会計名及び科目 | 一般会計 | (組織) | 防衛本庁 | (項) | 平成7年度甲型警備艦建造費 |
平成7年度継続費 | (組織) | 防衛本庁 | (項) | 平成7年度甲型警備艦建造費 |
部局等の名称 | 調達実施本部 |
契約名 | 護衛艦製造請負契約 |
契約の概要 | 護衛艦「さみだれ」を建造するもの |
契約金額 | 28,402,120,000円 (当初契約金額 27,922,270,000円) |
契約の相手方 | 株式会社マリンユナイテッド |
契約 | 平成8年3月 随意契約 |
納入 | 平成12年3月 |
支払 | 平成8年3月〜12年3月 10回 |
過大になっている支払額 | 18,267,014円(平成11年度) |
1 護衛艦「さみだれ」製造請負契約の概要
調達実施本部(以下「調達本部」という。)では、海上幕僚監部の調達要求に基づき、護衛艦「さみだれ」を建造するため、平成8年3月、株式会社マリンユナイテッド(以下「会社」という。)と随意契約により艦船製造請負契約を締結している。この契約の締結に当たり、調達本部では、「調達物品等の予定価格の算定基準に関する訓令」(昭和37年防衛庁訓令第35号)等に基づいて計算価格を計算している。計算に当たっては、護衛艦が一般市場において入手できないことから原価計算方式によることとし、当該艦船の建造に必要な直接材料費、加工費、直接経費等の計算項目ごとにそれぞれ計算した額の合計額を計算価格としている。そして、この計算価格に消費税相当額を加えるなどして予定価格を決定し、この予定価格をもとに会社と価格交渉(商議)を行って、契約金額を27,922,270,000円としている。その後、仕様の変更等に伴い6回の契約変更を行い、6回目の変更契約日である11年11月における契約金額は28,449,790,000円になっている。
この契約には、「代金の中途確定に関する特約条項」(以下「中確条項」という。)が付されている。中確条項は、建造の期間が1年を超え、当該期間中に直接材料費等の計算項目に相当の変動が予想される場合などに適用するもので、契約履行の中途までの実績に基づいて代金を後日確定させるものである。そして、これに基づく代金の確定までの手順は、以下のとおりであった。
〔1〕 調達本部では、会社から提出された実際原価計算書(注1)
及び確定計算価格見積書(注2)
に基づき、原価監査を実施し、会社が契約の履行のために支出し又は負担した費用等を確認し、その適否について審査するなどして、消費税額(地方消費税額を含む。以下同じ。)を含めた28,402,120,000円(うち消費税額836,120,000円)を最終的な計算価格(以下「確定計算価格」という。)として決定した。
〔2〕 確定計算価格が契約金額に達しない場合は、会社に支払われる代金は確定計算価格をもって確定し、契約金額を確定計算価格に変更する措置を執ることになっている。本件では、確定計算価格が上記の6回目の変更後の契約金額に達しなかったことから、当該確定計算価格をもって確定し、12年2月、変更後の契約金額との差額47,670,000円を減額する変更契約を締結した。
そして、調達本部では、12年3月までに、確定後の代金28,402,120,000円の支払を完了していた。
(注1) | 実際原価計算書 契約相手方が自ら定めた原価計算の実施に関する規則に基づき、契約履行のために支出し又は負担した費用の計算書 |
(注2) | 確定計算価格見積書 契約相手方が自ら定めた原価計算の実施に関する規則に基づき、契約履行のために支出し又は負担した費用及び支出し又は負担すべき費用に利益を加えた金額を計算した見積書 |
調達本部が制定した「予定価格算定事務における消費税及び地方消費税の取扱について(通達)」(平成8年調本原管第5085号。以下「通達」という。)によれば、予定価格の算定における消費税相当額の計算は、事業者の納税義務の有無等について確認した上で行うこととなっている。そして、事業者のうち、消費税を納める義務を免除されている者(以下「免税事業者」という。)が計算の対象となる場合には、前記の計算項目ごとに、仕入れに係る直接材料費等については消費税相当額を含めた額により、それぞれ計算することとし、別途売上げに係る消費税相当額を計算しないこととなっている。すなわち、売上げに係る消費税相当額から仕入れに係る消費税相当額を差し引いた額については、計算価格には算入しないこととなっている。
消費税法(昭和63年法律第108号)等によれば、基準期間(法人については前々事業年度)における課税売上高が3000万円以下である事業者については、消費税を納める義務が免除されることになっている。このことから、法人が設立された場合はこの設立事業年度とその翌事業年度は、基準期間における課税売上高がないことになり、当該法人は免税事業者(注3) となる。
2 検査の結果
本件契約について検査したところ、次のような適切を欠く事態となっていた。
会社は7年10月に設立されたことから、上記の規定により7、8両事業年度は免税事業者となっていた。そして、会社では、艦船建造に係る売上高の計上には工事進行基準(注4)
を適用していることから、本件に係る売上高については、7事業年度から11事業年度までの各事業年度に分割して計上しており、7、8両事業年度の売上高に係る消費税相当額計28,415,014円から仕入れに係る消費税相当額計10,148,000円を差し引いた納税を免除された額は18,267,014円となっていた。
しかし、中確条項に基づく中途確定時においては、7、8両事業年度の売上高が確定しているのであるから、前記の通達によりこの差額を確定計算価格に算入する必要はないのに、同額を算入した確定計算価格をもって変更契約金額としていた。
このような事態が生じていたのは、調達本部において、消費税相当額の計算に当たり、納税義務の有無等を確認することと通達に明記されていたにもかかわらず、この確認が十分でなかったことなどによると認められる。
したがって、本件契約においては18,267,014円が過大に支払われており、不当と認められる。