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  • 平成11年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第11 日本原子力研究所|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

イオン照射研究施設を民間企業、大学等に利用させるに当たり、利用の実態に応じて利用料金を適切に算定し、徴収するよう改善させたもの


イオン照射研究施設を民間企業、大学等に利用させるに当たり、利用の実態に応じて利用料金を適切に算定し、徴収するよう改善させたもの

科目 (款)事業収入 (項)事業収入
部局等の名称 日本原子力研究所本部
イオン照射研究施設利用の概要 放射線利用の研究開発の一環として、日本原子力研究所の利用研究に支障のない範囲でイオン照射研究施設を民間企業、大学等の利用に供しているもの
契約の相手方 1会社、1大学、1財団法人
利用料金徴収額 2447万余円 (平成11年度)
利用料金として更に徴収できた額 2140万円

1 料金の概要

(イオン照射研究施設の概要)

 日本原子力研究所(以下「研究所」という。)では、放射線利用の研究開発の一環として、新たにイオンビーム(注1) を利用して材料科学、バイオ技術など先端科学技術の研究を推進するため、昭和63年3月より平成5年7月にかけて群馬県高崎市にイオン照射研究施設(以下「イオン照射施設」という。)を建設している。
 このイオン照射施設は、サイクロトロン、タンデム加速器、シングルエンド加速器及びイオン注入装置の4基の加速器(注2) から構成されていて、これら加速器により広範囲のエネルギーを持った多種類のイオンビームを試料に照射することが可能となっている。そして、研究所では、このようなイオンビームの照射を行うことにより新材料の創出や植物の品種改良技術などの研究を実施している。

(イオン照射施設の外部利用)

 近年、材料科学、バイオ技術の分野において、放射線の高度利用研究に対する需要が高まり、民間企業、大学等よりイオン照射施設の利用についての強い要望があることから、研究所では、研究所の利用研究に支障のない範囲でイオン照射施設を幅広く研究所以外の者の利用に供している。
 そして、この場合、研究所では、利用者から利用料金を徴収することとしている。
 イオン照射施設の利用を希望する者は、研究所が定めた「共同利用業務取扱規程」(昭和49年49達第5号。以下「規程」という。)により、必要事項を記載した利用申込書をあらかじめ研究所に提出し、各加速器の年間運転計画に基づいて、希望する加速器の利用予定日及び時間の割当配分を受け、利用終了後は、イオンビーム発生時間を記載した利用実施報告書を研究所に提出することになっている。

(利用料金の算定)

 研究所では、規程に基づき、利用料金を各加速器の1分当たりの利用料金単価(以下「単価」という。)にイオンビーム発生時間を乗じるなどして算定することとしている。
 このイオンビーム発生時間は、規程により、イオンビームを照射装置まで送る輸送時間、試料の照射条件に合わせるためにイオンビームを調整する調整時間及び試料に照射する照射時間の合計時間とされている。
 そして、11年度におけるイオン照射施設の外部利用件数及び利用料金の徴収額は、サイクロトロン32件18,485,520円、タンデム加速器4件1,249,010円、シングルエンド加速器1件235,600円及びイオン注入装置13件4,501,200円、計50件24,471,330円となっている。

(注1) イオンビーム 原子は、マイナスの電気を帯びた電子を1個以上失ったり、得たりすることで電気を帯びイオンとなる。このイオン化した原子群の特定方向への連続した流れをイオンビームという。
(注2) 加速器 イオンなどの粒子を電気的に加速し、高いエネルギー(速度)をもった粒子を作り出す装置。各加速器は粒子を加速する方法などによって種類が異なる。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 研究所では、イオン照射施設の維持、運営に多額の経費を要している。そして、前記のとおり、近年、イオン照射施設を利用した放射線の高度利用研究に対する需要が高まり、イオンビームの照射回数も年々増加してきていることから、利用料金の算定が利用の実態に即して適切なものとなっているかなどに着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、利用料金の算定について次のように適切とは認められない事態が見受けられた。
 すなわち、加速器の利用状況についてみると、研究分野の拡大に伴って照射試料が増加したため、ほとんどの利用者が1回の利用時間内で複数の試料に照射しており、それぞれの照射の間に試料の交換などの作業時間を要していて、利用時間に占めるこの作業時間の割合は、11年度で、サイクロトロン51%、タンデム加速器56%、シングルエンド加速器31%及びイオン注入装置14%程度となっていた。
 このように、試料交換等の作業が実施されているのに、この作業時間は前記のイオンビーム発生時間の中には含まれていなかった。
 一方、単価についてみると、次のようになっていた。すなわち、各加速器の単価を算定する際の原価は、その利用目的が研究開発用であることから、当該施設の減価償却費及び間接費を除いた年間の人件費、維持費、施設保守費、光熱水費等の合計額としていた。そして、これら加速器の運転は、イオンビーム発生時間や試料交換等の作業時間にかかわりなく運転日は連続運転を行うことになっていることから、各加速器の原価を、定期点検等のための運転休止期間を除いたすべての年間運転時間で除するなどして11年度の単価をサイクロトロン2,160円、タンデム加速器890円、シングルエンド加速器740円及びイオン注入装置810円と算定していた。
 上記のことから、単価は、当該加速器の運転休止期間を除くすべての年間運転時間を基に算定しているのであるから、この単価に乗ずべき時間は、利用者が加速器を専用している利用時間とすべきであり、試料交換等の作業時間を含まないイオンビーム発生時間としているのは適切とは認められない。
 したがって、利用料金の算定に当たっては、試料交換等の作業時間を含めて計算すべきものと認められた。

(試料交換等の作業時間を含めて算定した利用料金)

 イオン照射施設の利用料金の算定について、各加速器の単価に試料交換等の作業時間を含めたイオンビーム発生時間を乗じて計算したとすると、11年度の利用料金24,471,330円は、45,929,010円となり、差額約2140万円が更に利用料金として徴収できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、近年、加速器利用者のほとんどが1回の利用時間内で複数の試料に照射しているのに、この利用の実態を利用料金の算定に反映させていなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、研究所では、12年10月に、イオンビーム発生時間のうちの調整時間に試料交換等の作業時間を含めて利用料金を適切に算定することとする通達を発するとともに、利用者に周知を図り、13年1月以降の施設利用から適用することとする処置を講じた。