会計名及び科目 | 一般会計 (組織)林野庁 (項)林業振興費 |
部局等の名称 | 林野庁 |
林業改善資金の根拠 | 林業改善資金助成法(昭和51年法律第42号) |
同資金の概要 | 都道府県が行う林業従事者等への貸付事業に必要な資金に充てるため、都道府県が国庫補助金と自己資金等により造成しているもの |
資金造成額 | 255億7800万円(平成12年度末) |
上記のうち交付された国庫補助金額 | 164億9800万円 |
1 事業の概要
林野庁では、林業経営の健全な発展、林業生産力の増大及び林業従事者の福祉の向上に資することを目的として、林業改善資金助成法(昭和51年法律第42号)に基づき、林業従事者等の林業経営の改善等に必要な資金の貸付事業を行う都道府県に対して、当該貸付事業に必要な資金の3分の2に相当する金額を林業改善資金造成費補助金(以下「補助金」という。)として交付している。
都道府県は、上記の貸付事業を行うため、林業改善資金特別会計(以下「特別会計」という。)を設置して、この補助金に自己資金等を合わせて林業改善資金として資金を造成し、林業経営の改善を促進するために必要な機械の購入又は施設の設置などを行う林業従事者等に対して、その必要な資金を無利子で貸し付けている。この特別会計は、資金を借り入れた林業従事者等からの償還金を受け入れ、これを繰り返し貸付財源に充てることにより運営している。そして、林業改善資金による4種類の貸付け(林業生産高度化資金、新林業部門導入資金(以下「新林業資金」という。)、林業労働福祉施設資金及び青年林業者等養成確保資金)に区分して経理することとなっている。
林業改善資金は、近年、林業従事者等の借入れが減少してきていて、平成8年度から12年度までの資金の運営状況をみると、下表のとおり、12年度の貸付額は25億5200万円と8年度の4割程度に減少し、それに伴い年度末貸付残高は123億3700万円と8年度の6割程度に減少している。さらに、繰越額は年々増加し、12年度では、132億4100万円と年度末貸付残高を上回り、当該年度の貸付額の5倍以上となり、年度末の資金造成総額255億7800万円(うち国庫補助金は164億9800万円)の5割以上が次年度に繰り越されている状況となっている。
(単位:百万円) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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2 検査の結果
近年、林業を取り巻く環境は、長期にわたる木材価格の低迷や経営コストの上昇により林業の採算性が大幅な悪化を続け、それに伴い林家所得が減少していること、山村の過疎化等により林業従事者数が減少し林業従事者の高齢化がより進んでいることから、依然として厳しい状況である。このような状況を背景として、林業従事者等の新規投資意欲が減退していることなどから、林野庁においても、林業改善資金の活用のために各種の対策を講じてきたところであるが、繰越金は依然として増加している状況である。
そこで、繰越金の推移と林野庁が執った改善策の実施状況から林業改善資金の資金造成額が適切かなどに着眼して検査した。
林業改善資金による貸付事業を実施している47都道府県における10年度から12年度までの3箇年の貸付額、繰越金等に重点を置いて事業の実施状況などについて検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
(1)貸付額、繰越額等の状況
林野庁では、前記のような林業改善資金の状況を踏まえ、2年度から10年度の間、各都道府県に通達を発して、資金利用促進計画を策定し貸付額の増加と繰越額の減少について計画的な取組を求めてきた。しかし、10年度から12年度の3箇年度について、貸付額と繰越額を比較すると、下表のとおり、繰越額が貸付額を大きく上回る都道府県が増加してきていた。
区分 | 10年度 | 11年度 | 12年度 |
繰越額が貸付額の5倍以上となっている都道府県数 | 13 | 20 | 23 |
うち繰越額が貸付額の10倍以上となっている都道府県数 | 5 | 11 | 15 |
そして、10年の通達により、10年度から14年度の5箇年間の資金利用促進計画が策定されているが、その状況についてみると、下表のとおりとなっていて、貸付額は計画を大幅に下回る一方、計画では減少するとしていた繰越額が実績では増加していて、計画を大幅に上回っていた。
(単位:百万円) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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さらに、繰越額が多額となっていて計画を上回っている都道府県が増加してきていた。
区分 | 10年度 | 11年度 | 12年度 |
繰越額が5000万円以上で、計画繰越額の1.5倍以上となっている都道府県数 | 26 | 35 | 40 |
うち繰越額が計画繰越額の2倍以上となっている都道府県数 | 14 | 27 | 33 |
また、各都道府県における繰越額と償還額とを合わせた貸付財源額に対する貸付予算額の割合を10年度から12年度までの3箇年度についてみると、当初から、貸付財源額の2分の1にも満たない貸付予算額しか計上していない都道府県は10年度8府県、11年度18道府県、12年度27都府県と年々増加している状況であった。
(2)新林業資金等の貸付実績
林野庁では貸付需要を喚起するため、8年度に新林業資金を創設し、また、8年度及び10年度に既存の貸付資金に新たな貸付種別を追加した。しかし、これらの貸付実績をみると、8年度から10年度にわずかな貸付実績があるのみで、11、12両年度の貸付けは全くない状況であった。
前記のように、林野庁において、林業改善資金の活用状況等を踏まえ、資金利用の促進、新規資金の創設等を行うなどの対策を講じてきている。しかし、林業改善資金は、貸付額が減少する一方で、多額の繰越金を発生させており、都道府県費分も合わせた貴重な財政資金が効果を発現することなく滞留している事態となっていた。
したがって、都道府県の特別会計の資金を貸付需要に見合った適切な規模とし、その規模の下で効果的な活用を図ることができるよう、林野庁において本制度の見直しを行う要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、近年の林業を取り巻く環境が依然として厳しく、年々貸付需要が減少してきていることにもよるが、林野庁において、貸付需要に見合った資金規模にするための検討が十分でなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、林野庁では、13年10月に通知を発し、都道府県において特別会計の資金を貸付需要に対応した適切な資金規模とし、貸付けが見込まれない額のうち、国の補助金に相当する額を国へ自主納付できることとするなどの処置を講じた。