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  • 平成11年度|
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  • 意見を表示しまたは処置を要求した事項

郵便局における硬貨過超金の滞留を解消し、効率的な資金管理を図るよう改善の意見を表示したもの


郵便局における硬貨過超金の滞留を解消し、効率的な資金管理を図るよう改善の意見を表示したもの

会計名及び科目 郵政事業特別会計 (項)業務費
部局等の名称 郵政本省
過超金管理の概要 郵便局で生じた過超金を日本銀行預託金口座に預入し、郵政本省において一括管理すること
硬貨過超金の滞留が慢性的に発生している郵便局 東京中央郵便局ほか90郵便局
上記のうち整理保管を外部委託している郵便局 東京中央郵便局ほか53郵便局
上記に係る委託費 6億3955万円(平成11年度)
外部保管している硬貨過超金の袋数と推定重量 43,924袋、推定重量517t
外部委託実施郵便局で保管中の硬貨過超金の滞留額 74億6042万円(平成11年度末現在)

【改善の意見表示の全文】

  郵便局における硬貨過超金の保管について

(平成12年11月20日付け 郵政大臣あて)

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の意見を表示する。

1 制度の概要

(郵便局の業務と資金管理)

 貴省では、全国2万4737局の郵便局において、郵便、為替貯金、簡易保険の業務(以下「郵政三事業」という。)及び印紙売りさばき等の受託業務を行っており、各郵便局ともこれらの業務に係る現金の受払いに支障を来さぬよう資金を準備するとともに、保管すべき額を超える現金(以下「過超金」という。)を滞留させることのないよう適正に資金を管理することとしている。このため、全国で242局の郵便局を日本銀行便局(注1) に指定し、その管轄する郵便局が必要とする資金を日本銀行(代理店を含む。以下同じ。)から払い出して交付するとともに、過超金を集めて日本銀行に預入している。この払出し及び預入は、本省の郵政事業特別会計所属の繰替払等出納官吏の日本銀行預託金口座を通して行っており、同口座に集中した資金は、郵政三事業において必要となる各種の事業資金の財源に充てられている。

(銀行預金局)

 郵便局では、原則として、現金を手許保管しているが、保管現金が特に多い郵便局では、あらかじめ郵政局長等から銀行預金局の指定を受けて市中金融機関に預金しており、平成11年度末現在の銀行預金局は963局となっている。そして、過超金について、一般の郵便局は現金で、銀行預金局は取引先の市中金融機関が振り出す小切手で、それぞれ日本銀行便局に引き渡している。

(過超金の預入及び保管状況)

 日本銀行便局が11年度に日本銀行に預入した過超金の額は、累計で7兆0872億余円に上っている。郵便局から集めた過超金は、日本銀行に預入するまでの間日本銀行便局で保管することになるが、近年、特に過超金のうちの硬貨(以下「硬貨過超金」という。)の増加が著しく、自局内での整理及び保管に困難を来した東京中央郵便局ほか53局(注2) の日本銀行便局では、これらの業務を外部に委託し、委託費として11年度には計6億3955万余円を支払っている。

(日本銀行における国庫金出納事務と硬貨の預入条件)

 日本銀行は、会計法(昭和22年法律第35号)第34条第1項、日本銀行法(平成9年法律第89号)第35条等に基づき、国庫金出納事務を取り扱っている。そして、各日本銀行便局は、日本銀行の32の本支店及び210の代理店のうち最寄りの1店と取引きをしている。
 日本銀行では、国庫金等の現金を受け入れるに当たって、日本銀行業務全体の円滑な遂行を確保するため、従前から預入の条件及び仕様を定めている。これによると、硬貨の場合は、流通に適する正貨とそれ以外の損貨とに分けさせた上、正貨を金種別に定めた枚数(1円貨5000枚、5・10・50・100円貨4000枚、500円貨2000枚)で袋詰めさせることとしている。また、預入日については、日本銀行本支店及び代理店と預入者とで協議して決定している。

2 本院の検査結果

(検査の着眼点及び対象)

 日本銀行便局では、現在、大量かつ多額の硬貨過超金が日本銀行に預入できずに滞留し、その保管に要する経費が増こうしている。
 このような状況を踏まえて、本院では、日本銀行便局における資金の管理は効率的に行われているか、硬貨過超金の日本銀行への預入が円滑に進まなくなった原因はどこにあるかなどに着眼して、硬貨過超金の整理及び保管を外部委託している上記54局を中心に、全国242局の日本銀行便局における硬貨過超金の保管状況について検査を実施した。

(整理保管の外部委託の状況)

 硬貨過超金の取扱いに関しては、取集、正貨・損貨の区分け、金種別整理、袋詰め、保管、運搬等の整理及び保管(以下「整理保管」という。)の作業が必要となるが、これらは、従来、日本銀行便局の通常業務の中で処理されてきた。しかし、近年、多くの日本銀行便局に硬貨過超金が大量に集中し、預入そのものだけでなく、保管場所の確保も困難となり、要員配置等の郵便局の業務運営にも支障が生じたことから、事務簡素化のため、硬貨過超金の整理保管を外部委託に切り替えることとなった。
 外部委託を行う日本銀行便局は、7年度の7局から11年度の54局へと逐年増加しており、これに伴って、委託費は1624万余円から6億3955万余円へと急増している。

(外部委託をしている日本銀行便局の保管状況)

 日本銀行便局のうち、11年度現在で硬貨過超金の整理保管を外部委託している前記54局の過超金の預入額は、日本銀行便局の過超金預入額全体の72%に当たる5兆1299億余円(1局平均949億余円)となっている。そして、これら54局が外部委託により保管している11年度末の硬貨過超金の保管高は、43,924袋、74億6042万余円、推定重量517tとなっている。
 これら54局のうち、11年度中の硬貨過超金の受入れ、日本銀行への預入及び自局での保管状況が判明している39局についてみると、過超金の預入額4兆3256億余円(1局平均1109億余円)のうち、硬貨過超金は439億余円(同11億余円)で1%を占めている。そして、これら39局では、表1のとおり、月平均79億9576万余円の硬貨過超金を受け入れているが、このうち日本銀行に預入できたのは38億7021万余円で、預入率は48%にとどまっている。このため、預入額と同程度の硬貨過超金が常時滞留する状況となっている。

表1

表1

(外部委託をしていない日本銀行便局の保管状況)

 硬貨過超金の整理保管を外部委託していない日本銀行便局は、11年度現在で188局あり、これらの局の過超金の預入額は、日本銀行便局全体の28%に当たる1兆9572億余円(1局平均104億余円)である。
 これらの188局においても、近年、硬貨過超金の滞留傾向が目立つようになり、このうち37局では、慢性的に硬貨過超金が滞留する状況となっている。このため、郵便局からの受入れを制限するなどの応急的な措置を執る一方、14局では、外部委託の承認を郵政局に要請するなどしていた。
 上記37局に外部委託している54局を加えると、242局のうち91局で硬貨過超金が慢性的に滞留する状況となっている。

(日本銀行便局での硬貨過超金滞留の背景)

 郵便局における現金の受払いには、個人の利用者による小口現金の払込みが多いという特徴があり、硬貨については受入れ超過が常態となっている。このため、日本銀行便局は、これを過超金として日本銀行に預入している。しかし、近年、大量の硬貨過超金が日本銀行便局に滞留するようになった背景には、元年4月の消費税導入や自動販売機の普及等の社会経済的な要因により、硬貨の市中流通量が消費税導入後1.4倍に増加したという事情のほかに、次のとおり、郵便局と市中金融機関との関係の変化などの構造的な要因がある。

(1) 硬貨過超金が日本銀行便局へ集中するようになったこと

 前記のとおり、銀行預金局では、過超金を市中金融機関に預金し、日本銀行便局への引渡しも小切手で行うことから、基本的に硬貨過超金の滞留は生じない。
 この銀行預金局の数は、昭和61年度の8,661局をピークとして、消費税が導入された平成元年度には4,290局に、そして、11年度には963局にまで激減している。このように銀行預金局が減少したのには、次のような理由がある。
〔1〕 貴省において、資金効率化のため郵便局の資金保有量を圧縮するよう指導を強化したことにより、市中金融機関にとって預金を引き受けるメリットが少なくなってきたこと
〔2〕 市中金融機関において、経営効率化のための支店閉鎖や要員削減等が進み、大量の硬貨を含む銀行預金局の預金が敬遠されるようになったこと
 このように銀行預金局が減少したことにより、従来、市中金融機関に預入されていた硬貨過超金が日本銀行便局に集中することとなった。

(2) 日本銀行代理店の多くで硬貨過超金の全量預入が困難になったこと

 日本銀行本支店及び代理店においても、金庫の収容余力、要員配置等の関係から、硬貨過超金を常時かつ無制限に受け入れるのは、物理的に困難な面がある。そして、特に日本銀行代理店において、月によっては受入れを停止したり、硬貨を詰めた袋の預入総数に上限を設定したりするなど、硬貨過超金に対する極端な預入制限を行う事例が、近年、数多く見受けられるようになった。

(3) 制度上、硬貨過超金の滞留を自主的に解決する方策がなかったこと

 市中金融機関の場合、銀行法(昭和56年法律第59号)第10条等により、固有業務の一部として硬貨の両替を行っていて、これにより生ずる硬貨の過不足等を調整するため、市中金融機関相互間で硬貨と紙幣を融通することが相当程度行われている。
 しかし、郵便局は、銀行法等の対象とならず、両替機能はない。そして、硬貨過超金が滞留し始めるまでは、日本銀行に預入するだけで何ら支障はなかった。また、滞留発生後も、制度上、日本銀行への預入によらずに自主的に市中金融機関で両替処理する体制とはなっていない。

(貴省がこれまでに講じた処置)

 日本銀行便局で硬貨過超金の滞留傾向が顕在化してきたのは8年度頃とされているが、日本銀行代理店による硬貨過超金の預入制限が全国的な傾向となっていることは、貴省と日本銀行本支店との間では従前から共通した認識となっていた。そこで、貴省では、硬貨の発行等の権限を有する大蔵省と協議するほか、滞留防止のため、日本銀行本支店で直接受け入れるよう協議してきた。
 すなわち、8年6月、関東郵政局管内で硬貨過超金の滞留が顕著となったので、日本銀行本店のあっせん又は引受けにより処理するよう協議した。
 また、10年4月、改めて日本銀行代理店の引受制限が全国的な傾向であることを確認した上で、今後とも日本銀行代理店を預入先とする日本銀行便局で滞留が顕著となったときは、日本銀行支店を預入先とする近隣の日本銀行便局の過超金の中に含め、日本銀行支店がこれを直接引き受けるよう協議した。

(硬貨過超金の滞留解消の状況)

 日本銀行便局では、上記の処置を講じたうえ、次のような方法で硬貨過超金の滞留の解消に努めてきたが、依然として滞留の解消には至っていない。
〔1〕 日本銀行本支店のあっせんにより、市中金融機関で硬貨過超金を紙幣に両替処理する。(46局)
〔2〕 日本銀行代理店を預入先とする日本銀行便局から、日本銀行本支店を預入先とする近隣の日本銀行便局に硬貨過超金を移送し、預入処理する。(37局)

(改善を必要とする事態)

 前記のとおり、硬貨過超金は、速やかに郵政事業特別会計の預託金口座に収納して資金化し、事業資金に充てるべきものである。しかし、上記のように、大量かつ多額の硬貨が郵便局に滞留したままとなっていて、多額の委託費を払って外部保管している事態は、資金管理の効率性及び経費節減の観点から見て、改善の必要があると認められる。

3 本院が表示する改善の意見

 貴省では、13年度からの郵便貯金資金の全額自主運用や15年度からの公社化を控えて、業務全般にわたってより一層効率的な事業運営が求められており、資金管理のあり方についても、制度的な課題を含めて抜本的な検討が行われるものと思料される。
 ついては、貴省において、当面、硬貨過超金の滞留を解消し、効率的な資金管理を確保するとともに経費を節減するため、次のような処置を講ずる要があると認められる。
(1) 日本銀行等の関係機関と引き続き協議して、硬貨過超金を円滑に処理できるようにすること
(2) 各日本銀行便局の硬貨過超金の滞留状況を把握し、近隣の日本銀行便局間で移送して滞留が解消する場合は、これを積極的に進めること

(注1) 日本銀行便局 日本銀行本支店又は代理店を介して、郵政事業特別会計の繰替払等出納官吏(郵政本省大臣官房主計課長)から資金の交付を受け、これを傘下の郵便局に送金するとともに、当該郵便局から過超金を集めて同出納官吏に送付する郵便局
(注2) 東京中央郵便局ほか53局 東京中央、旭川中央、函館中央、札幌中央、青森中央、盛岡中央、仙台中央、秋田中央、山形中央、郡山、水戸中央、宇都宮中央、前橋中央、浦和中央、熊谷、川越、千葉中央、横浜港、平塚、甲府中央、新潟中央、長野中央、富山中央、金沢中央、福井南、岐阜中央、静岡南、浜松西、名古屋中央、大津中央、京都中央、大阪中央、神戸中央、姫路、奈良中央、和歌山中央、松江中央、岡山中央、広島中央、徳山、下関、徳島中央、高松中央、松山中央、高知中央、福岡中央、北九州中央、佐賀中央、長崎中央、熊本中央、大分中央、宮崎中央、鹿児島中央及び那覇中央郵便局