会計名及び科目 | 郵政事業特別会計 (款)業務収入 (項)雑収入 |
部局等の名称 | 仙台逓信病院ほか9逓信病院 |
増収可能と認められた診療報酬 | 特定疾患療養指導料、入院時医学管理料、リハビリテーション料、入院環境料等 |
増収可能額 | 4590万円(平成11年度) |
1 逓信病院の概要
札幌逓信病院ほか13逓信病院(注1)
では、職域病院として郵政省職員等の診療を行うほか、昭和55年以降順次、保険医療機関としての承認を受け、地域住民の診療を行っている。逓信病院の平成11年度における病床数は、東京逓信病院が521床、その他の逓信病院が50床から192床で、14逓信病院全体では1,756床となっている。逓信病院の収支は、郵政事業特別会計において経理されており、逓信病院だけの現金収支率は88.4%となっている。
郵政省では、郵政事業の公社移行時の15年を目途に逓信病院の診療体制及び診療内容の充実を図るとともに、収支率を改善するなど健全な経営とするため、診療科・病棟編成及び看護婦人員の見直しなど各種の改善施策を実施している。
保険医療機関は、「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(平成6年厚生省告示第54号)等により、診療報酬として医療に要する費用を所定の診療点数に単価(10円)を乗じて算定することとなっている。そして、保険医療機関は、健康保険法(大正11年法律第70号)等に基づき、診療報酬のうち患者負担分を患者に請求し、残りの診療報酬については、診療報酬請求書に診療報酬の明細を明らかにした診療報酬明細書を添付して、社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連合会に対して請求することとなっている。
診療報酬は、基本診療料と特掲診療料に大別されている。
このうち、基本診療料は、初診、再診及び入院診療の際に行われる診療行為又は入院サービスに対し、その費用を一括して算定するもので、初診料、再診料、入院料、入院時医学管理料等で構成されている。そして、入院料は入院環境料、看護料等に区分され、例えば入院環境料には重症者等療養環境特別加算等の点数を加算できることとなっている。また、特掲診療料は、基本診療料として一括して算定することが妥当でない特別の診療行為に対し、個々に定められた診療点数によりその費用を算定するもので、指導管理料、画像診断料、リハビリテーション料等で構成されている。そして、指導管理料は特定疾患療養指導料、退院指導料等に区分されている。
2 検査の結果
逓信病院では、前記のとおり、診療環境の質的向上を図ってより高い医療サービスを提供するなど、診療体制及び診療内容の充実を図るとともに、健全な経営とするよう努めていることから、診療報酬の請求が診療行為等の実態に適合した適切なものとなっているかに着眼して、札幌逓信病院ほか11逓信病院(注2) に係る診療報酬の請求について検査した。
検査したところ、仙台逓信病院ほか9逓信病院(注3)
において、適切とは認められない事態が見受けられ、これらについて適切な診療報酬を算定し請求したとすれば約4590万円の増収が可能であったと認められた。
これを態様別に示すと次のとおりである。
(ア) 診療計画等に基づく説明・指導や診断結果を記録又は文書にしていなかったもの
仙台、横浜、東京、大阪北及び神戸各逓信病院
特定疾患療養指導料は、医師が患者に対して、療養上必要な治療計画に基づく指導を行い、その要点を診療録に記載した場合に所定の点数を算定し、診療報酬として請求することとなっている。退院指導料及び入院時医学管理料のうちの入院診療計画加算は、患者又はその家族に対して、医師、看護婦等が共同して作成した退院後の療養計画や入院時の診療計画について、医師が文書にして説明・指導を行った場合に所定の点数を算定し、診療報酬として請求することとなっている。また、画像診断料のうちの画像診断管理加算は、放射線科の画像診断担当医師が診断結果を文書にして主治医に報告した場合に所定の点数を算定し、診療報酬として請求することとなっている。
しかし、上記の各逓信病院では、実際には、医師が治療計画、診療計画等を患者に口頭で説明・指導したり、画像診断担当医師が診断結果を主治医に口頭で報告したりしているのに、指導の要点を診療録に記載していなかったり、説明・指導や診断結果を文書にしていなかったりしたことから、これらの診療行為に係る診療報酬を算定していなかった。
<事例>
特定疾患療養指導料(以下「指導料」という。)は、病床数200床未満の病院等で、高血圧、糖尿病等厚生大臣の定める特定疾患を主病とする外来患者に対して、医師が全身的な医学管理と治療計画に基づく指導を行い、その要点を診療録に記載した場合に1月に2回を限度として1回につき80点を算定し、診療報酬として請求することとなっている。
仙台逓信病院では、特定疾患を主病とする11年度の外来患者33,906人のうち、指導料を算定していたのは6,075人となっていた。しかし、残りの27,831人については、実際には医師が全身的な医学管理等に基づく説明・指導を行っていたのに、その要点を診療録に記載していなかったことから、指導料を算定していなかった。
したがって、患者に対する説明・指導の要点の記録を適切に行うよう医療部門に周知徹底し、院内各部門の連携を図って指導料を算定したとすると、11年度において約2220万円の増収が可能であったと認められた。
(イ) 診療設備・看護水準等が所定の基準に適合している旨の届出を行っていなかったもの
仙台、東京、新潟、富山、名古屋、京都及び広島各逓信病院
重症者等療養環境特別加算、リハビリテーション料及び看護料のうちの夜間勤務等看護加算は、病院の診療設備や看護水準等が厚生大臣の定める基準に適合しているとして、それぞれ都道府県知事に届け出ている場合に所定の点数を算定し、診療報酬として請求することとなっている。
しかし、上記の各逓信病院では、診療設備の内容や医師、看護婦等の数などが上記の基準を満たしているのに都道府県知事に届け出ていなかったことから、これらに見合った適切な診療報酬を算定していなかった。
<事例>
重症者等療養環境特別加算は、重症患者等を個室又は2人部屋で常時監視できるような設備を備えるなど、厚生大臣が定める基準に適合しているとして都道府県知事に届け出ている場合に所定の点数を算定し、診療報酬として請求することとなっている。
広島逓信病院では、重症患者等を患者監視装置等の設備を備えた個室又は2人部屋に収容するなど、上記の基準を満たしていたのに、本件加算に必要な届出を行っていなかった。
したがって、所定の基準に適合している旨の届出を行って本件加算を算定したとすると、11年度において約430万円の増収が可能であったと認められた。
このような事態が生じていたのは、次のようなことによると認められた。
(ア) 郵政省において、診療行為等に適合した適切な診療報酬を算定し請求するよう十分な指導を行っていなかったこと
(イ) 各逓信病院において、治療計画に基づく指導の要点の記録や診療計画等の説明・指導などの文書化が徹底していなかったり、診療報酬の請求の前提となる届出についての検討が十分でなかったりなど、診療行為等に適合した適切な診療報酬を算定し請求するための院内体制が十分でなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、郵政省では、逓信病院における診療報酬の請求を適切に行うこととするよう、次のような処置を講じた。
(ア) 郵政省では、12年9月に、各逓信病院所轄郵政局長及び東京逓信病院長に対して通達を発し、各逓信病院において毎月開催する経営改善推進委員会で診療報酬の請求状況及び施設基準等の届出状況を必ず確認させるなど、具体的な指導を行った。また、地方郵政局担当者会議及び逓信病院事務長等会議を開催して上記通達の徹底を図った。
(イ) 各逓信病院では、院内の診療部門と事務部門との連携体制を整備して、治療計画に基づく指導の要点の記録や診療計画等の説明・指導などの文書化の徹底を図ることとした。また、同年3月から9月までの間に、各都府県知事に対して診療報酬の請求の前提となる届出を行った。
(注1) | 札幌逓信病院ほか13逓信病院 札幌、仙台、横浜、東京、新潟、富山、名古屋、京都、大阪北、神戸、広島、徳島、福岡、鹿児島各逓信病院 |
(注2) | 札幌逓信病院ほか11逓信病院 札幌、仙台、横浜、東京、新潟、富山、名古屋、京都、大阪北、神戸、広島、福岡各逓信病院 |
(注3) | 仙台逓信病院ほか9逓信病院 仙台、横浜、東京、新潟、富山、名古屋、京都、大阪北、神戸、広島各逓信病院 |