科目 | (項)高速道路建設事業費 (項)受託業務費 |
部局等の名称 | 本社、大阪建設局 |
補償の概要 | 高速道路建設事業の一環として、高速道路用地を取得する際、当該土地に定着する建物等の所有者が建物等を移転することに伴い発生する損失を補償するもの |
補償の相手方 | 9株式会社等 |
建物等移転補償費 | 42億1893万余円 | (平成12年度) |
解体材の処理費の積算額 | 6648万余円 | (平成12年度) |
低減できた解体材の処理費の積算額 | 2890万円 | (平成12年度) |
1 移転補償の概要
阪神高速道路公団(以下「公団」という。)の本社及び大阪建設局では、阪神高速道路大和川線及び淀川左岸線の建設事業において、平成12年度に高速道路用地を取得する際、当該土地に定着する建物等の所有者が建物等を移転することに伴い発生する損失を補償するため、9株式会社等との間に7件総額42億1893万余円の移転補償契約を締結している。
これらの契約に係る建物等は、工場及び事務所が主体で、解体に伴い発生するコンクリート塊、モルタル等の廃材等の総重量はいずれも100t以上の大きなものとなっている。
移転補償費の額は、移転対象となる建物等の解体及び解体材の運搬・処理に要する費用、建物等の再建設に要する費用などから構成される。
公団では、この移転補償費の額は、本社制定の「物件関係調査積算の手引」(以下「積算の手引」という。)及び「標準単価表(物件補償)」(以下「単価表」という。)に基づいて算定することとしている。
前記契約の移転補償費の積算は大阪建設局が行っており、同局では、移転補償費のうち解体材を処理する施設に支払う処理費の積算に当たり、積算の手引及び単価表に基づき、不燃物であるコンクリート塊及びモルタル等の廃材の処理重量及び処理単価を次のとおりとしていた。
(1)処理重量について
コンクリート塊の処理重量については、建物の図面から算出したコンクリート塊の体積5,117.1m3
を有筋コンクリート塊と無筋コンクリート塊に区分し、それぞれの体積に1m3
当たりの重量(以下「換算値重量」という。)2.4t又は2.2tを乗じるなどして、計12,093.9tと算出していた。
また、モルタル等の廃材の処理重量については、建物の床面積1m2
から発生する標準廃材量(例えば工場の場合0.163m3
)に床面積を乗じて廃材の体積を計3,193.4m3
と算出した上、この体積にモルタル等の換算値重量2.2tを乗じるなどして、計7,046.4tと算出していた。
(2)処理単価について
コンクリート塊及びモルタル等の廃材の処理単価は、不燃物の処理単価である1t当たり3,200円としていた。
そして、上記(1)の処理重量の合計に上記(2)の処理単価を乗じるなどして、可燃物分も含めた解体材の処理費を総額6648万余円と積算していた。
2 検査の結果
公団の高速道路建設事業は、従来は街路上の高架橋による高速道路建設が主体であったが、近年、工場地や住宅地等の通過が多い路線の建設が行われるようになってきた。そして、これらの土地の買収が増加し、これに伴い建物等の移転補償費の額も多額になってきていることから、移転補償費の算定は適切なものとなっているかに着眼して検査した。
検査したところ、前記の移転補償契約において、解体材の処理費の積算が次のように適切とは認められない事態が見受けられた。
(1)モルタル等の廃材の処理重量について
解体材の処理費の積算において算出していた廃材の体積は、建物の解体後の状態、すなわち解体材の間に空隙がある状態の体積である。しかし、これに乗じていた換算値重量2.2t は、解体前の状態のモルタル等の換算値重量であった。
そこで、解体後の状態における廃材の換算値重量についてみると、近畿地区用地対策連絡協議会制定の「補償標準単価表」において、コンクリート塊を含まない不燃物の解体材のダンプトラック積載量が、4トン車では3.8m3
、10トン車では10m3
とされていることなどから、おおむね1t程度と認められる。
したがって、モルタル等の廃材の処理重量を算出するに当たり、換算値重量を2.2tとしているのは適切とは認められない。
(2)コンクリート塊の処理単価について
解体材の処理費の積算において用いていた不燃物の処理単価3,200円は、刊行物である積算参考資料に最終処分施設で埋立て処理する際の処理単価として記載されていたものを、単価表に採用したものであった。
しかし、不燃物のうちコンクリート塊については、近年、最終処分施設での処理単価が上昇したことなどから、再資源化施設での処理単価の方が安価となっている。
したがって、コンクリート塊については、再資源化施設での処理単価によるべきであると認められた。
なお、公団が発注している建設工事においてはすべて、施工に伴い発生するコンクリート塊を再資源化施設で処理することとして積算している。
モルタル等の廃材の処理重量については解体後の状態の換算値重量により、また、コンクリート塊の処理単価については近傍の再資源化施設の単価により、本件移転補償契約における解体材の処理費を修正計算すると、3750万余円となり、前記の積算額6648万余円を約2890万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、モルタル等の廃材の処理重量については、換算値重量を積算の手引に掲載するに当たり、十分調査検討しないまま解体前の状態のモルタル等の換算値重量を載せていたこと、コンクリート塊の処理単価については、単価表への単価の採用に当たり、再資源化に対する配慮が十分でなかったため、再資源化施設での処理を想定しないまま最終処分施設での処理単価のみを載せていたことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、公団では、解体材の処理費の積算が適切なものとなるよう、13年10月に積算の手引及び単価表を改正し、同月以降に契約する補償から適用することとする処置を講じた。