科目 | (款)鉄道事業営業費 |
部局等の名称 | 北海道旅客鉄道株式会社本社 |
契約名 | 車両清掃契約ほか6契約 |
契約の概要 | 運転所、折返駅等における旅客車・動力車の清掃や駅舎の通路等の清掃などの業務を実施するもの |
契約の相手方 | 北海道ジェイ・アール整備株式会社ほか1会社 |
契約 | 平成5年10月、7年3月 随意契約 |
支払額 | 21億1606万余円 | (平成11年度) |
健康保険料等の事業主負担分の積算額 | 1億6941万余円 | (平成11年度) |
低減できた積算額 | 2580万円 | (平成11年度) |
1 契約の概要
北海道旅客鉄道株式会社(以下「JR北海道」という。)では、旅客鉄道事業等の業務の一環として、運転所、折返駅等における旅客車・動力車の清掃や駅舎の通路等の清掃などの業務を委託して行っており、平成11年度では、計21億1606万余円を支払っている。
上記の各業務の委託費の積算に当たっては、JR北海道本社が車両清掃作業等の業務別に定めた「予定価格積算標準」(以下「積算標準」という。)に基づき算定している。
積算標準では、上記の業務を行うために必要な経費を労務費、物件費、管理費等に区分している。このうち労務費は、基準日額、諸手当、法定福利費等から構成されており、さらに、法定福利費については、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、児童手当拠出金及び労働者災害補償保険料の事業主負担額を算定することとなっている。
上記の法定福利費については、関係法令(注1) 及び積算標準に基づき積算していた。このうち健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料及び児童手当拠出金(以下「健康保険料等」という。)の事業主負担額については、車両清掃等の作業に従事する者(以下「作業従事者」という。)全員を保険料の徴収対象者として、次のように積算していた。そして、これらを合計するなどして法定福利費を計1億6941万余円と積算していた。
〔1〕 健康保険料
健康保険料の事業主負担額については、基準日額、諸手当(期末手当を除く。)等の合計額に保険料率1000分の42.5を乗じるなどして積算していた。
〔2〕 厚生年金保険料
厚生年金保険料の事業主負担額については、基準日額、諸手当(期末手当を除く。)等の合計額に保険料率1000分の86.75を乗じるなどして積算していた。
〔3〕 雇用保険料
雇用保険料の事業主負担額については、基準日額、諸手当等の合計額に保険料率1000分の7.5を乗じて積算していた。
〔4〕 児童手当拠出金
児童手当拠出金の事業主負担額については、基準日額、諸手当(期末手当を除く。)等の合計額に児童手当拠出金率1000分の1.1を乗じて積算していた。
2 検査の結果
本件業務の作業従事者には、多数の短時間就労者(いわゆるパートタイマー)及び高年齢者が見受けられている。そして、関係法令によると、短時間就労者や高年齢者の場合の健康保険料等の徴収及び加入等の要件については次のようになっている。
(ア) 短時間就労者について
〔1〕 健康保険、厚生年金保険及び雇用保険(以下「健康保険等」という。)については、1週間当たりの所定労働時間が一定の時間数を超えるなどの加入要件(注2)
に該当しない者は保険料徴収の対象外となる。
〔2〕 児童手当拠出金については、厚生年金保険の被保険者でない者は、拠出金徴収の対象外となる。
(イ) 高年齢者について
〔1〕 厚生年金保険については、65歳以上の者は被保険者の資格を喪失し、保険料徴収の対象外となる。
〔2〕 雇用保険については、保険年度の初日(4月1日)において64歳以上の者はその保険料の納付が免除される。
〔3〕 児童手当拠出金については、65歳以上の者は拠出金徴収の対象外となる。
そこで、法定福利費の積算が雇用の実態を反映したものとなっているかという点に着眼して検査した。
検査したところ、次のような状況となっていた。
作業従事者には健康保険料等の徴収対象者に該当しない短時間就労者や高年齢者が多数見受けられるのに、JR北海道では、業務委託会社の作業従事者の各保険への加入状況について把握していなかった。
そこで、業務委託会社2社の作業員の11年4月1日現在の健康保険等への加入状況について調査したところ、上記の各保険の加入要件に該当しないことから加入していない短時間就労者や保険料の徴収対象者に該当しない高年齢者が多数いて、その割合は、2社平均で健康保険14.3%、厚生年金保険18.4%(児童手当拠出金も同率)、雇用保険20.3%となっていた。
したがって、健康保険料等の事業主負担額の積算に当たっては、雇用の実態を反映させ、健康保険料等の徴収対象者に係る分を計上すれば足りると認められた。
上記により、健康保険料等の事業主負担額について、業務委託会社別に健康保険等への加入割合を算出しその割合等を基に修正計算すると、法定福利費は1億4356万余円となり、前記の積算額を約2580万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、健康保険料等の事業主負担額の積算に当たり、雇用の実態を積算標準に反映させる配慮に欠けていたことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、JR北海道では、12年10月に、健康保険料等の事業主負担額の積算に当たり、毎年度、定期的に作業従事者の健康保険等への加入状況について調査を行い、これを翌年度の積算に反映させるよう積算標準を改める処置を講じた。