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  • 平成12年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第4 法務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

地図管理システムの賃借料等の予定価格の積算が適切なものとなるよう改善させたもの


 地図管理システムの賃借料等の予定価格の積算が適切なものとなるよう改善させたもの

会計名及び科目 登記特別会計 (項)事務取扱費
部局等の名称 東京法務局ほか11法務局
契約名 地図管理システム賃貸借契約
地図管理システム保守契約
契約の概要 登記所に導入している地図管理システムを賃借しているもの及び購入分も含めてその保守を委託しているもの
契約の相手方 国土情報開発株式会社
国土情報リース株式会社
契約 平成11年4月、12年4月
賃借料、保守料の積算額 1億5755万余円 (平成11、12両年度)
低減できた積算額 1010万円

1 契約の概要

(地図管理システムの概要)

 法務省では、不動産登記法(明治32年法律第24号)等に基づき、全国の法務局(地方法務局を含む。以下同じ。)又はその支局若しくは出張所において、不動産に関する権利についての登記事務等を処理している。そして、登記事務等を行うこれらの部局(以下「登記所」という。)では、土地について登記簿と現地との関係を明らかにするため、同法第17条による地図等を備えて分筆時における分筆線の書き入れなどの事務を行っている。
 近年、測量技術等の著しい進歩などにより、精度の高い地図が登記所に備えられるようになり、登記所においてこの精度の高い地図を十分に管理・利用する体制の整備が必要となった。
 そこで、法務省では、平成5年度以降、地図の精度を維持するとともるこ、登記所における事務処理を効率的に行うため、地図管理のために開発された特殊なソフトウェアを組み込んだ本体装置と地図情報を入力、出力するための周辺装置等から構成された地図管理システム(以下「システム」という。)を登記所に順次導入してきている。
 システムは、12年度末までに、全国823登記所のうち108登記所に1セットずつ導入されている。システムを登記所に導入するに当たっては、法務省では、購入の場合は本省で一括して契約を行い、賃貸借の場合は法務局で契約することとしていた。そして、システムが導入された後、法務局では、安定した運用を図るため、点検、部品の交換、調整等を行う保守契約を結んでいた。

(賃借料等の予定価格の積算)

 東京法務局ほか11法務局(注1) 管内の24登記所では、7年度にK−20型を購入で8セット、8年度に賃貸借で4セット、9年度にK−25W型を賃貸借で12セットをいずれもシステムの開発会社又は同会社の関係会社との購入契約又は賃貸借契約により導入しており、導入後は、これらの24セットについて、各法務局で開発会社と保守契約を結んでいた。
 各法務局では、上記賃借料及び保守料の積算について、一般に公表されている積算参考資料に基づいて算定していた。この積算参考資料によれば、賃借料及び保守料については、物件の標準価格に・一定の料率を乗じるなどして算出することとなっているが、システムが登記事務処理用の独自の仕様となっているため、各法務局では、それぞれ個別に開発会社等に依頼して機種ごとの価格証明書を入手し、その価格を採用するなどして賃借料及び保守料を算定していた。
 そして、本件24登記所については、11、12両年度の賃借料及び保守料を、それぞれ16登記所で1億1839万余円、24登記所で3915万余円、計1億5755万余円と積算していた。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 システムは、今後も引き続き導入することが見込まれていることから、各法務局において、システムの賃借料及び保守料の積算が適切なものとなっているかに着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、前記東京法務局ほか11法務局のうち、大阪法務局ほか6法務局(注2) 管内の10登記所に係る賃借料及び保守料の積算について、次のような事態が見受けられた。
 上記10登記所の11、12両年度の賃借料及び保守料の積算額は、それぞれ6登記所で4866万余円、10登記所で1426万余円、計6293万余円となっていた。
 そして、前記の7法務局が価格証明書を基に採用した価格は、K−20型については14,013,000円から18,961,000円、K−25W型については14,861,700円から18,141,000円となっていた。一方、これらのシステムについては、本省で一括して購入している機種があり、また、すべて賃借している機種についても、本省において購入と賃借の比較検討のために購入する場合の見積価格を徴しており、これらの購入価格や見積価格(以下、これらの価格を「本省の購入価格等」という。)は、K−20型は13,600,000円、K−25W型は14,154,000円と、いずれも7法務局が採用した価格よりも低額なものとなっていた。
 前記の積算参考資料によれば、賃借料及び保守料の算定には、物件の標準価格を用いることとされており、法務省独自の仕様となっている本件の場合、実際の購入価格や見積価格である本省の購入価格等が、実態を反映した標準価格に相当するものとして当然参酌すべきであったと認められた。

(低減できた積算額)

 上記により、前記の7法務局において、本省の購入価格等に基づき11、12両年度の賃借料及び保守料を修正計算すると、それぞれ4126万余円、1147万余円、計5274万余円となり、前記の積算額を約1010万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、法務省において各法務局の賃借料及び保守料の積算の実態を把握しておらず、各法務局に対して、本省の購入価格等を示すなどの方策を講じていなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、法務省では、13年10月に各法務局に通知を発して、地図管理システムの賃借料及び保守料の予定価格に関する積算基準を定め、本省の購入価格等を随時各法務局へ連絡し、各法務局ではこれを参考とした上で適切な価格を把握し、これを同月以降積算する契約に反映させる処置を講じた。

(注1) 東京法務局ほか11法務局 東京、大阪、名古屋、広島、高松各法務局及び前橋、和歌山、山口、長崎、熊本、秋田、釧路各地方法務局
(注2) 大阪法務局ほか6法務局 大阪、名古屋、高松各法務局及び和歌山、山口、熊本、秋田各地方法務局