会計名及び科目 | 一般会計 (組織)林野庁 (項)森林保全整備事業費 |
部局等の名称 | 林野庁 |
補助の根拠 | 森林法(昭和26年法律第249号) |
補助事業者 | 道1、県4、計5補助事業者 |
間接補助事業者 (事業主体) |
森林組合、森林所有者等 |
補助事業 | 造林、特定森林機能高度化 |
補助事業の概要 | 森林の有する公益的機能の高度発揮や安定的な林業経営の基盤となる森林資源の整備を行う事業 |
事業費 | 139億0644万余円 | (平成10年度) |
上記に対する国庫補助金交付額 | 41億4585万余円 | |
実態に適合していない標準単価を適用している作業に係る事業費 | 5億7516万円 | (平成10年度) |
上記に対する国庫補助金相当額 | 1億7260万円 |
1 事業の概要
林野庁では、森林法(昭和26年法律第249号)に基づき、森林組合等が事業主体となって、森林生産力の増進、国土保全等を図るために実施している造林事業及び特定森林機能高度化事業(以下、これらを「造林補助事業」という。)に対し、毎年度多額の補助金を交付している。
森林は、木材の生産のみならず国土の保全、水資源のかん養、自然環境の保全・形成など様々な機能を有しており、国民生活にとって不可欠な社会資本として極めて重要な役割を果たしている。このような森林の持つ公益的機能を高度に発揮させるためには、植栽、下刈り、間伐等を通じ森林を適正に維持管理していくことが必要である。
このうち間伐は、林木の混み具合に応じて密度を調整するために行われるもので、間伐の対象木を選ぶ選木、伐倒作業のほか、伐倒した樹木の枝を幹から切り離す枝払い、樹木を適当な長さに切る玉切り、玉切りされた丸太を寄せ集める木寄せ、丸太を林外に出す搬出の各作業から構成されている。
そして、間伐は、活力ある健全な森林を育成し、森林の有する多面的な機能を発揮させる上で特に重要な作業であり、間伐の推進は現下の林政の中心的課題の一つとなっており、平成10年度における全国の造林補助事業に係る間伐実施面積は約20万haとなっている。
林野庁では、都道府県に対し、同庁制定の「造林補助事業実施要領」(昭和48年48林野造第90号)を示しており、これによれば、都道府県は、地方慣行を加味し、事業量及び予算額を勘案して間伐の標準単価を定めることとされている。そして、個々の現場条件に急しゅん、平坦などの相違があっても同一の標準単価を適用し、これに事業量を乗じて得た額を標準経費とし、この経費に補助率等を乗じて補助金額を算定することとされている。
そして、都道府県ではこれを受けて、選木及び伐倒、更に枝払いや玉切り、木寄せ、搬出など、間伐に係る作業内容に対応した標準単価を独自に定めている。
2 検査の結果
間伐時期の林齢に達している森林は多数に上っているにもかかわらず、近年、木材価格の低迷、林業就業者の減少、高齢化の進行などにより間伐が十分に行われず、また、間伐された材の利用も減少し、搬出されない傾向にあるなど、間伐の作業内容も変化してきている。そこで、間伐の標準単価が作業の実態を反映したものとなっているか、ひいては間伐に係る補助事業が効率的に実施されているかなどに着眼して検査した。
北海道ほか18県(注1) において、10年度に造林補助事業により実施された間伐施行地数63,085箇所、実施面積99,248ha、事業費291億8848万余円(国庫補助金87億3215万余円)を対象に検査を実施した。
検査したところ、北海道ほか4県(注2)
(間伐施行地数24,521箇所、実施面積49,176ha、事業費139億0644万余円(国庫補助金41億4585万余円))において、次のような事態が見受けられた。
すなわち、上記の5道県では、慣行等から、搬出を行わない場合でも選木及び伐倒作業のほか、枝払い、玉切り及び木寄せ(以下「枝払い等」という。)の各作業が行われているとし、これらを含めた標準単価を設定していた。
しかし、枝払い等の作業は一般に搬出を行う場合に必要となるものであり、近年、木材価格の低迷、林業就業者の減少、高齢化の進行などにより、搬出を行わない場合の間伐は選木・伐倒のみの作業にとどめることが多くなっている。
そこで、5道県管内の搬出を伴わない施行地12,390箇所、実施面積23,352ha、事業費57億8680万余円(国庫補助金相当額17億3598万余円)について検査したところ、施行地4,414箇所(35.6%)、実施面積9,413ha(40.3%)において、枝払い等の作業が、必要性がないなどのため、十分に行われていない事態が見受けられた。
このように、搬出を伴わない施行地では間伐の作業内容が変化しているのに、枝払い等の作業が含まれた標準単価をすべての施行地において適用しているのは作業の実態に適合していないと認められた。
したがって、作業の実態に適合した標準単価を設定することにより、より効率的な補助事業の実施を図り、間伐面積の拡大を通じて間伐をより一層推進する要があると認められた。
5道県において、実態に適合していない標準単価を適用している枝払い等の作業に係る事業費を、各作業に係る人工数又は作業割合等を基に計算すると、5億7516万余円(国庫補助金相当額1億7260万余円)になると認められた。
このような事態が生じていたのは、次のようなことなどによると認められた。
(ア) 都道府県において、作業の実態を十分把握しておらず、これを標準単価の設定に反映させていなかったこと
(イ) 林野庁において、都道府県が定めている標準単価を構成している作業内容等の把握が十分でなく、都道府県に対する指導・監督が十分でなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、林野庁では、12年7月に通知を発し、選木・伐倒に係る作業のみを実施する場合の標準単価を設定することを都道府県に対し指導するなどし、造林補助事業の効率的な実施と間伐の推進を図る処置を講じた。
(注1) | 北海道ほか18県 北海道、宮城、秋田、山形、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、兵庫、鳥取、島根、徳島、佐賀、大分、鹿児島各県 |
(注2) | 北海道ほか4県 北海道、秋田、新潟、長野、大分各県 |