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  • 平成12年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

米麦に係る共同乾燥調製施設等について、利用に関する意向を適切に反映した施設の規模となるよう改善させたもの


(1)米麦に係る共同乾燥調製施設等について、利用に関する意向を適切に反映した施設の規模となるよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省  (項)農蚕園芸振興費
 (項)農産園芸振興費
 (項)農業生産振興費
部局等の名称 農林水産本省、東北、関東、北陸、近畿、中国四国、九州各農政局
補助の根拠 予算補助
補助事業者 道県10
間接補助事業者
(事業主体)
農業協同組合19
補助事業 農業生産総合対策等
補助事業の概要 米麦作の生産性の向上や品質の向上、物流の合理化等を図るため、乾燥調製施設及び乾燥調製貯蔵施設の整備等を行うもの
施設の規模及びその決定過程が適切でない施設 18施設
上記の施設に係る事業費 102億6942万余円 (平成4年度〜10年度)
上記に対する国庫補助金交付額 42億5860万円

1 事業の概要

(共同乾燥調製施設等の整備)

 農林水産省では、農業の生産体制の強化等を図る国庫補助事業として先進的農業生産総合推進対策事業(平成4年度から6年度まで実施)及び農業生産体制強化総合推進対策事業(7年度から11年度まで実施)を、また、12年度からは、農業生産総合対策事業(以下、これらの事業を総称して「生産総合対策事業」という。)を実施している。
 生産総合対策事業では、共同利用施設整備として、農業協同組合等が事業主体となって、農業者が共同で米麦などの穀物の乾燥、調製を行う乾燥調製施設、乾燥、調製に加えて貯蔵までを行う乾燥調製貯蔵施設(以下、両者を合わせて「施設」という。)等の整備を実施している。この施設は米麦作の生産性の向上や品質の向上、物流の合理化等を図ることを目的としており、4年度から12年度までの間に、生産総合対策事業による施設の整備に係る事業費は計2311億余円、これに対する国庫補助金の交付額は計967億余円に上っている。

(施設の設置に関する整備計画の策定等)

 施設の設置については、「米麦共同乾燥施設の設置・運営について」(平成4年4農蚕第1285号農蚕園芸局長通達)が定められており、また、事業実施について各種の運用通知が発せられている。これによれば、事業主体は、アンケート調査等により、農業者の施設の利用に関する意向、個別農業者等の類似施設の保有状況、利用継続が見込まれる年数等を把握することとなっている。そして、事業主体では、この結果に基づいて施設の受益面積(以下「利用対象面積」という。)を決定し、これに地域の収量を乗じて施設の総処理量を算定するなどして施設の整備計画を策定し、補助事業の事業実施計画を作成している。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 上記のように、生産総合対策事業において、事業目的の達成のために施設を整備してきているが、実際には利用状況が低調なまま推移しているものが少なからず見受けられた。そこで、施設の計画時点における規模及びその決定過程が適切なものとなっているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象)

 北海道ほか17県(注1) において、4年度から12年度までの間に、生産総合対策事業により設置された196施設(事業費1182億9360万余円(国庫補助金467億4891万余円))のうち、その利用率(計画処理数量に対する実績処理数量の割合)が低率(12年度で60%未満)となっている北海道ほか16県(注2) の71施設(事業費417億7287万余円(国庫補助金178億6389万余円))を対象に検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、北海道ほか9県(注3) の18施設(事業費102億6942万余円(国庫補助金42億5860万余円))において、次のように、施設の計画時点における規模及びその決定過程が適切とは認められない事態が見受けられた。

(ア)施設の規模を決定するに当たり、施設の利用に関する意向調査の結果など農業者の意向が適切に反映されていなかったもの

8道県 10施設
事業費 41億8448万余円
国庫補助金 16億8311万円

 これらは、事業主体において、施設の規模を決定するに当たり、十分な検討をしないまま、施設の利用に関する意向調査において「利用しない」と回答した者の作付面積を利用対象面積に含めていたり、古い意向調査のデータに基づいていたり、個々の農業者について具体的に意向調査をしていなかったりなどしていたものである。

<事例>
 A農業協同組合では、7年度に設置した乾燥調製貯蔵施設の規模を決定するに当たり、その利用に関する意向を把握するためアンケート調査を実施している。そして、その結果を基に、当該施設を利用する意向がある者の作付面積241haに、後継者がいない、中核農家に乾燥、調製の作業を委託するなどの理由から利用しないと回答した者の作付面積のうち約100haを加算して、利用対象面積を340.4haとしていた。
 しかし、上記の100haについては、調査の結果が反映されたものではないのに、それを利用対象面積に含めることについての検討が十分でなく、12年度の利用対象面積の実績についてみると183haとなっていた。

(イ)施設の規模を決定するに当たり、利用時期の意向の把握等が適切でなく、将来の利用希望者なども考慮していたもの

5県 8施設
事業費 60億8494万余円
国庫補助金 25億7549万余円

 これらは、事業主体において、施設の規模を決定するに当たり、十分な検討をしないまま、事業の目標年度(事業実施からおおむね3年後)を超える年度以降に利用する意向のある者の作付面積を利用対象面積に加えていたり、利用する意向はあるが、いつ利用するか明確でない者の作付面積を利用対象面積に加えていたりしていたものである。

<事例>
 B農業協同組合では、9年度に設置した乾燥調製貯蔵施設の規模を決定するに当たり、その利用に関する意向を把握するためアンケート調査を実施している。そして、事業の目標年度である13年度までに利用する意向がある者の作付面積179.3haに、目標年度を超える年度(14年度から20年度以降)以降に利用したいとしている者の作付面積180.7haを加算して、利用対象面積を360haとしていた。
 しかし、将来的に利用したいとしている者が当該施設の利用に結び付くかは確実でないのに、それを利用対象面積に含めることについての検討が十分でなく、12年度の利用対象面積の実績についてみると165.6haとなっていた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、農林水産省において、運用通知を発するなどして、アンケート調査等により農業者の施設の利用に関する意向を把握するなどして適切な施設の規模の決定を行うこととしていながら、施設の規模を決定する前提条件となる利用対象面積を把握することについて具体的に定めていないことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、13年10月に各農政局等に対して通知を発して、施設の規模の決定が適切に行われるよう、施設の規模は事業の目標年度までに施設の利用を開始する意向のある者の利用対象面積を基本として決定するなど利用対象面積の把握について具体的に示す処置を講じた。

(注1) 北海道ほか17県 北海道、青森、岩手、山形、茨城、栃木、新潟、石川、長野、愛知、兵庫、鳥取、山口、徳島、高知、福岡、佐賀、熊本各県
(注2) 北海道ほか16県 北海道、青森、岩手、山形、茨城、栃木、新潟、石川、長野、愛知、兵庫、鳥取、山口、高知、福岡、佐賀、熊本各県
(注3) 北海道ほか9県 北海道、岩手、山形、栃木、新潟、石川、兵庫、鳥取、山口、福岡各県