1 本院が表示した改善の意見
国税庁では、国税の賦課徴収の事務を担当しているが、近年、国税の滞納額は増加傾向にあり、平成10年度の新規発生滞納額は1兆6383億余円に上っている。特に、消費税の新規発生滞納額は著しく増加しており、7249億余円(国税全体の44.2%)と多額に上っている。このような事態は、消費者が負担した消費税が国に納付されなくなるおそれがあるばかりか、消費税に対する国民の信頼を失いかねないもので、適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じているのは、消費税は消費者からの預り金的な性格を有する税であるという趣旨の広報が十分でなかったり、入札参加資格の審査(以下「資格審査」という。)の申込みの際に、事業者の経営状況等を把握するための消費税の納税証明書(以下「証明書」という。)の添付等を求めていない地方公共団体や国の機関等に対して、添付等を求める協力要請が十分ではなかったりしていることなどによると認められた。
消費税は国民福祉の充実等のための貴重な財源となっていて、消費税の滞納は健全な財政収入を図る見地からみて重大な問題であることから、消費税の滞納を防止するため、次のとおり、国税庁長官に対し11年11月に、会計検査院法第36条の規定により改善の意見を表示した。
(ア) 消費税は消費者からの預り金的な性格を有する税であるという趣旨の広報活動を更に徹底するなどして、事業者に期限内納付のより一層の周知徹底を図ること
(イ) 資格審査の申込みの際に証明書の添付等を求めていない地方公共団体に対して引き続き協力要請すること、また、国の機関等に対しても証明書の添付等を求めるよう協力要請すること
(ウ) 納税貯蓄組合等の関係民間団体に対して消費税の納税資金の備蓄を行う旨を事業者へ働きかけるようより一層の協力要請をすること
2 当局が講じた改善の処置
国税庁では、本院指摘の趣旨に沿い、消費税の滞納防止策をより一層徹底するよう、次のような処置を講じた。
(ア) 消費税は消費者からの預り金的な性格を有する税であるということが、事業者に認識されるよう配意したポスター、チラシ等を作成し、すべての税務署の管内でポスターを掲示したり、チラシを事業者に配付したりした。また、各種講演会や説明会等の際、消費税が預り金的な性格を有する税であることを説明するなど、広報活動を充実させ、期限内納付のより一層の周知徹底を図った。
(イ) 資格審査の申込みに際し、証明書の添付等を求めることについて、11年11月に、国の各機関等に対して文書による協力要請を行うとともに、証明書の添付等を求めていない地方公共団体に対し、改めて協力要請を行った。その結果、すべての国の機関等及び地方公共団体は、証明書の添付等を求めることとした。
(ウ) 消費税の納税資金の備蓄を事業者に働きかけることについて、11年12月に全国納税貯蓄組合連合会に対し協力要請を行い、これを受けて、同連合会では他の関係民間団体と連携して、事業者に対し納税資金の備蓄の働きかけを行った。また、この一環として、納税貯蓄組合等の関係民間団体は、事業者が納税資金を備蓄する口座を設定できるよう金融機関に働きかけを行った。その結果、11年12月から12年7月までの間に、新たに284金融機関で消費税積立預金が商品化され、納税資金の備蓄環境の整備が進展した。