会計名及び科目 | 厚生保険特別会計(年金勘定) | (項)保険給付費 |
国民年金特別会計(基礎年金勘定) | (項)基礎年金給付額 |
支給の相手方 | (1) | 厚生年金保険 | 1,528人 | |
(2) | 国民年金 | 42人 | ||
計 | 1,569人 | (重複者1人) | ||
老齢厚生年金等の支給額の合計 | (1) | 厚生年金保険 | 2,675,833,114円 | (平成9年度〜12年度) |
(2) | 国民年金 | 19,266,798円 | (平成9年度〜12年度) | |
計 | 2,695,099,912円 | |||
不適正支給額 | (1) | 厚生年金保険 | 1,245,842,247円 | (平成9年度〜12年度) |
(2) | 国民年金 | 19,266,798円 | (平成9年度〜12年度) | |
計 | 1,265,109,045円 |
1 保険給付の概要
(1)厚生年金保険及び国民年金の給付
厚生年金保険(前掲「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」 参照)において行う給付には、老齢厚生年金などがある。また、国民年金は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者等を被保険者として、老齢、死亡等に関し年金等の給付を行うものであり、この給付には、老齢基礎年金などがある。
(2)厚生年金保険の老齢厚生年金
老齢厚生年金では、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号。以下「法」という。)第42条の規定により、厚生年金保険の適用事業所に使用された期間(以下「被保険者期間」という。)を1月以上有し、老齢基礎年金に係る保険料納付済期間が25年以上ある者などが65歳に達したときに受給権者となる。
特別支給の老齢厚生年金は、昭和60年の法改正により、当分の間の特例として65歳未満であっても支給されることとなったものである。そして、平成6年の法改正により、60歳(女子、坑内員及び船員については55歳から60歳までの一定の年齢)に達していて被保険者期間を1年以上有し、老齢基礎年金に係る保険料納付済期間が25年以上ある者などが受給権者となっている。
特別支給の老齢厚生年金の給付額は、〔1〕受給権者の被保険者期間及びその期間における報酬を基に算定される額(以下「基本年金額」という。)と〔2〕配偶者等について加算される額との合計額となっている。
(ア)特別支給の老齢厚生年金の受給権者が、厚生年金保険の適用事業所に新たに使用されて被保険者となったときなどには、次のとおり、年金の支給を停止することとなっている。
〔1〕標準報酬月額と基本月額(基本年金額の100分の80に相当する額を12で除して得た額)との合計額が220,000円以下のときは基本年金額の100分の20に相当する額の支給停止
〔2〕上記の合計額が220,000円を超えるときは、標準報酬月額と基本月額とを用いて、一定の方式により算定した額に応じ、基本年金額の一部又は年金の額の全部の支給停止
(イ)この場合の支給停止の手続は次のとおりである。
〔1〕厚生年金保険の適用事業所の事業主は、新たに使用した者などが受給権者であるときは、その者の生年月日、基礎年金番号、資格取得年月日、報酬月額などを記載した被保険者資格取得届に、その者から提出を受けた年金手帳を添えて都道府県(平成11年度以前)又は地方社会保険事務局(12年度以降)の社会保険事務所等に提出する。
〔2〕社会保険事務所等は、これを調査確認の上、届出内容を社会保険庁にオンラインで伝送し、同庁は、これに基づいて受給権者に係る年金の支給停止額を算定の上、支給額を決定する。
(3)国民年金の老齢基礎年金
老齢基礎年金では、保険料納付済期間が25年以上ある者などが65歳に達したとき、又は65歳に達する前に繰上げ支給の請求をしたときは、そのときから受給権者となる。そして、繰上げ支給の請求をした者が、その後、厚生年金保険の被保険者となったときは、年金の額の全部が支給停止されることになっていて、その手続は特別支給の老齢厚生年金の場合とほぼ同様である。
2 検査の結果
北海道ほか25都府県及び北海道社会保険事務局ほか11社会保険事務局の212社会保険事務所等管内において、9年に特別支給の老齢厚生年金の裁定を受け年金の額の全部を支給されている受給権者等456,624人のうち、厚生年金保険の適用事業所からの給与収入が確認され調査の要があると認められた者が3,218人見受けられた。そこで、上記の社会保険事務所等において、これらの受給権者を使用している2,562事業所について、厚生年金保険の被保険者資格取得届等の提出の必要性の有無に着眼して9年度から12年度までの間における特別支給の老齢厚生年金及び老齢基礎年金の支給の適否を検査した。
検査したところ、上記の26都道府県及び12社会保険事務局の203社会保険事務所等管内における1,115事業所の1,569人については当該事業所において常用的に使用されていて、年金の額の一部又は全部の支給を停止すべきであったのに被保険者資格取得届が提出されなかったなどのため、年金の支給停止の手続が執られていなかった。このため、特別支給の老齢厚生年金の受給権者1,528人に対する支給(支給額2,675,833,114円)について1,245,842,247円、老齢基礎年金の受給権者42人(注)
に対する支給(支給額19,266,798円)について19,266,798円、計1,265,109,045円が適正に支給されていなかった。
このような事態が生じていたのは、受給権者又は事業主が制度を十分理解していなかったり、誠実でなかったりして、事業主が前記の届出を怠るなどしていたのに、上記の203社会保険事務所等において、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、社会保険庁で年金の支給停止をしていなかったことによるものである。
なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。
(注) 42人の中には特別支給の老齢厚生年金も不適正に支給されていた者が1人含まれている。
これらの不適正支給額を都道府県等ごとに示すと次のとおりである。
都道府県等名 | 社会保険事務所等 | 本院が調査した受給権者数 人 |
不適正受給権者数 人 |
左の受給権者に支給した年金の額 千円 |
左のうち不適正支給額 千円 |
|
北海道 北海道社会保険事務局 |
札幌東ほか6 | 59 | 19 | 27,686 | 10,000 | |
青森県 青森社会保険事務局 |
青森ほか3 | 51 | 25 | 24,533 | 10,867 | |
岩手県 岩手社会保険事務局 |
盛岡ほか4 | 56 | 29 | 29,874 | 9,639 | |
福島県 福島社会保険事務局 |
東北福島ほか5 | 63 | 45 | 46,427 | 21,530 | |
栃木県 | 宇都宮東ほか4 | 84 | 43 | 81,560 | 42,353 | |
埼玉県 | 浦和ほか6 | 149 | 85 | 128,411 | 57,973 | |
千葉県 千葉社会保険事務局 |
千葉ほか5 | 106 | 49 | 96,792 | 50,538 | |
東京都 東京社会保険事務局 |
麹町ほか29 | 596 | 314 | 571,667 | 304,920 | |
神奈川県 神奈川社会保険事務局 |
鶴見ほか12 | 183 | 81 | 208,130 | 97,616 | |
新潟県 新潟社会保険事務局 |
新潟東ほか6 | 88 | 50 | 54,873 | 24,287 | |
石川県 | 金沢南ほか2 | 48 | 31 | 57,272 | 21,773 | |
長野県 | 長野南ほか4 | 83 | 46 | 93,978 | 42,551 | |
静岡県 | 静岡ほか8 | 164 | 80 | 129,677 | 56,122 | |
愛知県 | 大曽根ほか13 | 260 | 110 | 168,987 | 80,498 | |
滋賀県 | 草津ほか1 | 28 | 9 | 7,865 | 2,182 | |
京都府 | 上京ほか5 | 81 | 38 | 102,165 | 46,479 | |
大阪府 大阪社会保険事務局 |
天満ほか17 | 205 | 111 | 190,232 | 91,705 | |
兵庫県 | 三宮ほか8 | 173 | 101 | 214,799 | 90,400 | |
岡山県 | 岡山東ほか3 | 56 | 28 | 71,374 | 43,761 | |
広島県 | 広島東ほか7 | 139 | 51 | 74,470 | 34,800 | |
山口県 | 山口ほか5 | 69 | 21 | 42,662 | 15,994 | |
徳島県 | 徳島南ほか2 | 47 | 20 | 29,746 | 13,615 | |
福岡県 福岡社会保険事務局 |
東福岡ほか10 | 109 | 47 | 63,870 | 25,279 | |
長崎県 長崎社会保険事務局 |
長崎南ほか3 | 80 | 34 | 50,894 | 27,230 | |
熊本県 | 熊本東ほか4 | 92 | 52 | 65,219 | 21,716 | |
鹿児島県 鹿児島社会保険事務局 |
鹿児島南ほか5 | 95 | 50 | 61,926 | 21,268 | |
計 | 26都道府県及び12社会保険事務局 | 203箇所 | 3,164 | 1,569 | 2,695,099 | 1,265,109 |