科目 | (款)鉄道事業営業費 |
部局等の名称 | 本社及び長崎、大分、熊本、鹿児島各支社 |
工事名 | 香椎管理室軌道整備1ほか124工事 |
工事の概要 | 列車運転の安全を確保するために、レールや枕木の交換、道床バラストのつき固め、道床整理などを行う工事 |
工事費 | 24億5875万余円 |
請負人 | 九鉄工業株式会社ほか1会社 |
契約 | 平成10年3月〜12年3月 随意契約 |
道床整理作業費の積算額 | 7895万余円 |
低減できた道床整理作業費の積算額 | 2460万円 |
1 工事の概要
九州旅客鉄道株式会社(以下「JR九州」という。)本社及び長崎支社ほか3支社(注1)
では、平成10年3月から12年3月までの間に、軌道整備工事を125工事(工事費総額24億5875万余円)施行している。
これらの工事は、列車運転の安全を確保するためにレールや枕木の交換、道床バラストのつき固め、道床整理などの作業を行うものである。このうち、道床整理作業は、道床バラストのつき固めによって道床法面のバラストが乱れるため、軌道モーターカーにブレード(注2)
を装着した道床整理作業車(以下「作業車」という。)を使用してバラストのかき上げ及び道床肩の整形を行うものである(参考図1参照)
。
道床整理作業は、8年9月に本社が制定した「道床整理作業車による道床整理作業要領」等(以下「作業要領」という。)によれば、事前調査、本作業、作業車点検の各作業により構成されており、いずれの作業も、車上オペレータと地上員によって次のように行うこととなっている。
(ア) 事前調査は、本作業に先立ち2人の作業員が線路を歩きながら、道床法面の片側について、本作業に支障となるケーブル、トラフ等の構造物を確認し、これらに目印を付すなどする(参考図2参照)
。
(イ) 本作業は、作業車が1回走行することにより、道床法面の片側のみについてバラストのかき上げ及び道床肩の整形を行う(以下、この作業方法を「片側施工」という。)。この作業において、地上員は車上オペレータに対し目標とする道床形状に仕上がるようブレードの操作の指示等を行い、車上オペレータはこの指示を受けてブレードの操作等を行う(参考図3参照)
。
(ウ) 作業車点検は、2人の作業員が作業の前後に作業車の点検を行う。
JR九州では、8年9月に本社が制定した「道床整理機作業外注積算要領(案)」(以下「積算要領」という。)において、道床整理作業に適用する歩掛かり及び地上員の職種を次のとおり定めている。
〔1〕 歩掛かりについて
事前調査、本作業、作業車点検の各作業に適用する歩掛かりについては、線路の片側1km当たりの施工に必要となる作業員の人工数を定めている。
〔2〕 地上員の職種について
地上員の職種は、特殊運転手を適用することとしている。この特殊運転手は軌道モーターカーの運転等について相当程度の技能を有し、その主体的業務を行う者であるとされている。
そして、JR九州では、積算要領に基づき、上記の歩掛かりに特殊運転手の労務単価を乗じるなどして1m当たりの作業費を算出し、これに施工延長を乗じて本件125工事(総施工延長1,126.9km)の道床整理作業費を総額7895万余円と積算していた。
2 検査の結果
JR九州では、道床整理作業について、近年、作業車を逐次導入することにより作業の機械化を図ってきている。そこで、その作業が効率的に行われ経済的なものとなっているか、また、その積算が作業の実態等に適合したものとなっているかという点に着眼して検査した。
検査したところ、道床整理作業の方法及び道床整理作業費の積算について、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
(1) 道床整理作業の方法について
道床整理作業のうち本作業については、作業車の両側にブレードが装着されていることから、線路が単線であってその両側に道床法面がある場合には、両側を同時に施工する方法(以下「両側施工」という。)が一般的であると認められた。そして、両側施工によれば、片側施工と比べて地上員が線路の両側に1人ずつ配置されるため、作業員数が2人から3人に増えるものの、単位時間当たりの施工延長が片側施工の2倍になることから作業が効率的に行われると認められた(参考図3参照) 。
(2) 道床整理作業費の積算について
〔1〕 歩掛かりについて
(ア) 事前調査について作業の実態を調査したところ、道床法面の片側につき1人の作業員が支障となる構造物を確認するなどしていた(参考図2参照)
。
(イ) 作業車点検の歩掛かりについては、前記のとおり作業員の人工数を線路の片側1km当たりのものとして定めているが、この人工数は作業車点検1回当たりのものであった。
〔2〕 地上員の職種について
地上員の職種については、その作業内容をみると、軽機械等を使用してレールの修正保守作業などの業務を行う軌道工を適用するのが適切であると認められた。
したがって、本件各工事の道床整理作業について、作業を効率的に行って経済的なものとするよう作業要領を改めるとともに、積算が作業の実態等に適合するよう積算要領を改める要があると認められた。
本件各工事の道床整理作業費について、作業方法を両側施工とし、また作業の実態等に適合した歩掛かり及び職種として修正計算すると、積算額は総額5430万余円となり、前記の積算額を約2460万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、道床整理作業の作業方法について、作業を効率的に行って経済的なものとするための検討が十分でなかったこと及び作業の実態を積算に反映させるための配慮が十分でなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、JR九州では、12年10月に、道床整理作業について、作業を効率的に行って経済的なものとなるよう作業要領を改正するとともに、積算が作業の実態等に適合するよう積算要領を改正し、同年11月以降締結する契約から適用することとする処置を講じた。