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国民健康保険の療養給付費補助金の交付が不当と認められるもの


(113)国民健康保険の療養給付費補助金の交付が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生本省 (項)国民健康保険助成費
部局等の名称 厚生本省(交付決定庁)
東京都(支出庁)
補助の根拠 国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
補助事業者
(事業主体)
中央建設国民健康保険組合(保険者)
療養給付費補助金の概要 国民健康保険組合が行う国民健康保険事業運営の安定化を図るために交付するもの
上記に対する国庫補助金交付額 24,236,440,527円 (平成9年度)
不当と認める国庫補助金交付額 12,787,686円 (平成9年度)

1 補助金の概要

(国民健康保険組合に対して交付される療養給付費補助金)

 国民健康保険は、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づき、地方公共団体である市町村及び特別区が保険者となって行うほか、都道府県知事の認可を受けた国民健康保険組合(以下「国保組合」という。)が保険者となって行うことができることとなっている。
 国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、国保組合が行う国民健康保険事業運営の安定化を図るため、療養給付費補助金が交付されている。

(療養給付費補助金の算定方法)

 療養給付費補助金の交付額は、原則として、各国保組合の医療給付費(注1) の100分の32に相当する額とすることとなっている。また、これに国保組合の財政力等を勘案して医療給付費の100分の1.5から100分の20に相当する額を増額することができることとなっている。
 そして、国保組合では、規約に基づき年齢その他の事由により被保険者の全部又は一部について、一部負担金の割合を軽減する措置(以下「負担軽減措置」という。)を講じている場合がある。この負担軽減措置の対象者の延べ人数が一定の規模以上の場合には、負担軽減措置の対象となる医療給付費に、被保険者の負担の軽減の度合いに応じて、所定の率(以下「調整率」という。)を乗じて減額調整(注2) をすることとなっている。

(注1) 医療給付費 療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る一部負担金(薬剤の支給に係る一部負担金を含む。)に相当する額を控除した額及び入院時食事療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額の合算額
(注2) 減額調整 被保険者が医療機関等の窓口で支払う一部負担金を軽減させると、一般的に受診が増え医療給付費の波及増が認められるとされている。この波及増により増加した医療給付費を療養給付費補助金の算定に含めると、他の国保組合との公平を欠くことから、波及増の分を減額して医療給付費を算定することとなっている。

(中央建設国民健康保険組合)

 国保組合は、同種の事業又は業務に従事する者で当該組合の地区内に住所を有するものを組合員として組織することとなっており、国保組合が行う国民健康保険の被保険者は、これらの組合員及びその家族(組合員の世帯に属する者)となっている。国保組合の一つとして、中央建設国民健康保険組合(以下「中建国保」という。)がある。中建国保は、建設業に従事する者で組織されており、本部を東京都に、支部を東京都ほか28府県に置いている。

(中建国保に対する療養給付費補助金の交付額)

 中建国保では、平成9年度の療養給付費補助金の算定に当たり、被保険者のうち、組合員について一部負担金の全額を軽減する措置を講じていることから、組合員分の医療給付費については調整率(0.9222)を乗じてこれを減額し、国庫補助の対象となる医療給付費(補助対象医療給付費)を算定していた。そして、減額調整をした組合員分の補助対象医療給付費を21,251,960,282円、減額調整をしない家族分の補助対象医療給付費を24,188,172,952円とするなどして交付額の算定を行い、療養給付費補助金24,236,440,527円の交付を受けていた。

2 検査の結果

 検査の結果、中建国保では、本部において各支部の医療給付費の中から組合員分の医療給付費を抽出して集計する際に、診療報酬の点数(1点10円)を誤ってそのまま診療報酬の金額としたり、薬剤の費用を合算しなかったりしていて組合員分の医療給付費を計87,053,090円過小に算出していた。また、家族分の医療給付費は全体の医療給付費から組合員分の医療給付費を差し引いて計算していたことから、同額を過大に算出していた。そして、組合員分の医療給付費については減額調整が行われることから、最終的に算出される家族分の補助対象医療給付費の過大額が組合員分の補助対象医療給付費の過小額を上回る結果になり、全体の補助対象医療給付費が過大に算定されていた。
 したがって、適正な補助対象医療給付費により療養給付費補助金を算定すると交付額は、24,223,652,841円となり、前記交付額との差額12,787,686円が過大に交付されていて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、中建国保において交付申請に当たり事務処理が適切でなかったこと、また、交付申請の受理、審査、進達等を行う東京都の審査が十分でなかったことによると認められる。