科目 | (施設勘定) (項)事業収入 |
部局等の名称 | 東北、関東、大阪各労災病院 |
請求不足となっていた診療報酬 | 手術料、麻酔料等 |
請求不足額 | 24,756,670円 |
1 診療報酬の概要
労働福祉事業団が設置、運営している労災病院では、業務災害又は通勤災害により被災した労働者に対する診療を行うほか、保険医療機関として健康保険等の患者の診療を行っている。
このうち保険医療機関としての診療に要した費用については、「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(平成6年厚生省告示第54号。以下「厚生省告示」という。)等により、診療報酬として所定の診療点数に単価(10円)を乗ずるなどして算定することとなっている。そして、健康保険法(大正11年法律第70号)等により、診療報酬のうち患者負担分を患者に請求し、残りの診療報酬については、診療報酬請求書に診療報酬の明細を明らかにした診療報酬明細書を添付して社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連合会に対して請求することとなっている。
診療報酬は、厚生省告示により、基本診療料と特掲診療料から構成されている。
このうち、基本診療料は、初診、再診及び入院診療の際にそれぞれ行われる診療行為又は入院サービスの費用などを一括して算定するもので、初診料、再診料、入院料等に区分されている。
また、特掲診療料は、基本診療料として一括して算定することが妥当でない特別の診療行為に対し、個々に定められた診療点数によりその費用を算定するもので、手術料、麻酔料等に区分されている。
手術料は、厚生省告示により、所定の点数が定められており、以下のような算定方法となっている。
(ア) 結腸等の手術において悪性腫瘍手術を実施した場合は、通常の切除術等より高い所定点数を適用する。
(イ) 複数の皮切により2以上の手術を同時に実施した場合は、それぞれの手術の所定点数を合算する。
(ウ) 緊急のために、休日又は診療時間以外の時間に手術を開始した場合は、この手術の点数に、休日、深夜の場合はその100分の80、それ以外の場合は100分の40に相当する点数を加算する。
また、麻酔料は、厚生省告示により、所定の点数が定められており、伏臥位(ふくがい)における手術においてマスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔(注)
を実施した場合は、この麻酔の点数にその100分の50に相当する点数を加算して算定することとなっている。
労災病院では、これらの診療報酬請求事務をコンピュータシステムにより行っている。すなわち、手術等の診療行為を行った場合には、診療部門で手術名、麻酔の方法等を所定の用紙(以下「伝票」という。)に記載して料金算定部門に送付し、料金算定部門では、この伝票の記載内容をコンピュータに入力し、これにより診療報酬の算定を行っている。
2 検査の結果
東北労災病院ほか11労災病院における平成11年度の診療報酬の請求の適否について検査した。
検査の結果、東北、関東、大阪各労災病院において、診療報酬請求額が不足していたものが、699件、24,756,670円あった。
これらについて、その主な態様を診療報酬の別に示すと次のとおりである。
ア 手術料に関するもの
(ア) 結腸等の手術において悪性腫瘍手術を実施しているのに、これより所定点数の低い切除術等の点数を適用していた。
(イ) 複数の皮切により2以上の手術を同時に実施しているのに、それぞれの手術の所定点数を合算していなかった。
(ウ) 緊急のために、休日又は診療時間以外の時間に手術を開始しているのに、所定点数の100分の80又は100分の40を加算していなかった。
これらのため、手術料が過小に算定され、診療報酬請求額が252件、18,928,350円不足していた。
イ 麻酔料に関するもの
伏臥位における手術においてマスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔を実施しているのに、所定点数の100分の50を加算していなかった。
このため、麻酔料が過小に算定され、診療報酬請求額が136件、3,821,480円不足していた。
このような事態が生じていたのは、主として次のようなことによると認められる。
(ア) 診療部門において、手術、麻酔等の診療内容を伝票に正しく記載していなかったこと
(イ) 料金算定部門において、伝票の記載内容を十分確認しないままコンピュータに入力していたこと及びコンピュータのプログラムに麻酔料の加算を正しく設定していなかったこと
上記の事態を労災病院別に示すと次のとおりである。