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  • 平成11年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 建設省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

公営住宅家賃対策補助金に係る近傍住宅家賃の算定が適切に行われるよう改善させたもの


(1)公営住宅家賃対策補助金に係る近傍住宅家賃の算定が適切に行われるよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)建設本省 (項)住宅対策諸費
部局等の名称 宮城県ほか6都府県
補助の根拠 公営住宅法(昭和26年法律第193号)
補助事業者
(事業主体)
県5、市7、計12補助事業者
補助事業 公営住宅家賃対策補助
補助事業の概要 公営住宅の家賃に係る補助を行うため、公営住宅を管理する都道府県等に交付されるもの
補助基本額 26億2456万余円 (平成11年度)
上記に対する国庫補助金交付額 14億6477万余円 (平成11年度)
過大に交付された国庫補助金相当額 3870万円 (平成11年度)

1 事業の概要

(補助金の概要)

 建設省では、公営住宅法(昭和26年法律第193号)に基づき、公営住宅を住宅に困窮する低額所得者に賃貸している都道府県及び市町村(以下「事業主体」という。)に対し、平成8年より公営住宅家賃対策補助金を交付している。

(補助金の額の算定)

 公営住宅家賃対策補助金の額は、公営住宅法、公営住宅家賃対策補助金交付要領(平成8年建設省住備発第87号建設省住宅局長通達)等によれば、次のとおり補助基本額を算定し、これに附帯事務費を加えた額に、2分の1を乗じて得た額となっている。

 補助基本額=
(近傍同種の住宅の家賃の額(以下「近傍住宅家賃」という。)−入居者負担基準額)×補助対象月数×補助対象戸数

 そして、近傍住宅家賃は、次のように算定することとなっている。

 近傍住宅家賃=
[(建物部分の複成価格×利回り)+(土地部分の複成価格×利回り)+修繕費+管理事務費等]÷12

 建物部分の複成価格及び土地部分の複成価格については、「公営住宅法の一部を改正する法律等の運用について」(平成8年建設省住総発第135号建設省住宅局長通達。以下「運用通達」という。)によると、次のとおり算定することとなっている。

ア 建物部分の複成価格の算定

(ア) 近傍同種の住宅の建設に要する費用の額(以下「近傍住宅建設費」という。)に、建設大臣が毎年地域別に定める率を乗じて得られる当該住宅の推定再建築費から経過年数に応じた減価相当額を控除して算定する。この近傍住宅建設費には、共同施設(駐車場、児童遊園等)の工事費は含めないこととなっている。
(イ) 建設後、相当程度の年数が経過したことなどにより近傍住宅建設費の確定が困難な場合などには、事業主体が、標準的な建設費の額を設定することも許容されるが、標準的な建設費の額が実際の建設費の額を上回ることがないよう適切な額を設定する。

イ 土地部分の複成価格の算定

(ア) 土地部分の複成価格は、1m2 当たりの固定資産税評価額相当額に、戸当たり敷地面積を乗じて算定する。
(イ) 戸当たり敷地面積は、工事設計要領書作成要領(昭和50年建設省住建発第38号住宅局住宅建設課長通達。以下「要領」という。)に定める1戸当たりの床面積を容積率で除して算出する。
(ウ) 容積率は、公営住宅の総床面積を総敷地面積で除して算出する。この総床面積は、要領による住戸専用面積に共用部分(廊下、階段等)の面積を合計したものとなっている。また、総敷地面積には、共同施設の敷地に相当する部分は含めないこととなっている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 8年より、新たに公営住宅の家賃が入居者の収入、公営住宅の立地条件等に応じて、近傍住宅家賃以下で定めることとされたことに伴って、交付されることとなった公営住宅家賃対策補助金の交付額が、公営住宅の建替えの推進等により年々増加してきている。そこで、同補助金の算定基礎である近傍住宅家賃が適切に算定されているかに着眼して検査した。

(検査の対象)

 青森県ほか21都府県(注1) 管内の176事業主体が建設し、10、11両年度に管理を開始した公営住宅について、11年度に公営住宅家賃対策補助金の交付申請をした27,592戸(補助基本額15,932,091千円、国庫補助金交付額8,260,123千円)を対象として検査した。

(検査の結果)

 検査の結果、宮城県ほか6都府県(注2) 管内の12事業主体の5,065戸(補助基本額2,624,568千円、国庫補助金交付額1,464,773千円)において、近傍住宅家賃の算定に当たり、適切でないと認められる事態が、次のとおり見受けられた。

(ア) 建物部分の複成価格に係る近傍住宅建設費の算定に当たり、事業主体が設定した標準的な建設費の額が、実際の建設費の額を上回っているのに、その標準的な建設費の額で算定していたもの
1県    事業主体数1  補助対象戸数  49戸
(イ) 土地部分の複成価格に係る容積率の算出に当たり、要領に基づく総床面積で算出すべきであるのに、これとは異なる建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)に基づく延べ面積により算出するなどしていたもの
5都府県  事業主体数6  補助対象戸数  3177戸
(ウ) 建物部分の複成価格に係る近傍住宅建設費の算定に当たり、共同施設の工事費を含めていたり、また、土地部分の複成価格に係る容積率の算出に当たり、共同施設の敷地を含めて算出したりするなどしていたもの
4都県   事業主体数5  補助対象戸数  1839戸

 したがって、上記のように、事業主体において、近傍住宅家賃の算定に当たって、多数の誤りが見られる事態は、本件補助制度の執行の上から適切でなく、改善の要があると認められた。

(過大に交付された補助金)

 上記により、適正な近傍住宅家賃を算定して修正計算すると、国庫補助金は1,425,976千円となり、約3870万円が過大に交付されていた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
(ア) 建設省において、近傍住宅家賃の算定方法について規定はしているものの、その算定の基礎となる容積率等の取扱いや共同施設の範囲が明確でなく、事業主体に対する指導が十分でなかったこと
(イ) 事業主体において、近傍住宅家賃の算定方法等について、運用通達等の趣旨の理解が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、建設省では、12年10月に都道府県に対して通達を発し、近傍住宅家賃の算定における共同施設等の取扱いやその趣旨を明示するとともに、その周知徹底を図り、補助事業の執行が適切に行われるよう処置を講じた。

(注1) 青森県ほか21都府県  東京都、大阪府、青森、宮城、福島、山形、栃木、茨城、千葉、埼玉、神奈川、新潟、静岡、愛知、石川、滋賀、兵庫、高知、福岡、熊本、鹿児島、沖縄各県
(注2) 宮城県ほか6都府県  東京都、大阪府、宮城、千葉、神奈川、愛知、兵庫各県