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  • 平成12年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第1 農林漁業金融公庫|
  • 不当事項|
  • 貸付金

林業基盤整備資金の貸付けに当たり、担保不動産に対する抵当権の設定を怠ったため、貸付金債権の回収が不能となったもの


(216)林業基盤整備資金の貸付けに当たり、担保不動産に対する抵当権の設定を怠ったため、貸付金債権の回収が不能となったもの

科目 貸付金
部局等の名称 高松支店
貸付けの根拠 農林漁業金融公庫法(昭和27年法律第355号)
貸付けの種類 林業基盤整備資金(造林)
貸付けの内容 林業者に対する林業基盤整備資金の貸付け
貸付先 林業者
貸付金額 8,250,000円(平成元年度)
上記のうち不当と認める額 6,363,900円

1 貸付けの概要

 農林漁業金融公庫(以下「公庫」という。)では、農林漁業者等に対し、農林漁業の生産力の維持増進又は食料の安定供給の確保に必要な長期かつ低利の資金で、一般の金融機関から融資を受けることが困難なものについて、資金の貸付けを行っている。
 公庫では、この資金の貸付けに当たり、原則として、保証人による保証及び不動産等の担保の提供又はそのいずれかを求めることとしている。そして、貸付けを受ける者の所有不動産を担保とする場合には、この担保不動産に対する抵当権設定登記の手続を了し、原則として、公庫において最初の資金の払出しを行う時までに登記簿謄本の提出を受けることとしている。
 公庫高松支店では、徳島県で林業を営む者(以下「借入者」という。)に対し、平成2年4月、檜の植栽に必要な資金9,174,000円の一部として林業基盤整備資金(造林)8,250,000円の貸付け(据置期限平成36年10月、償還期限同56年10月)を行った。この貸付けに当たっては、借入者が担保としてその所有する山林等に公庫を第1順位とする抵当権を設定して登記すること、その登記簿謄本を提出することなどが貸付契約上の特約として約定されていた。

2 検査の結果

 検査したところ、この資金の貸付け及び払出しの手続は、次のとおり、適切を欠いていた。
 同支店では、2年4月から同年11月までの間に計3回にわたり、借入者に対し、計6,530,000円の払出しを行った。その後、4年2月に借入者から提出された事業完成報告書で事業費が減少した旨が報告されたため、同支店では、払出し未了となっていた1,720,000円の元金充当を行うとともに、払出超過額166,100円の繰上償還を受けた。その結果、同支店の借入者に対する最終的な払出金額は6,363,900円となった。
 しかし、その後、11年10月に借入者から自己破産の申立てを行う旨の通知があったことなどから、同支店において関係書類を確認したところ、本件貸付けに当たり、前記の山林等には抵当権が設定されていなかったことなどが判明した。そして、山林等は既に10年8月までにすべて第三者に売却されており、借入者には他に資産がないことなどから、本件貸付けに係る貸付金債権の回収は不能となった。このため、公庫では、11年度決算において貸付金債権の全額6,363,900円を償却するに至ったものである。
 このような事態が生じていたのは、同支店の貸付け及び払出しの事務手続に過誤があったこと、また、公庫における抵当権設定登記の確認に関する事務手続に十分でない点があったことによると認められる。
 したがって、担保不動産に抵当権を設定しないで貸付金の払出しを行ったため、貸付金6,363,900円の回収が不能となっていて、不当と認められる。