ページトップ
  • 平成12年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 国土交通省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

防波堤等の築造工事における鉄筋加工組立費の積算を適切なものとするよう改善させたもの


(3)防波堤等の築造工事における鉄筋加工組立費の積算を適切なものとするよう改善させたもの

会計名及び科目 港湾整備特別会計(港湾整備勘定)  (項)港湾事業費
 (項)離島港湾事業費
部局等の名称 九州地方整備局(平成13年1月5日以前は運輸省第四港湾建設局)
事業の根拠 港湾法(昭和25年法律第218号)、離島振興法(昭和28年法律第72号)
工事名 鹿児島港(中央港区)防波堤(沖)工事(第3次)ほか10工事
工事の概要 港内の静穏を維持し、荷役の円滑化、船舶の航行等の安全を図るための防波堤等を築造する工事
工事費 43億8018万円
請負人 株式会社森山(清)組ほか5株式会社及び東洋・大旺建設工事共同企業体
契約 平成11年3月〜13年2月 公募型指名競争契約
鉄筋加工組立費の積算額 2億5713万余円
低減できた鉄筋加工組立費の積算額 3000万円

1 工事の概要

(工事の内容)

 国土交通省では、港湾施設の整備を推進するため、国の直轄事業又は地方公共団体等の港湾管理者が行う国庫補助事業として、港湾整備事業を毎年度多数実施している。
 これら事業の一環として、九州地方整備局(平成13年1月5日以前は運輸省第四港湾建設局)では、直轄事業として、平成11、12両年度に鹿児島港ほか2港において、鹿児島港(中央港区)防波堤(沖)工事(第3次)ほか10工事を工事費総額43億8018万円で施行している。
 上記の各工事は、港内の静穏を維持し、荷役の円滑化、船舶の航行等の安全を図るために防波堤等を築造するものであり、これらの工事ではスリット式ケーソン等の製作等を行っている。
 スリット式ケーソンは、細長い穴の開いた透過壁とその背後の遊水室により反射波等を軽減できる鉄筋コンクリート構造の直立式消波ケーソンで、波の力に対抗するため、透過壁部分は径の太い鉄筋を使用して強化した構造になっている(参考図参照)

(鉄筋加工組立作業の内容)

 本件各工事のスリット式ケーソン等の製作においては、径13mmから径32mmまでの鉄筋が使用されていて、これらの鉄筋は、現場で切断機、加工機等を用いて切断、曲げ加工を行い、クレーンを使用するなどして組み立てられている。

(鉄筋加工組立費の積算)

 港湾工事の工事費は、運輸省港湾局制定の「港湾請負工事積算基準」に基づき積算することとなっている。このうち鉄筋加工組立費は、物価調査機関が積算参考資料において公表している市場単価を用いる市場単価方式により積算し、市場単価を適用できない場合は別途積算することとなっている。
 本件各工事の鉄筋加工組立費の積算に当たり、九州地方整備局では、径32mm未満の鉄筋の加工組立費については市場単価方式により積算していた。これに対し、径32mmの鉄筋の加工組立費については市場単価が公表されていないことから別途積算することとし、径32mm以上の鉄筋が使用されている吊鉄筋(鉄筋コンクリート構造物をクレーン等で吊り上げるため当該構造物に固定された鉄筋)の加工組立歩掛かり等を準用していた。そして、これにより本件11工事における鉄筋加工組立費を計2億5713万余円と積算し、このうち径32mmの鉄筋の加工組立費については、1kg当たりの単価を264円から 292円までとし、径32mmの鉄筋の総重量計149,972kgについて、その加工組立費を計4083万余円と積算していた。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 港湾整備事業においては、近年、スリット式ケーソンの普及等で径の太い鉄筋を使用する鉄筋コンクリート構造物が増加の傾向にあり、その工事費も多額に上っていることなどから、径32mmの鉄筋の加工組立費の積算が適切に行われているかという点に着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、径32mmの鉄筋の加工組立費の積算に当たり、吊鉄筋の歩掛かり等を準用して算定していたのは、次のことなどから適切でなかった。
(ア)吊鉄筋の加工は工場加工を前提としていることから、その加工費には現場加工では要しない工場経費等の費用が大きな割合で含まれていること
(イ)吊鉄筋の加工は、一般の鉄筋コンクリート構造物に使用する鉄筋の加工が90度以下の曲げ加工が主体であるのに比べ、作業の難易度が高い180度の曲げ加工が主体であり、また、鉄筋の長さに対する曲げ加工の割合も高いことなどから、加工歩掛かりが大きくなっていること
(ウ)吊鉄筋の組立は、一般の鉄筋を配筋した後の狭あいな作業条件の下での施工であることなどから、組立歩掛かりが大きくなっていること
 そして、径32mmの鉄筋は、径32mm未満の鉄筋と同一の現場において同様の加工組立作業を行っており、鉄筋1本当たりの加工組立作業量は径の違いによる差異が少なく、1kg当たりでの加工組立作業量は鉄筋の径が太くなるほど低減することから、径32mmの鉄筋の1kg当たりでの加工組立作業量は径32mm未満の鉄筋と同程度以下となっていると認められた。
 したがって、本件各工事の径32mmの鉄筋の加工組立費の積算に当たっては、径32mm未満の鉄筋の市場単価を準用することが合理的であると認められた。
 現に、国庫補助事業として同種の工事を施行している港湾管理者では、径32mmの鉄筋の加工組立費の積算に当たって、径32mm未満の鉄筋の市場単価を準用しているものが相当数見受けられた。

(低減できた積算額)

 上記により、径32mmの鉄筋の加工組立費について径32mm未満の鉄筋の1kg当たりの市場単価69円から86円までを準用して本件各工事の鉄筋加工組立費を修正計算すると計2億2712万余円となり、前記の積算額2億5713万余円を約3000万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、国土交通省において、径32mm以上の鉄筋の加工組立費の積算方法を具体的に示していなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省では、13年10月に文書を発して径32mm以上の鉄筋の加工組立費の積算方法を明確に示し、地方整備局及び港湾管理者等を指導する処置を講じた。

(参考図)

(参考図)