会計名及び科目 | 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)牛肉等関税財源畜産振興費 |
部局等の名称 | 農林水産本省 |
補助の根拠 | 予算補助 |
補助事業者 | 北海道 |
間接補助事業者 (事業主体) |
足寄町農業協同組合ほか1農業協同組合(平成11年度) 足寄町農業協同組合ほか3農業協同組合(平成12年度) |
補助事業 | 飼料対策事業(平成11年度以前は飼料生産対策事業) |
補助事業の概要 | エゾシカの食害による農業被害の軽減を図るため、ネットフェンス等によりエゾシカの農地への侵入を防ぐ防護柵を設置するもの |
事業費 | 9億3627万余円 | (平成11、12両年度) |
上記に対する国庫補助金交付額 | 4億4587万円 | |
防護柵の直接工事費 | 5億0586万余円 | (平成11、12両年度) |
低減できた防護柵の工事費 | 5940万円 | (平成11、12両年度) |
上記に対する国庫補助金相当額 | 2970万円 |
1 事業の概要
農林水産省では、自給飼料基盤の強化等による生産コストの低減と飼料自給率の向上を目的として飼料対策事業(平成11年度以前は飼料生産対策事業)等を実施する農業協同組合等(以下「事業主体」という。)に対して、国庫補助金を交付している。
上記事業の中には、北海道において、エゾシカの食害による農業被害が増大し、その被害額が毎年多額に上ることから、ネットフェンス等によりエゾシカの農地への侵入を防ぐ防護柵を設置するものがある。
そして、11、12両年度において、足寄町農業協同組合ほか3事業主体では(注)
、飼料対策事業6事業を事業費9億3627万余円(国庫補助金4億4587万余円)で施行し、総延長182.8kmの防護柵を設置している。
各事業主体では、北海道農政部が制定した「防鹿施設設計指針(案)」等(以下「設計指針」という。)に基づいて、防護柵の設計をすることとしている。この設計指針によれば、防護柵のネットフェンスを支える支柱については、木製又は鉄製のものとし、木製のものは7.5m又は5mの間隔で、鉄製のものは5mの間隔で設置することとしている。そして、支柱の構造、寸法等については、〔1〕防護柵の直線部に設置する支柱と、〔2〕防護柵のコーナー部に設置する支柱(以下「コーナー柱」という。)等に区分し、それぞれ、エゾシカの衝突による荷重及び雪荷重により支柱に加わる外力等を算出するなどして決定することとしている。
その結果、上記の各事業主体では、木製コーナー柱について、長さ3.5m、径15cmの木丸太(鉄製コーナー柱の場合は、長さ3.5m、径6.0cmの鋼管)を1.4m根入れすることとし、さらに、不測の外力が加わる場合があることから支柱の安全を考慮して、控柱として、長さ2.4m、径11cmの木丸太(鉄製コーナー柱の場合は、長さ2.6m、径3.8cmの鋼管)を2本斜めに設置し、それぞれの控柱を根械(ねかせ)で固定することとしている(参考図参照)
。
2 検査の結果
防護柵は、野生動物の生態に応じた保護管理に配慮しつつ、農業被害を軽減することを目的としており、北海道においてエゾシカ対策として設置された防護柵の総延長は約1,700km(11年度末現在)となっていて、今後も増設が見込まれている。そこで、前記の6事業について防護柵は経済性等に配慮して適切に設置されているかという点に着眼して検査した。
検査したところ、上記の6事業において設置した防護柵に係るコーナー柱6,074本(直接工事費計1億1951万余円)の設計について、次のとおり、適切でない事態が見受けられた。
すなわち、本件各事業のコーナー柱について、設計指針に基づき、防護柵のコーナー部における屈曲する角度(コーナー柱を挟む両側のネットフェンスが作る角度。以下「屈曲角度」という。)と支柱の設置間隔別に、〔1〕エゾシカの衝突による荷重、雪荷重等を考慮してコーナー柱に加わる外力と〔2〕コーナー柱の外力への抵抗力とを計算すると、次図のとおりとなっている。これによれば、コーナー部の屈曲角度が大きくなって直線に近くなるにしたがってコーナー柱に加わる外力は小さくなり、一定の屈曲角度以上では、コーナー柱自体の抵抗力を下回ることになり、コーナー柱に更に控柱を設置する必要はないことになる。
これを、木製コーナー柱を5m間隔で設置した場合についてみると、設置したコーナー柱3,425本のうち、屈曲角度が180度(直線)から110度程度までの3,090本は、控柱を設置することなくコーナー柱だけで外力に対して十分な抵抗力を有することとなっていた。
また、コーナー柱を必要以上に強固なものとすることは、エゾシカがネットフェンスや支柱に衝突した場合にエゾシカに過度の衝撃を与えるおそれもある。
したがって、本件防護柵のコーナー柱については、コーナー部の屈曲角度に応じた経済的な設計を行うべきであり、また、これにより、野生動物に対する配慮という効果も得られるものと認められた。
上記によれば、本件各事業のコーナー柱6,074本のうち5,059本について控柱が不要となることから、防護柵の直接工事費は計4億4639万余円となり、前記の直接工事費計5億0586万余円を約5940万円(国庫補助金相当額約2970万円)低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、主として次のことによると認められた。
(ア)各事業主体において、防護柵の設計について経済性等に対する配慮が十分でなかったこと
(イ)北海道において、防護柵のコーナー柱について控柱を設置する範囲を設計指針で明確にしていなかったこと
(ウ)農林水産省において、補助事業の適切な執行を図るための指導が十分でなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、13年11月に北海道に対し補助事業の適切な執行を図るよう指導し、これを受けて北海道では、防護柵を設置する事業において、コーナー部の屈曲角度に応じて経済性等に配慮した設計を行うよう設計指針を改定し、各事業主体に対し周知徹底を図る処置を講じた。