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  • 平成11年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第1 住宅金融公庫|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

宅地造成資金の貸付けに係る再申込みの取扱いを廃止するよう改善させたもの


宅地造成資金の貸付けに係る再申込みの取扱いを廃止するよう改善させたもの

科目 (貸付金)宅地造成貸付
部局等の名称 北海道、東北、東京、南関東、名古屋、大阪、中国、南九州各支店
貸付けの根拠 住宅金融公庫法(昭和25年法律第156号)
貸付種別 公的宅地造成資金、民間宅地造成資金
貸付けの内容 居住環境の良好な住宅地の大規模な供給、相当量の住宅地の早期供給などを図ることを目的として宅地造成を行う地方公共団体、地方住宅供給公社、民間会社等に対して行う資金の貸付け
貸付先 地方住宅供給公社等5、民間会社2、計7事業主体
貸付対象 8宅地造成事業
上記に対する平成11年度末貸付金残高合計額 587億5834万円
実際に徴収した利息額 126億8366万余円 (平成元年度〜11年度)
資金交付した時点の金利のままで貸し付けた場合に徴収できた利息額 167億1251万余円
開差額 40億2885万円

1 制度の概要

(宅地造成資金の概要)

 住宅金融公庫(以下「公庫」という。)では、住宅金融公庫法(昭和25年法律第156号)等に基づき、貸付業務の一環として、居住環境の良好な住宅地の大規模な供給、相当量の住宅地の早期供給及び良好な住宅街区の整備の促進を図るため、宅地造成を行う事業者(以下「事業主体」という。)に対して、土地の取得及び宅地の造成を行うために必要な資金の一部として、宅地造成資金を長期かつ低利で貸し付けている。
 この資金には公的宅地造成資金と民間宅地造成資金とがあり、その貸付けを受けることができる者は、それぞれ地方住宅供給公社等と民間会社等となっている。その主な貸付条件は、住宅金融公庫法施行令(昭和32年政令第70号。以下「施行令」という。)、「公的宅地造成資金貸付方針」(平成11年住公発第238号(融一)総裁通ちょう)等に基づき、貸付金利は借入申込時の固定金利、償還方法は造成宅地販売開始後に譲渡の都度又は年4回の元金均等償還、償還期間は事業の区分に応じ7年以内、10年以内又は15年以内としている。

(資金の貸付手続)

 公庫では、宅地造成資金の貸付手続について、次のように行うこととしている。
〔1〕 宅地造成資金の貸付けを受けようとする事業主体から宅地造成事業の事業計画を提出させる。
〔2〕 公庫は、その事業計画が適切と認めたときはその計画を承認する。
〔3〕 事業計画の承認を得た事業主体は、造成宅地の設計の内容について公庫が委託した地方公共団体から確認を受ける。
〔4〕 事業主体は、公庫に宅地造成資金の借入申込みを行う。
〔5〕 公庫は、貸付限度額の範囲内で貸付予約(注1) を行い、事業主体に貸付基本約定書を差し入れさせる。
〔6〕 公庫は、事業の進ちょくの状況に応じて資金を交付する。

(再申込みの概要)

 宅地造成資金の借入者は、「宅地造成資金融資の再申込みの取扱いについて」(昭和62年住公融二発第152号(宅)融資第二部長通ちょう)に基づき、借入申込みを行った後、貸付金利の引下げ等貸付条件が変更された場合、変更後の貸付条件の適用を受けるため、前の借入申込みを辞退し再度借入申込みを行うこと(以下「再申込み」という。)が認められている。そして、これにより、借入者は、貸付予約された資金の全部又は一部が未交付である場合、通常既に交付された資金も含めて、当該借入申込みに係る事業費の全部又は一部について宅地造成資金の再申込みができるよう取り扱われている。
 このうち、全事業費について再申込みの対象とする場合は、前に貸付予約された資金の全部について、貸付金利を再申込時の貸付金利とし、償還期間を当該貸付予約日から起算することとする新たな貸付予約を行うこととなっている。また、この場合、前の貸付予約に基づき既に交付されていた資金の償還と、再申込みに基づく同額の新たな資金の交付を同時に振り替えて処理するため、借入者は、交付されていた資金を実際に繰上償還する必要はなく、償還する資金に係る振替日までの利息を支払えばよいこととなっている。

(再申込みの取扱いの経緯)

 公庫では、宅地造成資金について再申込みの取扱いの制度を導入した理由について、事業者を支援して低廉な宅地を供給させるとともに、事務処理を簡素化するためとしている。
 そして、公庫では、この制度については、〔1〕再申込みを行えば借入者に抵当権の再設定等の事務負担が生じることとなるため、再申込みに対して一定の自発的な抑制が働くこと、〔2〕宅地造成資金の償還期間は個人住宅等に比べ短期間であることなどから公庫の財務に与える影響が少ないことなどを理由に、導入時の取扱いを現在まで継続してきている。
 なお、マイホーム新築資金等の個人関係貸付け及びファミリー賃貸住宅建設資金等の団体関係貸付けについては、資金交付後の再申込みは、借入申込受理日から最低6箇月間は再申込みを行うことができない期間とされていることなどから事実上できないことになっている。

貸付予約 借入者から申込みのあった資金について、公庫が借入者に対し一定の条件を付して、資金の貸付けを行う契約をすることをいう。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 近年、バブル経済崩壊以降の社会経済情勢の変化等により、事業の進ちょくが遅延している宅地造成事業が見受けられることなどから、このような状況下において、宅地造成資金の貸付制度がどのように運用されているかなどの点に着眼して検査した。

(検査の対象)

 公庫の北海道支店ほか9支店(注2) では、平成11年度末における宅地造成資金の貸付金残高は87事業、合計4471億4685万余円となっている。このうち、事業主体が再申込みを行った実績のあるものが、北海道支店ほか7支店(注3) において38事業(全体の43.6%)、11年度末貸付金残高合計2146億8533万余円に上っていた。
 そこで、この38事業から8事業、同587億5834万円を抽出して、これらについて再申込みの運用の実態について検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 各事業主体では、借入申込みに基づき貸付予約された資金の一部が既に交付されていたが、その資金を含む貸付予約された資金の全部について再申込みを1回から14回繰り返して行っていた(8事業における平均回数4.1回)。その結果、当初の貸付金利の2.75%から6.55%を、2.00%から3.75%へと大幅な引下げを受けるとともに、事業の区分に応じて設定した当初の償還期間の10年を、施行令で定める上限である10年を超えて実質的に17年とするなど償還期間が延長されていた。
 そして、上記8事業において、公庫が実際に徴収した利息の額は、当初の資金交付日から12年3月10日(公庫が利息を徴収するために定めている計算期間の最終日)までの間で126億8366万余円となっていた。
 しかし、資金交付した時点の貸付金利のままで貸し付けたこととして同日までに公庫が徴収できる利息額を計算すると167億1251万余円となり、上記の126億8366万余円と比べ40億2885万余円に上る多額の開差が生じることとなる。
 上記の事態は、前記の再申込みの導入理由等を考慮したとしても、公庫が多額の利息収入を逸失する結果になっているなど事業者に著しく有利に貸付条件の変更をもたらす結果となっていると認められた。
 したがって、公庫において、上記のような再申込みの繰返しを防止するため、宅地造成資金の貸付けに係る再申込みの取扱いの制度を抜本的に見直す要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、事業主体が既に交付された資金を含めて再申込みを繰り返し行うことは実質的に貸付条件の著しく有利な変更をもたらす事態になっていたにもかかわらず、公庫において、再申込みの運用の実態を十分調査せず、その対策を講ずるなど事態の改善に向けた有効な対応を執らなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公庫では、宅地造成資金の貸付けに係る再申込みの取扱いを12年10月末をもって廃止することとし、同年10月に各支店に対してその旨の通ちょうを発した。

(注2) 北海道支店ほか9支店 北海道、東北、北関東、東京、南関東、名古屋、大阪、中国、福岡、南九州各支店
(注3) 北海道支店ほか7支店 北海道、東北、東京、南関東、名古屋、大阪、中国、南九州各支店