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  • 平成12年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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大学病院における診療報酬の請求に当たり、手術料等の請求額が不足していたもの


(55)−(66)大学病院における診療報酬の請求に当たり、手術料等の請求額が不足していたもの

会計名及び科目 国立学校特別会計 (款)附属病院収入 (項)附属病院収入
部局等の名称 北海道大学ほか11大学(12大学病院)
請求不足となっていた診療報酬 手術料、麻酔料、入院料等など
請求不足額 70,815,750円(平成12年度)

1 診療報酬の概要

(診療報酬の算定及び請求)

 国立大学の医学部に附属する病院(以下「大学病院」という。)では、臨床医学の教育・研究を行うほか、保険医療機関として患者の診療を行っている。
 保険医療機関は、「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(平成6年厚生省告示第54号。以下「厚生省告示」という。)等により、診療報酬として医療に要する費用を所定の診療点数に単価(10円)を乗じて算定することとなっている。そして、健康保険法(大正11年法律第70号)等により、診療報酬のうち患者負担分を患者に請求し、残りの診療報酬については、診療報酬請求書に診療報酬の明細を明らかにした診療報酬明細書を添付して社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連合会に対して請求することとなっている。

(診療報酬の構成)

 診療報酬は、厚生省告示により定められていて、基本診療料と特掲診療料から構成されている。
 このうち、基本診療料は、初診、再診及び入院診療の際にそれぞれ行われる診療行為又は入院サービスの費用などを一括して算定するもので、初・再診料と入院料等に区分されている。
 また、特掲診療料は、基本診療料として一括して算定することが妥当でない特別の診療行為に対し、個々に定められた診療点数によりその費用を算定するもので、検査料、手術料、麻酔料等に区分されている。

(入院料等、手術料及び麻酔料)

 基本診療料の入院料等には、入院基本料、入院基本料加算等がある。この入院基本料加算のうち、難病患者等入院診療加算は、特定の疾患のために日常生活動作に著しい支障がある患者が入院治療中の場合に、所定の点数を加算して算定することとなっている。
 特掲診療料のうち手術料は、所定の点数が定められており、手術において特定保険医療材料(注1) を使用した場合は、この手術の点数に購入価格等に基づく特定保険医療材料の点数を合算した点数により算定することとなっている。
 また、麻酔料は、所定の点数が定められており、マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔(注2) を、人工心肺を用い低体温で行う心臓手術で実施した場合は、この麻酔の点数にその100分の200に相当する点数を加算して算定することとなっている。

(大学病院における診療報酬の請求事務)

 大学病院では、これらの診療報酬請求事務をコンピュータシステムにより行っている。すなわち、手術等の診療行為を行った場合には、診療部門で入院中の患者の状態、手術名、麻酔の方法、使用した特定保険医療材料等を所定の用紙(以下「伝票」という。)に記載するなどして料金算定部門に送付する。一方、保険医療材料を購入する調達部門では、診療報酬の請求に必要な特定保険医療材料等の価格等のデータを料金算定部門に送付する。そして、料金算定部門では、各大学病院で登録した診療行為、加算項目、特定保険医療材料等のデータに付与されたコード番号を、伝票に基づいてコンピュータに入力するなどし、これにより診療報酬の算定を行っている。

(注1) 特定保険医療材料 手術等の所定点数に併せてその費用を算定することができるものとして厚生大臣が定めている保険医療材料で、人工血管、人工心肺回路等がこれに該当する。
(注2) 閉鎖循環式全身麻酔 閉鎖循環式全身麻酔器を用いて、患者の呼気中の炭酸ガスを除去しながら、麻酔ガスと酸素を補給する吸入麻酔法

2 検査の結果

(検査の着眼点及び対象)

 大学病院は、地域の中核的な医療機関として高度な医療を提供しており、その診療報酬の請求内容は多岐にわたっており、その額も多額に上っている。そこで、診療報酬が適正に算定されているかに着眼して、北海道大学ほか26大学の27大学病院における平成12年度の診療報酬の請求について検査した。

(請求不足の事態)

 検査の結果、北海道大学ほか11大学の12大学病院において、診療報酬請求額が不足していたものが、3,746件、70,815,750円あった。
 これらについて、その主な態様を診療報酬の別に示すと次のとおりである。

ア 手術料に関するもの

 上記の12大学病院では、手術において人工血管、人工心肺回路等の特定保険医療材料を使用しているのに、これらの特定保険医療材料の点数を、合算していなかったり、誤って算定していたりなどしていた。
 このため、手術料が過小に算定され、診療報酬請求額が2,347件、47,070,360円不足していた。

イ 麻酔料に関するもの

 12大学病院では、マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔を、人工心肺を用い低体温で行う心臓手術で実施しているのに、100分の200の加算を行っていないなどしていた。
 このため、麻酔料が過小に算定され、診療報酬請求額が157件、8,715,280円不足していた。

ウ 入院料等に関するもの

 12大学病院のうち9大学病院では、難病患者等入院診療加算の算定対象となる患者が入院しているのに、所定の点数を加算していないなどしていた。
 このため、入院料等が過小に算定され、診療報酬請求額が186件、4,776,180円不足していた。
 このような事態が生じていたのは、主として次のようなことによると認められる。
(ア)診療部門において、手術で使用した特定保険医療材料、麻酔の方法、患者の状態等の伝票への記入を漏らすなど診療内容を伝票に正確に記載していなかったこと
(イ)料金算定部門において、伝票の記載内容を十分確認しないままコンピュータに入力していたこと
(ウ)料金算定部門と調達部門との連絡が取られていなかったために、登録されていた特定保険医療材料のデータが誤っていたこと
 上記の事態を大学病院別に示すと次のとおりである。

大学病院における診療報酬の請求に当たり、手術料等の請求額が不足していたものの図1