会計名及び科目 | 一般会計 (組織)厚生本省 (項)老人福祉費 |
部局等の名称 | 北海道ほか19都府県 |
国庫負担の根拠 | 老人福祉法(昭和38年法律第133号) |
補助事業者 (事業主体) |
市23、特別区4、町11、計38市区町 |
国庫負担対象事業 | 老人福祉施設保護事業 |
国庫負担対象事業の概要 | 老人の健康保持等のため、養護を必要とする老人を特別養護老人ホーム等に入所させ養護するもの |
上記に対する国庫負担金交付額の合計 | 31,874,228,554円 | (平成10年度) |
不当と認める国庫負担金交付額 | 59,691,218円 | (平成10年度) |
1 負担金の概要
老人福祉施設保護費負担金は、老人の健康の保持及び生活の安定を図り老人の福祉に資するため、市町村(特別区を含む。)が、身体上又は精神上の理由等により居宅において必要な養護を受けることが困難な老人を特別養護老人ホーム又は養護老人ホーム(以下「老人ホーム」という。)に入所させ養護する場合に、その費用の一部を国が負担するものである。
そして、この負担金の各事業主体に対する交付額は、次のとおり算定することとなっている。
この費用の額及び徴収金の額は、次のとおり算定することとなっている。
(ア) 費用の額は、国の交付基準により、老人ホームを運営するための事務費(老人ホームの所在地域、入所定員等の別に応じて入所した老人1人当たり月額で定められている。)と入所した老人の生活費(地域別に1人当たり月額で定められている。)とを加えた額に入所人員を乗じて年間の施設ごとの額を算出し、これに移送費等を加えて算定する。
(イ) 徴収金の額は、国の徴収基準により、入所した老人の前年の収入から租税、社会保険料、医療費等の必要経費を控除したもの(以下「対象収入」という。)に応じて定められている額と、その老人の主たる扶養義務者の前年分の所得税額等に応じて定められている額とを加えて算定する。
ただし、入所した老人の4月から6月までの徴収金の額の算定に当たっては、入所した老人の前々年の対象収入に応じて、また、主たる扶養義務者の4月から7月までの徴収金の額の算定に当たっては、原則として主たる扶養義務者の前々年分の所得税額等に応じて定められている額による。
2 検査の結果
北海道ほか22都府県の岩見沢市ほか141事業主体について検査したところ、北海道ほか19都府県の網走郡美幌町ほか37事業主体では、徴収金の額の算定が次のとおり適切でなかった。
すなわち、上記の38事業主体では、老人の収入を誤認するなどして対象収入を過小に算定したり、徴収金の額を決定するに当たり国の徴収基準ではなく独自の徴収基準を適用したり、徴収金の額の集計を誤ったりなどして、徴収金の額を過小に算定していた。
このため国庫負担対象事業費が過大に精算されていて、国庫負担金59,691,218円が不当と認められる。
上記の徴収金の額を過小に算定していた事態について一例を示すと次のとおりである。
<事例> 老人の対象収入を過小に算定していたもの
A事業主体では、特別養護老人ホームに入所している老人Bについて、平成10年4月から6月までの徴収金の額を、同人の8年の対象収入340,176円により54,900円と算定し、10年7月から11年3月までの徴収金の額を、同人の9年の対象収入301,136円により135,000円と算定していた。そして、10年度分の徴収金の額を合計189,900円としていた。
しかし、実際は、不動産の売却に伴う所得が9年に3,143,000円あるので、9年の正しい対象収入はこれを加えた3,444,136円であった。
これにより10年7月から11年3月までの徴収金の額を算定すると2,042,100円となる。したがって、10年度分の徴収金の額は10年4月から6月までの徴収金の額54,900円との合計2,097,000円となり、差し引き1,907,100円が過小となっていた。
このような事態が生じていたのは、事業主体において徴収金の額の算定に当たって調査が十分でなかったこと、また、事業実績報告書の受理、審査等を行う都道府県の指導が十分でなかったことなどによると認められる。
これを都道府県別・事業主体別に示すと次のとおりである。
都道府県名 | 事業主体 | 年度 | 国庫負担対象事業費 | 左に対する国庫負担金 | 不当と認める国庫負担対象事業費 | 不当と認める国庫負担金 | 摘要 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(57) | 北海道 | 網走郡美幌町 | 10 | 337,984 | 168,992 | 1,822 | 911 | 老人の対象収入を過小に算定していたものなど |
(58) | 青森県 | 弘前市 | 10 | 1,967,695 | 983,847 | 1,941 | 970 | 同 |
(59) | 宮城県 | 気仙沼市 | 10 | 389,709 | 194,854 | 4,399 | 2,199 | 同 |
(60) | 栃木県 | 足利市 | 10 | 1,143,916 | 571,958 | 936 | 468 | 同 |
(61) | 同 | 佐野市 | 10 | 427,779 | 213,889 | 894 | 447 | 同 |
(62) | 同 | 今市市 | 10 | 358,260 | 179,130 | 1,605 | 802 | 同 |
(63) | 同 | 小山市 | 10 | 867,618 | 433,809 | 3,541 | 1,770 | 徴収金の額の集計を誤っていたものなど |
(64) | 同 | 大田原市 | 10 | 449,972 | 224,986 | 1,670 | 835 | 老人の対象収入を過小に算定していたものなど |
(65) | 同 | 那須郡馬頭町 | 10 | 200,236 | 100,118 | 1,236 | 618 | 同 |
(66) | 千葉県 | 千葉市 | 10 | 3,540,022 | 1,770,011 | 1,588 | 794 | 同 |
(67) | 同 | 船橋市 | 10 | 1,554,737 | 777,368 | 3,628 | 1,814 | 同 |
(68) | 同 | 流山市 | 10 | 361,183 | 180,591 | 1,694 | 847 | 老人の対象収入を過小に算定していたもの |
(69) | 同 | 八千代市 | 10 | 628,723 | 314,361 | 3,480 | 1,740 | 老人の対象収入を過小に算定していたものなど |
(70) | 東京都 | 文京区 | 10 | 1,206,272 | 603,136 | 2,302 | 1,151 | 老人の対象収入を過小に算定していたものなど |
(71) | 同 | 杉並区 | 10 | 2,956,477 | 1,478,238 | 1,899 | 949 | 主たる扶養義務者の所得税額等を誤認していたものなど |
(72) | 同 | 板橋区 | 10 | 2,244,700 | 1,122,350 | 4,240 | 2,120 | 老人の対象収入を過小に算定していたものなど |
(73) | 同 | 練馬区 | 10 | 2,371,146 | 1,185,573 | 5,088 | 2,544 | 徴収金の額の集計を誤っていたものなど |
(74) | 神奈川県 | 横浜市 | 10 | 11,737,046 | 5,868,523 | 26,439 | 13,219 | 国の徴収基準ではなく独自の徴収基準を適用していたものなど |
(75) | 同 | 津久井郡津久井町 | 10 | 168,772 | 84,386 | 1,517 | 758 | 老人の対象収入を過小に算定していたものなど |
(76) | 富山県 | 中新川郡上市町 | 10 | 224,266 | 112,133 | 1,172 | 586 | 同 |
(77) | 山梨県 | 塩山市 | 10 | 264,587 | 132,293 | 1,148 | 574 | 徴収金の額の集計を誤っていたものなど |
(78) | 同 | 東八代郡石和町 | 10 | 217,658 | 108,829 | 1,353 | 676 | 老人の対象収入を過小に算定していたものなど |
(79) | 滋賀県 | 蒲生郡安土町 | 10 | 41,195 | 20,597 | 1,122 | 561 | 徴収金の額の集計を誤っていたもの |
(80) | 同 | 坂田郡米原町 | 10 | 93,912 | 46,956 | 1,420 | 710 | 同 |
(81) | 大阪府 | 大阪市 | 10 | 16,511,943 | 8,255,971 | 5,450 | 2,725 | 老人の対象収入を過小に算定していたものなど |
(82) | 同 | 八尾市 | 10 | 1,235,318 | 617,659 | 1,816 | 908 | 同 |
(83) | 同 | 和泉市 | 10 | 721,275 | 360,637 | 1,332 | 666 | 同 |
(84) | 同 | 豊能郡豊能町 | 10 | 80,886 | 40,443 | 1,627 | 813 | 徴収金の額の集計を誤っていたもの |
(85) | 和歌山県 | 海南市 | 10 | 462,015 | 231,007 | 1,059 | 529 | 老人の対象収入を過小に算定していたものなど |
(86) | 鳥取県 | 気高郡気高町 | 10 | 102,661 | 51,330 | 2,273 | 1,136 | 同 |
(87) | 島根県 | 簸川郡斐川町 | 10 | 194,905 | 97,452 | 904 | 452 | 同 |
(88) | 香川県 | 善通寺市 | 10 | 361,885 | 180,942 | 1,327 | 663 | 同 |
(89) | 福岡県 | 福岡市 | 10 | 5,737,501 | 2,868,750 | 11,487 | 5,743 | 国の徴収基準ではなく独自の徴収基準を適用していたものなど |
(90) | 同 | 行橋市 | 10 | 544,290 | 272,145 | 3,955 | 1,977 | 老人の対象収入を過小に算定していたものなど |
(91) | 佐賀県 | 杵島郡白石町 | 10 | 207,758 | 103,879 | 1,447 | 723 | 同 |
(92) | 長崎県 | 長崎市 | 10 | 2,480,353 | 1,240,176 | 8,058 | 4,029 | 同 |
(93) | 宮崎県 | 都城市 | 10 | 922,582 | 461,291 | 1,459 | 729 | 同 |
(94) | 鹿児島県 | 加世田市 | 10 | 431,200 | 215,600 | 1,036 | 518 | 同 |
(57)-(94)の計 | 63,748,457 | 31,874,228 | 119,382 | 59,691 |