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  • 平成11年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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国民健康保険の療養給付費負担金の交付が不当と認められるもの


(114)−(119)国民健康保険の療養給付費負担金の交付が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生本省 (項)国民健康保険助成費
部局等の名称 厚生本省(交付決定庁)
北海道ほか3県(支出庁)
交付の根拠 国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
交付先 5市、1町、計6市町(保険者)
療養給付費負担金の概要 市町村等の国民健康保険事業運営の安定化を図るために交付するもの
上記に対する国庫負担金交付額の合計 55,503,430,285円 (平成8年度〜10年度)
不当と認める国庫負担金交付額 156,584,094円 (平成8年度〜10年度)

1 負担金の概要

(国民健康保険の療養給付費負担金)

 国民健康保険は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)等が保険者となって、被用者保険の被保険者及びその被扶養者等を除き、当該市町村の区域内に住所を有する者等を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関し、療養の給付、出産育児一時金の支給、葬祭費の支給等の給付を行う保険である。
 国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う国民健康保険事業運営の安定化を図るため療養給付費負担金(以下「国庫負担金」という。)が交付されている。

(国庫負担金の交付対象)

 市町村の国民健康保険の被保険者は、一般被保険者と退職被保険者及びその被扶養者とに区分されている。
 このうち、一般被保険者に係る医療費については、老人保健法(昭和57年法律第80号)による医療を受けることができる者を除き、国庫負担金の交付の対象とされている。

(国庫負担金の算定方法)

 毎年度の国庫負担金の交付額は、「国民健康保険の国庫負担金及び被用者保険等保険者拠出金等の算定等に関する政令」(昭和34年政令第41号)等により、次により算定することとなっている。

毎年度の国庫負担金の交付額は、「国民健康保険の国庫負担金及び被用者保険等保険者拠出金等の算定等に関する政令」(昭和34年政令第41号)等により、次により算定することとなっている。

 このうち、一般被保険者に係る医療給付費は、療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る一部負担金に相当する額を控除した額及び入院時食事療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額の合算額であり、その算定については、次のとおり行うものとされている。
(ア) 一部負担金に相当する額は、療養の給付に要する費用の額に10分の3を乗じて得た額及び薬剤の支給に係る所定の額とされている。
(イ) 都道府県又は市町村が、国の負担金等の交付を受けずに自らの負担で、年齢その他の事由により被保険者の全部又は一部について、その一部負担金に相当する額の全部又は一部を、当該被保険者に代わり保険医療機関等に支払うこととしている措置(以下「負担軽減措置」という。)を講じている場合がある。この負担軽減措置の対象者の延べ人数が一定の規模以上の場合には、負担軽減措置の対象となる医療給付費に、被保険者の負担の軽減の度合いに応じた所定の率を乗じて減額調整(注2) を行うこととなっている。

減額調整 被保険者が医療機関等の窓口で支払う一部負担金を軽減させると、一般的に受診が増え医療給付費の波及増が認められるとされている。この波及増により増加した医療給付費を国庫負担対象費用額に含めると、他の市町村との公平を欠くことから、波及増の分を減額して医療給付費を算定することとなっている。

(交付手続)

 国庫負担金は、〔1〕交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書を提出し、〔2〕交付申請書を受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査の上、これを厚生省に提出し、〔3〕厚生省はこれに基づき交付決定を行い国庫負担金を交付することとなっている。

2 検査の結果

 北海道ほか22都県の215市町村において、国庫負担金の交付について検査した結果、北海道ほか3県の6市町において、国庫負担金交付額計55,503,430,285円のうち計156,584,094円が過大に交付されていて不当と認められる。これを不当の態様別に示すと次のとおりである。

(1) 一般被保険者に係る医療給付費の算定において、その計算を誤っているもの
4市 147,483,225円
(2) 負担軽減措置の対象となる医療給付費の減額調整を行っていないもの
1市 1町 9,100,869円

 このような事態が生じていたのは、前記の6市町において制度の理解が十分でなかったり事務処理が適切でなかったりしたため適正な交付申請を行っていなかったこと、また、これに対する北海道ほか3県の審査が十分でなかったことによると認められる。
 これを道県別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

道県名 交付先(保険者) 年度 国庫負担対象費用額 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象費用額 不当と認める国庫負担金
千円 千円 千円 千円
 
(1) 一般被保険者に係る医療給付費の算定において、その計算を誤っているもの
 
(114) 北海道 札幌市 10 46,954,790 17,958,352 56,995 22,798
(115) 神奈川県 横浜市 10 73,999,137 29,599,655 297,362 118,945
(116)  同 横須賀市 10 9,760,036 3,904,014 6,180 2,472
(117)  同 大和市 10 4,888,234 1,955,293 8,169 3,267
(1)の計 135,602,199 53,417,315 368,708 147,483
 

 上記の4市では、国庫負担金の交付申請に当たり、療養の給付に要する費用の額から控除することとなっている薬剤の支給に係る一部負担金の額を控除していなかったり、入院時食事療養費等の支給に要する額を過大に計算していたりなどしていたため、一般被保険者に係る医療給付費が過大に算定されていた。
 上記の事態について例を示すと次のとおりである。

<事例1>  薬剤の支給に係る一部負担金の額を控除していなかったもの

 札幌市では、一部の被保険者について、療養の給付に要する費用の額から薬剤の支給に係る一部負担金の額を控除していなかった。このため、医療給付費が過大に算定され、その結果、国庫負担対象費用額が過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象費用額に基づいて国庫負担金の交付額を算定すると、17,935,554,323円となり、22,798,168円が過大に交付されていた。

<事例2>  入院時食事療養費等の支給に要する額を概算払額に基づいて過大に計算していたもの

 横浜市では、医療給付費を委託先の審査支払機関に毎月概算払いし、年度末の診療月を除き翌月にその精算を行っているが、一部の診療月分に係る入院時食事療養費等の支給に要する額を概算払額に基づいて過大に計算するなどしていた。このため、医療給付費が過大に算定され、その結果、国庫負担対象費用額が過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象費用額に基づいて国庫負担金の交付額を算定すると、29,480,709,950円となり、118,945,177円が過大に交付されていた。

 
(2) 負担軽減措置の対象となる医療給付費の減額調整を行っていないもの
 
(118) 茨城県 結城郡石下町 8〜10 3,048,011 1,219,204 10,453 4,181
(119) 島根県 安来市 8〜10 2,167,275 866,910 12,298 4,919
(2)の計 5,215,286 2,086,114 22,752 9,100
 

上記の2市町では、国庫負担金の交付申請に当たり、一般被保険者に係る医療給付費の算定において、負担軽減措置の対象となる医療給付費の一部について減額調整を行っていなかった。このため、一般被保険者に係る医療給付費が過大に算定され、その結果、国庫負担対象費用額が過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象費用額に基づいて国庫負担金の交付額を算定すると、計2,077,013,606円となり、計9,100,869円が過大に交付されていた。

 
(1)、(2)の計 140,817,485 55,503,433 391,460 156,584