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  • 平成12年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 国土交通省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

国道下に整備されている光ファイバケーブルの収容空間の連続性を確保するなどして民間通信事業者等に対する支援の充実を図るよう改善させたもの


(2)国道下に整備されている光ファイバケーブルの収容空間の連続性を確保するなどして民間通信事業者等に対する支援の充実を図るよう改善させたもの

会計名及び科目 道路整備特別会計  (項)道路事業費
 (項)北海道道路事業費
 (項)沖縄道路事業費
部局等の名称 東北地方整備局ほか7地方整備局、北海道開発局、内閣府沖縄総合事務局
整備事業の概要 道路管理用光ケーブル網の整備と合わせ民間通信事業者等の光ケーブル網の構築を支援するために、光ケーブルの収容空間を整備するもの
整備に要した金額 2397億0930万円(平成12年度末現在)

1 事業の概要

(光ファイバケーブル網の整備)

国土交通省(平成13年1月5日以前は建設省)では、全国の一般国道(以下「国道」という。)のうち法令によって指定された区間(以下「指定区間」という。)について、各地方整備局(13年1月5日以前は建設省地方建設局)、北海道開発局(13年1月5日以前は総理府北海道開発庁北海道開発局)及び内閣府沖縄総合事務局(13年1月5日以前は総理府沖縄開発庁沖縄総合事務局)(以下、これらを合わせて「地方整備局」という。)管内の工事事務所等(以下「事務所」という。)及び出張所等において、維持、修繕、災害復旧その他の管理(以下「道路管理」という。)を行っている。
そして、2年度から、道路管理の高度化を図るなどのため、国土交通本省、地方整備局、事務所及び出張所等と、監視機器類、情報提供装置等とを光ファイバケーブル(以下「光ケーブル」という。)で結ぶ光ケーブル網の整備を実施している。この光ケーブルは内径40mmから75mmの管(以下「さや管」という。)に収容されて指定区間の道路下に埋設されている。

(民間事業者に対する支援)

 我が国の高度情報社会のインフラとしての光ケーブル網については、内閣に設置された高度情報通信社会推進本部が7年2月に決定した「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」によって、22年までに全国整備を目指すという方針が示された。
 国土交通省では、9年3月に、情報BOX整備のための基本方針を策定し、地方整備局へ周知した。情報BOXとは、内径250mm若しくは300mmの管又は内幅250mmのU字溝で、この中に内径40mm又は50mmのさや管を複数収容する構造となっており、道路管理用光ケーブルのさや管だけではなく、電気通信事業法(昭和59年法律第86号)に規定されている第一種電気通信事業者等の民間事業者等(以下「事業者」という。)が使用する光ケーブルのさや管も収容できるものとなっている(参考図参照) 。この情報BOXについては、10年5月に閣議決定された道路整備五箇年計画においても、「高度情報通信社会の構築に向け、民間事業者の光ファイバー網の整備促進のため、道路管理用の光ファイバー網の整備に合わせ、光ファイバーの収容空間(情報BOX、電線共同溝、共同溝)の整備を推進し、情報ハイウェイ構築を支援する。」と明記されている。
 そして、12年12月に高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12年法律第144号)が施行され、これに基づき、13年3月には、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)により「e−Japan重点計画」が決定されている。これによれば、国は「世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成」を促進するために、「2001年度までに道路、河川、港湾等の公共施設管理用光ファイバの整備や電線共同溝の整備等による電線類地中化等にあわせて約2万9千kmの収容空間を整備するとともに、これらの開放を順次進める」こととしている。
 上記のように、現在、国土交通省で指定区間の道路下において整備を進めている光ケーブルの収容空間は、情報ネットワークの構築を支援する上で重要な役割を担っている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 情報BOXの整備については、整備のための基本方針が決定されて以来、多額の国費が投入されてきており、道路管理用として使用するだけではなく、事業者に開放して光ケーブル網構築の支援を行うことも目的としていることから、事業者に対する開放状況及び利用状況について着眼して検査した。

(検査の対象)

 本省・地方整備局間等を結んでいて道路管理用として重要であるため情報BOXの整備が進んでおり、また、大都市間を結んでいて事業者の光ケーブル入溝に対する需要も高いと見込まれる東京−大阪など主要な9路線区間(注1) (以下「9路線」という。)を対象として、これらを管理する東北地方整備局ほか9地方整備局(注2) 及び青森工事事務所ほか43事務所(注3) について検査するとともに、事業者の意向についても調査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)事業者の光ケーブルの入溝状況について

 上記9路線の道路下に設置されている光ケーブルの収容空間は、情報BOXの整備以前に道路管理用として埋設された管路(以下「先行管路」という。)、情報BOX、電線共同溝、共同溝(以下、これらを「情報BOX等」という。)により構成されていて、その12年度末現在における整備済み延長は、2,937kmであり、整備計画延長3,607kmに対して約81%の進ちょく率となっており、事業費は2397億0930万余円となっていた。
 9路線における事業者の情報BOX等への入溝状況についてみると、事業者の入溝希望延長は、延べ17,006km(79事業者)となっていた。これは整備計画延長の約5倍となっており、区間によっては10事業者が入溝を希望しているなど、事業者の入溝希望は相当多くなっている。このように多数の事業者が入溝を希望する理由は主として次のとおりである。
(ア)光ケーブルを電柱に添架して架空で設置することは、自然災害等による光ケーブルの損傷や断線が発生しやすいなど望ましいものではなく、情報BOX等に入溝することにより、断線等のリスクを減らすことができ、通信の信頼性が確保できること
(イ)国道のルートは主要な都市を連絡、経由しているため、国道下に整備された情報BOX等を利用することで各都市を結ぶ幹線光ケーブル網を構築できること
(ウ)12年度の情報BOXの建設工事費は1km当たり約4000万円となっており、情報BOX等を利用することで事業者は自らがこのような建設を行うコストを節減できること
 上記の入溝希望延長延べ17,006kmに対して、12年度末の事業者入溝済み延長は延べ2,078km(37事業者)となっており、入溝希望延長に対する事業者入溝済み延長の割合(以下「入溝率」という。)は約12%に過ぎなかった。また、情報BOX等に事業者の光ケーブルが1本も入溝していない区間が多数見受けられ、その延長は2,164kmとなっていた。

(2)光ケーブル入溝上のあい路について

 上記のように入溝率が低率となっているのは、事業者から直接に聴取するなど調査した結果も踏まえると、主として次のようなことによると認められた。

(ア)情報BOX等を連続して利用できないこと

 情報BOX等の整備済み延長は年々延伸しつつあるものの、次のように情報BOX等を連続して利用できず、事業者の光ケーブル網構築上のあい路となっている区間があった。
〔1〕 情報BOX等の整備済み区間の中には、先行管路の区間(以下「先行管路区間」という。)が9路線で160箇所あり、これらの区間では、前後の区間よりさや管数が少なくなっており、事業者用のさや管が十分確保されていない状況となっている。
〔2〕 国道のバイパスや橋りょうの架替え工事が予定されていたりなどしていて、情報BOX等を整備するまでに長期間を要すると見込まれる区間(以下「未整備区間」という。)が9路線で141箇所ある。このように、情報BOX等が連続して利用できない場合、先行管路区間や未整備区間のみならず、情報BOXが整備済みの前後の区間についても事業者が入溝していない状況が見受けられた。

<事例>
 国道甲号の155.806kmから155.822kmの間は先行管路区間であり、そのさや管数は6管となっており、その用途は、道路管理用4管、予備用1管、事業者用1管となっていた。しかし、この前後の区間は情報BOXで整備されていて、そのさや管数は11管となっており、その用途は、道路管理用4管、予備用1管、事業者用6管となっていた。
 このように、先行管路区間は、事業者用のさや管が前後の区間よりも少ないため事業者は連続して使用できず、12年度末現在、この区間について入溝を希望している事業者は6事業者あるが、この前後の情報BOX整備済みの区間を含めて1事業者も入溝していなかった。

(イ)事業者の入溝に対して地方整備局等の支援が十分でないこと

 各地方整備局及び事務所では、事業者に対し情報BOX等の開放に関する情報の提供、入溝希望の把握、入溝の受付等を行っているが、これらに関する取扱いについて各地方整備局間及び各事務所間の連携が十分に執られていないなど、事業者の入溝に対する支援が十分に行われていない状況となっていた。

<事例>
 国道乙号を管理するA事務所では9年5月及び10年6月に事業者に対して入溝希望文書を発して入溝希望の把握に努めていたものの、国道乙号を管理し、A事務所に隣接するB事務所では入溝希望の把握を行っていなかった。このように入溝希望の把握等について隣接事務所間で連携が執られていなかったので、A事務所管内の主要都市からB事務所管内の主要都市まで光ケーブル網を整備しようとする事業者にとって、B事務所管内の情報BOX等だけでなく、A事務所管内の情報BOX等についても利用することができない状況となっていた。
 上記のように、9路線における事業者の入溝率が約12%に過ぎないなど、既に整備されている情報BOX等が事業者に十分利用されていないことは、情報BOX等の整備によって情報ネットワーク構築を支援するという事業目的が十分達成されておらず、改善の要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、主として次のことによると認められた。
(ア)道路を管理する事務所等において、道路管理用と合わせて事業者の光ケーブル網構築の支援を行うという事業目的に配慮して情報BOX等の収容空間としての連続性を確保するという認識が十分でなかったこと
(イ)事業者が広域的な光ケーブル網を構想しているのに対し、情報BOX等への入溝希望の把握等について、各地方整備局間及び各事務所間の連携が執られていないなど、事業者に対する支援が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省では、13年10月に各地方整備局に対して文書を発し、事業者の光ケーブル網構築の支援の充実が図られるよう、次のような処置を講じた。
(ア)あい路となっている先行管路区間や未整備区間について、重点的に情報BOXを整備することとし、情報BOX等の収容空間としての連続性を確保するよう指導した。
(イ)隣接する地方整備局及び事務所間の緊密な連携のもと、事業者に対して、説明会を開催するなど特段の配慮を行うとともに、データベース化した情報BOX等の整備状況等を、インターネットにより公表しきめ細かな情報提供を行うこととした。

(注1) 主要な9路線区間 札幌−旭川、東京−青森、東京−新潟、新潟−大阪、東京−大阪、大阪−下関、徳島−松山、北九州−鹿児島、国頭−那覇の9路線区間
(注2) 東北地方整備局ほか9地方整備局 東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州各地方整備局、北海道開発局、沖縄総合事務局
(注3) 青森工事事務所ほか43事務所 青森、岩手、仙台、福島、郡山国道、宇都宮国道、高崎、大宮国道、東京国道、相武国道、横浜国道、新潟国道、長岡国道、高田、富山、金沢、静岡国道、浜松、名古屋国道、三重、北勢国道、滋賀国道、京都国道、大阪国道、姫路、兵庫国道、奈良国道、福井、岡山国道、福山、広島国道、山口、徳島、香川、松山、福岡国道、北九州国道、佐賀国道、熊本、鹿児島国道各工事事務所、札幌、旭川両開発建設部、南部、北部両国道事務所

(参考図)

(参考図)