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租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの


(5)租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの

会計名及び科目 一般会計 国税収納金整理資金  (款)歳入組入資金受入
  (項)各税受入金
部局等の名称 麹町税務署ほか177税務署
納税者 458人
徴収過不足額 徴収不足額  1,249,422,880円 (平成8年度〜11年度)
徴収過大額  11,155,100円 (平成11年度)

1 租税の概要

 源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税、消費税等の国税については、法律により、納税者の定義、納税義務の成立の時期、課税する所得の範囲、税額の計算方法、申告・納付の手続などが定められている。
 平成11年度国税収納金整理資金の各税受入金の徴収決定済額は57兆3146億余円に上っている。このうち源泉所得税は14兆1693億余円、申告所得税は3兆1715億余円、法人税は12兆0815億余円、相続税・贈与税は2兆1936億余円、消費税及地方消費税は15兆7091億余円となっていて、これら各税の合計額は47兆3252億余円となり、全体の82.5%を占めている。

2 検査の結果

(徴収過不足の事態)

 上記各税に重点をおいて、課税が法令等に基づき適正に行われているかなどの観点から、麹町税務署ほか241税務署を検査したところ、麹町税務署ほか177税務署において、納税者458人から租税を徴収するに当たり、徴収額が不足していたものが452事項1,249,422,880円(8年度〜11年度)、徴収額が過大になっていたものが6事項11,155,100円(11年度)あった。
 これを、税目別にみると次表のとおりである。

税目 徴収不足の事項数
徴収過大の事項数
徴収不足額
徴収過大額(△)

源泉所得税

11

31,085,980
申告所得税 119
230,183,900
法人税 184
1
586,892,000
△ 1,012,500
相続税・贈与税 67
5
197,465,000
△ 10,142,600
消費税 71
203,796,000
452
6
1,249,422,880
△ 11,155,100

 なお、これらの徴収不足額及び徴収過大額については、本院の指摘により、すべて徴収決定又は支払決定の処置が執られた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、上記の178税務署において、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤っているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりして、誤ったままにしていたことなどによるものである。

(税目ごとの態様)

 この458事項について、源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税及び消費税の別に、その主な態様を示すと次のとおりである。

(1) 源泉所得税に関するもの

 源泉所得税では徴収不足になっていたものが11事項あった。この内訳は、退職手当、配当及び報酬に関するものである。
 退職手当、配当及び報酬の支払者は、支払の際に、所定の方法により計算した源泉所得税を徴収し、これを徴収の日の属する月の翌月10日(休日等の場合はその翌日)までに国に納付しなければならないこととなっている。そして、この法定納期限までに納付がない場合には、支払者に対して、納税の告知をしなければならないこととなっている。
 この退職手当、配当及び報酬に関し、徴収不足になっている事態が11事項31,085,980円あった。その内容は、税額の計算に誤りがあり税額が過小のままとなっていたり、法定納期限を経過した後長期間にわたって源泉所得税が納付されていなかったりしているのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったり、これを見過ごしたりしたため、納税の告知をしていなかったものである。(事例1参照)

 源泉所得税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。

<事例1>  配当に関する源泉所得税について納税の告知をしていなかったもの

 A会社は、平成9年12月10日に利益積立金額の資本組入れを行っていたが、利益の配当とみなされる金額に対する源泉所得税を納付していなかった。
 しかし、同会社から提出された8年10月21日から9年10月20日までの事業年度分の法人税の申告書等によれば、利益積立金額20,000,000円を資本に組み入れ、資本金を10,000,000円から30,000,000円に増資しており、この資本組入額は利益の配当の額とみなされる。そして、この配当とみなされる金額は9年12月に支払われたこととなるので、これに対する源泉所得税が10年1月12日までに納付されていなければならないのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったため、納税の告知をしておらず、源泉所得税額4,000,000円が徴収不足になっていた。

(2) 申告所得税に関するもの

 申告所得税では徴収不足になっていたものが119事項あった。この内訳は、譲渡所得に関するもの31事項、雑所得に関するもの24事項、不動産所得に関するもの21事項、事業所得に関するもの19事項及びその他に関するもの24事項である。

ア 譲渡所得に関するもの

 個人が資産を譲渡した場合には、その総収入金額から譲渡した資産の取得費や譲渡に要した費用の額などを差し引いた金額を譲渡所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。ただし、土地建物等及び株式等の譲渡による所得については、他の所得と分離して課税することとなっている。このうち、優良住宅地の造成等のための譲渡(注) による所得については、その金額のうち4000万円以下の部分については100分の15、4000万円を超える部分については100分の20の税率を適用して課税することとなっている。
 この譲渡所得に関し、徴収不足になっている事態が31事項74,133,200円あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 譲渡した資産の取得費の額などに誤りがあるのに、これを見過ごしたため、譲渡所得の金額を過小のままとしていた。
(イ) 譲渡所得に対する税額の計算に誤りがあるのに、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、税額を過小のままとしていた。(事例2参照)

(注)  優良住宅地の造成等のための譲渡 譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超える土地等を、国又は地方公共団体へ譲渡した場合や優良住宅地の造成を行う個人又は法人へ譲渡した場合など、一定の要件に該当する譲渡をいう。

イ 雑所得に関するもの

 個人が貸付金の利子(事業所得に該当するものを除く。)や還付加算金などを受けた場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を雑所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。
 この雑所得に関し、徴収不足になっている事態が24事項38,943,100円あった。その主な内容は、貸付金の利子による所得があるのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったため、課税していなかったものである。

ウ 不動産所得に関するもの

 個人が不動産を貸し付けた場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を不動産所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。
 この不動産所得に関し、徴収不足になっている事態が21事項31,103,700円あった。その主な内容は、総収入金額から差し引く必要経費の額を誤って過大としているのに、これを見過ごしたため、不動産所得の金額を過小のままとしていたものである。

エ 事業所得に関するもの

 個人が事業を営む場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を事業所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。
 また、事業所得の計算に当たって、収入、経費の各項目の金額に消費税を含めて経理している場合には、経費に係る消費税額が収入に係る消費税額を超えるときに生じる消費税の還付金は、事業所得の計算上総収入金額に算入することとなっている。
 この事業所得に関し、徴収不足になっている事態が19事項44,601,200円あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 総収入金額から差し引く必要経費の額を誤って過大としているのに、これを見過ごしたため、事業所得の金額を過小のままとしていた。
(イ) 収入及び経費に消費税を含めて経理している場合の消費税の還付金が総収入金額に算入されていないのに、これを見過ごしたため、事業所得の金額を過小のままとしていた。(事例3参照)

オ その他に関するもの

 上記のアからエのほか、配当所得、給与所得等に関し、徴収不足になっている事態が24事項41,402,700円あった。

 申告所得税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。

<事例2>  優良住宅地の造成等のための譲渡による所得の税額計算を誤っていたもの
 納税者Bは、平成9年分の申告に当たり、優良住宅地の造成等のための譲渡による所得として課税される金額146,230,000円について、100分の15の税率を適用して税額を21,934,500円としていた。
 しかし、優良住宅地の造成等のための譲渡による所得の税額は、課税される金額のうち4000万円以下の部分については100分の15、4000万円を超える部分については100分の20の税率を適用して計算することとなっている。したがって、これにより計算をすると、税額は27,246,000円となるのに、これを見過ごしたため、申告所得税額5,311,500円が徴収不足になっていた。

<事例3>  事業所得の総収入金額を過小としていたもの
 納税者Cは、平成9年分の申告に当たり、事業所得の総収入金額を141,235,445円とし、この金額のうちに消費税の還付金はないとしていた。そして、この金額から必要経費等を差し引き事業所得の金額を35,798,909円としていた。また、雑所得はないとしていた。
 しかし、9年5月に同人に対して消費税の還付金6,170,952円及び還付加算金37,000円が支払われていた。また、同人は事業所得の収入金額及び必要経費にそれぞれ消費税を含めて経理していた。したがって、消費税の還付金を事業所得の総収入金額に、また、還付加算金を雑所得の総収入金額にそれぞれ算入すると、事業所得の金額は41,969,861円、雑所得の金額は37,000円となるのに、これを見過ごしたため、申告所得税額3,104,000円が徴収不足になっていた。

(3) 法人税に関するもの

 法人税では徴収不足又は徴収過大になっていたものが185事項あった。この内訳は、退職給与引当金に関するもの32事項、法人税額の特別控除に関するもの29事項、同族会社の留保金に関するもの23事項、役員賞与の損金不算入に関するもの16事項及びその他に関するもの85事項である。

ア 退職給与引当金に関するもの

 退職給与規程を定めている法人が、使用人の退職給与に充てるために退職給与引当金勘定に繰り入れた金額については、次のうちいずれか少ない金額を限度として、損金に算入できることとなっている。
〔1〕 期末退職給与の要支給額(注1) から前期末退職給与の要支給額を差し引いた金額(又は給与総額の100分の6に相当する金額)
〔2〕 期末退職給与の要支給額の100分の20に相当する金額(注2) から、前期から繰り越された退職給与引当金勘定の期末における金額を差し引いた金額
 また、使用人が退職した場合には、退職給与引当金勘定の金額から、当該使用人に係る前期末退職給与の要支給額に相当する金額を取り崩して益金に算入することとなっている。
 そして、上記の退職給与引当金勘定の金額等を超えて取り崩して益金に算入したときには、その超える部分の金額を前期までに所得金額に加算された退職給与引当金繰入限度超過額からの取崩しとして所得金額から減算できることとなっている。
 この退職給与引当金に関し、徴収不足になっている事態が32事項114,635,100円あった。その内容は次のとおりである。
(ア) 繰入限度額の計算に誤りがあり、限度額を超えて繰り入れた金額が損金に算入されているのに、これを見過ごしたため、損金に算入する金額を過大のままとしていた。(事例4参照)
(イ) 退職した使用人に係る前期末退職給与の要支給額に相当する金額が、退職給与引当金勘定の金額から取り崩され益金に算入されていないのに、これを見過ごしたため、益金に算入する金額を過小のままとしていた。
(ウ) 使用人の退職により退職給与引当金勘定の金額から取り崩して益金に算入した金額を、前期までに所得金額に加算された退職給与引当金繰入限度超過額から取り崩したものとして所得金額から減算しているのに、これを見過ごしたため、所得金額を過小のままとしていた。

(注1)  期末退職給与の要支給額 期末において在職する使用人の全員が自己の都合で退職するものと仮定した場合に、各使用人について退職給与規程により計算される退職給与の合計額をいう。
(注2)  100分の20に相当する金額 平成10年3月31日までに開始する事業年度については100分の40に相当する金額となっており、この割合は毎年度漸減し15年4月1日以後に開始する事業年度から100分の20となる。

イ 法人税額の特別控除に関するもの

 青色申告書を提出する法人のうち中小企業者等(注) が電子機器利用設備を取得し又は賃借(賃借期間が5年以上であるものに限る。)した場合には、その設備を事業に使用した最初の事業年度において、次のうちいずれか少ない金額を限度として法人税額から控除できることなどとなっている。
〔1〕 取得価額又は賃借期間中に支払う費用の総額に一定割合を乗じた金額
〔2〕 確定申告書の法人税額の100分の20に相当する金額
 ただし、資本若しくは出資の金額が3000万円を超える法人(農業協同組合等を除く。)が取得し事業に使用した設備については、法人税額からの控除はできないこととなっている。
 この法人税額の特別控除に関し、徴収不足になっている事態が29事項61,591,000円あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 資本若しくは出資の金額が3000万円を超える法人が取得し事業に使用した設備について法人税額の特別控除をしているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていた。
(イ) 設備を事業に使用した最初の事業年度において控除した金額を当期の法人税額から重ねて控除しているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていた。(事例5参照)
(ウ) 発行済株式の総数の2分の1以上を同一の大規模法人が所有しているなど、中小企業者等に該当しない法人が法人税額の特別控除をしているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていた。

 中小企業者等 資本若しくは出資の金額が1億円以下の法人(発行済株式の総数又は出資金額の2分の1以上を同一の大規模法人が所有しているなどの法人を除く。)又は農業協同組合等をいう。

ウ 同族会社の留保金に関するもの

 特定の同族会社(注1) については、通常の法人税のほか、利益のうち社内に留保した金額が一定の金額を超える場合には、その超える部分の金額(以下「課税留保金額」という。)に対し特別税率(注2) の法人税を課することとなっている。
 この同族会社の留保金に関し、徴収不足になっている事態が22事項54,220,900円、徴収過大になっている事態が1事項1,012,500円あった。その主な内容は、特定の同族会社に該当し課税留保金額が算出されるのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税を課していなかったものである。

(注1)  特定の同族会社 発行済株式の総数(又は出資金額)の100分の50以上が、3人以下の株主等(株主等に同族会社でない法人がある場合はその法人を除く。)及びこれらと特殊の関係にある個人・法人によって所有されている会社をいう。
(注2)  特別税率 課税留保金額が年3000万円以下の部分については100分の10、年3000万円を超え1億円以下の部分については100分の15、年1億円を超える部分については100分の20となっている。

エ 役員賞与の損金不算入に関するもの

 代表取締役、専務取締役、常務取締役、監査役等法人の役員及び同族会社の使用人としての職務を有していて持株数等が一定の割合を超えている役員に対して支給した賞与は、損金に算入できないこととなっている。
 この役員賞与の損金不算入に関し、徴収不足になっている事態が16事項18,503,000円あった。その主な内容は、同族会社の使用人としての職務を有する役員の持株数等が一定の割合を超えているのに、これを見過ごしたため、これらに支給した賞与を損金に算入したままとしていたものである。

オ その他に関するもの

 上記のアからエのほか、受取配当等の益金不算入、減価償却費の計算、固定資産の圧縮記帳等に関し、徴収不足になっている事態が85事項337,942,000円あった。

 法人税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。

<事例4>  退職給与引当金の繰入限度超過額を所得金額に加算していなかったもの
 D会社は、平成8年4月から9年3月までの事業年度分の申告に当たり、退職給与引当金繰入限度超過額はないとしていた。
 しかし、申告書等によれば、当期繰入額114,000,000円から繰入限度額67,814,000円を差し引いた繰入限度超過額46,186,000円が算出される。したがって、この繰入限度超過額を所得金額に加算すべきであるのに、これを見過ごしたため、法人税額17,319,800円が徴収不足になっていた。

<事例5>  電子機器利用設備を賃借した場合の法人税額の特別控除の規定の適用を誤っていたもの
 E会社は、平成9年11月から10年10月までの事業年度分の申告に当たり、法人税額の特別控除の規定を適用して、電子機器利用設備の賃借期間中に支払う費用の総額に一定の割合を乗じて算出した金額29,657,713円を法人税額から控除していた。
 しかし、申告書等によれば、上記29,657,713円のうち、設備を賃借し事業に使用した前期において控除済みの13,661,424円を当期の法人税額から重ねて控除していたり、当期に賃借し事業に使用した設備分のうち賃借期間が5年未満の設備に係る1,891,814円を控除していた。したがって、特別控除ができない金額計15,553,238円があるのに、これを見過ごしたため、法人税額12,737,300円(この誤りの訂正に伴い同族会社の留保金に対する税額が2,815,950円減少する。)が徴収不足になっていた。

(4) 相続税・贈与税に関するもの

 相続税・贈与税では徴収不足又は徴収過大になっていたものが72事項あった。この内訳は、相続税については土地建物等の価額に関するもの31事項、有価証券の価額に関するもの18事項及びその他に関するもの16事項、贈与税については7事項である。

ア 相続税に関するもの

(ア) 土地建物等の価額に関するもの

 個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合には、その取得した財産に対し相続税を課することとなっている。そして、取得した財産の価額は、相続又は遺贈により取得したときの時価とされていて、土地建物等の価額については、路線価、固定資産税評価額等を基にして計算することとなっている。ただし、被相続人等が事業又は居住の用に供していた宅地等のうち330m2 又は200m2 までの部分については、小規模宅地等として、次に掲げる区分に応じ、土地等の価額にその割合を乗じた額を減額できることとなっている。

〔1〕 特定事業用宅地等(注) などに該当するもの  100分の80
〔2〕 上記以外のもの  100分の50

 この土地建物等の価額に関し、徴収不足になっている事態が31事項85,588,500円あった。その主な内容は、土地の価額の計算において、小規模宅地等のうち特定事業用宅地等に該当しないものについて、減額割合を誤って100分の80としているのに、これを見過ごしたため、土地の価額を過小のままとしていたものである。(事例6参照)

 特定事業用宅地等 被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業等を除く。)の用に供していた宅地等で、その宅地等を相続又は遺贈により取得した者のうちに、一定の要件に該当する親族がいる場合の宅地等のうち330m2 (相続開始が平成10年12月31日までは200m2 )までの部分をいう。

(イ) 有価証券の価額に関するもの

 個人が相続又は遺贈により取得した有価証券のうち取引相場のない株式の価額については、株式を発行した会社の各資産の価額の合計額から各負債の金額の合計額を差し引いた純資産価額等を基にして計算することとなっている。
 この有価証券の価額に関し、徴収不足になっている事態が18事項43,323,800円あった。その主な内容は、取引相場のない株式の価額の計算を誤っているのに、これを見過ごしたため、株式の価額を過小のままとしていたものである。

(ウ) その他に関するもの

 上記(ア)、(イ)のほか、相次相続控除等に関し、徴収不足になっている事態が11事項48,968,500円、徴収過大になっている事態が5事項10,142,600円あった。

イ 贈与税に関するもの

 個人が贈与により財産を取得した場合には、その取得した財産に対し贈与税を課することとなっている。
 この贈与税に関し、徴収不足になっている事態が7事項19,584,200円あった。その主な内容は、親族から有価証券を贈与により取得しているのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったため、贈与税を課していなかったものである。

 相続税・贈与税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。

<事例6>  小規模宅地等の特例の適用を誤っていたもの
 納税者Fは、平成9年1月相続分の申告に当たり、相続により取得した土地のうち200m2 について小規模宅地等の特例を適用し、特定事業用宅地等に該当するとして、その土地の価額から100分の80に相当する金額87,622,661円を減額していた。
 しかし、申告書等によれば、上記の土地は不動産貸付業及び駐車場業の用に供されているため、特定事業用宅地等には該当せず、小規模宅地等として減額される割合は100分の50である。したがって、これにより計算すると、減額される金額は54,764,163円となり、その他相続財産の申告漏れ分12,408,991円を含め課税価格が45,267,489円過小となっているのに、これを見過ごしたため、相続税額29,986,200円が徴収不足になっていた。

(5) 消費税に関するもの

 消費税では徴収不足になっていたものが71事項あった。この内訳は、仕入れに係る消費税額の控除に関するもの38事項、簡易課税制度の適用に関するもの16事項、課税売上高の計上に関するもの11事項及びその他に関するもの6事項である。

ア 仕入れに係る消費税額の控除に関するもの

 事業者は、課税期間(納付する消費税額の計算の基礎となる期間で、個人事業者は暦年、法人は事業年度)における課税売上高に対する消費税額から仕入れに係る消費税額を差し引いた額を消費税として納付することとなっている。そして、仕入れに係る消費税額の控除に当たっては、課税期間における課税売上割合(課税売上高を総売上高で除した割合をいう。)が100分の95以上のときは、商品の仕入れや事業用の建物の取得等に係る消費税額の全額を、また、100分の95未満のときは課税売上高に対応する部分の金額を控除することとなっている。
 この仕入れに係る消費税額の控除に関し、徴収不足になっている事態が38事項136,904,000円あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 仕入れに係る消費税額の計算(注) に当たり、仕入れに係る支払対価の額(税込み)に105分の4を乗じた金額とすべきものを105分の5を乗じた金額とするなどしているのに、これを見過ごしたため、仕入れに係る消費税額を過大のままとしていた。(事例7参照)
(イ) 課税売上割合の計算を誤り、同割合が100分の95未満であるのに、建物の取得等に係る消費税額の全額が控除されていたり、課税売上高に対応する部分の金額が多く控除されていたりしているのに、これを見過ごしたため、仕入れに係る消費税額を過大のままとしていた。

 仕入れに係る消費税額の計算 仕入れに係る支払対価の額(税込み)は、消費税額(税率100分の4)と地方消費税額(消費税額の100分の25。消費税率換算で100分の1)に相当する額を含んだ額とすることとされているので、仕入れに係る消費税額は、仕入れに係る支払対価の額(税込み)に105分の4を乗じた金額となる。

イ 簡易課税制度の適用に関するもの

 事業者は、課税期間の基準期間(個人事業者については前々年、法人については前々事業年度)における課税売上高が2億円以下であるときは、課税売上高に対する消費税額に事業の種類ごとに定められている所定の率(注)を乗じて得られる金額を仕入れに係る消費税額とみなして税額を計算する簡易課税制度を適用することができることとなっている。
 この簡易課税制度の適用に関し、徴収不足になっている事態が16事項17,409,100円あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 事業の種類の判定を誤り、第五種事業に該当する事業を第四種事業に該当するなどとし、仕入れに係る消費税額とみなされる税額が過大に計算されているのに、これを見過ごしたため、消費税額を過小のままとしていた。
(イ) 基準期間における課税売上高が2億円(3年10月1日から9年3月31日までに開始する課税期間については4億円)を超えている事業者が簡易課税制度を適用していて、納付する税額が少なくなっているのに、これを見過ごしたため、消費税額を過小のままとしていた。

(注)  所定の率
第一種事業 (卸売業)  100分の90
第二種事業 (小売業)  100分の80
第三種事業 (製造業等)  100分の70
第四種事業 (第一種、第二種、第三種及び第五種事業以外の事業)  100分の60
第五種事業 (飲食店業を除くサービス業等)  100分の50

ウ 課税売上高の計上に関するもの

 課税売上高には、事業者が国内において行った資産の譲渡及び貸付け並びに請負等の役務の提供に係る収入金額(土地の譲渡、住宅の貸付け等に係る収入金額を除く。)を計上することとなっている。
 この課税売上高の計上に関し、徴収不足になっている事態が11事項14,626,400円あった。その主な内容は、ゴルフ会員権や貸付け等の事業の用に供していた建物を譲渡しているのに、これを見過ごしたため、課税売上高を過小のままとしていたものである。

エ その他に関するもの

 上記のアからウのほか、納税義務の免除の規定の適用等に関し、徴収不足になっている事態が6事項34,856,500円あった。

 消費税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。

<事例7>  仕入れに係る消費税額の計算を誤っていたもの
 G会社は、平成9年6月から10年5月までの課税期間分の申告に当たり、仕入れに係る支払対価の額(税込み)を5,586,065,340円であるとし、これに100分の5を乗じた金額279,303,267円を仕入れに係る消費税額としていた。そして、この額を課税売上高に対する消費税額から控除していた。
 しかし、上記の金額5,586,065,340円は税抜きの金額であり、仕入れに係る消費税額の計算に当たっては、税込みの仕入れに係る支払対価の額に105分の4を乗じた金額とすべきである。したがって、税込金額5,865,368,607円に105分の4を乗じた金額223,442,613円が仕入れに係る消費税額となるのに、これを見過ごしたため、消費税額55,860,600円が徴収不足になっていた。

(国税局等別の徴収過不足額)

 これらの徴収不足額及び徴収過大額を国税局等別に示すと次のとおりである。

これらの徴収不足額及び徴収過大額を国税局等別に示すと次のとおりである。