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義務教育費国庫負担金等の経理が不当と認められるもの


(67)−(69)義務教育費国庫負担金等の経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)文部本省  (項)義務教育費国庫負担金
 (項)養護学校教育費国庫負担金
部局等の名称 東京都ほか2県
国庫負担の根拠 義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)、公立養護学校整備特別措置法(昭和31年法律第152号)
事業主体 東京都ほか2県
国庫負担の対象 公立の小学校、中学校、中等教育学校の前期課程並びに盲学校、聾(ろう)学校及び養護学校の小学部及び中学部に要する経費のうち教職員給与費等
上記に対する国庫負担金交付額の合計 185,744,986,590円 (平成9年度〜11年度)
不当と認める国庫負担金交付額 54,469,419円 (平成9年度〜11年度)

1 国庫負担金の概要

(義務教育費国庫負担金等の概要)

 義務教育費国庫負担金及び養護学校教育費国庫負担金は、義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)及び公立養護学校整備特別措置法(昭和31年法律第152号)に基づき、公立の義務教育諸学校(小学校、中学校、中等教育学校の前期課程並びに盲学校、聾(ろう)学校及び養護学校の小学部及び中学部)に要する経費のうち都道府県の負担する教職員給与費等の経費について、原則としてその実支出額を国庫負担対象額とし、その2分の1を国が負担するため都道府県に交付するものである。
 ただし、〔1〕財政力指数(注) が1を超える都道府県、〔2〕財政力指数が1以下で、かつ、教職員の実数が標準定数を超えているか又は教職員の給与水準が国立の義務教育諸学校の教職員の水準を上回っている都道府県については、「義務教育費国庫負担法第二条但書の規定に基き教職員給与費等の国庫負担額の最高限度を定める政令」(昭和28年政令第106号)等により、その財政力に応じて、国庫負担額の最高限度が定められている。
 教職員の標準定数は、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(昭和33年法律第116号)等に基づき、都道府県全体の公立の義務教育諸学校について、学校の種類(小学校、中学校など)及び教職員の職種区分ごとに、学校数、学級数等を基礎として算定されることとなっている。
 そして、国庫負担額の最高限度は、次のように算定した国庫負担対象額の2分の1とすることとされている。

(1)財政力指数が1を超える都道府県について

 当該年度の5月1日現在において算定した教職員の標準定数の合計数に、同日現在における休職者等の実数を加えるなどして算定した数を教職員定数とし、この教職員定数に、毎年度、教職員給与費等の種類ごとに別に政令で定める額を乗ずるなどして算定した額の合計額

(2)財政力指数が1以下の都道府県について

 教職員の職種等の区分ごとに、教職員給与費等の種類ごとの実支出額から次の額を控除するなどして算定した額の合計額
〔1〕 教職員の毎月の実数と毎月算定した標準定数とを比較して、実数が標準定数を超過する場合に、その超過する割合を給料等の実支出額に乗じて算定した
〔2〕 管理職手当等の諸手当について、国家公務員の例に準じて、毎年度、文部科学大臣(平成13年1月5日以前は文部大臣)が財務大臣(13年1月5日以前は大蔵大臣)と協議して定めるところ(以下「文部科学大臣の定め」という。)により算定した額を超過した額
〔3〕 養護学校等のうち小学部及び中学部のほか幼稚部又は高等部を置く学校については、幼稚部又は高等部の教職員に係る給与費等の額

財政力指数 地方交付税法(昭和25年法律第211号)第14条の規定により算定した基準財政収入額を同法第11条の規定により算定した基準財政需要額で除して得た数値で当該年度前3年度内の各年度に係るものを合算したものの3分の1の数値

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 本院は、義務教育費国庫負担事業等の事業規模にかんがみ、これまで標準定数の算定、各種手当等の算定、国庫負担の対象とならない教職員に係る給与費等の算定に順次着眼して検査を行ってきている。そして、本年の検査に当たっては、教職員の実数又は標準定数の算定が適切に行われているかなどに着眼して検査を行った。

(検査の結果)

 北海道ほか25都府県について検査したところ、財政力指数が1を超える東京都及び財政力指数が1以下の新潟、山口両県において、教職員の標準定数や諸手当の額の算定を誤るなどしていたため、国庫負担金54,469,419円が過大に交付されていて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、上記の3都県が、国庫負担対象額を算定するに当たり、教職員の給与関係の事務を所掌する部署において、教職員の標準定数の算定の基礎となる学級数を十分確認していなかったこと、諸手当に係る国庫負担対象の範囲についての認識が十分でなかったことなどによるものである。
 これを、都県別に示すと次のとおりである。

都県名 年度 国庫負担対象額 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象額 不当と認める国庫負担金
千円 千円 千円 千円
 (義務教育費国庫負担金)
(67) 新潟県 9 129,636,050 64,818,025 6,059 3,029
10 129,024,573 64,512,286 5,413 2,706
小計 258,660,623 129,330,311 11,473 5,736
 新潟県では、9、10両年度とも管理職手当に係る実支出額の全額を含めるなどして国庫負担対象額を算定していた。
 しかし、文部科学大臣の定めによれば、国家公務員の例に準ずるべき額の算定に用いる管理職手当の支給率は学校の規模等に応じて定められており、さらに、大規模校(注1) 及び特大規模校(注2) として取り扱うことのできる学校数に上限が設けられている。
 そこで、これにより算定すると、大規模校が9年度15校及び10年度16校、特大規模校が9、10両年度とも4校、学校数の上限を超えており、このため、管理職手当の実支出額が国家公務員の例に準ずるべき額を超過していた。
 この結果、国庫負担対象額が9年度6,059,560円、10年度5,413,475円それぞれ過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、9年度64,814,995,337円、10年度64,509,580,010円となり、9年度3,029,780円、10年度2,706,738円、計5,736,518円が過大に交付されていた。
(注1) 大規模校 学級数が18学級以上の小学校又は学級数が15学級以上の中学校
(注2) 特大規模校 大規模校のうち特に規模の大きな学校(原則として小学校は24学級以上、中学校は18学級以上)で帰国子女受入校、特殊学級設置校、研究指定校であるなど、校長の職務が特に困難な学校
(68) 山口県 10 77,713,199 38,856,599 58,828 29,414
 山口県では、国庫負担対象額を算定する資料に盲学校の高等部の学級数を誤って実際より6学級少なく記入するなどしていたため、教職員給与費等の実支出額から控除する高等部の教職員に係る給与費等の額を過小に算定していた。
 この結果、国庫負担対象額が58,828,539円過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、38,827,185,256円となり、29,414,269円が過大に交付されていた。
 (養護学校教育費国庫負担金)
(69) 東京都 10 17,065,715 8,532,857 22,811 11,405
11 18,050,435 9,025,217 15,825 7,912
35,116,150 17,558,075 38,637 19,318
 東京都では、養護学校の小学部及び中学部の教職員に係る標準定数を算定するに当たり、その算定の基礎となる学級数に5月1日現在児童又は生徒が在籍していない学級を、10、11両年度ともそれぞれ1学級含めていた。
 しかし、児童又は生徒が在籍していない学級は標準定数の算定の基礎となる学級数に含めないものであるので、これらを含めて標準定数を算定していたのは誤りであり、ひいては、この標準定数を基礎として算定した教職員定数が10年度3人、11年度2人過大になっていた。
 この結果、国庫負担対象額が10年度22,811,424円、11年度15,825,839円それぞれ過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、10年度8,521,451,842円、11年度9,017,304,726円となり、10年度11,405,712円、11年度7,912,920円、計19,318,632円が過大に交付されていた。
(67)-(69)の計 9 129,636,050 64,818,025 6,059 3,029
10 223,803,487 111,901,743 87,053 43,526
11 18,050,435 9,025,217 15,825 7,912
371,489,973 185,744,986 108,938 54,469