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  • 平成12年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

現場吹付法枠工における法枠吹付工費の積算を法枠仕上げの要否に応じて適切に行うよう改善させたもの


(5)現場吹付法枠工における法枠吹付工費の積算を法枠仕上げの要否に応じて適切に行うよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)林野庁  (項)林業振興費
 (項)森林保全整備事業費
 (項)森林環境整備事業費
 (項)山林施設災害復旧事業費
 (項)山林施設災害関連事業費
 (項)離島振興事業費
国有林野事業特別会計(治山勘定)  (項)治山事業費
 (項)北海道治山事業費
 (項)離島治山事業費
部局等の名称 林野庁
補助の根拠 森林法(昭和26年法律第249号)、地すべり等防止法(昭和33年法律第30号)等
予算補助
補助事業者
(事業主体)
道1、府1、県19、計21事業主体
間接補助事業者
(事業主体)
市11、町41、村14、計66事業主体
補助事業 大磯地区その2復旧治山工事ほか566工事
補助事業の概要 山腹及び林道における切土法面等の安定を図るなどのため、現場吹付法枠工を施工するもの
事業費 257億7748万余円 (平成11、12両年度)
上記に対する国庫補助金交付額 146億8812万余円
法枠吹付工費の積算額 17億5555万余円 (平成11、12両年度)
低減できた法枠吹付工費の積算額 1億2890万円 (平成11、12両年度)
上記に対する国庫補助金相当額 7470万円

1 工事の概要

(現場吹付法枠工)

 林野庁では、森林法(昭和26年法律第249号)等に基づき、国土の保全等を図るため、民有林治山事業、民有林林道事業等として、治山工事、林道開設工事等を行う地方公共団体に対して、毎年度多額の補助金を交付している。
 これらの工事においては、山腹及び林道における切土法面等の安定を図ることなどを目的として、現場吹付法枠工が多数施工されている。

(現場吹付法枠工の構成)

 現場吹付法枠工は、〔1〕法面に鉄筋を組み立て、法面等の形状に合わせて変形可能な金網等の型枠を格子状に法面等に設置する法枠組立・据付工、〔2〕設置した型枠の内部にモルタル又はコンクリートを吹き付けて格子状の法枠を築造する法枠吹付工、〔3〕法枠内の地山に種子、客土を含んだ厚層基材やモルタルを吹き付ける枠内吹付工等から構成されている。

(法枠吹付工費の積算)

 地方公共団体では、現場吹付法枠工費を林野庁制定の森林整備事業標準歩掛(以下「標準歩掛」という。)等に基づいて積算することとしている。
 そして、標準歩掛では、前記〔2〕の法枠吹付工の歩掛かりについて、1日当たりの編成人員を次のとおり計8人としている。
(ア)工事の指揮、監督を行う世話役1人
(イ)法面において、型枠の内部にモルタル等を吹き付ける作業、吹き付けたモルタル等のはね返り材を清掃する作業及び吹付け直後に法枠の表面(上面、側面)をコテで平滑に仕上げる作業(以下「法枠仕上げ」という。)を行う法面工3人(参考図1参照)
(ウ)吹付機、ベルトコンベア等の操作を行う特殊作業員2人
(エ)法面工及び特殊作業員を補助する普通作業員2人
 上記作業のうち法枠仕上げは、モルタル等を吹き付けた際、法枠表面に細かな凹凸が残るため、景観を重視することとしてその凹凸をコテにより均し平滑にするものである。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 近年、現場吹付法枠工において、法枠仕上げを行っていない施工が増加している。そこで、法枠吹付工費の積算が法枠仕上げの要否に応じて適切に行われているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象)

 平成11、12両年度に現場吹付法枠工を施工した工事のうち、北海道ほか22府県(注1) 及びその管内の69市町村計92事業主体が施行した594工事(工事費総額277億8928万余円、国庫補助金158億8722万余円)を対象として検査した。

(検査の結果)

検査したところ、北海道ほか20府県(注2) 及びその管内の66市町村計87事業主体が施行した567工事(工事費総額257億7748万余円、国庫補助金146億8812万余円)の法枠吹付工費の積算(積算額計17億5555万余円)において、次のような事態が見受けられた。
 すなわち、上記567工事の法枠吹付工について、事業主体では、法枠内に緑化工を施工する工事が大部分であり、この場合は法枠が植生で覆い隠されること、また、法枠表面に凹凸が残っても景観上特に支障がないことなどから、法枠仕上げを行うこととはしていなかった(参考図2参照)
 一方、前記のように、本件567工事の法枠吹付工については、標準歩掛の法枠仕上げを含む歩掛かりに基づいて積算しており、このため、施工することとしていない法枠仕上げに係る経費が計上される結果となっていて適切とは認められない。
 したがって、法枠仕上げを行わない場合の法枠吹付工費の積算に当たっては、これに適合した新たな歩掛かりを制定するなどし、より経済的な積算を行う要があると認められた。
 そこで、施工中などの工事のうちから法枠仕上げを行っていないものを抽出して、法枠吹付工の実態について調査したところ、前記(イ)の法面工については標準歩掛の3人に対して2人程度となっていて、これにより編成人員の8人も平均7人程度となっている状況であった。

(低減できた積算額)

 前記の567工事において、法枠吹付工費について、法枠仕上げに係る経費を計上しない場合の法面工の歩掛かりを2人として積算すれば、前記法枠吹付工費の積算額計17億5555万余円は計16億2664万余円となり、約1億2890万円(国庫補助金相当額約7470万円)低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、林野庁において、現場吹付法枠工の施工についての調査、検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、林野庁では、13年9月に、都道府県に対し通知を発し、標準歩掛の法枠吹付工において、法枠仕上げの要否に応じた歩掛かりを定め、同年11月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。

(注1) 北海道ほか22府県 北海道、京都府、福島、山形、栃木、埼玉、千葉、富山、石川、福井、岐阜、愛知、滋賀、兵庫、鳥取、島根、岡山、山口、徳島、長崎、熊本、大分、宮崎各県
(注2) 北海道ほか20府県  北海道、京都府、福島、山形、栃木、千葉、富山、石川、福井、岐阜、愛知、滋賀、兵庫、鳥取、島根、岡山、山口、徳島、長崎、大分、宮崎各県

現場吹付法枠工における法枠吹付工費の積算を法枠仕上げの要否に応じて適切に行うよう改善させたものの図1