ページトップ
  • 平成11年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第5 文部省|
  • 不当事項|
  • 医療費

大学病院における診療報酬の請求に当たり、手術料等の請求額が不足していたもの


(9)−(18)大学病院における診療報酬の請求に当たり、手術料等の請求額が不足していたもの

会計名及び科目 国立学校特別会計 (款)附属病院収入 (項)附属病院収入
部局等の名称 北海道大学ほか9大学(10大学病院)
請求不足となっていた診療報酬 手術料、麻酔料、検査料等
請求不足額 78,723,110円(平成11年度)

1 診療報酬の概要

(診療報酬の算定及び請求)

 国立大学の医学部等に附属する病院(以下「大学病院」という。)では、臨床医学の教育・研究を行うほか、保険医療機関として患者の診療を行っている。
 保険医療機関は、「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(平成6年厚生省告示第54号。以下「厚生省告示」という。)等により、診療報酬として医療に要する費用を所定の診療点数に単価(10円)を乗ずるなどして算定することとなっている。そして、健康保険法(大正11年法律第70号)等により、診療報酬のうち患者負担分を患者に請求し、残りの診療報酬については、診療報酬請求書に診療報酬の明細を明らかにした診療報酬明細書を添付して社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連合会に対して請求することとなっている。

(診療報酬の構成)

 診療報酬は、厚生省告示により、基本診療料と特掲診療料から構成されている。
 このうち、基本診療料は、初診、再診及び入院診療の際にそれぞれ行われる診療行為又は入院サービスの費用などを一括して算定するもので、初診料、再診料、入院料等に区分されている。
 また、特掲診療料は、基本診療料として一括して算定することが妥当でない特別の診療行為に対し、個々に定められた診療点数によりその費用を算定するもので、検査料、手術料、麻酔料等に区分されている。

(検査料、手術料及び麻酔料)

 検査料は、厚生省告示により、所定の点数が定められており、血液、尿等の検体検査を実施した場合は、その検体検査の種類等に応じた検体検査実施料と検体検査判断料の点数を算定することとなっている。
 手術料は、厚生省告示により、所定の点数が定められており、手術において特定保険医療材料(注1) を使用した場合は、この手術の点数に特定保険医療材料の点数を合算した点数により算定することとなっている。
 麻酔料は、厚生省告示により、所定の点数が定められており、マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔(注2) を実施した場合は、実施時間が2時間までは一律の点数(5,930点)を算定し、2時間を超えた場合は30分又はその端数を増すごとに一定の点数(600点)を加算して算定することとなっている。

(大学病院における診療報酬の請求事務)

 大学病院では、これらの診療報酬請求事務をコンピュータシステムにより行っている。すなわち、検査、手術等の診療行為を行った場合には、診療部門で検査名、手術名、麻酔の実施時間、使用した特定保険医療材料等を所定の用紙(以下「伝票」という。)に記載するなどして料金算定部門に送付し、料金算定部門では、この伝票の記載内容をコンピュータに入力するなどし、これにより診療報酬の算定を行っている。

(注1) 特定保険医療材料 手術等の所定点数に併せてその費用を算定することができるものとして厚生大臣が定めている保険医療材料で、補助人工心臓セット、人工内耳用材料等がこれに該当する。
(注2) 閉鎖循環式全身麻酔 閉鎖循環式全身麻酔器を用いて、患者の呼気中の炭酸ガスを除去しながら、麻酔ガスと酸素を補給する吸入麻酔法

2 検査の結果

(検査の着眼点及び対象)

 大学病院は、地域の中核的な医療機関として高度な医療を提供しており、その診療報酬の請求内容は多岐にわたっており、その額も多額に上っている。そこで、診療報酬が適正に算定されているかに着眼して、北海道大学ほか13大学の14大学病院における平成11年度の診療報酬の請求について検査した。(請求不足の事態)検査の結果、北海道大学ほか9大学の10大学病院において、診療報酬請求額が不足していたものが、3,210件、78,723,110円あった。これらについて、その主な態様を診療報酬の別に示すと次のとおりである。

ア 手術料に関するもの

 手術において補助人工心臓セット、人工内耳用材料等の特定保険医療材料を使用しているのに、これらの特定保険医療材料の点数を合算していないなどしていた。このため、手術料が過小に算定され、診療報酬請求額が913件、49,555,980円不足していた。

イ 麻酔料に関するもの

 マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔の実施時間を誤って、2時間を超えた場合の加算点数を過小に算定するなどしていた。
 このため、麻酔料が過小に算定され、診療報酬請求額が552件、10,627,810円不足していた。

ウ 検査料に関するもの

 各種の検体検査を実施しているのに、検体検査実施料のみを算定し、検体検査判断料の点数を算定していないなどしていた。
 このため、検査料が過小に算定され、診療報酬請求額が844件、5,296,840円不足していた。
 このような事態が生じていたのは、主として次のようなことによると認められる。
(ア) 診療部門において、手術で使用した特定保険医療材料の伝票への記入を漏らすなど診療内容を伝票に正確に記載していなかったこと
(イ)料金算定部門において、手術で使用した特定保険医療材料や麻酔の実施時間等の伝票の記載内容を十分確認しないままコンピュータに入力したり、検査料の算定方法に関する認識が十分でなかったりしていたこと
上記の事態を大学病院別に示すと次のとおりである。

大学病院における診療報酬の請求に当たり、手術料等の請求額が不足していたものの図1