科目 | (項)高速道路建設事業費 |
(項)社会資本整備事業費 | |
(項)負担金等受入建設費 | |
(項)受託関連街路建設費 | |
部局等の名称 | 東京建設局、湾岸線建設局 |
工事名 | SJ 35工区(5)トンネル工事(その2)ほか5工事 |
工事の概要 | 高速道路の建設工事の一環として、トンネルを掘削して高速道路を築造するなどの工事 |
工事費 | 471億5147万円 |
請負人 | 住友・アイサワ・日東SJ 35(5)トンネル特定建設工事共同企業体ほか5特定建設工事共同企業体 |
契約 | 平成8年3月〜12年2月 一般競争契約、随意契約 |
高圧噴射攪拌工費の積算額 | 18億6781万余円 |
低減できた高圧噴射攪拌工費の積算額 | 6750万円 |
1 工事の概要
首都高速道路公団(以下「公団」という。)の東京建設局及び湾岸線建設局では、平成11年度に、首都高速中央環状新宿線及び川崎縦貫線建設工事の一環として、トンネルを掘削して高速道路を築造するなどの工事を6工事(工事費総額471億5147万円)施行している。
上記の各工事では、トンネル掘削機の発進・到達基地となる立坑の周囲の地盤を強化するため、次のような高圧噴射攪拌工により、改良地盤を造成する地盤改良工事を実施している。
〔1〕 ボーリングマシンにより地盤を削孔し、そこに管内が三重になっているロッドを建て込む。
〔2〕 注入マシンにより、ロッドの先端ノズルより水と空気を高圧で噴射し、周囲の土を切削してスライム(軟泥)を地表に排出させながら、グラウトミキサから供給される硬化材を地盤に注入して円柱状に地盤を改良する。
そして、本件各工事においては、直径1.4mから1.8m、長さ3.0mから28.8mの円柱状の改良地盤を計1,108本造成している。
公団では、高圧噴射攪拌工費の積算に当たっては、その積算基準を制定していないことから、建設省制定の土木工事標準歩掛(以下「標準歩掛」という。)に基づき積算していた。この標準歩掛では、ボーリングマシンと注入マシンを各1台配置する場合には、労務編成は、削孔においては世話役、特殊作業員、普通作業員各1人を、注入においては世話役1人、特殊作業員4人及び普通作業員3人を配置することとし、また機械編成は、削孔においてはボーリングマシン、発動発電機(定格出力35kVA)等を各1台、注入においては注入マシン、発動発電機(定格出力150kVA)等を各1台配置することとしている。
そして、公団では、本件工事の施工規模が大きいことなどから、ボーリングマシンと注入マシンを2台ずつ配置することとし、その積算に当たっては、上記の1台当たりの労務及び機械編成をそのまま2台分計上し、高圧噴射攪拌工費を総額18億6781万余円と積算していた。
2 検査の結果
標準歩掛における労務及び機械編成は、ボーリングマシンと注入マシンを各1台配置して施工する場合を標準として定めたものであるが、上記のように、公団においては施工規模が大きいことなどによりそれぞれの機械を2台ずつ配置することが多いことから、積算が施工の実態に適合したものになっているかに着眼して検査した。
検査したところ、本件各工事においては、削孔、注入作業ともボーリングマシンと注入マシンをそれぞれ2台ずつ隣接した箇所に配置して同時に施工している状況であった。そしてこのような場合、指揮監督等の労務作業を兼任して効率的に行うことが可能であると認められた。
このことから、削孔、注入作業の状況について実態調査を行った。
(ア) 労務編成については、作業を指揮監督する世話役は、削孔、注入作業とも2台の機械を同時に指揮監督できるため、ボーリングマシンと注入マシン2台ずつに対し1人で施工が可能なものとなっていた。また、硬化材を供給するグラウトミキサの運転補助やスライム処理等の作業を行う注入の普通作業員は、2台分の作業を兼務して施工できるため、多くの現場において4人で施工していた。
(イ) 機械編成のうち発動発電機については、各現場ではボーリングマシンと注入マシン2台分の電力を大型の発電機により供給している状況であった。このような実態を踏まえ、ボーリングマシンと注入マシン2台ずつに必要な発電機を最も経済的となるよう組み合わせると、削孔については35kVAの発電機2台ではなく75kVAの発電機1台、注入については150kVAの発電機2台ではなく150kVA及び100kVAの発電機各1台となる。
したがって、上記(ア)及び(イ)に基づき、労務及び機械編成を1台で施工する場合よりも低減して積算すべきであると認められた。
現に、他団体においては高圧噴射攪拌工費の積算において、ボーリングマシンと注入マシンを2台ずつ配置する場合には、施工の実態等を考慮し労務及び機械編成を低減している状況である。
上記により、本件各工事における施工実態を基にした労務及び機械編成により高圧噴射攪拌工費を修正計算すると、18億0026万余円となり、前記の積算額18億6781万余円を約6750万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、高圧噴射攪拌工において、本件各工事のようにボーリングマシンと注入マシンを2台ずつ配置して施工する場合の施工実態を調査し、これを積算に反映させるための検討が十分行われていなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、公団では、12年11月に高圧噴射攪拌工費の積算が施工の実態に適合したものとなるよう積算の基準を制定し、同年同月以降に契約する工事から適用することとする処置を講じた。