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義務教育費国庫負担金等の経理が不当と認められるもの


(19)−(28)義務教育費国庫負担金等の経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)文部本省  (項)義務教育費国庫負担金
 (項)養護学校教育費国庫負担金
部局等の名称 宮城県ほか8府県
国庫負担の根拠 義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)、公立養護学校整備特別措置法(昭和31年法律第152号)
事業主体 宮城県ほか8府県
国庫負担の対象 公立の小学校及び中学校並びに盲学校、聾(ろう)学校及び養護学校の小学部及び中学部に要する経費のうち教職員給与費等
上記に対する国庫負担金交付額の合計 411,039,661,695円 (平成8年度〜10年度)
不当と認める国庫負担金交付額 111,815,970円 (平成8年度〜10年度)

1 国庫負担金の概要

(義務教育費国庫負担金等の概要)

 義務教育費国庫負担金及び養護学校教育費国庫負担金は、義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)及び公立養護学校整備特別措置法(昭和31年法律第152号)に基づき、公立の義務教育諸学校(小学校及び中学校並びに盲学校、聾(ろう)学校及び養護学校の小学部及び中学部)に要する経費のうち都道府県の負担する教職員給与費等の経費について、原則としてその実支出額を国庫負担対象額とし、その2分の1を国が負担するため都道府県に交付するものである。
 ただし、〔1〕財政力指数(注1) が1を超える都道府県、〔2〕財政力指数が1以下で、かつ、教職員の実数が標準定数を超えているか又は教職員の給与水準が国立の義務教育諸学校の教職員の水準を上回っている都道府県については、「義務教育費国庫負担法第二条但書の規定に基づき教職員給与費等の国庫負担額の最高限度を定める政令」(昭和28年政令第106号)等により、その財政力に応じて、国庫負担額の最高限度が定められている。
 上記の教職員の標準定数は、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(昭和33年法律第116号)等に基づき、都道府県全体の公立の義務教育諸学校について、学校の種類(小学校、中学校など)及び教職員の職種区分ごとに、学校数、学級数等を基礎として算定されることとなっている。
 そして、国庫負担額の最高限度は、次のように算定した国庫負担対象額の2分の1とすることとされている。

(1)財政力指数が1を超える都道府県について

 当該年度の5月1日現在において算定した教職員の標準定数の合計数に、同日現在における休職者等の実数を加えるなどして算定した数を教職員定数とし、この教職員定数に、毎年度、教職員給与費等の種類ごとに別に政令で定める額を乗ずるなどして算定した額の合計額

(2)財政力指数が1以下の都道府県について

 校長教諭等、充て指導主事(注2) などの教職員の職種等の区分ごとに、教職員給与費等の種類ごとの実支出額から次の額を控除するなどして算定した額の合計額
〔1〕教職員の毎月の実数と毎月算定した標準定数とを比較して、実数が標準定数を超過する場合に、その超過する割合を給料等の実支出額に乗じて算定した額
〔2〕住居手当、期末手当等の諸手当について、国家公務員の例に準じて、毎年度、文部大臣が大蔵大臣と協議して定めるところにより算定した額を超過した額
〔3〕教育関係団体等の学校以外の教育機関等に勤務する教職員に係る給与費等の額、及び養護学校等のうち小学部及び中学部のほか幼稚部又は高等部を置く学校については、幼稚部又は高等部の教職員に係る給与費等の額
 なお、上記の教職員給与費等の種類ごとの実支出額は、当該都道府県における小学校、中学校、養護学校等の教職員に係る給与費等の決算額から、国庫負担の対象とならない職種である実習助手等に係る給与費等の額、高等部のみを設置する高等養護学校の教職員などに係る給与費等の額を控除するなどして算定することとされている。

(注1) 財政力指数 地方交付税法(昭和25年法律第211号)第14条の規定により算定した基準財政収入額を同法第11条の規定により算定した基準財政需要額で除して得た数値で当該年度前3年度内の各年度に係るものを合算したものの3分の1の数値
(注2) 充て指導主事 大学以外の公立学校の教員の身分を保有したまま、学校における教育課程、学習指導その他学校教育に関する専門的事項の指導に関する事務に従事している者

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 本院は、義務教育費国庫負担事業等の事業規模にかんがみ、これまで標準定数の算定、各種手当等の算定、国庫負担の対象とならない教職員に係る給与費等の算定に順次着眼して検査を行ってきている。そして、本年の検査に当たっては、教職員の実数又は標準定数の算定が適切に行われているかなどに着眼して検査を行った。

(検査の結果)

 北海道ほか27都府県について検査したところ、財政力指数が1以下の宮城県ほか8府県において、国庫負担金111,815,970円が過大に交付されていて不当と認められる。
 これを態様別に示すと次のとおりである。

〔1〕教職員の実数又は標準定数の算定を誤っていたもの

大阪府、宮城、山形、三重、広島各県

〔2〕諸手当に係る国家公務員の例に準ずるべき額の算定を誤っていたもの

千葉、島根両県

〔3〕国庫負担の対象にならない実習助手等に係る給与費等を含めて国庫負担対象額を算定していたもの

宮城、千葉、兵庫、宮崎各県

 このような事態が生じていたのは、上記の9府県が、国庫負担対象額を算定するに当たり、教職員の給与関係の事務を所掌する部署において、標準定数の算定方法についての理解や、国庫負担対象額の算定資料に対する精査が十分でなかったことなどによるものである。
 これを府県別に示すと次のとおりである。

府県名 年度 国庫負担対象額 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象額 不当と認める国庫負担金
千円 千円 千円 千円
 (義務教育費国庫負担金)
(19) 千葉県 9 229,323,641 114,661,820 17,616 8,808
10 232,949,040 116,474,520 18,371 9,185
小計 462,272,681 231,136,340 35,987 17,993
 千葉県では、新築又は購入後5年以内の自宅に居住する教職員9年度2,868人、10年度2,992人に係る住居手当について、1人当たり月額3,000円として国庫負担対象額を算定していた。
 しかし、国家公務員の例に準ずるべき額を算定するに当たっては、上記住居手当の月額は2,500円とすることとなっているのに、これを3,000円として国庫負担対象額を算定したのは誤りである。
 この結果、国庫負担対象額が9年度17,616,011円、10年度18,371,322円それぞれ過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、9年度114,653,012,558円、10年度116,465,334,436円となり、9年度8,808,006円、10年度9,185,661円、計17,993,667円が過大に交付されていた。
(20) 三重県 9 91,564,504 45,782,252 17,062 8,531
 三重県では、国庫負担対象額を算定する資料に校長教諭等に係る毎月の標準定数を誤って記入し、その合計を、実際は120,890人であるのに120,917人と過大に算定するなどしていた。
 この結果、国庫負担対象額が17,062,322円過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、45,773,721,003円となり、8,531,161円が過大に交付されていた。
(21) 広島県 8 136,557,598 68,278,799 6,880 3,440
 広島県では、国庫負担対象額を算定する資料に充て指導主事に係る毎月の実数を誤って記入し、その合計を、実際は831人であるのに819人と過小に算定していた。
 この結果、国庫負担対象額が6,880,426円過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、68,275,359,165円となり、3,440,213円が過大に交付されていた。
(22) 宮崎県 9 64,092,166 32,046,083 28,492 14,246
 宮崎県では、教育関係団体に勤務する教員1人に係る退職手当を含めて国庫負担対象額を算定していた。
 しかし、教育関係団体に勤務する教員は国庫負担の対象にならないものであるから、この者に係る退職手当を含めて国庫負担対象額を算定したのは誤りである。
 この結果、国庫負担対象額が28,492,464円過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、32,031,836,990円となり、14,246,232円が過大に交付されていた。
 (養護学校教育費国庫負担金)
(23) 宮城県 9 5,272,670 2,636,335 4,086 2,043
10 5,478,066 2,739,033 50,478 25,239
小計 10,750,737 5,375,368 54,564 27,282
(1)宮城県では、10年度において、養護学校の小学部及び中学部の教職員に係る毎月の標準定数を算定するに当たり、その算定の基礎となる学級数に児童又は生徒が在籍していない学級を4学級含めていた。
 しかし、児童又は生徒が在籍していない学級は標準定数の算定の基礎となる学級数に含めないものであるので、これらを含めて標準定数を算定していたのは誤りであり、このため、毎月の標準定数が6人過大になっていた。
(2)同県では、養護学校に勤務する実習助手9年度2人、10年度3人に係る給与費等を含めるなどして国庫負担対象額を算定していた。
 しかし、実習助手は国庫負担の対象にならないものであるから、これらの者に係る給与費等を含めるなどして国庫負担対象額を算定したのは誤りである。
 これらの結果、国庫負担対象額が9年度4,086,098円、10年度50,478,045円それぞれ過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、9年度2,634,292,338円、10年度2,713,794,113円となり、9年度2,043,049円、10年度25,239,022円、計27,282,071円が過大に交付されていた。
(24) 山形県 9 2,599,391 1,299,695 2,273 1,136
 山形県では、国庫負担対象額を算定する資料に教職員の実数を誤って記入するなどしていたため、教職員給与費等の実支出額から控除する幼稚部又は高等部の教職員に係る給与費等の額を過小に算定していた。
 この結果、国庫負担対象額が2,273,720円過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、1,298,558,706円となり、1,136,860円が過大に交付されていた。
(25) 千葉県 10 11,472,689 5,736,344 29,562 14,781
(1)千葉県では、高等養護学校に勤務する事務職員1人に係る退職手当を含めて国庫負担対象額を算定していた。
 しかし、高等養護学校は高等部のみを設置する養護学校であるため、これに勤務する者は国庫負担の対象にならないものであるから、この者に係る退職手当を含めて国庫負担対象額を算定したのは誤りである。
(2)同県では、養護学校に勤務する実習助手等6人に係る給与費等を含めるなどして国庫負担対象額を算定していた。
 しかし、実習助手等は国庫負担の対象にならないものであるから、これらの者に係る給与費等を含めるなどして国庫負担対象額を算定したのは誤りである。
 これらの結果、国庫負担対象額が29,562,960円過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、5,721,563,094円となり、14,781,480円が過大に交付されていた。
(26) 大阪府 9 14,371,341 7,185,670 16,572 8,286
10 14,925,029 7,462,514 24,333 12,166
小計 29,296,371 14,648,185 40,906 20,453
 大阪府では、養護学校の小学部及び中学部の教職員に係る毎月の標準定数を算定するに当たり、その算定の基礎となる学級数に児童又は生徒が在籍していない学級を、9年度は1学級から6学級、10年度は1学級から5学級含めていた。
 しかし、児童又は生徒が在籍していない学級は標準定数の算定の基礎となる学級数に含めないものであるので、これらを含めて標準定数を算定していたのは誤りであり、このため、毎月の標準定数が、9年度は1人から9人、10年度は2人から7人過大になっていた。
 この結果、国庫負担対象額が9年度16,572,804円、10年度24,333,962円それぞれ過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、9年度7,177,384,412円、10年度7,450,347,758円となり、9年度8,286,402円、10年度12,166,981円、計20,453,383円が過大に交付されていた。
(27) 兵庫県 10 10,997,198 5,498,599 5,673 2,836
 兵庫県では、高等養護学校に勤務する養護教諭1人に係る給与費等を含めるなどして国庫負担対象額を算定していた。
 しかし、高等養護学校は高等部のみを設置する養護学校であるため、これに勤務する者は国庫負担の対象にならないものであるから、この者に係る給与費等を含めるなどして国庫負担対象額を算定したのは誤りである。
 この結果、国庫負担対象額が5,673,469円過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、5,495,762,301円となり、2,836,734円が過大に交付されていた。
(28) 島根県 9 2,475,986 1,237,993 2,228 1,114
 島根県では、養護学校の教職員の期末手当及び勤勉手当について国家公務員の例に準ずるべき額を算定するに当たり、その算定の資料に、誤って義務教育費国庫負担金の対象である盲学校及び聾学校の教職員の給料等に基づいた計数を記入するなどしていた。
 この結果、国庫負担対象額が2,228,337円過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、1,236,878,851円となり、1,114,169円が過大に交付されていた。
(19)-(28)の計 8 136,557,598,757 68,278,799,378 6,880,426 3,440,213
9 409,699,701,478 204,849,850,737 88,331,756 44,165,879
10 275,822,023,162 137,911,011,580 128,419,758 64,209,878
822,079,323,397 411,039,661,695 223,631,940 111,815,970