックスカルバート等の築造工事におけるパイプルーフ材の設計に当たっては、「フロンテジャッキング工法計画・設計の手引き」(昭和62年4月、JR西日本本社制定)等(以下「設計手引」という。)によることとしている。
そして、本件鋼管の設計に当たり、設計手引に鋼管の種類の選定について特に定めがないことから、溶接部の盛り上がりがら旋状になっているスパイラル鋼管よりも、直線状のU.O.E鋼管の方が所定の位置に正確に圧入し易いことなどを理由にU.O.E鋼管によることとしていた。
(イ) 基礎杭について
橋りょう等の築造工事における基礎杭の設計に当たっては、「土木関係構造物設計標準示方書」(平成4年3月、JR西日本本社制定)において、「建造物設計標準解説、基礎構造物・抗土圧構造物」(昭和61年3月、日本国有鉄道本社制定)等(以下「設計標準」という。)によることとしている。
設計標準では、杭に作用する力は、杭の上部では大きく、下部になるに従い小さくなることから、それぞれに作用する力の大きさに対応させた材質及び厚さを選定できるとしている。
そして、本件鋼管の設計に当たり、材質は400材とし、厚さは、杭の上部と下部を同一のものとしたり、異なるものとしたりしていた。
上記の設計に基づき、15工事の鋼管の材料費を、パイプルーフ材は計2億9204万余円、基礎杭は計6774万余円、合計3億5979万余円と積算していた。
2 検査の結果
鋼管の種類、材質等の設計が、安全性を確保しつつ経済性を考慮して適切に行われているかという点に着眼して検査した。
検査したところ、パイプルーフ材については鋼管の種類の選定が、基礎杭については鋼管の材質及び厚さの選定がそれぞれ次のとおり適切でないと認められた。
ア パイプルーフ材について
鋼管の種類は、U.O.E鋼管としているが、次のとおり、スパイラル鋼管としても何ら支障ないものと認められた。
(ア) スパイラル鋼管は、近年、製造技術の進歩により溶接部の盛り上がりが小さくなったり、施工技術が向上したりしたことなどのため、U.O.E鋼管と同じく、所定の位置に正確に圧入できるようになったこと
(イ) JR西日本では、一部の工事についてパイプルーフ材に使用する鋼管をスパイラル鋼管として施工していること
イ 基礎杭について
鋼管の材質はすべて400材としているが、作用する力の大きい杭の上部には、400材に代えて490材で厚さのより薄い鋼管を選定したり、杭の上部と下部を同一の厚さとしているものについては、作用する力の小さい下部には400材のまま更に厚さの薄い鋼管を選定したりすることができると認められた。
したがって、パイプルーフ材に使用する鋼管について、施工に当たり特段の支障がない場合は、U.O.E鋼管より安価なスパイラル鋼管を選定したり、基礎杭に使用する鋼管について、杭の上部、下部ごとに作用する力に対応させて適切な材質と厚さのものを選定したりして、経済的な設計を行う要があると認められた。
上記により設計すると、鋼管の材料費は、パイプルーフ材計2億7178万余円、基礎杭計5718万余円、合計3億2896万余円となり、それぞれ約2020万円、約1050万円、計約3080万円が節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、パイプルーフ材については、設計手引において鋼管の種類の選定が特に定められていないこと、基礎杭については、鋼管の材質及び厚さは設計標準によるとしているのみで、経済性の検討が周知徹底されていないことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、JR西日本では、平成11年10月に、パイプルーフ材に使用する鋼管の種類はスパイラル鋼管を原則とすること、並びに基礎杭に使用する鋼管の材質及び厚さは上部、下部ごとに作用する力の大きさに対応させて適切なものを選定することにより、経済的な設計を行うよう通達を発し、同年11月以降契約する工事から適用することとする処置を講じた。
(注1) 大阪支社ほか2支社 大阪、神戸、金沢各支社
(注2) N(ニュートン) 力を表す時の国際単位系単位(SI)で、従来用いられてきた重量キ口グラムとの関係は、次のとおりである。