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医療費に係る国の負担が不当と認められるもの


(42)医療費に係る国の負担が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生本省  (項)精神保健費
 (項)生活保護費
 (項)身体障害者保護費
 (項)老人福祉費
 (項)児童保護費
 (項)国民健康保険助成費
厚生保険特別会計(健康勘定)  (項)保険給付費
 (項)老人保健拠出金
 (項)退職者給付拠出金
船員保険特別会計  (項)保険給付費
 (項)老人保健拠出金
 (項)退職者給付拠出金
部局等の名称 社会保険庁、北海道ほか25都府県
国の負担の根拠 健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、老人保健法(昭和57年法律第80号)、生活保護法(昭和25年法律第144号)、身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)、知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)等
医療給付の種類 健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、老人保健法、生活保護法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法等に基づく医療
事業主体 国、都道府県29、市511、特別区23、町862、村166、国民健康保険組合80、計1,672実施主体
医療機関 308医療機関
不適切に支払われた医療費に係る診療報酬 特定入院料、看護料、入院環境料等
不適切に支払われた医療費の額 2,430,537,661円(平成8年度〜12年度)
不当と認める国の負担額 1,369,121,308円(平成8年度〜12年度)

1 医療給付の概要

(医療給付の種類)

 厚生省の医療保障制度には、老人保健制度、医療保険制度及び公費負担医療制度があり、これらの制度により次の医療給付が行われている。
(ア) 老人保健制度の一環として、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が老人保健法に基づき、健康保険法、船員保険法及び国民健康保険法(以下「医療保険各法」という。)による被保険者(被扶養者を含む。以下同じ。)のうち、当該市町村の区域内に居住する老人(70歳以上の者又は65歳以上70歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。)に対して行う医療
(イ) 医療保険制度の一環として、医療保険各法に規定する保険者が、医療保険各法に基づき被保険者((ア) の老人を除く。)に対して行う医療
(ウ) 公費負担医療制度の一環として、都道府県、市町村が、生活保護法に基づき要保護者に対して行う医療、身体障害者福祉法に基づき身体障害者に対して行う医療、知的障害者福祉法に基づき知的障害者に対して行う医療等

(診療報酬)

 これらの医療給付においては、被保険者(上記(ウ) の要保護者、身体障害者、知的障害者等を含む。以下同じ。)が医療機関で診察、治療等の診療を受け、市町村、保険者又は都道府県(以下「保険者等」という。)がその費用を医療機関に診療報酬として支払う。
 診療報酬の支払の手続は、次のとおりとなっている(下図参照)

医療費に係る国の負担が不当と認められるものの図1

(ア) 診療を担当した医療機関は、診療報酬として医療に要する費用を所定の診療点数に単価(10円)を乗じるなどして算定する。
(イ) 医療機関は、上記診療報酬のうち、患者負担分を患者に請求し、残りの診療報酬(以下「医療費」という。)については、老人保健に係るものは市町村に、医療保険各法に係るものは各保険者に、また、公費負担医療制度に係るものは都道府県、市町村に請求する。
 このうち、保険者等に対する医療費の請求は、次のように行われている。
〔1〕 医療機関は、診療報酬請求書(以下「請求書」という。)に診療報酬の明細を明らかにした診療報酬明細書(以下「レセプト」という。)を添付して、国民健康保険団体連合会又は社会保険診療報酬支払基金(以下「審査支払機関」と総称する。)に毎月1回送付する。
〔2〕 審査支払機関は、請求書及びレセプトに基づき請求内容を審査点検した後、医療機関ごと、保険者等ごとの請求額を算定し、その後、請求額を記載した書類と請求書及びレセプトを各保険者等に送付する。
(ウ) 請求を受けた保険者等は、それぞれの立場から医療費についての審査点検を行って金額等を確認の上、審査支払機関を通じて医療機関に医療費を支払う。

(国の負担)

 保険者等が支払う医療費の負担は次のようになっている。
(ア) 老人保健法に係る医療費については、老人の居住する市町村が審査支払機関を通じて支払うものであるが、この費用は国、地方公共団体及び保険者が以下のように負担している(下図参照)
〔1〕 老人保健法により、老人保健施設療養費等を除く老人医療費については、国は10分の2を、都道府県、市町村はそれぞれ10分の0.5ずつを負担することになっており、残りの10分の7については各保険者が拠出する老人医療費拠出金が財源となっている。また、老人保健施設療養費等については、国は12分の4を、都道府県、市町村はそれぞれ12分の1ずつを負担することになっており、残りの12分の6については老人 医療費拠出金が財源となっている。
〔2〕 国民健康保険法により国は市町村等が保険者として拠出する老人医療費拠出金の納付に要する費用の額の一部を負担している(平成11年度における国の負担額は老人医療費の約11%)。
〔3〕 健康保険法等により国は政府管掌健康保険等の保険者として老人医療費拠出金を納付している(11年度における国の負担額は老人医療費の約20%)。

医療費に係る国の負担が不当と認められるものの図2

(イ) 医療保険各法に係る医療費については、国は、患者が、〔1〕政府管掌健康保険等の被保険者である場合の医療費は保険者としてその全額を、〔2〕市町村が行う国民健康保険の被保険者である場合の医療費は市町村が支払った額の50%を、〔3〕国民健康保険組合が行う国民健康保険の被保険者である場合の医療費は国民健康保険組合が支払った額の47%を、それぞれ負担している。
(ウ) 生活保護法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法等に係る医療費については、国は都道府県、市町村が支払った医療費の4分の3又は2分の1を負担している。

2 検査結果の概要

(検査の着眼点)

 国民医療費は年々増加しており、医療費に対する国の負担もそれに伴い多額なものとなっていることから、本院では従来から診療報酬の請求が適正に行われているかに着眼して検査を行っている。
 そして、近年では医療機関において、医師、看護婦等の医療従事者が不足していて算定要件を満たしていなかったり、必要な各種届出を行っていなかったりしているのに、これらを満たすことが要件とされている診療報酬を請求している適正とは認められない事態が多く見受けられる。そこで、本年の検査に当たっても、これらの点を中心に検査した。

(適切とは認められない支払の事態)

 26都道府県において検査したところ、1,672実施主体(308医療機関)が行った8年度から12年度までの間における診療報酬の支払について、医療費2,430,537,661円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額1,369,121,308円が不当と認められる。
 これを診療報酬の別に整理して示すと、次のとおりである。(複数の診療報酬について適正とは認められない請求があった医療機関については、最も多い診療報酬で整理した。)

〔1〕特定入院料の支払が適切を欠いたもの
288実施主体 (21医療機関) 不当と認める国の負担額  490,475,390円
〔2〕看護料の支払が適切を欠いたもの
459実施主体 (38医療機関) 不当と認める国の負担額  140,512,992円
〔3〕入院環境料の支払が適切を欠いたもの
354実施主体 (28医療機関) 不当と認める国の負担額  134,988,201円
〔4〕入院時医学管理料の支払が適切を欠いたもの
645実施主体 (28医療機関) 不当と認める国の負担額  128,434,820円
〔5〕リハビリテーション料の支払が適切を欠いたもの
239実施主体 (20医療機関) 不当と認める国の負担額  109,825,387円
〔6〕処置料の支払が適切を欠いたもの
408実施主体 (41医療機関) 不当と認める国の負担額  82,628,261円
〔7〕初診料・再診料の支払が適切を欠いたもの
447実施主体 (49医療機関) 不当と認める国の負担額  75,086,448円
〔8〕画像診断料の支払が適切を欠いたもの
271実施主体 (9医療機関) 不当と認める国の負担額  52,016,971円
〔9〕指導管理料の支払が適切を欠いたもの
137実施主体 (19医療機関) 不当と認める国の負担額  45,050,531円
〔10〕入院時食事療養費の支払が適切を欠いたもの
307実施主体 (15医療機関) 不当と認める国の負担額  27,634,549円
〔11〕在宅医療料の支払が適切を欠いたもの
24実施主体 (14医療機関) 不当と認める国の負担額  27,141,446円
〔12〕精神科専門療法料の支払が適切を欠いたもの
97実施主体 (7医療機関) 不当と認める国の負担額  23,195,897円
〔13〕検査料の支払が適切を欠いたもの
302実施主体 (14医療機関) 不当と認める国の負担額  22,469,001円
〔14〕投薬料、注射料の支払が適切を欠いたもの
27実施主体 (5医療機関) 不当と認める国の負担額  9,661,414円

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のようなことなどによると認められる。
(ア) 医療機関から適正とは認められない診療報酬の請求があったのに、これに対する実施主体及び審査支払機関の審査点検が十分でなかったこと
 特に、診療報酬請求上の各種届出についての確認が必ずしも十分でなかったこと
(イ) 都道府県において、医療機関の医療従事者が不足していることを把握する資料があるにもかかわらずその活用が必ずしも十分でなかったこと
(ウ) 都道府県における医療機関に対する指導が十分でなかったこと

3 検査結果の詳細

 上記の診療報酬の支払が適切とは認められない事態について、診療報酬の別に、その算定方法及び医療機関における実際の算定・請求等の詳細を示すと次のとおりである。

〔1〕 特定入院料の支払が適切を欠いたもの

(特定入院料の算定方法)

 特定入院料には、精神療養病棟入院料、老人病棟入院医療管理料、診療所療養型病床群入院医療管理料(I)等があり、厚生大臣が定める施設基準に適合しているものとして都道府県知事に届け出た医療機関において、その基準に掲げる区分に従い所定の点数を算定することとされている。
 そして、精神療養病棟入院料等は、医師の数、看護婦及び准看護婦(以下「看護職員」という。)の数が医療法(昭和23年法律第205号)に定める標準となる数(以下「標準人員」という。)を満たしていない場合には、算定できないこととされている。
 また、老人病棟入院医療管理料等は、看護職員の数及び介護職員の数が入院患者数に対して所定の割合以上であること並びに看護職員の数に占める看護婦の数が所定の割合以上であることの要件を満たしていない場合には、算定できないこととされている。
 さらに、厚生大臣が定める施設基準に適合しているものとして都道府県知事に届け出た老人病棟入院医療管理を行う医療機関において、重症な皮膚潰瘍を有している者に対して療養上必要な指導を行った場合、重症皮膚潰瘍管理加算を算定することとされている。
 このほか、厚生大臣が定める看護婦等の勤務条件に関する基準に適合しているものとして都道府県知事に届け出た療養型病床群入院医療管理を行う医療機関において、当該基準による看護を行った場合、夜間勤務等看護加算を算定することとされている。

(検査の結果)

 検査の結果、青森県弘前市ほか20市町に所在する21医療機関において、特定入院料等の請求が適正とは認められないものが11,519件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 医師の数又は看護職員の数が標準人員を満たしていないのに、精神療養病棟入院料等を算定していた。
(イ) 看護職員の数、介護職員の数又は看護婦の数が所定の割合以上であることの要件を満たしていないのに、老人病棟入院医療管理料等を算定していた。
(ウ) 都道府県知事への届出を行っていないのに、診療所療養型病床群入院医療管理料(I)を算定したり、重症皮膚潰瘍管理加算を算定したり、夜間勤務等看護加算を算定したりしていた。
 このため、上記11,519件の請求に対し青森県弘前市ほか287市区町村等が支払った医療費について850,529,987円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額490,475,390円は負担の要がなかったものである。
 これを医療機関の所在する都府県別に示すと次のとおりである。

都府県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要
千円 千円
青森県 弘前市ほか7市町等(1) 51 16,939 10,709 特定入院料の支払不適切
茨城県 日立市ほか38市区町村等(2) 2,185 157,809 86,956 特定入院料及び入院時食事療養費の支払不適切
埼玉県 鴻巣市ほか90市区町村等(4) 3,216 227,044 125,154 特定入院料及び処置料の支払不適切
千葉県 松戸市ほか18市区町等(1) 543 58,490 31,935 特定入院料の支払不適切
東京都 武蔵野市ほか2市区(1) 187 4,784 1,669 特定入院料及び入院環境料の支払不適切
神奈川県 横須賀市ほか50市区町等(1) 986 30,456 17,892
長野県 長野市ほか12市町村等(1) 192 76,597 41,650 特定入院料の支払不適切
大阪府 大阪市ほか19市町等(3) 1,169 109,667 73,904
兵庫県 尼崎市ほか11市町等(1) 427 3,991 2,211
香川県 丸亀市ほか35市区町等(3) 580 31,100 16,653 特定入院料及び入院時食事療養費の支払不適切
福岡県 飯塚市ほか29市町等(2) 691 30,712 19,117 特定入院料の支払不適切
沖縄県 那覇市ほか19市町村等(1) 1,292 102,936 62,620
 小計 288市区町村等(21) 11,519 850,529 490,475
 小計欄の実施主体数は、都道府県の間で実施主体が重複することがあるため、各都道府県の実施主体数を合計したものとは符合しないことがある。

〔2〕 看護料の支払が適切を欠いたもの

(看護料の算定方法)

 看護料は、入院料の一部であり、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められている。この看護料には、都道府県知事への届出を行い厚生大臣の定める基準に適合する看護を行った場合に算定する新看護料、基準看護料等と、これら以外の看護を行った場合に算定する看護料とがある。
 そして、新看護料、基準看護料等は、看護職員の数が入院患者数に対して所定の割合以上であること、看護職員の数に占める看護婦の数が所定の割合以上であることなどの要件を満たす旨の都道府県知事への届出を行った場合、それぞれの区分ごとに所定の点数を算定することとされている。
 新看護料のうち、看護補助加算は、看護補助者の数が入院患者数に対して所定の割合以上であること、また、看護(B)の加算は、看護職員の数に占める看護婦の数が所定の割合以上であることの要件を満たす旨の都道府県知事への届出を行った場合に算定することとされており、このうち看護補助加算は、新看護料の区分ごとに上限が定められた点数を算定することとされている。
 さらに、一部の看護料については、患者の入院期間が一定の日数を超えた場合、その点数は超える以前の点数より低く定められている。
 このほか、一般病棟に入院している老人の患者であって、6月を超える期間入院していて症状が安定している患者(以下「特定長期入院患者」という。)の場合は、それ以外の患者の場合よりも低い点数の看護料が定められている。また、特定長期入院患者については、看護補助加算は算定できないこととされている。

(検査の結果)

 検査の結果、北海道札幌市ほか32市町に所在する38医療機関において、看護料等の請求が適正とは認められないものが20,504件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 看護職員の数又は看護婦の数が所定の割合以上であることの要件を満たしていなかったり、都道府県知事への届出を行っていなかったりしているのに、点数の高い区分の新看護料、基準看護料等の点数を算定していた。
(イ) 看護補助者の数又は看護婦の数が所定の割合以上であることの要件を満たしていないのに、点数の高い区分の看護補助加算の点数を算定したり、看護(B)の加算を算定したりしていた。
(ウ) 新看護料について、定められた上限の点数を超えた看護補助加算を算定していた。
(エ) 患者の入院期間が一定の日数を超えているのに、その場合の低く定められた点数によらずに看護料を算定していた。
(オ) 特定長期入院患者について、その場合の低く定められた点数によらずに看護料を算定したり、看護補助加算を算定したりしていた。
 このため、上記20,504件の請求に対し北海道札幌市ほか458市区町村等が支払った医療費について250,014,718円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額140,512,992円は負担の要がなかったものである。
 これを医療機関の所在する道府県別に示すと次のとおりである。

道府県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要
千円 千円
北海道 札幌市ほか1町(1) 21 2,704 1,440 看護料の支払不適切
青森県 青森市ほか44市町村等(1) 620 22,473 12,879
秋田県 本荘市ほか3町(1) 65 2,428 1,458
福島県 いわき市ほか47市区町村等(4) 1,453 15,051 9,678 看護料、初診料等の支払不適切
群馬県 吾妻郡中之条町ほか40市区町村等(2) 1,223 54,291 30,683 看護料の支払不適切
千葉県 木更津市ほか167市区町村等(9) 9,447 49,742 25,102 看護料及び入院時医学管理料の支払不適切
神奈川県 相模原市ほか31市区町等(2) 588 10,413 5,472 看護料の支払不適切
富山県 高岡市ほか22市町村等(1) 1,363 11,685 6,375 看護料及びリハビリテーション料の支払不適切
長野県 松本市ほか3市村(1) 47 1,537 810 看護料及び処置料の支払不適切
愛知県 犬山市ほか34市町等(4) 1,592 11,589 6,637 看護料の支払不適切
大阪府 堺市ほか8市(2) 121 6,998 4,112 看護料及び注射料の支払不適切
兵庫県 赤穂市ほか9市町(2) 555 6,366 2,468 看護料の支払不適切
香川県 丸亀市ほか7市町等(2) 515 8,224 3,635
福岡県 福岡市ほか71市町村等(5) 2,705 44,969 28,993
沖縄県 中頭郡読谷村ほか8市村等(1) 189 1,537 764 看護料及び処置料の支払不適切
 小計 459市区町村等(38) 20,504 250,014 140,512

〔3〕 入院環境料の支払が適切を欠いたもの

(入院環境料の算定方法)

 入院環境料は、入院料の一部であり、入院中の療養環境を総合的に評価するもので、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められている。
 そして、厚生大臣が定める施設基準に適合しているものとして都道府県知事に届け出た医療機関において、療養病棟等に患者を入院させた場合、届出に係る療養型病床群療養環境加算、療養環境加算等の点数を算定することとされている。ただし、これら加算の多くは、医師の数が標準人員を満たしていない場合には算定できないこととされている。
 また、療養環境加算は、患者の選定に係る特別の病室に入院している患者については算定できないこととされている。
 さらに、厚生大臣が定める地域区分による地域に所在する医療機関に入院している患者については、当該地域区分ごとに所定の点数を地域加算として算定することとされている。

(検査の結果)

 検査の結果、福島県相馬郡小高町ほか26市町に所在する28医療機関において、入院環境料等の請求が適正とは認められないものが22,440件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 医師の数が標準人員を満たしていないのに、療養型病床群療養環境加算等を算定していた。
(イ) 都道府県知事への届出を行っていないのに、療養型病床群療養環境加算等を算定していた。
(ウ) 患者の選定に係る特別の病室に入院している患者について、療養環境加算を算定していた。
(エ) 当該地域区分の点数とは異なる高い点数の地域加算を算定していた。
 このため、上記22,440件の請求に対し福島県相馬郡小高町ほか353市区町村等が支払った医療費について224,468,029円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額134,988,201円は負担の要がなかったものである。
 これを医療機関の所在する県別に示すと次のとおりである。

県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要
千円 千円
福島県 相馬郡小高町ほか30市町村等(3) 1,834 21,734 14,950 入院環境料の支払不適切
茨城県 常陸太田市ほか28市区町村等(3) 2,855 14,619 7,411
埼玉県 蕨市ほか29市区町村等(3) 1,200 15,883 9,896 入院環境料及び画像診断料の支払不適切
千葉県 山武郡大網白里町ほか22市区町村等(1) 628 11,415 5,121 入院環境料及び処置料の支払不適切
神奈川県 厚木市ほか37市区町等(2) 2,287 4,338 2,238 入院環境料の支払不適切
富山県 富山市ほか11市町等(2) 714 3,702 2,305
長野県 飯田市ほか38市区町村等(2) 1,353 24,525 18,288
滋賀県 大津市ほか17市町等(2) 556 4,066 2,528
兵庫県 伊丹市ほか15市町等(1) 810 17,898 7,442
奈良県 北葛城郡上牧町ほか49市町村等(1) 794 3,736 2,139
山口県 徳山市ほか17市町等(1) 1,015 26,069 14,136
香川県 綾歌郡国分寺町ほか5市町等(1) 124 2,895 1,679
福岡県 甘木市ほか67市町村等(4) 7,551 70,171 44,730
佐賀県 唐津市ほか18市町村等(1) 365 1,134 744 入院環境料及び検査料の支払不適切
長崎県 大村市ほか4市町等(1) 354 2,275 1,374 入院環境料の支払不適切
 小計 354市区町村等(28) 22,440 224,468 134,988

〔4〕 入院時医学管理料の支払が適切を欠いたもの

(入院時医学管理料の算定方法)

 入院時医学管理料は、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められている。そして、医療機関において、医師及び看護職員の数がいずれも標準人員に100分の80を乗じて得た数以下である場合(以下「医師看護婦不足」という。)、医師の数が標準人員に100分の50を乗じて得た数以下である場合(以下「著しい医師不足」という。)の翌月分の入院時医学管理料については、医師看護婦不足の場合、所定の点数に100分の85(10年3月までは100分の90)を、著しい医師不足の場合、所定の点数に原則として100分の70(9年3月までは100分の90)を乗じて得た点数を用いて算定することとされている。
 また、一般病棟に入院している患者の入院時医学管理料については、患者の平均在院日数が28日以内であるなどの要件を満たす旨の都道府県知事への届出を行った場合、入院初期には高い点数となる一般病棟入院時医学管理(I)を算定することとされている。そして、常勤の医師の数が病床数に対して一定の割合以上であるなどの要件を満たす旨の都道府県知事への届出を行った場合、入院時医学管理料に所定の点数を加算して算定することとされている。
 さらに、入院時医学管理料については、患者の入院期間が一定の日数を超えた場合、その点数は超える以前の点数より低く定められている。
 このほか、診療所老人医療管理料を算定する場合には、入院時医学管理料は別途に算定できないこととされている。

(検査の結果)

 検査の結果、北海道札幌市ほか24市区町村に所在する28医療機関において、入院時医学管理料等の請求が適正とは認められないものが48,885件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 医師看護婦不足又は著しい医師不足であるのに、入院時医学管理料について所定の減額をしないで算定していた。
(イ) 都道府県知事への届出を行っていないのに、一般病棟入院時医学管理(I)を算定していた。
(ウ) 常勤の医師の数が病床数に対して一定の割合以上でなかったり、算定対象である一般病棟に患者が入院していなかったりしているのに、入院時医学管理料の加算を算定していた。
(エ) 患者の入院期間が一定の日数を超えているのに、その場合の低く定められた点数によらずに入院時医学管理料を算定していた。
(オ) 診療所老人医療管理料を算定しているのに、入院時医学管理料を別途に算定していた。
 このため、上記48,885件の請求に対し北海道札幌市ほか644市区町村等が支払った医療費について214,340,665円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額128,434,820円は負担の要がなかったものである。
 これを医療機関の所在する都道府県別に示すと次のとおりである。

都道府県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要
千円 千円
北海道 札幌市ほか17市町(1) 334 2,693 1,599 入院時医学管理料の支払不適切
青森県 八戸市ほか57市町村等(3) 2,256 16,608 10,360 入院時医学管理料及び看護料の支払不適切
秋田県 南秋田郡天王町ほか10市町村等(1) 2,034 9,306 6,064 入院時医学管理料の支払不適切
埼玉県 東松山市ほか142市区町村等(2) 5,892 36,643 17,247
千葉県 木更津市ほか85市区町村等(3) 3,455 24,662 14,486 入院時医学管理料、看護料等の支払不適切
東京都 足立区ほか21市区町等(1) 404 1,306 814 入院時医学管理料の支払不適切
神奈川県 横浜市ほか67市区町等(3) 3,340 14,928 8,345 入院時医学管理料及び看護料の支払不適切
富山県 富山市ほか34市町村等(1) 1,170 5,608 3,736 入院時医学管理料の支払不適切
長野県 上田市ほか14市区町村等(2) 439 3,975 2,208
岐阜県 益田郡小坂町ほか9市町等(1) 473 2,055 1,385
大阪府 岸和田市ほか5市町等(1) 65 2,195 1,499 入院時医学管理料、看護料等の支払不適切
兵庫県 神戸市ほか75市区町等(4) 5,253 21,262 12,355 入院時医学管理料及び看護料の支払不適切
香川県 丸亀市ほか59市町等(2) 1,854 11,169 8,318 入院時医学管理料の支払不適切
佐賀県 武雄市ほか11市町等(1) 501 7,566 5,284 入院時医学管理料等の支払不適切
長崎県 大村市ほか174市区町村等(1) 21,398 53,264 33,900 入院時医学管理料及び検査料の支払不適切
沖縄県 宜野湾市ほか2町村(1) 17 1,092 826 入院時医学管理料、入院環境料等の支払不適切
 小計 645市区町村等(28) 48,885 214,340 128,434

〔5〕 リハビリテーション料の支払が適切を欠いたもの

(リハビリテーション料の算定方法)

 リハビリテーション料は、理学療法、作業療法等の種類ごとに1日につき所定の点数が定められている。そして、理学療法は基本的動作能力の回復を図るために、作業療法は応用的動作能力等の回復を図るために、いずれも個々の症例に応じて行うこととなっている。
 また、理学療法士又は作業療法士が所定の数以上勤務していることなどの厚生大臣が定める施設基準に適合しているものとして都道府県知事に届け出た医療機関において、理学療法又は作業療法を行った場合、その届出に係る理学療法又は作業療法の点数を算定することとされている。
 さらに、理学療法には、回復訓練の内容に応じて複雑なものと簡単なものがあり、複雑なものを実施した場合には、簡単なものより高い点数を算定することとされている。

(検査の結果)

 検査の結果、北海道石狩市ほか17市に所在する20医療機関において、リハビリテーション料等の請求が適正とは認められないものが27,654件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 多くの入院患者等に対して理学療法を毎月画一的に実施して理学療法料を算定したり、理学療法に該当しない消炎鎮痛処置について理学療法料を算定したりしていた。
(イ) 理学療法士又は作業療法士が所定の数以上勤務していなかったり、都道府県知事への届出を行っていなかったりしているのに、届出を行った場合の高い点数の理学療法料又は作業療法料を算定していた。
(ウ) 理学療法の簡単なものを行っているのに、複雑なものを行った場合の高い点数の理学療法料を算定していた。
 このため、上記27,654件の請求に対し北海道石狩市ほか238市区町村等が支払った医療費について189,862,075円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額109,825,387円は負担の要がなかったものである。
 これを医療機関の所在する道府県別に示すと次のとおりである。

道府県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要
千円 千円
北海道 石狩市ほか11市町村等(1) 2,117 8,356 4,322 リハビリテーション料の支払不適切
青森県 八戸市ほか21市町村等(1) 588 15,042 8,790
福島県 喜多方市ほか13市町村等(1) 1,407 13,000 8,473
埼玉県 浦和市ほか28市区町等(1) 2,902 12,925 5,429
千葉県 佐原市ほか25市町村等(1) 2,724 10,490 5,048 リハビリテーション料及び入院環境料の支払不適切
神奈川県 川崎市ほか26市区町(2) 2,700 7,188 3,596 リハビリテーション料の支払不適切
富山県 下新川郡入善町ほか38市町村等(4) 5,375 34,417 22,828
愛知県 名古屋市ほか19市区町等(2) 4,142 59,861 36,252
大阪府 大阪狭山市ほか18市区村(3) 2,107 15,382 7,878 リハビリテーション料及び処置料の支払不適切
兵庫県 神戸市ほか30市町等(2) 2,931 10,845 6,125 リハビリテーション料の支払不適切
佐賀県 鳥栖市ほか15市区町(1) 489 1,120 524
沖縄県 中頭郡読谷村ほか10市町等(1) 172 1,231 555
 小計 239市区町村等(20) 27,654 189,862 109,825

〔6〕 処置料の支払が適切を欠いたもの

(処置料の算定方法)

 処置料は、一般処置料、皮膚科処置料等があり、それぞれの処置ごとに所定の点数が定められており、処置に当たって薬剤を使用した場合は、その購入価格を10円で除するなどした薬剤料の点数を合算して算定することとされている。そして、処置は必要の程度において行い、みだりにこれを行ってはならないこととされている。
 一般処置料の酸素吸入等に酸素を使用した場合は、その購入価格を10円で除して得た点数を加算することとされている。
 また、外来患者に対する人工腎臓に係る処置料には、一定の薬剤の費用が含まれていることから、これを別途に算定できないこととされている。ただし、厚生大臣が特に認める場合に該当する場合は、「人工腎臓(その他の場合)」として薬剤の費用を別途に算定することとされている。そして、著しく人工腎臓の実施が困難な障害者等に対して人工腎臓を実施した場合は障害者加算を算定することとされている。
 さらに、老人病棟等の入院患者に対して行う皮膚科軟膏処置等については、入院期間が1年を超える場合、1年以内の場合よりも低い点数の処置料が定められている。
 このほか、特別養護老人ホームほか8施設(注) (以下「老人ホーム等」という。)の職員が入所者に行った処置は、処置料として算定できないこととされている。

(注)  特別養護老人ホームほか8施設 特別養護老人ホーム、養護老人ホーム(定員111名以上の場合)、身体障害者療護施設、重度身体障害者更生援護施設、救護施設(定員111名以上の場合)、知的障害者更生施設(定員150名以上の場合)、知的障害者授産施設(定員150名以上の場合)、乳児院(定員100名以上の場合)及び情緒障害児短期治療施設

(検査の結果)

 検査の結果、北海道札幌市ほか32市区町に所在する41医療機関において、処置料等の請求が適正とは認められないものが19,708件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 多くの入院患者に対して皮膚科軟膏処置を毎月画一的に実施して処置料を算定していた。
(イ) 酸素吸入等に使用した酸素の購入価格を過大に算定していた。
(ウ) 外来患者に対する人工腎臓に係る処置料について、処置料に含まれる薬剤料を別途に算定したり、厚生大臣が特に認める場合に該当していないのに「人工腎臓(その他の場合)」として薬剤料を別途に算定して処置料を高く算定したりしていた。また、著しく人工腎臓の実施が困難な障害者等に該当していないのに障害者加算を算定していた。
(エ) 人工腎臓の処置に使用される薬剤について、実際よりも多い使用量により薬剤料を算定したり、薬剤の購入価格を高い価格で算定したりしていた。
(オ) 老人病棟等の入院患者に対して行った皮膚科軟膏処置等について、入院期間が1年を超えているのに、その場合の低く定められた点数によらずに処置料を算定していた。
(カ) 特別養護老人ホームの職員が入所者に行った創傷処置等を処置料として算定していた。
 このため、上記19,708件の請求に対し北海道札幌市ほか407市区町村等が支払った医療費について145,157,322円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額82,628,261円は負担の要がなかったものである。
 これを医療機関の所在する都道府県別に示すと次のとおりである。

都道府県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要
千円 千円
北海道 札幌市ほか120市区町村等(6) 3,185 27,960 15,468 処置料の支払不適切
青森県 五所川原市ほか31市町村等(3) 1,615 24,251 12,443 処置料及び検査料の支払不適切
秋田県 湯沢市ほか48市町村等(2) 5,222 7,867 5,295 処置料の支払不適切
山形県 山形市ほか8市町等(1) 146 5,980 4,518
福島県 郡山市ほか43市区町村等(8) 1,528 17,888 10,269
群馬県 伊勢崎市ほか5市町村(1) 79 1,214 880
埼玉県 川口市ほか64市区町村等(2) 1,944 15,069 9,943 処置料及び看護料の支払不適切
東京都 足立区ほか59市区町村等(2) 2,282 6,034 3,033 処置料及び入院時食事療養費の支払不適切
神奈川県 横浜市ほか10市区等(1) 173 1,619 856 処置料の支払不適切
富山県 小矢部市ほか11市町等(2) 311 3,507 2,334 処置料、再診料等の支払不適切
愛知県 刈谷市ほか8市町等(1) 338 1,441 731 処置料の支払不適切
滋賀県 栗太郡栗東町ほか16市町等(2) 424 4,934 1,960
大阪府 大阪狭山市ほか29市町等(6) 1,516 14,527 7,935 処置料及び検査料の支払不適切
兵庫県 姫路市ほか9市町(1) 510 4,009 2,143 処置料の支払不適切
奈良県 生駒市ほか10市町等(1) 184 1,406 695
福岡県 北九州市ほか7市町等(1) 225 2,506 1,584
長崎県 佐世保市ほか1町(1) 26 4,938 2,531
 小計 408市区町村等(41) 19,708 145,157 82,628

〔7〕 初診料・再診料の支払が適切を欠いたもの

(初診料・再診料の算定方法)

 初診料は、患者の傷病について医学的に初診といわれる医師の診療行為があった場合に、再診料はその後の診療行為の都度それぞれ算定することとされている。
 ただし、老人ホーム等に配置されている医師(以下「配置医師」という。)がこれら施設の入所者に行っている診療については、その診療が別途国の補助事業として実施されている老人福祉施設保護事業等の一環として行われているものであることから、初診料、再診料は算定できないこととされている。
 また、歯科診療においては、著しく診療が困難な障害者に対して初診又は再診を行った場合は、所定の点数に障害者加算を算定することとされている。

(検査の結果)

検査の結果、北海道北見市ほか38市町村に所在する49医療機関において、初診料、再診料等の請求が適正とは認められないものが46,721件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 配置医師が特別養護老人ホーム、身体障害者療護施設等の入所者に行った診療について、初診料、再診料を算定していた。
(イ) 配置医師でない医師が、特別養護老人ホーム等の入所者からの往診の求めによってではなく、定期的に特別養護老人ホーム等に赴いて入所者の診療に当たっている場合、その医師は実質的には配置医師と認められるのに、初診料、再診料を算定していた。
(ウ) 歯科診療において、著しく診療が困難な障害者に該当していないのに障害者加算を算定していた。
 このため、上記46,721件の請求に対し北海道北見市ほか446市区町村等が支払った医療費について150,019,461円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額75,086,448円は負担の要がなかったものである。
 これを医療機関の所在する道府県別に示すと次のとおりである。

道府県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要
千円 千円
北海道 北見市ほか28市町村等(2) 1,205 6,176 2,899 初診料、再診料等の支払不適切
青森県 南津軽郡浪岡町ほか14市町村等(2) 621 4,262 2,131
福島県 西白河郡西郷村ほか34市町村等(4) 3,279 9,123 4,579
茨城県 鹿嶋市ほか5市町村等(1) 990 6,585 3,499
群馬県 高崎市ほか23市町村等(1) 358 1,082 587
埼玉県 川越市ほか82市区町村等(10) 6,896 23,945 10,631
千葉県 袖ヶ浦市ほか52市区町村等(2) 6,479 12,440 5,485
神奈川県 横須賀市ほか17市町等(2) 2,195 6,482 2,844
富山県 高岡市ほか5市(1) 769 1,029 584
愛知県 小牧市ほか28市町等(3) 3,849 11,336 6,076 初診料及び再診料の支払不適切
大阪府 寝屋川市(1) 1,054 3,569 1,680 初診料、再診料等の支払不適切
兵庫県 神戸市ほか61市町村等(7) 10,352 33,336 17,506
奈良県 生駒市ほか4市等(1) 1,276 2,313 1,156
島根県 江津市ほか18市町村等(1) 829 6,395 3,322 再診料及びリハビリテーション料の支払不適切
山口県 下関市ほか19市町等(1) 509 1,388 655 初診料、再診料等の支払不適切
香川県 坂出市ほか13市町等(2) 1,223 5,793 3,082
福岡県 飯塚市ほか24市町等(6) 2,996 8,819 5,081
佐賀県 佐賀市ほか21市町村等(1) 1,086 3,802 1,994 再診料の支払不適切
沖縄県 島尻郡豊見城村ほか10市町村(1) 755 2,136 1,287 初診料及び再診料の支払不適切
 小計 447市区町村等(49) 46,721 150,019 75,086

〔8〕 画像診断料の支払が適切を欠いたもの

(画像診断料の算定方法)

 画像診断料には、エックス線診断料、コンピューター断層撮影診断料等があり、それぞれの種類ごとに所定の点数が定められている。そして、診療の一般的方針として、医師の診療は、その必要性があると認められる疾病に対して妥当適切に行うこととされている。
 また、入院期間が1年を超える老人病棟等の入院患者に対してコンピューター断層撮影を行った場合の画像診断料は、特に必要があると認められる場合を除き、3月に1回に限り算定することとされている。
 さらに、画像診断管理加算は、厚生大臣が定める施設基準に適合しているものとして都道府県知事に届け出た医療機関において算定することとされている。

(検査の結果)

 検査の結果、北海道北広島市ほか8市区に所在する9医療機関において、画像診断料等の請求が適正とは認められないものが21,750件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 多くの入院患者等に対してエックス線撮影等を毎月画一的に実施して画像診断料を算定していた。
(イ) 入院期間が1年を超える老人病棟等の入院患者に対して、3月に1回の制限を超えてコンピューター断層撮影を実施して画像診断料を算定していた。
(ウ) 都道府県知事への届出を行っていないのに、画像診断管理加算を算定していた。
 このため、上記21,750件の請求に対し北海道札幌市ほか270市区町村等が支払った医療費について106,047,228円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額52,016,971円は負担の要がなかったものである。
 これを医療機関の所在する都道県別に示すと次のとおりである。

都道県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要
千円 千円
北海道 札幌市ほか39市区町村等(1) 4,875 9,615 6,455 画像診断料の支払不適切
青森県 弘前市ほか49市区町村等(1) 6,639 2,181 1,433
茨城県 つくば市ほか26市町村(1) 1,042 75,244 33,757
埼玉県 所沢市ほか132市区町村等(1) 8,046 4,187 2,265
千葉県 松戸市ほか11市区(1) 231 2,593 871
東京都 江戸川区ほか15市町村等(1) 205 3,230 1,862
神奈川県 横浜市ほか4市(1) 78 1,746 940
滋賀県 彦根市ほか24市町(1) 445 5,153 3,035 画像診断料及び処置料の支払不適切
福岡県 久留米市ほか3町(1) 189 2,095 1,396 画像診断料の支払不適切
 小計 271市区町村等(9) 21,750 106,047 52,016

〔9〕 指導管理料の支払が適切を欠いたもの

(指導管理料の算定方法)

 指導管理料のうち、老人慢性疾患生活指導料、老人慢性疾患外来総合診療料等は、配置医師が老人ホーム等の入所者に行っている診療の場合、前記〔7〕 のとおり、その診療が別途国の補助事業の一環として行われているものであることから算定できないこととされている。
 また、指導管理料のうち老人慢性疾患生活指導料等については、許可病床数が200床以上の病院においては算定できないこととされている。

(検査の結果)

 検査の結果、秋田県由利郡象潟町ほか15市区町村に所在する19医療機関において、指導管理料等の請求が適正とは認められないものが16,363件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 配置医師が特別養護老人ホーム等の入所者に行った診療について、老人慢性疾患生活指導料、老人慢性疾患外来総合診療料等を算定していた。
(イ) 配置医師でない医師が、特別養護老人ホームの入所者からの往診の求めによってではなく、定期的に特別養護老人ホームに赴いて入所者の診療に当たっている場合、その医師は実質的には配置医師と認められるのに、老人慢性疾患外来総合診療料等を算定していた。
(ウ) 許可病床数が200床以上の病院であるのに、老人慢性疾患生活指導料等を算定していた。
 このため、上記16,363件の請求に対し秋田県由利郡象潟町ほか136市区町村等が支払った医療費について93,177,380円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額45,050,531円は負担の要がなかったものである。
 これを医療機関の所在する都県別に示すと次のとおりである。

都県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要
千円 千円
秋田県 由利郡象潟町ほか10市町等(1) 900 8,373 5,247 指導管理料、再診料等の支払不適切
茨城県 鹿嶋市ほか13市区町村(2) 412 4,894 1,730
群馬県 桐生市ほか5市町村(1) 669 3,221 1,572
埼玉県 和光市ほか7市町(2) 1,108 14,944 6,791
千葉県 柏市ほか18市町村等(3) 2,109 15,321 6,430
東京都 世田谷区ほか2市区(1) 1,218 13,917 5,883
神奈川県 横浜市ほか14市町等(1) 642 1,243 611 指導管理料の支払不適切
富山県 富山市ほか7市町等(1) 560 2,083 1,559 指導管理料、再診料等の支払不適切
滋賀県 野洲郡野洲町ほか46市町等(1) 5,645 5,288 2,640
兵庫県 神戸市ほか2市(5) 2,692 19,920 9,605
香川県 高松市ほか7市等(1) 408 3,969 2,976
 小計 137市区町村等(19) 16,363 93,177 45,050

〔10〕 入院時食事療養費の支払が適切を欠いたもの

(入院時食事療養費の算定方法)

 入院時食事療養費のうち、入院時食事療養(I)は、医療機関が都道府県知事への届出を行い、厚生大臣が定める基準に適合する食事療養を行った場合に算定することとされている。そして、上記の医療機関において、常勤の管理栄養士が配置されていることなどの要件を満たす旨の都道府県知事への届出を行った場合、特別管理加算を算定することとされている。
 また、入院時食事療養(I)の届出を行った医療機関において、所定の要件を満たしている食堂において食事療養を行った場合には、食堂加算を算定することとされているが、食堂の設置が要件とされている精神療養病棟入院料等を算定する場合には、食堂加算は別途に算定できないこととされている。

(検査の結果)

 検査の結果、北海道札幌市ほか12市町に所在する15医療機関において、入院時食事療養費等の請求が適正とは認められないものが25,025件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 常勤の管理栄養士が配置されていないのに、特別管理加算を算定していた。
(イ) 精神療養病棟入院料等を算定しているのに、食堂加算を別途に算定していた。
 このため、上記25,025件の請求に対し北海道札幌市ほか306市区町村等が支払った医療費について48,101,120円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額27,634,549円は負担の要がなかったものである。
 これを医療機関の所在する道府県別に示すと次のとおりである。

道府県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要
千円 千円
北海道 札幌市ほか25市区町村等(2) 2,303 3,344 2,032 入院時食事療養費の支払不適切
福島県 福島市ほか16市町村等(1) 876 1,212 670
茨城県 新治郡八郷町ほか76市区町村等(2) 3,055 4,539 2,568
神奈川県 藤沢市ほか62市区町村等(2) 742 2,302 1,172
富山県 婦負郡八尾町ほか55市区町村等(3) 8,162 19,454 11,298
大阪府 大阪市ほか25市区等(2) 2,743 4,040 2,185
兵庫県 神戸市ほか3市町等(1) 868 1,207 632 入院時食事療養費の支払不適切
奈良県 奈良市ほか70市町村等(1) 4,952 10,081 6,038 入院時食事療養費及び精神科専門療法料の支払不適切
佐賀県 多久市ほか17市町等(1) 1,324 1,918 1,036 入院時食事療養費の支払不適切
 小計 307市区町村等(15) 25,025 48,101 27,634

〔11〕 在宅医療料の支払が適切を欠いたもの

(在宅医療料の算定方法)

 在宅医療料のうち、寝たきり老人在宅総合診療料は、厚生大臣が定める施設基準に適合しているものとして都道府県知事に届け出た医療機関が、1月に2回以上患家を訪問して在宅寝たきり老人等に対して診療を行った場合、所定の点数を算定することとされている。また、寝たきり老人在宅総合診療料の24時間連携体制加算は、厚生大臣が定める施設基準に適合しているものとして都道府県知事に届け出た医療機関において所定の点数を算定することとされている。
 そして、往診料は、同一の患家で2人以上の患者を診療した場合、2人目以降の患者については算定できないこととされている。
 さらに、在宅人工呼吸指導管理料は、同一の患者について2以上の医療機関が指導管理を行っている場合、主たる指導管理を行っている医療機関において算定することとされている。

(検査の結果)

 検査の結果、秋田県湯沢市ほか13市町に所在する14医療機関において、在宅医療料等の請求が適正とは認められないものが2,774件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 患家を訪問して診療を行っていないのに、寝たきり老人在宅総合診療料を算定していた。
(イ) 都道府県知事への届出を行っていないのに、24時間連携体制加算を算定していた。
(ウ) 同一患家で診療した2人目以降の患者について、往診料を算定していた。
(エ) 2医療機関が指導管理を行っている患者について、主たる指導管理を行っていないのに、在宅人工呼吸指導管理料を算定していた。
 このため、上記2,774件の請求に対し秋田県湯沢市ほか23市区町が支払った医療費について55,366,924円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額27,141,446円は負担の要がなかったものである。
 これを医療機関の所在する県別に示すと次のとおりである。

県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要
千円 千円
秋田県 湯沢市ほか1町(1) 149 2,384 1,846 在宅医療料の支払不適切
福島県 須賀川市(1) 111 7,338 4,090 在宅医療料、初診料等の支払不適切
群馬県 前橋市ほか2市(2) 212 3,392 1,642 在宅医療料の支払不適切
埼玉県 大宮市ほか2市(2) 740 11,840 5,639
千葉県 千葉市ほか2町(1) 161 2,576 1,273
神奈川県 秦野市ほか2市区(1) 400 6,868 2,052
愛知県 春日井市ほか2市町(2) 494 8,279 3,368
香川県 高松市ほか3町(2) 394 8,511 5,033
長崎県 大村市(1) 91 1,456 742
沖縄県 那覇市(1) 22 2,721 1,452
 小計 24市区町(14) 2,774 55,366 27,141

〔12〕 精神科専門療法料の支払が適切を欠いたもの

(精神科専門療法料の算定方法)

 精神科専門療法料は、入院精神療法、通院精神療法等の種類ごとに1日又は1回につき所定の点数が定められている。そして、入院精神療法については、算定できる回数は妥当と認められる限度に止めるべきこととされており、このうち、入院精神療法(II)は、患者の入院期間が4週間を超える場合には、原則として週1回を限度として算定することとされている。
 また、通院精神療法は、配置医師が老人ホーム等の入所者に行っている診療の場合、前記〔7〕 のとおり、その診療が別途国の補助事業の一環として行われているものであることから算定できないこととされている。

(検査の結果)

 検査の結果、秋田県大館市ほか6市町に所在する7医療機関において、精神科専門療法料等の請求が適正とは認められないものが18,948件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 入院期間が4週間を超える多くの患者に対して入院精神療法(II)を毎月画一的に週2回実施して精神科専門療法料を算定していた。
(イ) 配置医師が情緒障害児短期治療施設の入所者に行った診療について、通院精神療法を算定していた。
 このため、上記18,948件の請求に対し秋田県大館市ほか96市区町村等が支払った医療費について40,673,182円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額23,195,897円は負担の要がなかったものである。
 これを医療機関の所在する都府県別に示すと次のとおりである。

都府県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要
千円 千円
秋田県 大館市ほか9市町等(1) 1,002 5,525 3,074 精神科専門療法料、投薬料等の支払不適切
東京都 三鷹市ほか9市区等(1) 901 2,234 1,360 精神科専門療法料の支払不適切
神奈川県 横浜市ほか3市等(1) 237 2,047 1,120 精神科専門療法料及び再診料の支払不適切
大阪府 大阪市ほか76市区町村等(4) 16,808 30,865 17,639 精神科専門療法料の支払不適切
 小計 97市区町村等(7) 18,948 40,673 23,195

〔13〕 検査料の支払が適切を欠いたもの

(検査料の算定方法)

 検査料には、血液化学検査等の検体検査料、心電図検査等の生体検査料等があり、それぞれの種類ごとに所定の点数が定められている。そして、健康診断は、医療給付の対象として行ってはならないこととされている。
 また、検査は、治療方針の決定に必要な限度で行うこととし、診療上必要があると認められる範囲内において選択して行うこと、同一の検査はみだりに反復して行ってはならないこととされている。
 さらに、検体検査料のうち一定の血液化学検査料については、それらの検体について10項目以上の検査を一括して行った場合は、項目の種類によらず、上限として定められた点数で算定することなどとされている。
 このほか、厚生大臣が定める施設基準に適合しているものとして都道府県知事に届け出た医療機関において、入院中の患者に対して検体検査を行った場合、所定の点数に検体検査管理加算を算定することとされている。

(検査の結果)

 検査の結果、山形県最上郡大蔵村ほか13市区町に所在する14医療機関において、検査料等の請求が適正とは認められないものが16,430件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 健康診断として行った検体検査を診療報酬として算定していた。
(イ) 多くの入院患者等に対して検体検査、生体検査を画一的に実施して検査料を算定していた。
(ウ) 多くの入院患者に対して、毎月、10項目以上の血液化学検査を実施するに当たり、検査を一括して行うことができるのに2回に分けて実施することなどにより、上限として定められた点数によらずにその都度検査料を算定していた。
(エ) 都道府県知事への届出を行っていないのに、検体検査管理加算を算定していた。
 このため、上記16,430件の請求に対し山形県最上郡大蔵村ほか301市区町村等が支払った医療費について42,779,875円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額22,469,001円は負担の要がなかったものである。
 これを医療機関の所在する都府県別に示すと次のとおりである。

都府県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要
千円 千円
山形県 最上郡大蔵村ほか4市町(1) 213 1,212 730 検査料及び画像診断料の支払不適切
福島県 福島市ほか47市区町村等(4) 3,940 9,183 5,144
埼玉県 岩槻市ほか8市町(2) 925 10,033 4,372 検査料の支払不適切
千葉県 八千代市ほか4市(1) 160 2,409 758 検査料、初診料等の支払不適切
東京都 世田谷区ほか50市区町村等(1) 804 1,332 666 検査料の支払不適切
神奈川県 秦野市ほか56市区町等(1) 2,044 5,704 2,825 検査料、看護料等の支払不適切
富山県 富山市ほか18市町村等(1) 956 1,375 793 検査料の支払不適切
大阪府 大阪市ほか1市(1) 486 2,107 1,239
島根県 簸川郡斐川町ほか4市町(1) 143 1,314 871 検査料、初診料等の支払不適切
福岡県 久留米市ほか128市区町村等(1) 6,759 8,107 5,067 検査料の支払不適切
 小計 302市区町村等(14) 16,430 42,779 22,469

〔14〕 投薬料、注射料の支払が適切を欠いたもの

(投薬料、注射料の算定方法)

(ア) 投薬料のうち処方せん料は、保険薬局において調剤を受けさせるために患者に処方せんを交付した場合、処方した剤数、投与量等にかかわらず、1回につき所定の点数を算定することとされている。また、薬剤料は老人ホーム等の経口摂取が困難な入所者に対して、給食に代えて栄養剤を投与した場合、これらの施設の給食等が別途国の補助事業の一環として費用が賄われていることから算定できないものである。
(イ) 注射料のうち点滴注射に係る薬剤料は、老人病棟の入院患者であって経口摂取が可能な状態にあるものに対する1日分の注射量が500mlを超える場合は、注射量に応じて減額して算定することとされている。また、ビタミン剤に係る薬剤料は、患者の疾患又は症状の原因がビタミンの欠乏であることが明らかであるなどの場合に限り算定することとされている。

(検査の結果)

 検査の結果、秋田県北秋田郡鷹巣町ほか4市に所在する5医療機関において、投薬料、注射料等の請求が適正とは認められないものが3,517件あった。その態様は次のとおりである。
(ア) 症状が安定している慢性疾患の患者について、長期にわたって投与することのできる慢性疾患の薬剤を短期間分に分けて投与するなどして、その都度処方せん料を算定したり、特別養護老人ホームの経口摂取が困難な入所者に対して、給食に代えて投与した栄養剤について薬剤料を算定したりしていた。
(イ) 老人病棟の入院患者であって経口摂取が可能な状態にあるものに対して行った点滴注射の1日分の注射量が500mlを超えているのに、薬剤料を減額しないまま算定したり、多くの患者に対してビタミン剤を毎月画一的に投与して薬剤料を算定したりしていた。
 このため、上記3,517件の請求に対し秋田県北秋田郡鷹巣町ほか26市町等が支払った医療費について19,999,695円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額9,661,414円は負担の要がなかったものである。
 これを医療機関の所在する県別に示すと次のとおりである。

県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要
千円 千円
秋田県 北秋田郡鷹巣町ほか5市町等(2) 1,079 10,093 4,966 投薬料、初診料等の支払不適切
福島県 原町市ほか1市(1) 413 1,340 953 注射料及び指導管理料の支払不適切
茨城県 つくば市ほか10市町(1) 1,238 2,358 974 投薬料、検査料等の支払不適切
兵庫県 神戸市ほか7市町(1) 787 6,207 2,767 注射料の支払不適切
 小計 27市町等(5) 3,517 19,999 9,661
〔1〕〜〔14〕の計 1,672市区町村等(308) 302,238 2,430,537 1,369,121