会計名及び科目 | 国有林野事業特別会計(国有林野事業勘定) (項)国有林野事業費 |
部局等の名称 | 林野庁、東北森林管理局ほか7森林管理(分)局(平成11年2月28日以前は秋田営林局ほか7営林(支)局) |
素材生産事業等の概要 | 立木を伐採し、素材を生産して集積場に輸送する事業及び集積場等に仮置きした素材を民間市場において販売するため輸送する業務 |
上記の事業等に係る輸送費の積算額 | 5億8004万余円 | (平成10、11両年度) |
低減できた輸送費の積算額 | 1億2940万円 | (平成10、11両年度) |
1 事業の概要
林野庁では、林産物の需給等の安定を図るため、国有林野における林産物の生産・販売事業を推進している。林産物のうちの木材の販売については、立木の状態で販売する立木販売と高付加価値の期待できる樹木を素材(丸太)にして販売する素材販売とがある。そして、素材販売のために、樹木を伐倒するなどして素材である丸太を生産する事業(以下「素材生産事業」という。)においては、素材が販売されるまでの間、生産した素材を生産地点である林道端などに仮置きする場合と、集積場まで輸送して仮置きする場合とがある。
また、素材生産事業で生産地点や集積場に仮置きした素材を民間市場で販売する場合においては、民間市場を運営する問屋業者等に委託してその販売を行っている(以下、この委託による販売を「委託販売業務」という。)。そして、この委託販売業務は、素材を販売する業務のほか素材を集積場等から民間市場まで輸送する業務などがその内容となっている。
林野庁の各森林管理(分)局では、素材生産事業及び委託販売業務(以下、これらを「素材生産事業等」という。)の実施に要する費用の積算においては、素材を集積場や民間市場まで輸送するための経費として輸送費を計上することとしている。
輸送費は、運送業者が運輸省に届け出た「一般貨物自動車運送事業運賃料金」に定める運送距離の区分ごとの車種別車両の運賃を、樹材(広葉樹・針葉樹)別の素材の積載量で除するなどして素材1m3
当たりの輸送単価を算出し、これに素材の輸送量を乗じて積算している。そして、この積算の前提となる使用車両の車種及び素材の積載量については、「立木販売予定価格評定公式の改訂について」(昭和34年34林野業第5328号林野庁長官通達)等の趣旨を踏まえて各森林管理(分)局が制定した、「トラック運賃料金の取扱いについて」や「事業区域を定める貨物自動車運送事業運賃料金について」等(以下、これらを「要領」という。)に定めるところによることとしている。
すなわち、輸送費の積算に当たっては、使用車両の車種は要領で定める標準車種とし、また、素材の積載量は、要領で樹材別に定められた標準車種の積載重量1トン当たりの体積に、標準車種の積載重量を乗じるなどして算出することとしている。
2 検査の結果
近年、林野庁では、素材生産等の作業現場へのアクセスの改善、集材距離の短縮等林業経営の効率化・低コスト化、森林の適切な維持・管理を目的とした林道の整備を図ってきていることなどから、素材生産事業等における輸送費の積算が輸送の実態を反映したものとなっているかに着眼して検査した。
東北森林管理局ほか7森林管理(分)局(注) (平成11年2月28日以前は秋田営林局ほか7営林(支)局。以下、森林管理局及び分局を「管理局」という。)において、素材生産事業等で輸送した素材数量10年度148,226m3 、11年度98,679m3 に係る輸送費の積算(積算額10年度3億4575万余円、11年度2億3429万余円)について検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
(1) 使用車両の車種について
8管理局では、素材生産事業等で使用する車両の標準車種について、各管理局制定の要領で次のように定めており、これらを適用して輸送費を積算することとしていた。
管理局 | 東北 | 関東 | 中部 | 近畿中国 | 四国 | 九州 | 旭川 | 東京 |
標準車種(トン車) | 8、10 | 8、10 | 8、10 | 8 | 8 | 8 | 12 | 8、10 |
上記のように、使用車両の標準車種は8トン車から12トン車と各管理局によって区々となっていた。
しかし、林道開設工事等の積算に使用する林野庁制定の「森林整備事業標準歩掛」では、車道幅員が3m以上の林道で土石(砂、砂利、玉石等)を運搬する場合には、標準車種として10トン車を採用することとしている。
そして、林業経営の効率化・低コスト化等を目的として整備されている林道の開設延長は10年度末で127,982km(昭和50年度末の開設延長88,354km)に上っており、これらの林道の車道幅員はそのほとんどが3m以上となっている。
そこで、平成12年度に実施されている素材生産事業等において使用されている車両の車種について抽出して調査した。その結果、幅員3m以上の林道の整備が図られてきていることや10トン車が普及してきていることなどから、ほとんどが10トン車(旭川管理局については12トン車)を使用して輸送している状況であった。
(2) 素材の積載量について
8管理局では、要領において、樹材別に、積載重量1トン当たりの積載量(以下「単位積載量」という。)を定めるなどしている。それらを基にして、標準車種の樹材別の単位積載量を計算すると、広葉樹については0.67m3
から0.97m3
、針葉樹については0.86m3
から1.19m3
と区々となっていた。
しかし、近年、素材生産において樹種の割合が変化してきていることなどから、素材の単位積載量について、前記(1)と同様に12年度の素材生産事業等において抽出して調査した。その結果、樹材別の単位積載量は、広葉樹については0.99m3
から1.01m3
、針葉樹については1.19m3
から1.21m3
となっており、8管理局が定めている単位積載量をそれぞれ上回っていた。
上記のように、素材生産事業等における輸送の実態は、8管理局が定めている標準車種及び単位積載量により輸送するとした場合に比べて効率的なものとなっており、素材生産事業等に係る輸送費の積算はその実態に適合していないものとなっていた。
したがって、素材生産事業等に係る輸送費の積算に当たっては、標準車種及び単位積載量の見直しを行い、輸送の実態に適合したより経済的な積算を行う要があると認められた。
8管理局が積算した輸送費について、輸送の実態に即し、標準車種を10トン車(旭川管理局については12トン車)とし、また、単位積載量を、広葉樹については1.0m3 、針葉樹については1.2m3 として修正計算すると、前記の積算額10年度3億4575万余円、11年度2億3429万余円、計5億8004万余円は、10年度2億7065万余円、11年度1億7998万余円、計4億5064万余円となり、10年度約7500万円、11年度約5430万円、計約1億2940万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、各管理局において、要領で定めている標準車種及び単位積載量について、林道の整備状況等に即した見直しを行っていなかったこと、林野庁において、上記の事態を十分把握しておらず、的確な指導を行っていなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、林野庁では、12年10月に各管理局に対して、要領に定める輸送費の積算に係る標準車種及び単位積載量を輸送の実態に即したものに改めるよう通達を発し、同年12月以降の素材生産事業等に係る契約から適用することとする処置を講じた。