会計名及び科目 | 一般会計 (組織)厚生本省 (項)保健衛生諸費 |
部局等の名称 | 厚生本省 |
補助の根拠 | 予算補助 |
補助事業者 | 道1、県9、計10道県 |
間接補助事業者 (事業主体) |
市14、町4、一部事務組合4、計22事業主体 |
補助事業 | 在宅当番医制事業 |
補助事業の概要 | 休日又は夜間等の初期救急医療体制を確保するため、在宅当番医制の運営を行うもの |
上記に対する国庫補助金交付額の合計 | 1億6484万余円 | (平成9、10年両年度) |
過大に交付された国庫補助金 | 4330万円 | (平成9、10年両年度) |
1 事業の概要
厚生省では、国民が常に適切な初期救急医療を受けられるよう、地区医師会が実施する在宅当番医制の定着化を図るとともに未実施地区への普及を図るため、市町村等が行う在宅当番医制運営事業に必要な経費を都道府県が補助する場合などに、当該都道府県に救急医療施設運営費等補助金(在宅当番医制事業分)(以下「補助金」という。)を交付している。
在宅当番医制は初期症状の救急患者の外来診察を行うもので、地域の実状に応じ、通常、次のように実施されている。すなわち、〔1〕事業の実施主体である市町村等は、市医師会、指定都市の区医師会等(以下「受託者」という。)に事業を委託する。〔2〕市町村等と受託者は、休日又は夜間等の初期救急医療の確保が必要な日(以下「当番日」という。)及び実施医療機関数を調整し決定する。〔3〕受託者は、当番日に診療を担当する医師(以下「在宅当番医」という。)を調整する。〔4〕市町村等及び受託者は、当番日及び在宅当番医を新聞等で住民に周知し、在宅当番医は当番日に救急患者に対し診療を行う。
この補助金は、「救急医療対策実施要綱」(昭和52年医発第692号。以下「実施要綱」という。)及び「医療施設運営費等補助金交付要綱」(注1)
(平成5年厚生省発健政第2号。以下「交付要綱」という。)に基づき、予算の範囲内において交付されており、その交付額は、平成9年度11億1549万余円、10年度8億9430万余円となっている。
本件補助金のうち、市町村等が行う在宅当番医制運営事業に必要な経費を都道府県が補助する事業を補助対象とする場合、交付要綱により、補助金交付額を受託者ごとに次のように算定することとなっている。
(1) 受託者に所属する会員数に基づき定められている基準額と、次の補助の対象となる経費(以下「対象経費」という。)の実支出額の合計額とを比較して、いずれか少ない額を選定する。
(ア) 休日又は夜間の診療を行う在宅当番医の当番日の調整(以下「当番日調整」という。)及び在宅当番医の実施(以下「当番医実施」という。)に係る市町村等の委託費等
(イ) 休日夜間急患センター(注2)
へ派遣する医師の調整に係る市町村等の委託費等
(ウ) 地域住民に対する救急医療知識普及啓蒙に係る市町村等の委託費等
(2) 上記(1)により選定した額と総事業費から寄付金その他の収入額を控除した額とを比較して、少ない方の額に3分の2を乗じて得た額と、都道府県が補助した額とを比較して少ない方の額に2分の1を乗じて得た額を交付額とする。
市町村等の事業主体は、当該年度の事業が完了したときは、受託者からの報告書を基に、在宅当番医制事業実績報告書(以下「実績報告書」という。)を作成し、都道府県に提出することとなっている。そして、都道府県は、これについて審査、確認を行ったうえ実績報告書を厚生省に提出することとされている。
2 検査の結果
交付要綱では、補助金の算定に当たり計上することのできる対象経費の範囲を委託費等としているだけで、具体的には示されていない。
そこで、本件補助事業の実施が適切に行われ、補助金交付額が適切に算定されているかなどに着眼して検査した。
北海道ほか15都県(注3) 、55事業主体に係る補助金、9年度1億5173万余円、10年度1億2128万余円を対象として検査した。
検査したところ、北海道ほか9県(注4)
の22事業主体において、次のとおり適切でない事態が見受けられた(2県、3事業主体については(1)(2)の事態のいずれにも該当している。)。
(1) 受託者は当番日調整、当番医実施等を実施し、これにより初期救急医療は確保していたものの、実績報告書には、これらに係る経費のほかに、補助事業と直接の関係がない会議費、受託者内部の研修会費、医学図書の購入費等を対象経費に計上するなどしていたものが、9年度10道県22事業主体において9331万余円、10年度10道県22事業主体において9917万余円あった。
(2) 受託者は在宅当番医制とは異なる方法で初期救急医療を確保していたものの、実績報告書には、当番日調整、当番医実施等の事業を実施したものとして事業に要した経費の一部を対象経費に計上していたものが9年度2県3事業主体において1059万余円、10年度1県1事業主体において622万余円あった。
このうち一例を挙げると次のとおりである。
<事例>
A市の受託者は、在宅当番医制事業とは別に救急医療情報センターの運用をしている。
この救急医療情報センターは、コンピュータシステムにより、常時、市内のほとんどの医療機関の診療の可否、空床等の情報を把握しているもので、受託者は救急患者からの問合せ等に対し、この情報を基に診療可能な医療機関を紹介していた。そして、このことにより初期救急医療体制は十分確保されているとして、これらに要した費用などの一部を当番日調整及び在宅当番医実施に要した費用として同市への報告書に計上しており、同市ではこれを基に実績報告書等を作成していた。
しかし、これは、受託者が在宅当番医の実施事業とは別の救急医療情報センター運営事業により収集した情報を救急患者に提供しているものであって、当番日にあらかじめ割り当てられた在宅当番医が確実に初期救急医療を行うという在宅当番医制の趣旨とは異なるものと認められた。
上記の22事業主体について、実績報告書に計上された対象経費の実支出額から本件補助事業に直接関係のない経費等を除外すると適正な対象経費の実支出額は9年度2億1995万余円、10年度2億1380万余円となる。これにより本件補助事業に係る適正な補助金交付額を計算すると、9年度6518万余円、10年度5635万余円、計1億2154万余円となり、交付された補助金9年度9177万余円、10年度7307万円、計1億6484万余円との差額9年度2658万余円、10年度1671万余円、計4330万余円が過大に交付されていたと認められた。
このような事態が生じていたのは、次のようなことなどによると認められた。
(ア) 厚生省において、都道府県に対し、在宅当番医制事業の対象経費の範囲について、交付要綱等で明確に示していないこと
(イ) 都道府県における実績報告書等の審査、確認、市町村等における委託した事業の実績の確認が十分でないこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、厚生省では、国庫補助金の算定が適切に行われるよう、次のような処置を講じた。
(ア) 12年3月に、都道府県に対し、対象経費に計上する経費の具体的範囲を定めた通知を発するとともに、同年10月に実施要綱を改正して、この通知に留意して国庫補助金の対象経費を取り扱うこととした。
(イ) 同年10月に、都道府県に対し通知を発し、〔1〕都道府県における実績報告の審査、確認の徹底を図ること、〔2〕委託した事業の実績を確認するよう市町村等を指導させることとした。
(注1) | 10年度については「医療施設運営費等補助金及び地域医療対策費等補助金交付要綱」(平成10年厚生省発健政第137号) |
(注2) | 休日夜間急患センター 休日、夜間の初期救急医療を行う、市などが設置している医療施設 |
(注3) | 北海道ほか15都県 北海道、東京都、青森、宮城、千葉、神奈川、富山、愛知、和歌山、岡山、山口、香川、福岡、佐賀、長崎、鹿児島各県 |
(注4) | 北海道ほか9県 北海道、青森、千葉、神奈川、富山、岡山、福岡、佐賀、長崎、鹿児島各県 |