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  • 平成11年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第1 総理府|
  • (防衛庁)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

81式短距離地対空誘導弾地上装置の交換部品の調達に当たり、数量の算定に交換の実績を反映させることにより調達額の節減を図るよう改善させたもの


(2)81式短距離地対空誘導弾地上装置の交換部品の調達に当たり、数量の算定に交換の実績を反映させることにより調達額の節減を図るよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛本庁 (項)装備品等整備諸費
部局等の名称 陸上自衛隊補給統制本部
契約の概要 81式短距離地対空誘導弾地上装置の定期整備に官給するなどのための部品の調達
契約の相手方 株式会社東芝、富士重工業株式会社
契約 平成11年2月〜12年3月 随意契約
契約金額 3億2171万余円 (平成10、11両年度)
節減できた調達額 7290万円 (平成10、11両年度)

1 調達の概要

(81式短距離地対空誘導弾地上装置の定期整備)

 陸上幕僚監部では、師団防空用として、国産の81式短距離地対空誘導弾地上装置(以下「短SAM」という。)の配備を昭和57年度に開始して平成3年度に完了している。この短SAMは、射撃統制装置1基及び発射装置2基を1セットとして構成されている。
 そして、陸上自衛隊補給統制本部(以下「補給本部」という。)では、短SAMの機能及び性能を維持するなどのために、4年度から、配備後10年を経過したものを対象にした定期整備を役務契約により毎年度実施してきている。

(定期整備における交換部品)

 補給本部では、上記の定期整備に当たっては、仕様書で、短SAMを構成している各部品を、点検・計測を行わずに交換する部品と、点検・計測を行った結果不具合と判断されたものを交換する部品とに区分している。そして、点検・計測を行って交換する部品は、補給本部が官給品として調達して契約の相手方に払い出す部品(以下「官給部品」という。)と、契約の相手方が自ら用意する部品とに区分されている。

(部品の調達)

 補給本部では、定期整備において官給するため及び部隊での修理用として各補給処に補給するために、短SAMの部品を毎年度多数調達している。
 これら部品の調達所要量の算定は、補給本部が定めた補給管理業務処理要領により、各品目ごとに次の算定式を用いて行うこととされている。

(調達所要量)=
(保有基準量)+(官給部品の数量)+(払出予定数量)−(在庫数量)−(受入予定数量)

 a 保有基準量:補給本部が通常保有すべき基準数量
 b 官給部品の数量:短SAMの定期整備で必要とする数量
 c 払出予定数量:各補給処への払出が確定している数量
 d 在庫数量:補給本部に現在、保管されている在庫数量
 e 受入予定数量:製造業者から納入されることが確定している数量

 そして、補給本部において実際に調達する数量は、上記により算定した調達所要量を基に、当該年度の予算等を勘案して決定することとしている。

2 検査の結果

(検査の着眼点及び対象)

 短SAMの定期整備は、前記のとおり4年度から毎年度実施されており、これに伴い、短SAMの部品の調達が毎年度実施されている。そこで、これら部品の調達が適切に行われているかに着眼して検査した。
 検査の対象は、10、11両年度に補給本部が調達した単価50万円以上の部品とし、このうち各補給処において在庫が不足していることが明確であるなどの品目を除いた導波管等11品目とした。
 そして、これらの部品に係る調達は、10、11両年度に国庫債務負担行為で随意契約により、株式会社東芝又は富士重工業株式会社と締結した製造請負契約6件、契約金額計3億2171万余円となっている。

(検査の結果)

 検査したところ、補給本部では前記の調達所要量の算定式のうち、官給部品の数量を求めるための算定基準を策定していなかった。そして、その数量の算定に当たっては、交換実績を反映させることなく官給部品すべてを交換することを前提にしていた。
 しかし、上記の官給部品は、定期整備時に点検・計測を行って不具合と判断された場合に交換するものであることから、官給部品の数量の算定に当たっては、過去の交換実績を反映させることが必要である。そこで、6年度から10年度までの5箇年間に定期整備を実施した計14セットの短SAMに係る上記の導波管等の交換実績について検査したところ、6品目は全く交換されておらず、また、交換した5品目の交換率(注) は3.6%から21.4%となっており、すべての官給部品を交換するとした補給本部の前提とは大きくかい離していた。
 したがって、短SAMの定期整備における官給部品の数量の算定に当たっては、すべての部品を交換することを前提にするのではなく、過去の交換実績に基づいて適切に算定する必要があると認められた。

(節減できた官給部品の調達額)

 補給本部において実際に調達する数量は、予算等を考慮して、官給部品の数量を基に算出した調達所要量より相当減少させたものとなっているが、上記により、導波管等11品目の数量を交換実績に基づくなどして算定し調達したとすると、計37個は調達する必要がなく、調達額7290万余円が節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、補給本部において、短SAMの定期整備における官給部品の交換実績をその数量算定に反映させ、経済的な部品の調達を行う配慮が十分でなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、補給本部では、12年10月に、交換実績を考慮した官給部品の数量の算定基準を策定するなどして、その数量を適切に算定し調達数量を決定することとする処置を講じた。

(注) 交換率

上記についての本院の指摘に基づき、補給本部では、12年10月に、交換実績を考慮した官給部品の数量の算定基準を策定するなどして、その数量を適切に算定し調達数量を決定することとする処置を講じた。