会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)文部本省 | (項)学校教育振興費 (項)公立文教施設整備費 |
部局等の名称 | 文部本省 |
補助の根拠 | 学校給食法(昭和29年法律第160号) 予算補助 |
補助事業者 (事業主体) |
市8、特別区2、町8、村2、計20事業主体 |
補助事業 | 学校給食施設整備事業 |
補助事業の概要 | 学校給食の開設及び改善充実に必要な施設設備を整備するもの |
補助対象面積等の算定が児童生徒数の減少に対応していない事業 | 40事業 |
上記に対する国庫補助金交付額の合計 | 6億2051万余円(平成7年度〜10年度) |
節減できた計算となる国庫補助金 | 1億7002万円(平成7年度〜10年度) |
(平成12年11月17日付け文部大臣あて)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
1 制度の概要
貴省では、学校給食法(昭和29年法律第160号)等に基づき、学校給食が児童、生徒等の心身の健全な発達に資するものであることなどから、学校給食の普及充実を図るため、公立の義務教育諸学校(学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する小学校、中学校、中等教育学校の前期課程又は盲学校、聾(ろう)学校若しくは養護学校の小学部若しくは中学部をいう。以下同じ。)等の設置者(以下「事業主体」という。)に対し、公立学校施設整備費補助金(学校給食施設整備費)及び学校給食設備整備費補助金(交付は平成9年度まで。以下、これらを「補助金」という。)を交付している。
これら補助金は、関係法令の定めるところによるほか、「学校給食施設補助交付要綱」(昭和53年文部大臣裁定。平成8年度までは「学校給食施設設備補助交付要綱」。以下、これらを「交付要綱」という。)に基づき、学校給食の開設及び改善充実に必要な施設設備の整備(以下「学校給食施設整備事業」という。)に要する経費の一部を補助するために交付されるものである。
学校給食施設整備事業は、交付要綱において、ドライシステム化推進事業単独校調理場施設、学校食堂施設等の補助事業細目に区分され、それぞれの補助事業細目ごとに補助率と補助事業実施要領(以下「実施要領」という。)が定められている。そして、実施要領においては、調理場や学校食堂等の施設整備に当たって、補助対象面積を算定する際の基礎となる基準面積、附帯施設の対象品目(流し、調理台、ボイラー等)、これらの品目の基準金額(補助対象となる限度の金額)等が定められている。
学校給食施設整備事業に対する補助金は、補助対象事業費に補助率(各補助事業細目ごとに、原則として2分の1又は3分の1)を乗じて算定することとなっており、補助対象事業費は、次のように算定することなどとなっている。
(1)施設整備
施設整備に係る補助対象事業費は、補助対象面積に補助単価(文部大臣が大蔵大臣と協議して定める1m2
当たりの建築単価。ただし、実際の建築単価がこれを下回る場合は、実際の建築単価)を乗じて算定することとなっている。
そして、補助対象面積は、〔1〕新増築事業の場合は、基準面積から保有面積を控除した面積、〔2〕改築事業の場合は、基準面積又は保有面積のうちいずれか少ない面積とされている。ただし、実際の建築面積(以下「実施面積」という。)が上記により算定した補助対象面積を下回る場合は、実施面積を限度とすることとなっている。
補助対象面積を算定する際の基礎となる基準面積は、単独校調理場(1の義務教育諸学校の学校給食の実施に必要な施設)、共同調理場(2以上の義務教育諸学校の学校給食の実施に必要な施設)等の学校給食施設ごとに、児童生徒数に応じて区分されている。
単独校調理場については、7段階に区分されている。
児童生徒数 (人) |
200 以下 |
201 〜
400
|
401 〜
600
|
601 〜
900
|
901 〜
1,200
|
1,201 〜
1,500
|
1,501以上 |
基準面積 (m2 ) |
96 | 120 | 150 | 180 | 204 | 216 | 228m2 +(300人ごとに12m2 を加算) |
また、共同調理場については、9段階に区分されている。
児童生徒数 (人) |
500 以下 |
501 〜
1,000
|
1,001 〜
2,000
|
2,001 〜
3,000
|
3,001 〜
4,000
|
4,001 〜
5,000
|
5,001 〜
6,000
|
6,001 〜
7,000
|
7,001以上 |
基準面積 (m2 ) |
253 | 322 | 483 | 609 | 736 | 862 | 989 | 1,115 | 1,242m2 +(1,000人ごとに126m2 を加算) |
そして、調理場の基準面積については、制度発足後、逐次改定が行われその都度基準面積の拡充が図られてきており、直近の平成9年度の改定においては、8年度に学校給食の現場で発生した病原性大腸菌O−157による食中毒事件を契機として調理場のドライシステム化を進めることとされ、基準面積の拡充が図られている。これにより現行の基準面積は、昭和48年度改定時の基準面積に比べて、単独校調理場で平均約1.5倍、共同調理場で平均約1.7倍となっている。
(2)附帯施設整備
附帯施設の整備に係る補助対象事業費は、単独校調理場、共同調理場ごと、補助対象となる品目ごとに、児童生徒数に応じて区分されている基準金額又は実際に事業に要する経費のいずれか少ない額とされている。そして、流し、調理台、ボイラー等に係る基準金額は、単独校調理場については、児童生徒数200人以下の場合3,168,000円、共同調理場については、児童生徒数500人以下の場合7,020,000円などと定められている。
補助金の算定の基礎となる児童生徒数は、原則として、次のように算定することとなっている。
〔1〕単独校調理場については、当該整備を行う年度の5月1日(以下「基準日」という。)現在において当該義務教育諸学校に在学する児童生徒数
〔2〕共同調理場については、基準日現在において当該共同調理場に参加するすべての義務教育諸学校に在学する児童生徒数
前記のとおり、補助金の算定の基礎となる基準面積及び基準金額(以下「基準面積等」という。)は、原則として、事業実施年度の児童生徒数に応じて算定されることとなっており、貴省では、事業主体から貴省に提出させる事業計画書及び補助金の交付申請書に事業実施年度の児童生徒数を記載させている。
一方、事業主体等では、学校施設の管理運営上の必要性等から住民基本台帳等を基に就学予定者を把握するなどの方法により当該事業実施年度以降の各年度の児童生徒数を推計している状況である。
2 本院の検査結果
貴省の学校基本調査報告書によれば、小学校の児童数は昭和56年をピークに減少し、同じく中学校の生徒数も61年をピークに減少しており、今後もこの傾向が続くと推計されている。そして、学校給食施設整備事業は、前記のとおり、原則として、当該事業実施年度の児童生徒数に応じた基準面積等に基づき実施することとなっている。
そこで、学校給食施設整備事業を実施した年度の翌年度以降の児童生徒数の推移について、実績及び推計はどのようになっているか、事業実施後間もない時点で児童生徒数が減少し、減少後の児童生徒数に応じた基準面積等が当該事業実施年度のそれらを下回って補助金の効率的使用を損なうことになっているものはないかに着眼して検査した。
学校給食施設整備事業のうち、児童生徒数を基に補助対象事業費を算定する事業は、単独校調理場施設整備(同時施行の附帯施設整備を含む。)ほか17事業(注1) ある。これらの事業について、北海道ほか27都府県(注2) の453事業主体が平成7年度から10年度までの間に実施した1,656事業、補助対象事業費計400億8747万余円(国庫補助金交付額計176億4933万余円)を対象として、各事業主体が管理している公立学校施設台帳等を基に、当該学校給食施設を利用する児童生徒数の推移等を検査した。
検査したところ、学校給食施設整備事業を実施した年度の翌年度において、実績及び推計ともに児童生徒数が減少していて、その年度の基準日における児童生徒数に応じた基準面積等が1段階低位となるものが、北海道ほか15都府県(注3)
において40事業(補助対象事業費計14億5119万余円、国庫補助金交付額計6億2051万余円)あった。そして、これらの事業について、翌年度以降の児童生徒数の減少を考慮して補助事業を認定していたとすれば、補助対象事業費計3億5721万余円、これに対する国庫補助金計1億7002万余円を節減できた計算となる。
上記の事態について、その一例を示すと次のとおりである。
<事例>
A市では、平成9年度に補助対象事業費193,844,700円(国庫補助金69,547,000円)で共同調理場を増改築している。この共同調理場に参加する小学校5校、中学校2校、計7校の基準日現在における児童生徒数計2,023人に応じた基準面積が609m2
であることから、これを補助対象面積としていた。そして、当該共同調理場は10年4月に供用を開始している。
一方、供用開始後の児童生徒数の推移は、10年5月1,977人、11年5月1,889人、12年5月1,750人となっている。また、9年当時の同市の推計においても児童生徒数は10年1,968人、11年1,900人、12年1,797人となっていて、事業を実施した年度の翌年度には実績、推計とも児童生徒数2,000人以下となっており、これに応ずる基準面積は1段階低位の483m2
となる。
したがって、事業を実施した年度の翌年度の推計の児童生徒数を基に補助事業を認定したとすると、補助対象面積が126m2
減少することとなる。
このように、補助事業により整備された学校給食施設について、児童生徒数の減少により事業実施の翌年度には事業実施年度の基準日における基準面積等より1段階低位の基準面積等で足りると認められる状況となっているのに、これを考慮することなく補助対象面積及び補助対象事業費が算定されていることは、補助金の効率的な使用の面から、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、次のようなことによると認められる。
〔1〕全国的に児童生徒数が減少している状況となっているのに、学校給食施設整備事業において、その状況を十分反映できるよう制度の見直しを行っていないこと
〔2〕事業主体等では、住民基本台帳等を基に就学予定者を把握するなどの方法により事業実施年度以降の児童生徒数を推計しているのに、事業主体から提出させる事業計画書等には当該事業実施年度分のみを記載させているなど児童生徒数の推移についての把握が十分でなく、適切な確認を行わないまま補助事業の認定を行ってきていること
3 本院が要求する改善の処置
全国的に児童生徒数が減少する傾向は依然として続いており、貴省においても、今後も児童生徒数の減少傾向が続くものと推計している。
一方、貴省においては、ドライシステム化による学校給食施設の衛生管理強化等を進めているところであり、学校給食施設整備事業は、今後とも、多額の補助金を投入して引き続き実施されるのであるから、前記の事態にかんがみ、本件補助金の効率的な使用を図る要があると認められる。
ついては、貴省において、次のような改善のための処置を講ずる要があると認められる。
(ア)児童生徒数が減少する状況を踏まえ、これらの状況に対応できるように現行の補助制度を見直すこと
(イ)事業計画書等に記載すべき事項を明示するなどして、事業主体等が推計している児童生徒数を確実に把握し、児童生徒数の減少により基準面積等の段階が明らかに下がると見込まれる場合には、その児童生徒数に応じた段階の基準面積等により補助事業の認定を行うようにすること
(注1) | 単独校調理場施設整備(同時施行の附帯施設整備を含む。)ほか17事業 単独校調理場施設、共同調理場施設、炊飯給食施設(単独校調理場)、炊飯給食施設(共同調理場)、学校給食施設更新(単独校調理場)、学校給食施設更新(共同調理場)、学校食堂施設、共同調理場備蓄用食品貯蔵施設、共同調理場防災用受水槽施設、夜間定時制高等学校給食施設、夜間定時制高等学校炊飯給食施設、夜間定時制高等学校食堂施設、牛乳用冷蔵設備、適温給食設備、厨芥処理設備、炊飯給食施設更新(単独校調理場)、炊飯給食施設更新(共同調理場)、夜間定時制高等学校牛乳用冷蔵設備各整備事業 |
(注2) | 北海道ほか27都府県 東京都、北海道、大阪府、宮城、山形、福島、栃木、茨城、埼玉、千葉、富山、石川、山梨、長野、静岡、岐阜、三重、兵庫、鳥取、島根、岡山、広島、愛媛、福岡、佐賀、長崎、熊本、宮崎各県 |
(注3) | 北海道ほか15都府県 東京都、北海道、大阪府、宮城、山形、福島、埼玉、千葉、富山、石川、山梨、兵庫、鳥取、福岡、長崎、熊本各県 |