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  • 平成12年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第3 首都高速道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

先行削孔工事におけるクローラクレーンの運転経費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


先行削孔工事におけるクローラクレーンの運転経費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (項)高速道路建設事業費
(項)社会資本整備事業費
(項)受託関連街路建設費
部局等の名称 東京建設局、湾岸線建設局(平成13年5月20日以降は神奈川建設局)
工事名 SJ43(2-1)山留壁工事(その2)ほか20工事
工事の概要 高速道路の建設工事の一環として、トンネル等のく体を構築するための山留壁を築造するなどの工事
工事費 436億9494万余円
請負人 熊谷・日本国土SJ43工区(2-1)山留壁特定建設工事共同企業体ほか20特定建設工事共同企業体
契約 平成9年4月〜13年3月 一般競争契約、公募型指名競争契約、随意契約
クローラクレーンの運転経費の積算額 2億0278万余円
低減できたクローラクレーンの運転経費の積算額 4080万円

1 工事の概要

(工事の内容)

 首都高速道路公団(以下「公団」という。)東京建設局及び湾岸線建設局(平成13年5月20日以降は神奈川建設局)では、12年度に、高速道路の建設工事の一環として、トンネル等のく体を構築するための山留壁を築造するなどの工事を21工事(工事費総額436億9494万余円)施行している。

(先行削孔工事)

 上記の各工事では、地中連続壁工(柱列式)により、地中に連続した複数の柱を構築することによって連続した壁を築造する山留壁工事を実施している。この工事に当たっては、連続壁が深く、地中への削孔長が長くなることなどから、山留壁工事の垂直精度を確保するため、あらかじめ地盤に直径600mmから900mm、削孔長24.3mから57.8mの削孔を行う先行削孔工事を実施している。
 先行削孔工事の作業工程は、次のとおりとなっている。
〔1〕 クローラクレーンにより鉄板を敷設し、作業床を造成した後、クローラ式アースオーガの作業場所への移動・据付などの準備作業を行う。
〔2〕 クローラ式アースオーガにより地盤を削孔しながら、スクリューの先端から吐出されるセメントミルク等と削孔土とをかくはん、混合(以下「混練り」という。)する。
〔3〕 削孔長が長いことからスクリューを継ぎ足す場合には、クローラクレーンにより継ぎ足す。
〔4〕 所定深度到達後、スクリューを逆回転させ、スクリューを引き上げながら混練りを行う。
〔5〕 スクリューの引上げに伴い、スクリューを継ぎ足したものについては、クローラクレーンによりスクリューを取り外す。
〔6〕 スクリューの引上げ終了後、〔1〕から〔5〕までの工程を繰り返す。

(クローラクレーンの運転経費の積算)

 公団では、先行削孔工事におけるクローラクレーンの運転経費の積算については、積算基準を定めていないことから、他団体が定めた積算資料や公団がその積算資料を運用するために発した事務連絡などに基づき積算していた。これによれば、クローラクレーンの運転経費は、クローラクレーンが稼働する時間(以下「運転時間」という。)にクローラクレーンの運転に係る経費の単価(労務費、機械損料及び燃料費。以下、これらを「経費単価」という。)を乗じて算定することになっている。この運転時間は、上記〔1〕から〔5〕までの先行削孔工事の作業に係る削孔1本当たりの施工時間(以下「サイクルタイム」という。)1.80時間から4.88時間と同一であるとして、サイクルタイムを運転時間としていた。また、経費単価は、クローラクレーンが標準的な稼働をする場合の供用に係る経費を含んだものとなっている。
 そして、クローラクレーンの運転経費を総額2億0278万余円と積算していた。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 公団では、建設する高速道路が高架橋から地下トンネルへ移行してきていることから、開削工事を多数施工しており、地中連続壁工による山留壁工事が増加している。そして、これに伴い先行削孔工事も増加していることから、工事費の積算が施工の実態に適合したものとなっているかに着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、クローラクレーンの運転経費の積算について、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
 公団では、前記のとおり、クローラクレーンの運転時間がサイクルタイムと同一であるとして、サイクルタイムを運転時間としていた。そして、本件各工事におけるクローラクレーンは標準的な稼働をすることから、運転時間に経費単価を乗じて運転経費を積算していた。
 しかし、サイクルタイムは前記〔1〕から〔5〕までの作業に要する時間を合計したものであり、これらの作業のうち、クローラクレーンは、〔1〕準備作業、〔3〕スクリューの継ぎ足し及び〔5〕スクリューの取り外しにおいては作業を行うが、〔2〕削孔・混練り及び〔4〕スクリューの引上げ・混練りにおいては作業を行っていない。このため、クローラクレーンの運転時間はサイクルタイムより短くなっており、運転時間をサイクルタイムと同一であるとすることは適切でないと認められた。
 そこで、本件各工事の先行削孔工事におけるクローラクレーンの稼働状況について実態調査を行ったところ、サイクルタイムが平均で4.05時間であるのに対して、クローラクレーンの運転時間は平均で3.20時間となっており、サイクルタイムの80%程度となっていた。
 したがって、クローラクレーンの運転経費の積算に当たっては、施工の実態に適合した運転時間により積算を行う要があると認められた。

(低減できた積算額)

 上記により、本件各工事におけるクローラクレーンの運転経費を施工実態を基に修正計算すると、1億6193万余円となり、前記の積算額2億0278万余円を約4080万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、クローラクレーンの稼働の実態を積算に反映させるための検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、13年11月にクローラクレーンの運転経費の積算が施工の実態に適合したものとなるよう事務連絡を発し、同月以降契約する工事から適用することとする処置を講じた。

(参考図)

(参考図)