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  • 平成12年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

ケアハウスの施設整備事業を実施するに当たり、国庫補助協議対象施設の選定基準を見直すなどして、事業を効果的に実施するよう改善させたもの


(1)ケアハウスの施設整備事業を実施するに当たり、国庫補助協議対象施設の選定基準を見直すなどして、事業を効果的に実施するよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生本省 (項)社会福祉施設整備費
部局等の名称 府2、県9、計11府県
補助の根拠 老人福祉法(昭和38年法律第133号)
補助事業者 府2、県9、市3、計14府県市
間接補助事業者
(事業主体)
26社会福祉法人
補助事業 社会福祉施設等施設整備事業
補助事業の概要 ケアハウスを新設するため、施設の整備を行うもの
事業が効果的に実施されていない施設数 26施設
上記に対する国庫補助金交付額の合計 52億1500万余円 (平成4年度〜10年度)
事業が効果的に実施されていない国庫補助金相当額 23億2515万円 (平成4年度〜10年度)

1 事業の概要

(補助金の概要)

 厚生労働省(平成13年1月5日以前は厚生省)では、老人福祉法(昭和38年法律第133号)等に基づき、老人の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な措置を講じ、もって老人の福祉を図るため、社会福祉施設等施設整備事業を実施している。そして、この事業の一環として、社会福祉法人等が行う軽費老人ホーム等の施設整備事業に対して、都道府県、政令指定都市及び中核市(以下「県等」という。)が補助する場合にその補助に要する費用の一部を国が補助することとしている。

(ケアハウスの概要)

 軽費老人ホームは、利用者、サービス内容、利用料、定員などにより、軽費老人ホームA型、軽費老人ホームB型及びケアハウスの3つに区分されている。
 このうちケアハウスは、原則として60歳以上(夫婦等の場合にはいずれか一方が60歳以上)で、自炊ができない程度の身体機能の低下等が認められ、又は高齢等のため独立して生活するには不安が認められる者であって、家族による援助を受けることが困難なものが入居する施設とされている。そして、利用者は、入居後、食事の提供、入浴の準備などのサービスを受けることができることになっている。
 一人一箇月当たりの基本利用料は、食費等の生活費、職員俸給等の事務費及び家賃に相当する管理費の合計額以下とすることになっており、このうち管理費の支払には、一括払方式、分割払方式及びこれらを併用する方式の3方式がある。
 定員は、原則として、独立した施設の場合は20人以上、特別養護老人ホーム等に併設した施設の場合は10人以上とすることとされており、事務費の一部については、入居者の人数等に応じて、県等が補助する場合にその補助に要する費用の一部を国が補助することとしている。

(事業の採択)

 厚生労働省では、毎年、県等に対し、当該年度の施設整備事業に係る基本方針及び国庫補助協議対象施設の選定基準等を示している。
 県等では、上記の選定基準に基づき、社会福祉法人等の計画した施設整備事業の内容が実態把握に基づいて計画されているか、施設の立地条件、施設建設後の管理運営方法等は適切なものとなっているかなどを総合的に審査し、施設建設が妥当であると認めたものについて、協議書を作成して国に協議することとしている。厚生労働省では、これを受け、協議書の審査を行い、適切と認めたものを補助事業として採択している。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 近年、我が国における急速な高齢化の進展に伴い、高齢者保健福祉に対する要請はますます強まり、社会福祉施設等の整備が急がれている。このため、厚生労働省では、平成2年度から「高齢者保健福祉推進10か年戦略(ゴールドプラン)」に基づき、ケアハウスの施設整備事業の推進を図ってきた。これによれば、11年度末までに10万人分の施設を整備することとしていたが、その実績は44,176人分にとどまっている状況である。そして、これに続く「今後5か年間の高齢者保健福祉施策の方向(ゴールドプラン21)」では、16年度末までに10万5千人分の施設を整備することとしている。
 そこで、これまでに整備されたケアハウスについて、整備計画は適切に策定されているか、施設の管理運営は適切に行われているか、また、その結果、事業は効果的に実施されているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象)

 北海道ほか41都府県及び札幌市ほか36市(注1) が補助した施設のうち、施設開設後2年以上経過していて入居率の定常化が見込まれる814施設(定員31,831人、国庫補助金1458億余円)について検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、814施設の13年4月1日現在の入居率の平均は93.6%となっていた。
 そして、これらの中には開設して間もなく入居率が100%となっていて、入居希望者が待機している施設も見受けられた。
 しかし、一方で、入居率が70%に満たない施設があって、事業が効果的に実施されていないと認められるものが、京都府ほか10府県及び大阪市ほか2市(注2) において26施設(定員1,177人、国庫補助金交付額52億1500万余円。このうち空き部屋566人分、国庫補助金相当額23億2515万余円)見受けられた。
 これらの中には、入居率が30%未満となっている施設が4施設(うち1施設は0%)あった。
 上記の26施設について、主な原因別にその態様を示すと次のとおりである。

(1)整備計画の策定時において、施設の建設地についての検討が十分でなかったもの

11施設   定員340人のうち空き部屋176人分、国庫補助金相当額7億4015万余円

 これらの施設は、病院や商店街からの距離、交通機関の整備状況、周辺の環境など、入居者が生活するうえでの利便性、快適性等に関して、施設の建設地の検討が十分でなかったため、空き部屋が発生しているものである。

(2)整備計画の策定時において、入居者のニーズの把握が十分でなかったもの

2施設   定員252人のうち空き部屋83人分、国庫補助金相当額3億2950万余円

 これらの施設は、十分な調査を行わないまま二人用居室を過大に計画しているなど、入居者のニーズに対する検討が十分でなかったため、空き部屋が発生しているものである。

(3)施設の管理運営に問題があるもの

13施設   定員585人のうち空き部屋307人分、国庫補助金相当額12億5549万余円

 これらの施設は、入居者募集などの広告宣伝活動を十分に行っていなかったり、管理費の支払方式に分割方式を採り入れていないため、管理費を準備することができない者の入居を困難にしていたり、施設の運営方針に不満があるため多数の退居者が生じたりしていて、施設の管理運営に問題が生じているものである。
 このように、高齢化の進展に伴い、潜在的な需要が高いと思料されるケアハウスの施設整備事業について、計画の策定時における検討が十分でなかったり、管理運営に問題が生じたりしている事態は適切とは認められない。
 さらに、上記の26施設についてみると、入居者から徴収する管理費や入居者数に応じて補助される事務費補助金が少額になっていることから、次のとおり、経営上の問題を抱えている施設が見受けられた。

(ア)施設建設時の借入金の返済を滞納している施設 3施設
(イ)入居者から徴収した管理費を事務費に流用している施設 14施設
(ウ)併設の他会計から資金を繰り入れている施設 25施設

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、主として次のことによると認められた。
(ア)厚生労働省において、県等が作成した協議書の審査が十分でないこと
(イ)県等において、法人が計画した施設整備事業の内容の審査や施設建設後の管理運営状況の把握が十分でないこと
(ウ)法人において、入居率を向上させるための方策を十分に執っていないこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、厚生労働省では、13年10月に、前記26施設のケアハウスを所管する県等に対し通知を発し、速やかに空き部屋の解消に努めるよう指導する処置を講じるとともに、今後施設整備するケアハウスについて、事業を効果的に実施するよう、次のような処置を講じた。
(ア) 国庫補助協議対象施設の選定基準に施設の立地条件、入居者のニーズの把握、管理費の設定・徴収方法を盛り込むなどの見直しを行い、また、県等が作成した協議書の審査を一層充実させることとした。
(イ)県等に対し通知を発し、〔1〕施設整備事業の内容の審査を上記の選定基準に基づいて十分に行わせ、〔2〕施設建設後も、その管理運営状況を把握し、入居率が低い施設に対しては、入居率を向上させるための対策を講じるよう指導させることとした。

(注1) 北海道ほか41都府県及び札幌市ほか36市 東京都、北海道、京都、大阪両府、青森、宮城、秋田、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、愛知、三重、滋賀、兵庫、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県、札幌、仙台、千葉、横浜、川崎、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、北九州、福岡、旭川、秋田、郡山、いわき、宇都宮、新潟、富山、金沢、長野、岐阜、豊橋、豊田、堺、姫路、和歌山、岡山、福山、高松、松山、高知、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島各市
(注2) 京都府ほか10府県及び大阪市ほか2市 京都、大阪両府、岐阜、兵庫、岡山、広島、山口、香川、福岡、長崎、鹿児島各県、大阪、北九州、堺各市