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国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるもの


(132)−(173)国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)国民健康保険助成費
部局等の名称 厚生労働本省(交付決定庁)(平成13年1月5日以前は厚生本省)
青森県ほか18都府県(支出庁)
交付の根拠 国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
交付先 市22、町19、村1、計42市町村(保険者)
財政調整交付金の概要 市町村等の国民健康保険に係る財政力の不均衡を調整するために交付するもので、一定の基準により財政力を測定してその程度に応じて交付する普通調整交付金と、特別の事情を考慮して交付する特別調整交付金がある。
上記に対する交付金交付額の合計 78,538,682,000円 (平成8年度〜12年度)
不当と認める交付金交付額 1,875,347,000円 (平成8年度〜12年度)

1 交付金の概要

(国民健康保険の財政調整交付金)

 国民健康保険は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)等が保険者となって、被用者保険の被保険者及びその被扶養者等を除き、当該市町村の区域内に住所を有する者等を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関し、療養の給付、出産育児一時金の支給、葬祭費の支給等の給付を行う保険である。
 国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う国民健康保険について財政調整交付金が交付されている。財政調整交付金は、市町村間で医療費の水準や住民の所得水準の差異により生じている国民健康保険の財政力の不均衡を調整するため、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づいて交付するもので、普通調整交付金と特別調整交付金がある。

(普通調整交付金)

 普通調整交付金は、被保険者の所得等から一定の基準により算定される収入額(調整対象収入額)が、医療費、保健事業費等から一定の基準により算定される支出額(調整対象需要額)に満たない市町村に対し、その不足を公平に補うことを目途として交付するものである。そして、平成12年度からは、介護保険制度の導入に伴い、医療給付費等に係るもの(医療分)に介護納付金に係るもの(介護分)を加えて交付されている。
 普通調整交付金の交付額は、当該市町村の調整対象需要額から当該市町村の調整対象収入額を控除した額に基づいて算定することとなっており、調整対象需要額及び調整対象収入額は、次により算定することとなっている。

(1)調整対象需要額

 調整対象需要額は、本来保険料又は保険税(以下「保険料」という。)で賄うべきとされている額であり、医療分と介護分に係る需要額は次のとおりとなっている。
 〔1〕 医療分に係る需要額は、一般被保険者(退職被保険者及びその被扶養者以外の被保険者をいう。以下同じ。)に係る医療給付費(注1) 、老人保健医療費拠出金及び保健事業費(注2) の合計額から療養給付費等負担金等の国庫補助金等を控除した額となっている。
 〔2〕 介護分に係る需要額は、介護納付金賦課被保険者(国民健康保険の被保険者のうち市町村の区域内に住所を有する40歳以上65歳未満の被保険者をいう。以下同じ。)に係る介護納付金から介護納付金負担金等の国庫補助金等を控除した額となっている。

(注1) 医療給付費 療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る一部負担金(薬剤の支給に係る一部負担金を含む。)に相当する額を控除した額及び入院時食事療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額の合算額
(注2) 保健事業費 健康相談、健康診査など被保険者の健康の保持増進のために要する費用

(2)調整対象収入額

 調整対象収入額は、医療分及び介護分それぞれについて、一般被保険者又は介護納付金賦課被保険者の数を基に算定される応益保険料額と、一般被保険者又は介護納付金賦課被保険者の所得を基に算定される応能保険料額とを合計した額となっており、本来徴収すべきとされている保険料の額である。
 このうち、医療分の応能保険料額は、一般被保険者の所得(以下「算定基礎所得金額」という。)に一定の方法により計算された率を乗じて算定される。
 そして、算定基礎所得金額は、保険料の賦課期日現在一般被保険者である者の前年における所得金額の合計額とすることとなっているが、これには土地等に係る譲渡所得のうち譲渡の理由等に応じて定められた金額以下のもの(以下「特別控除額以下の譲渡所得」という。)の金額を含めないこととなっている。
 また、同一世帯に属する被保険者の所得金額の合計額が、別に計算される金額(以下「所得限度額」という。)を超えて高額である世帯(以下「所得限度額超過世帯」という。)がある場合には、当該世帯の所得金額のうち所得限度額を超える部分の額に一定の方法により計算した率を乗じて得た額を、上記の一般被保険者の所得金額の合計額から控除して、算定基礎所得金額を算定することとなっている。
 そして、介護分の応能保険料額は、介護納付金賦課被保険者について、上記と同様の方 法で算定することとなっている。

(特別調整交付金)

 特別調整交付金は、市町村について特別の事情がある場合に、その事情を考慮して交付するものであり、その一つとして保健事業特別交付金がある。
 保健事業特別交付金は、総合健康指導事業、国保総合健康づくり推進事業等を行った市町村に交付するものである。
 このうち総合健康指導事業は、65歳未満の者に対して健康状態のチェックを行い、疾病の早期発見、早期治療を奨励するもので、事業項目には、調査票による問診形式で行う「コンピュータ健康診査」、コンピュータ健康診査を実施した被保険者から対象者を選定して行う「節目健診」等がある。
 そして、この事業に係る保健事業特別交付金の交付額は、市町村の被保険者数に応じて定められた助成限度額の範囲内で、事業項目等ごとに定められた助成割合を事業に要した費用の実績額に乗じるなどして得た額の合計額(以下「保健事業対象事業費」という。)とすることとなっている。

(交付手続)

 財政調整交付金の交付手続は、交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書及び事業実績報告書を提出し、これを受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査の上、これを厚生労働省に提出し、厚生労働省はこれに基づき交付決定及び交付額の確定を行うこととなっている。

2 検査の結果

(検査の着眼点及び対象)

 財政調整交付金の制度は、前記のように複雑であり、同交付金の交付申請額等の計算に当たってはその正確な事務処理が不可欠である。
 そこで、普通調整交付金については調整対象需要額の医療給付費及び調整対象収入額の算定基礎所得金額の計算は適正か、また、特別調整交付金については補助の対象とならないものを含めていないかなどに着眼して、北海道ほか27都府県の303市町村における財政調整交付金の交付の適否を検査した。

(検査の結果)

 検査の結果、青森県ほか18都府県の42市町村において、交付金交付額計78,538,682,000円のうち計1,875,347,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
 これを態様別に示すと次のとおりである。

(1) 調整対象需要額を過大に算定しているもの
9市町 136,998,000円
(2) 調整対象収入額を過小に算定しているもの
31市町村  1,731,756,000円
(3) 保健事業費対象額を過大に算定しているもの
2市町 6,593,000円

 このような事態が生じていたのは、前記の42市町村において制度の理解が十分でなかったり、事務処理が適切でなかったりなどしたため適正な交付申請を行っていなかったこと、また、これに対する青森県ほか18都府県の審査が十分でなかったことによると認められる。
 前記の事態を都府県別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

都府県名 交付先
(保険者)
年度 交付金交付額 左のうち不当と認める額 摘要
      千円 千円  
 
(1) 調整対象需要額を過大に算定しているもの
 
(132) 埼玉県 越谷市 12 361,647 4,783 医療給付費を過大にしていたもの
(133) 新潟県 加茂市 11、12 380,720 26,609
(134) 富山県 富山市 8〜12 7,236,057 23,929 医療給付費を過大にしていたものなど
(135)  同 魚津市 9〜12 805,390 13,631 医療給付費を過大にしていたもの
(136) 福井県 鯖江市 11、12 422,076 49,688
(137) 三重県 三重郡
菰野町
11、12 166,386 3,729 医療給付費を過大にしていたものなど
(138) 大阪府 岸和田市 11、12 2,362,876 3,839 医療給付費を過大にしていたもの
(139)  同 八尾市 10、11 2,611,828 2,799
(140)  同 門真市 11、12 1,409,635 7,991
(1)の計 15,756,615 136,998  
 
 上記の9市町では、普通調整交付金の交付申請等に当たり、医療給付費を過大に算定していたため、調整対象需要額が過大に算定されていた。
 上記の事態について一例を示すと次のとおりである。
<事例>  医療給付費を過大にしていたもの
 鯖江市では、医療給付費の算定に当たって、一部の一般被保険者について保険者負担分と被保険者の一部負担金の金額を取り違えて集計するなどしていたことにより、医療給付費に含まれる高額療養費の支給に要した費用の額が過大に計算されたため、調整対象需要額が過大に算定されていた。
 したがって、適正な調整対象需要額に基づいて普通調整交付金の額を算定すると、計372,388,000円となり、計49,688,000円が過大に交付されていた。
 
(2) 調整対象収入額を過小に算定しているもの
 
(141) 青森県 五所川原市 12 587,986 2,925 所得金額の計算上控除される金額を過大にしていたものなど
(142)  同 西津軽郡
鰺ヶ沢町
12 193,464 1,229
(143)  同 北津軽郡
鶴田町
12 248,728 5,116
(144)  同 北津軽郡
小泊村
10〜12 179,808 8,287 所得金額を過小にしていたもの
(145)  同 下北郡
川内町
12 70,780 1,605
(146) 秋田県 本荘市 12 265,050 17,014
(147)  同 北秋田郡
比内町
11、12 153,813 2,723 所得金額を過小にしていたものなど
(148)  同 山本郡
山本町
12 81,786 10,468 所得金額の計算上控除される金額を過大にしていたものなど
(149) 群馬県 高崎市 11、12 1,420,319 1,526 所得金額を過小にしていたもの
(150)  同 館林市 11、12 473,032 2,225
(151)  同 利根郡
月夜野町
9〜12 292,800 3,523 所得金額の計算上控除される金額を過大にしていたものなど
(152) 埼玉県 北足立郡
伊奈町
12 74,312 35,871
(153)  同 北葛飾郡
庄和町
12 96,716 14,701 所得金額を過小にしていたもの
(154) 千葉県 東金市 12 222,388 3,939 所得金額の計算上控除される金額を過大にしていたものなど
(155)  同 柏市 12 239,383 10,782 所得金額を過小にしていたもの
(156)  同 香取郡
東庄町
12 50,832 2,536 所得金額の計算上控除される金額を過大にしていたものなど
(157) 東京都 多摩市 10〜12 77,819 29,510 所得金額の計算上控除される金額を過大にしていたもの
(158) 神奈川県 足柄上郡
松田町
11、12 10,435 6,406 所得金額の計算上控除される金額を過大にしていたものなど
(159) 富山県 東蠣波郡
城端町
12 52,348 22,223
(160) 山梨県 東八代郡
八代町
11、12 61,017 2,069 所得金額の計算上控除される金額を過大にしていたもの
(161)  同 中巨摩郡
甲西町
8〜12 87,870 1,904 所得金額を過小にしていたものなど
(162) 大阪府 大阪市 11、12 49,841,603 1,416,238 所得金額の計算上控除される金額を過大にしていたもの
(163)  同 吹田市 11、12 1,572,427 26,203
(164)  同 大東市 10〜12 1,394,355 30,737 所得金額の計算上控除される金額を過大にしていたものなど
(165)  同 泉南市 9〜12 1,801,684 3,367 所得金額の計算上控除される金額を過大にしていたもの
(166) 和歌山県 有田郡
吉備町
9〜12 472,444 3,666
(167) 鳥取県 米子市 12 557,635 1,134
(168) 香川県 仲多度郡
多度津町
10、11 288,441 4,334 所得金額の計算上控除される金額を過大にしていたものなど
(169) 佐賀県 佐賀郡
富士町
11、12 94,215 1,380
(170) 宮崎県 宮崎市 12 1,693,796 55,774 所得金額の計算上控除される金額を過大にしていたもの
(171)  同 南那珂郡
南郷町
12 98,778 2,341 所得金額の計算上控除される金額を過大にしていたものなど
(2)の計 62,756,064 1,731,756  
 
 上記の31市町村では、普通調整交付金の交付申請等に当たり、所得限度額超過世帯がある場合に算定基礎所得金額の計算上控除される金額を過大にしたり、保険料の賦課期日現在一般被保険者である者の前年における所得金額等を過小に計算したりしていたため、算定基礎所得金額が過小に計算されるなどし、その結果、調整対象収入額が過小に算定されていた。
 上記の事態について一例を示すと次のとおりである。
<事例>  所得金額の計算上控除される金額を過大にしていたもの
 大阪市では、所得限度額超過世帯の所得金額の算定に当たって、一部の世帯について特別控除額以下の譲渡所得の金額を所得金額に含めるなどしたことにより、所得限度額を超える部分の額を過大に算定していた。その結果、所得限度額超過世帯がある場合に算定基礎所得金額の計算上控除される金額が過大となり、算定基礎所得金額が過小に算定されるなどしていた。
 したがって、適正な算定基礎所得金額及びこれを基に算出した調整対象収入額に基づいて普通調整交付金の額を算定すると、計48,425,365,000円となり、計1,416,238,000円が過大に交付されていた。
 
(3) 保険事業対象事業費を過大に算定しているもの
 
(172) 山梨県 南巨摩郡
増穂町
11、12 7,063 2,445 事業対象外の者に係る費用を含めていたものなど
(173) 熊本県 玉名市 11、12 18,940 4,148 事業対象外の者に係る費用を含めていたもの
(3)の計 26,003 6,593  
 
 上記の2市町では、保健事業特別交付金の交付申請等に当たり、事業の対象とはならない者に係る費用を含めるなどしていたため、保健事業対象事業費が過大に算定されていた。
<事例>  事業対象外の者に係る費用を含めていたもの
 玉名市では、総合健康指導事業に係る保健事業特別交付金の交付申請等に当たり、節目健診の事業に要した費用の実績額に、事業の対象とならない65歳以上の者に係る費用を含めていたため、保健事業対象事業費が過大に算定されていた。
 したがって、適正な保健事業対象事業費に基づいて保健事業特別交付金の額を算定すると、計14,792,000円となり、計4,148,000円が過大に交付されていた。
 
  (1)〜(3)の合計 78,538,682 1,875,347