科目 | (款)鉄道事業営業費 (款)厚生福利施設費 |
部局等の名称 | 日本貨物鉄道株式会社 |
契約の概要 | 駅等における業務用電力、高圧電力A等の電気需給契約 |
契約の相手方 | 東京電力株式会社ほか7電力会社 |
支払額 | 7億9361万余円 | (平成9、10両年度) |
節減できた電気料金 | 3300万円 | (平成9、10両年度) |
1 電気需給契約の概要
日本貨物鉄道株式会社(以下「JR貨物」という。)では、コンテナによる長距離輸送及び貨車による大量定型輸送など貨物輸送サービスを提供するため、コンテナの積卸しや貨車の入換え作業に必要な貨物駅、操車場等(以下、これらを「駅等」という。)において、信号装置、空調設備、融雪装置、各種照明設備等を設置し、運用している。
JR貨物の各支社(注)
では、これらの設備の運用に必要な電気の供給を受けるため、駅等ごとの需要に応じてそれぞれ業務用電力、高圧電力A等の契約種別により電気需給契約を東京電力株式会社ほか7電力会社(以下「電力会社」という。)と締結している。
これらの電気需給契約のうち、業務用電力及び高圧電力A(以下、これらを「業務用電力等」という。)の契約に基づいて支払われる電気料金は、契約電力に応じた基本料金と使用電力量に応じた電力量料金などから構成されており、電力量料金は夏季(7月から9月まで)とその他季に区分された季節別の料金体系となっている(北海道電力株式会社の場合季節別の区分はない。)。そして、電力会社は、電気料金の適正な算定と電気の効率的な利用状況を把握するため、契約電力の大きい契約箇所を対象として、毎月の使用電力量及び昼間時間(午前8時から午後10時まで)の使用電力量を計量できる記録型計量器を取り付けることとしている。
電力会社では、電力需要が集中する平日の昼間における使用電力量の電力需要の少ない夜間や休日への移行を促進し、電力設備の効率的な使用に資することを目的として、各種の契約種別を設定しており、需要家が希望すれば適用を受けられることになっている。
このうち、契約種別が業務用季節別時間帯別電力の場合(北海道電力株式会社の場合は「業務用時間帯別電力」をいう。以下同じ。)は、契約電力が500kW以上の需要家については平成8年1月1日から、500kW未満の需要家については8年4月1日から、順次適用されることとなった。また、高圧季節別時間帯別電力A(北海道電力株式会社の場合は「高圧時間帯別電力A」をいう。以下同じ。)の需要家については8年4月1日から適用されることとなった(以下、業務用季節別時間帯別電力及び高圧季節別時間帯別電力Aを合わせて「季時別電力」という。)。
季時別電力においては、〔1〕 季節区分を業務用電力等と同じく夏季とその他季とし、〔2〕 時間帯区分を、昼間時間(午前8時から午後10時まで。夏季は更に午後1時から4時までをピーク時間などに細分している。)と夜間時間(午後10時から午前8時まで)とし、日曜日及び祝日等を考慮して電力会社が定めた日については全日夜間時間として扱っている。
そして、電力量料金の単価は、東京電力株式会社の業務用季節別時間帯別電力の場合(供給電圧6kV)では、夏季の昼間時間で20.40円/kWh、夜間時間で6.15円/kWhなどとなっている。これに対し、業務用電力の場合(供給電圧6kV)は、夏季で16.15円/kWhなどとなっており、時間帯区分はなく、全日これらの単価が適用される。このように、季時別電力は業務用電力等に比べて、昼間時間の電力量料金の単価は高いものの夜間時間の電力量料金の単価が大幅に安く設定されている。
2 検査の結果
JR貨物では、駅等においてコンテナの積卸しや貨車の入換え等の作業を夜間も行っていて、夜間の電力を多量に使用している。そこで、現行の電気需給契約の契約種別が電力消費の実態に適合した経済的なものとなっているかという点に着眼して検査した。
電力会社が取り付けた記録型計量器の記録から夜間時間の使用電力量が計算できる北旭川駅ほか29箇所(年間使用電力量118,324kWhから2,305,640kWh)を対象として、これらの箇所に係る電気料金9年度402,655,513円、10年度390,954,732円、計793,610,245円について検査した。
検査したところ、9、10両年度の上記の30箇所における夜間時間の使用電力量の総使用電力量に対する割合は16%から72%になっていた。
そして、季時別電力の電力量料金の単価は、業務用電力等に比べて昼間時間の単価は高くなっているものの、夜間時間の単価は大幅に安く設定されていることから、夜間時間の単価を適用できる使用電力量の割合が一定割合以上の場合には、季時別電力による契約の方が業務用電力等による契約より経済的となる。この経済的となる割合は、各電力会社の現行の電力量料金体系及びJR貨物の電力消費の実態から算出すると、業務用電力(供給電圧6kV)で35〜40%、高圧電力A(供給電圧6kV)で44〜46%を超える場合となっており、上記30箇所のうち9、10両年度ともにこれらの割合を上回っている箇所は25箇所あった。
したがって、これらの箇所のうち、電力会社側の提案などにより既に季時別電力の適用を受けられるよう契約変更を行っていた7箇所と、移転により廃止された1箇所を除く17箇所については、季時別電力の適用を受けられるように契約種別の変更を行い、電気料金の節減を図る要があると認められた。
上記17箇所の9、10両年度の電気料金について、季時別電力の適用を受けたものとして修正計算すると、その支払額を9年度約1690万円、10年度約1600万円、計約3300万円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、季時別電力の制度について十分に理解していなかったこと及び電力消費の実態の把握が十分でなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、JR貨物では、前記の17箇所について、11年5月から10月までの間に季時別電力の適用を受けられるよう契約変更を行うとともに、各支社に文書を発し、電力消費の実態を把握し消費実態に応じた経済的な契約種別とするよう指導を行い、電気料金の節減を図る処置を講じた。
(注) 各支社 北海道、東北、関東、東海、関西、九州各支社