会計名及び科目 | 一般会計 (組織)厚生労働本省 | (項)精神保健費 (項)生活保護費 (項)身体障害者保護費 (項)老人福祉費 (項)児童保護費 (項)国民健康保険助成費 |
厚生保険特別会計(健康勘定) | (項)保険給付費 (項)老人保健拠出金 (項)退職者給付拠出金 |
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船員保険特別会計 | (項)保険給付費 (項)老人保健拠出金 (項)退職者給付拠出金 |
部局等の名称 | 社会保険庁、北海道ほか29都府県 |
国の負担の根拠 | 健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、老人保健法(昭和57年法律第80号)、生活保護法(昭和25年法律第144号)、知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)、身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)等 |
医療給付の種類 | 健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、老人保健法、生活保護法、知的障害者福祉法、身体障害者福祉法等に基づく医療 |
実施主体 | 国、都道府県33、市564、特別区23、町1,137、村178、国民健康保険組合96、計2,032実施主体 |
医療機関 | 351医療機関 |
不適切に支払われた医療費に係る診療報酬 | 入院基本料、入院基本料加算、特定入院料等 |
不適切に支払われた医療費の件数 | 317,933件(平成9年度〜13年度) |
不適切に支払われた医療費の額 | 3,193,722,503円(平成9年度〜13年度) |
不当と認める国の負担額 | 1,828,463,586円(平成9年度〜13年度) |
1 医療給付の概要
厚生労働省(平成13年1月5日以前は厚生省)の医療保障制度には、老人保健制度、医療保険制度及び公費負担医療制度があり、これらの制度により次の医療給付が行われている。
(ア)老人保健制度の一環として、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が老人保健法に基づき、健康保険法、船員保険法及び国民健康保険法(以下「医療保険各法」という。)による被保険者(被扶養者を含む。以下同じ。)のうち、当該市町村の区域内に居住する老人(70歳以上の者又は65歳以上70歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。)に対して行う医療
(イ)医療保険制度の一環として、医療保険各法に規定する保険者が、医療保険各法に基づき被保険者((ア)の老人を除く。)に対して行う医療
(ウ)公費負担医療制度の一環として、都道府県、市町村が、生活保護法に基づき要保護者に対して行う医療、知的障害者福祉法に基づき知的障害者に対して行う医療、身体障害者福祉法に基づき身体障害者に対して行う医療等
これらの医療給付においては、被保険者(上記(ウ)の要保護者、知的障害者、身体障害者等を含む。以下同じ。)が医療機関で診察、治療等の診療を受け、市町村、保険者又は都道府県(以下「保険者等」という。)及び患者がその費用を医療機関に診療報酬として支払う。
診療報酬の支払の手続は、次のとおりとなっている(次図参照)。
(ア)診療を担当した医療機関は、診療報酬として医療に要する費用を所定の診療点数に単価(10円)を乗じるなどして算定する。
(イ)医療機関は、上記診療報酬のうち、患者負担分を患者に請求し、残りの診療報酬(以下「医療費」という。)については、老人保健に係るものは市町村に、医療保険各法に係るものは各保険者に、また、公費負担医療制度に係るものは都道府県又は市町村に請求する。
このうち、保険者等に対する医療費の請求は、次のように行われている。
〔1〕 医療機関は、診療報酬請求書(以下「請求書」という。)に診療報酬の明細を明らかにした診療報酬明細書(以下「レセプト」という。)を添付して、国民健康保険団体連合会又は社会保険診療報酬支払基金(以下「審査支払機関」と総称する。)に毎月1回送付する。
〔2〕 審査支払機関は、請求書及びレセプトに基づき請求内容を審査点検した後、医療機関ごと、保険者等ごとの請求額を算定し、その後、請求額を記載した書類と請求書及びレセプトを各保険者等に送付する。
(ウ)請求を受けた保険者等は、それぞれの立場から医療費についての審査点検を行って金額等を確認の上、審査支払機関を通じて医療機関に医療費を支払う。
保険者等が支払う医療費の負担は次のようになっている。
(ア)老人保健法に係る医療費については、老人の居住する市町村が審査支払機関を通じて支払うものであるが、この費用は国、都道府県、市町村及び保険者が以下のように負担している(次図参照)。
〔1〕 老人保健法により、老人医療費については、国は10分の2を、都道府県、市町村はそれぞれ10分の0.5ずつを負担することになっており、残りの10分の7については各保険者が拠出する老人医療費拠出金が財源となっている。
〔2〕 国民健康保険法により国は市町村等が保険者として拠出する老人医療費拠出金の納付に要する費用の額の一部を負担している。
〔3〕 健康保険法等により国は政府管掌健康保険等の保険者として老人医療費拠出金を納付している。
(イ)医療保険各法に係る医療費については、国は、患者が、〔1〕政府管掌健康保険等の被保険者である場合の医療費は保険者としてその全額を、〔2〕市町村が行う国民健康保険の被保険者である場合の医療費は市町村が支払った額の50%を、〔3〕国民健康保険組合が行う国民健康保険の被保険者である場合の医療費は国民健康保険組合が支払った額の47%を、それぞれ負担している。
(ウ) 生活保護法、知的障害者福祉法、身体障害者福祉法等に係る医療費については、国は都道府県又は市町村が支払った医療費の4分の3又は2分の1を負担している。
2 検査結果の概要
国民医療費は年々増加しており、このうち老人医療費は11年度では約38%を占め、高齢化が急速に進展する中でその割合が上昇している。このような状況の中で医療費に対する国の負担も多額なものとなっていることから、本院では従来から老人医療費を中心に診療報酬の請求が適正に行われているかに着眼して検査を行っている。
そして、近年では医療機関において、医師、看護婦等の医療従事者が不足していて算定要件を満たしていなかったり、必要な各種届出を行っていなかったりしているのに、これらを満たすことが要件とされている診療報酬を請求したり、診療報酬を画一的に算定して請求したりしている不適正と認められる事態が多く見受けられる。そこで、本年の検査に当たっても、これらの点を中心に検査した。
社会保険庁の27地方社会保険事務局(注1) 及び30都道府県(注2) において検査したところ、2,032実施主体が351医療機関に対して行った9年度から13年度までの間における診療報酬の支払について、医療費317,933件、3,193,722,503円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額1,828,463,586円が不当と認められる。
(注1) | 27地方社会保険事務局 北海道、宮城、茨城、栃木、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、石川、福井、山梨、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、和歌山、広島、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、熊本、大分、鹿児島各社会保険事務局 |
(注2) | 30都道府県 東京都、北海道、京都、大阪両府、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、埼玉、千葉、神奈川、新潟、石川、福井、山梨、静岡、愛知、兵庫、和歌山、広島、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、熊本、大分、宮崎、鹿児島各県 |
これを診療報酬の別に整理して示すと、次のとおりである。
診療報酬 | 実施主体(医療機関数) | 不適切に支払われた医療費の件数 | 不適切に支払われた医療費 | 不当と認める国の負担額 |
〔1〕入院基本料 |
札幌市ほか479市区町村等(43) |
件 22,233 |
円 759,852,938 |
円 425,457,110 |
〔2〕入院基本料加算 | 帯広市ほか1,581市区町村等(116) | 105,993 | 906,167,038 | 553,252,236 |
〔3〕特定入院料 | 仙台市ほか245市区町村等(9) | 10,337 | 735,640,635 | 420,961,675 |
〔4〕初診料・再診料 | 函館市ほか607市区町村等(28) | 78,594 | 256,581,867 | 135,617,143 |
〔5〕処置料 | 旭川市ほか165市区町村等(28) | 7,030 | 111,095,952 | 63,906,152 |
〔6〕リハビリテーション料 | 札幌市ほか180市区町村等(18) | 10,262 | 113,561,478 | 57,754,878 |
〔7〕検査料 | 常陸太田市ほか237市区町村等(17) | 26,106 | 65,425,812 | 35,455,718 |
〔8〕入院時食事療養費 | 名寄市ほか331市区町村等(15) | 22,815 | 57,965,919 | 33,775,571 |
〔9〕画像診断料 | 北茨城市ほか164市区町村等(8) | 15,602 | 52,476,693 | 27,924,830 |
〔10〕指導管理料 | 札幌市ほか51市町村等(9) | 6,862 | 42,741,020 | 24,988,766 |
〔11〕精神科専門療法料 | 大和市ほか36市町等(4) | 2,910 | 43,685,968 | 23,893,546 |
〔12〕在宅医療料等 | 札幌市ほか51市区町村(16) | 9,189 | 48,527,183 | 25,475,961 |
計 | 2,032実施主体(351) | 317,933 | 3,193,722,503 | 1,828,463,586 |
注(1) | 複数の診療報酬について不適正と認められる請求があった医療機関については、最も多い診療報酬で整理した。 |
注(2) | 計欄の実施主体数は、各診療報酬の間で実施主体数が重複することがあるため、各診療報酬の実施主体数を合計したものとは符合しない。 |
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。
(ア)医療機関から不適正と認められる診療報酬の請求があったのに、これに対する実施主体及び審査支払機関の審査点検が十分でなかったこと
特に、診療報酬請求上の各種届出についての確認が必ずしも十分でなかったこと
(イ)地方社会保険事務局及び都道府県において、医療機関の医療従事者が不足していることを把握する資料があるにもかかわらずその活用が必ずしも十分でなかったこと
(ウ)地方社会保険事務局及び都道府県における医療機関に対する指導が十分でなかったこと
3 検査結果の詳細
上記の診療報酬の支払が適切でない事態について、診療報酬の別に、その算定方法及び検査の結果の詳細を示すと次のとおりである。
〔1〕 入院基本料
入院基本料(注3)
は、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められている。この入院基本料は、看護配置、看護婦比率、平均在院日数その他の事項について厚生労働大臣(13年1月5日以前は厚生大臣)が定める基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長(11年度以前は都道府県知事)に届け出た医療機関において、その基準に掲げる区分に従い所定の点数を算定することとされている。
そして、医療機関において、医師の数が医療法(昭和23年法律第205号)に定める標準となる数(以下「標準人員」という。)に100分の60を乗じて得た数以下である場合(以下「著しい医師不足」という。)などの入院基本料については、所定の点数に原則として100分の12から100分の30までの定められた割合を乗じて得た点数を所定点数から控除して算定することとされている。
また、入院基本料は、看護婦及び准看護婦(以下「看護職員」という。)の数が入院患者数に対して所定の割合以上であることなどの要件を満たす旨の地方社会保険事務局長への届出を行った場合、それぞれの区分に従い所定の点数を算定することとされている。
さらに、一般病棟に入院している老人の患者であって、90日(12年9月30日までの間は180日)を超える期間入院していて症状が安定している患者(以下「特定患者」という。)の場合は、当該医療機関が届出を行っている老人一般病棟入院基本料ではなく、検査、投薬、注射及び一部の処置の費用が含まれている老人特定入院基本料を算定することとされている。
検査の結果、札幌市ほか36市区町に所在する43医療機関において、入院基本料等の請求が不適正と認められるものが22,233件あった。その主な態様は次のとおりである。
(ア)著しい医師不足等であるのに、入院基本料について所定の減額をしないで算定していた。
(イ)看護職員の数が所定の割合以上であることなどの要件を満たしていないのに、点数の高い区分の入院基本料の点数を算定していた。
(ウ)特定患者について、老人特定入院基本料ではなく、老人一般病棟入院基本料を算定していた。
〔2〕 入院基本料加算
入院基本料加算は入院基本料の所定点数に加算するもので、これには、療養環境加算、療養病棟療養環境加算、看護補助加算等がありそれぞれ所定の点数が定められている。
そして、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関において、一般病棟等に患者を入院させた場合、届出に係る療養環境加算、療養病棟療養環境加算等の点数を算定することとされている。ただし、これらの加算の多くは、医師の数が標準人員を満たしていない場合には算定できないこととされている。
また、療養環境加算等は、患者の選定に係る特別の病室に入院している患者については算定できないこととされている。
さらに、特定患者については、看護補助加算等は別途に算定できないこととされている。
検査の結果、帯広市ほか88市区町に所在する116医療機関において、入院基本料加算等の請求が不適正と認められるものが105,993件あった。その主な態様は次のとおりである。
(ア)医師の数が標準人員等を満たしていないのに、療養病棟療養環境加算等を算定していた。
(イ)地方社会保険事務局長への届出を行っていないのに、療養環境加算等を算定していた。
(ウ)患者の選定に係る特別の病室に入院している患者等について、療養環境加算等を算定していた。
(エ) 特定患者について、看護補助加算等を別途に算定していた。
〔3〕 特定入院料
特定入院料には、精神療養病棟入院料、救命救急入院料等があり、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関において、その基準に定める区分に従い所定の点数を算定することとされている。
そして、精神療養病棟入院料等は、医師の数及び看護職員の数が医療法に定める標準となる数を満たしていない場合には、算定できないこととされている。
また、救命救急入院料には、救命救急入院料1とより高い点数の救命救急入院料2があり、救命救急入院料2を算定するには、救命救急入院料1の施設基準のほか、特定集中治療室管理料の施設基準を満たすことが必要とされている。
検査の結果、仙台市ほか7市町に所在する9医療機関において、特定入院料等の請求が不適正と認められるものが10,337件あった。その主な態様は次のとおりである。
(ア) 医師の数が標準人員を満たしていないのに、精神療養病棟入院料等を算定していた。
(イ)特定集中治療室管理料の施設基準を満たしていないのに、救命救急入院料2を算定していた。
〔4〕 初診料・再診料
初診料は、患者の傷病について医学的に初診といわれる医師の診療行為があった場合に、再診料はその後の診療行為の都度それぞれ算定することとされている。
ただし、特別養護老人ホームほか8施設(注4)
(以下「老人ホーム等」という。)に配置されている医師(以下「配置医師」という。)がこれら施設の入所者に行っている診療については、その診療が別途国の補助事業として実施されている老人福祉施設保護事業等の一環として行われているものであることから、初診料、再診料は算定できないこととされている。
また、医療機関に老人ホーム等が併設されている場合、当該医療機関の医師が当該老人ホーム等の入所者に行っている診療についても、初診料、再診料は算定できないこととされている。
検査の結果、函館市ほか54市町村に所在する68医療機関において、初診料、再診料等の請求が不適正と認められるものが78,594件あった。その主な態様は次のとおりである。
(ア)配置医師が特別養護老人ホーム、知的障害者更生施設等の入所者に行った診療について、初診料、再診料を算定していた。
(イ)医療機関の医師が同医療機関に併設されている身体障害者療護施設等の入所者に行った診療について、初診料、再診料を算定していた。
〔5〕 処置料
処置料には、一般処置料、皮膚科処置料等があり、それぞれの処置ごとに所定の点数が定められており、処置に当たって薬剤を使用した場合は、その購入価格を10円で除するなどした薬剤料の点数を合算して算定することとされている。
また、外来患者に対する人工腎臓に係る処置料には、一定の薬剤の費用が含まれていることから、これを別途に算定できないこととされている。ただし、厚生労働大臣が特に認める場合に該当する場合は、「人工腎臓(その他の場合)」として薬剤の費用を別途に算定することとされている。そして、著しく人工腎臓の実施が困難な障害者等に対して人工腎臓を実施した場合は障害者加算を算定することとされている。
さらに、老人ホーム等の職員が入所者に行った処置は、処置料として算定できないこと とされている。
検査の結果、旭川市ほか26市町に所在する 28医療機関において、処置料等の請求が不適正と認められるものが7,030件あった。その主な態様は次のとおりである。
(ア)外来患者に対する人工腎臓に係る処置料について、処置料に含まれる薬剤料を別途に算定したり、厚生労働大臣が特に認める場合に該当していないのに「人工腎臓(その他の場合)」として薬剤料を別途に算定して処置料を高く算定したりしていた。また、著しく人工腎臓の実施が困難な障害者等に該当していないのに障害者加算を算定していた。
(イ)人工腎臓の処置に使用される薬剤について、実際よりも多い使用量により薬剤料を算定していた。
(ウ)特別養護老人ホームの職員が入所者に行った皮膚科軟膏処置等を処置料として算定していた。
〔6〕リハビリテーション料
リハビリテーション料は、理学療法、作業療法等の種類ごとに1日につき所定の点数が定められており、理学療法は基本的動作能力の回復を図るために、作業療法は応用的動作能力等の回復を図るために、いずれも個々の症例に応じて行うこととなっている。このうち、理学療法は、投薬、処置等によって治療の効果を上げることが困難な場合であって、この療法がより効果があると認められるときなどに行うこととされている。
また、同一の患者に対して、理学療法及び作業療法を同一日に行った場合は、主たるものの所定点数により算定することとされているが、理学療法(I)又は(II)を行う医療機関に限り、理学療法及び作業療法それぞれの所定点数を算定できることとされている。ただし、脳血管疾患を発症した患者については、発症後6月を超え1年以内の場合は、主たるものの所定点数に従たるものの所定点数の100分の30 に相当する点数を加算して算定し、発症後1年を超えた場合は、主たるものの所定点数により算定することとされている。
さらに、理学療法士又は作業療法士が所定の数以上勤務していることなどの厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関において、理学療法又は作業療法を行った場合、その届出に係る理学療法又は作業療法の点数を算定することとされている。
検査の結果、札幌市ほか16市区に所在する18医療機関において、リハビリテーション料等の請求が不適正と認められるものが10,262件あった。その主な態様は次のとおりである。
(ア)多くの入院患者等に対して理学療法を毎月画一的に実施して理学療法の点数を算定したり、理学療法に該当しない消炎鎮痛処置について理学療法の点数を算定したりしていた。
(イ)脳血管疾患の発症後6月を超え1年以内の患者等について理学療法(I)等及び作業療法(I)等を同一日に行っているのに、それぞれの所定点数を算定していた。
(ウ)理学療法士又は作業療法士が所定の数以上勤務していないのに、届出を行っている高い点数の理学療法の点数又は作業療法の点数を算定していた。
〔7〕 検査料
検査料には、血液化学検査等の検体検査料、心電図検査等の生体検査料等があり、それぞれの種類ごとに所定の点数が定められている。そして、健康診断は、医療給付の対象として行ってはならないこととされている。
また、検査は、治療方針の決定に必要な限度で行うこととし、診療上必要があると認められる範囲内において選択して行うこと、同一の検査はみだりに反復して行ってはならないこととされている。
検査の結果、常陸太田市ほか16市町に所在する17医療機関において、検査料等の請求が不適正と認められるものが26,106件あった。その主な態様は次のとおりである。
(ア)健康診断として行った検体検査を診療報酬として算定していた。
(イ)多くの入院患者等に対して検体検査、生体検査を画一的に実施して検査料を算定していた。
〔8〕 入院時食事療養費
入院時食事療養費のうち、入院時食事療養(I)は、医療機関が地方社会保険事務局長への届出を行い、厚生労働大臣が定める基準に適合する食事療養を行った場合に算定することとされている。そして、上記の医療機関において、常勤の管理栄養士が配置されていることなどの要件を満たす旨の地方社会保険事務局長への届出を行った場合、特別管理加算を算定することとされている。
また、入院時食事療養(I)の届出を行った医療機関において、所定の要件を満たしている食堂において食事療養を行った場合には、食堂加算を算定することとされているが、食堂の設置が要件とされている精神療養病棟入院料等を算定する場合には、食堂加算は別途に算定できないこととされている。
さらに、入院時食事療養(I)の届出を行った医療機関において、厚生労働大臣が定める特別食を提供した場合には、特別食加算を算定することとされている。
検査の結果、名寄市ほか13市に所在する15医療機関において、入院時食事療養費等の請求が不適正と認められるものが22,815件あった。その態様は次のとおりである。
(ア)常勤の管理栄養士が配置されていないのに、特別管理加算を算定していた。
(イ)精神療養病棟入院料等を算定しているのに、食堂加算を別途に算定していた。
(ウ)厚生労働大臣が定める特別食に該当しないのに、特別食加算を算定していた。
〔9〕 画像診断料
画像診断料には、コンピューター断層撮影診断料、エックス線診断料等があり、それぞれの種類ごとに所定の点数が定められている。そして、診療の一般的方針として、医師の診療は、その必要性があると認められる疾病に対して妥当適切に行うこととされている。
検査の結果、高萩市ほか7市町に所在する8医療機関において、画像診断料等の請求が不適正と認められるものが15,602件あった。その主な態様は、多くの入院患者等に対してコンピューター断層撮影等を毎月画一的に実施して画像診断料を算定していたものである。
〔10〕 指導管理料
指導管理料のうち、老人慢性疾患生活指導料、老人慢性疾患外来総合診療料等は、配置医師が老人ホーム等の入所者に行っている診療の場合、前記〔4〕 のとおり、その診療が別途国の補助事業の一環として行われているものであることから算定できないこととされている。
検査の結果、札幌市ほか8市町に所在する9医療機関において、指導管理料等の請求が不適正と認められるものが6,862件あった。その主な態様は、配置医師が特別養護老人ホーム等の入所者に行った診療について、老人慢性疾患生活指導料、老人慢性疾患外来総合診療料等を算定していたものである。
〔11〕精神科専門療法料
精神科専門療法料は、精神科作業療法、入院精神療法等の種類ごとに1日又は1回につき所定の点数が定められている。
そして、精神科作業療法は、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関において、当該基準による療法を行った場合、所定の点数を算定することとされている。
また、入院精神療法は、所定の点数を算定できる回数は妥当と認められる限度に止めるべきこととされており、このうち入院精神療法(II)は、患者の入院期間が4週間を超える場合には、原則として週1回を限度として算定することとされている。
検査の結果、大和市ほか3市に所在する 4医療機関において、精神科専門療法料の請求が不適正と認められるものが2,910件あった。その態様は次のとおりである。
(ア)地方社会保険事務局長への届出を行っていないのに、精神科作業療法の点数を算定していた。
(イ)入院期間が4週間を超える多くの患者に対して入院精神療法(II)を毎月画一的に週1回を超えて実施して入院精神療法の点数を算定していた。
〔12〕 在宅医療料等
在宅医療料のうち、寝たきり老人在宅総合診療料の24時間連携体制加算は、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして都道府県知事に届け出た医療機関において所定の点数を算定することとされている。また、寝たきり老人処置指導管理料は、在宅における創傷処置等の処置を行っている在宅寝たきり老人等に対して、当該処置に関する指導管理を行った医療機関において、1月に1回を限度として所定の点数を算定することとされている。
投薬料のうち処方せん料は、保険薬局において調剤を受けさせるために患者に処方せんを交付した場合、処方した剤数、投与量等にかかわらず、1回につき所定の点数を算定することとされている。
検査の結果、札幌市ほか15市区町に所在する16医療機関において、在宅医療料等の請求が不適正と認められるものが9,189件あった。その主な態様は次のとおりである。
(ア)都道府県知事への届出を行っていないのに、24時間連携体制加算を算定していた。
(イ)創傷処置等の処置を行っていない在宅寝たきり老人等に対して寝たきり老人処置指導管理料を算定していた。
(ウ)症状が安定している慢性疾患の患者について、長期にわたって投与することのできる慢性疾患の薬剤を短期間分に分けて投与するなどして、その都度処方せん料を算定していた。
以上を医療機関の所在する都道府県別に示すと次のとおりである。
都道府県名 | 実施主体(医療機関数) | 不適切に支払われた医療費の件数 | 不適切に支払われた医療費 | 不当と認める国の負担額 | 摘要 |
北海道 |
札幌市ほか151市区町村等(25) |
件 18,039 |
千円 159,545 |
千円 102,562 |
〔1〕〔2〕〔4〕〔5〕〔6〕〔8〕〔10〕〔12〕 |
岩手県 | 花巻市(1) | 259 | 4,144 | 2,544 | 〔12〕 |
宮城県 | 宮城郡松島町ほか88市区町村等(8) | 9,509 | 277,644 | 154,212 | 〔1〕〔2〕〔3〕〔4〕 |
福島県 | 西白河郡矢吹町ほか19市区町村等(1) | 670 | 142,572 | 85,414 | 〔1〕 |
茨城県 | 下館市ほか117市区町村等(12) | 10,403 | 136,209 | 72,848 | 〔1〕〔2〕〔4〕〔5〕〔7〕〔9〕〔12〕 |
栃木県 | 宇都宮市ほか104市区町村等(11) | 7,311 | 27,457 | 15,730 | 〔1〕〔2〕〔4〕〔8〕〔12〕 |
埼玉県 | 日高市ほか279市区町村等(22) | 20,947 | 143,273 | 63,288 | 〔1〕〔2〕〔3〕〔4〕〔5〕〔6〕〔8〕 |
千葉県 | 野田市ほか136市区町村等(15) | 15,976 | 94,415 | 44,472 | 〔1〕〔2〕〔4〕〔9〕 |
東京都 | 荒川区ほか46市区町村等(7) | 1,937 | 40,623 | 16,279 | 〔1〕〔2〕〔6〕〔12〕 |
神奈川県 | 厚木市ほか81市区町村等(14) | 11,005 | 60,096 | 26,171 | 〔1〕〔2〕〔4〕〔5〕〔6〕〔7〕〔8〕〔9〕〔10〕〔11〕 |
新潟県 | 新潟市ほか83市区町村等(14) | 15,914 | 106,082 | 61,970 | 〔2〕〔3〕〔4〕〔7〕〔9〕〔12〕 |
石川県 | 小松市ほか110市区町村等(11) | 22,000 | 212,783 | 115,611 | 〔1〕〔2〕〔3〕〔4〕〔5〕〔6〕〔9〕 |
福井県 | 鯖江市ほか26市町村等(5) | 1,859 | 16,320 | 9,365 | 〔2〕〔4〕〔5〕〔6〕〔12〕 |
山梨県 | 甲府市ほか63市区町村等(5) | 2,161 | 21,836 | 11,830 | 〔2〕〔3〕〔4〕〔5〕〔7〕 |
静岡県 | 沼津市ほか95市区町村等(16) | 10,890 | 109,589 | 56,357 | 〔1〕〔2〕〔4〕〔5〕〔6〕〔7〕〔8〕〔12〕 |
愛知県 | 豊橋市ほか186市区町村等(17) | 17,262 | 50,830 | 29,012 | 〔1〕〔2〕〔4〕〔6〕〔7〕〔10〕〔12〕 |
京都府 | 京都市ほか63市町等(6) | 9,029 | 54,985 | 30,332 | 〔1〕〔7〕〔8〕〔9〕 |
大阪府 | 大阪市ほか121市町等(15) | 16,508 | 64,803 | 37,797 | 〔1〕〔2〕〔4〕〔5〕〔6〕〔7〕〔10〕 |
兵庫県 | 西宮市ほか149市町等(18) | 10,589 | 74,428 | 41,100 | 〔2〕〔4〕〔6〕〔7〕〔9〕 |
和歌山県 | 和歌山市ほか71市町村等(8) | 6,262 | 36,178 | 19,861 | 〔1〕〔2〕〔4〕〔12〕 |
広島県 | 佐伯郡大柿町ほか95市区町村等(10) | 6,591 | 159,373 | 90,656 | 〔1〕〔2〕〔4〕〔8〕〔12〕 |
徳島県 | 阿南市ほか99市町村等(16) | 14,972 | 70,219 | 41,262 | 〔2〕〔4〕〔5〕〔6〕〔7〕〔8〕〔10〕 |
香川県 | 丸亀市ほか55市町等(10) | 2,596 | 31,501 | 19,808 | 〔1〕〔2〕〔4〕〔5〕〔6〕〔10〕〔12〕 |
愛媛県 | 越智郡伯方町ほか67市町村等(13) | 14,126 | 132,306 | 76,186 | 〔1〕〔2〕〔4〕〔5〕〔7〕〔11〕 |
高知県 | 南国市ほか116市区町村等(9) | 10,294 | 88,452 | 54,741 | 〔2〕〔3〕〔5〕〔8〕 |
福岡県 | 大牟田市ほか218市区町村等(11) | 16,647 | 240,367 | 151,774 | 〔2〕〔3〕〔5〕〔8〕 |
熊本県 | 天草郡苓北町ほか78市町村等(11) | 5,806 | 90,578 | 56,440 | 〔1〕〔2〕〔5〕〔6〕〔7〕〔10〕〔12〕 |
大分県 | 佐伯市ほか49市町村等(8) | 2,564 | 57,045 | 37,620 | 〔2〕〔3〕〔5〕〔11〕〔12〕 |
宮崎県 | 西都市ほか53市町村等(8) | 4,673 | 112,889 | 68,445 | 〔1〕〔2〕〔7〕〔9〕 |
鹿児島県 | 日置郡金峰町ほか140市区町村等(24) | 31,134 | 377,164 | 234,763 | 〔1〕〔2〕〔4〕〔5〕〔6〕〔8〕 |
計 | 2,032市区町村等(351) | 317,933 | 3,193,722 | 1,828,463 |
注(1) | 計欄の実施主体数は、都道府県の間で実施主体が重複することがあるため、各都道府県の実施主体数を合計したものとは符合しない。 |
注(2) | 摘要欄の〔1〕〜〔12〕は、本文の不適切な支払の事態の診療報酬の別に対応している。 |