科目 | (受託業務勘定) (項)受託工事業務費 |
部局等の名称 | 日本下水道事業団本社 |
工事名 | 赤井川村赤井川アクアクリーンセンター電気設備工事ほか28工事 |
工事の概要 | 終末処理場等に自家発電設備等の電気設備を設置する工事 |
工事費 | 38億6831万余円 |
請負人 | 三菱電気株式会社ほか12会社 |
契約 | 平成11年6月〜12年10月 指名競争契約、随意契約 |
消音器等の機器費 | 2億2800万余円 |
節減できた機器費 | 3420万円 |
1 工事の概要
日本下水道事業団(以下「事業団」という。)では、地方公共団体等の委託を受けて終末処理場、幹線管きょ等の建設を行っており、これに伴い、終末処理場及びポンプ場(以下「終末処理場等」という。)に受変電設備、自家発電設備等の電気設備を設置する工事を毎年度多数施行している。
このうち、自家発電設備は、発電機、内燃機関、消音器等からなり、停電時に終末処理場等の最小限度の水処理の機能を維持するとともに、照明、通信等の最低限の保安電力を確保するための設備である。
自家発電設備の運転中には、発電機及び内燃機関(以下、これらを「発電機関」という。)の本体から機関騒音が、また、自家発電機室の排気口、換気口等の開口部から排気騒音、換気騒音等がそれぞれ発生する(参考図1参照)
。
騒音については、騒音規制法(昭和43年法律第98号)等により騒音規制の基準が定められている。そして、事業団では、終末処理場等の敷地境界における騒音がこの基準以下となるように、自家発電機室の排気口、換気口等に消音器を設置したり、発電機関を鋼板製の外被で覆ったりすることとしている。
事業団では、仕様書等により上記の消音器が騒音を減衰させる性能について、5デシベルごとの規格を定めている。
そして、事業団では、消音器及び外被(以下「消音器等」という。)の選定に当たっては、事業団制定の「設計指針電気設備編」(以下「設計指針」という。)に基づき次のように騒音値の計算を行い、この結果に基づき、上記規格の中から騒音を騒音規制基準以下とするもののうち最も経済的なものを選定することとしている。
〔1〕 発電機関の騒音値から、自家発電機室の壁等を騒音が透過する際の減衰量を減じる。そして、自家発電機室から敷地境界までの距離により騒音が減衰するので、この減衰量を更に減じて、敷地境界における機関騒音値を算定する。
〔2〕 排気口、換気口等の各騒音値から距離による減衰量を減じて、敷地境界における排気騒音値、換気騒音値等を算定する。
〔3〕 〔1〕及び〔2〕により算定した敷地境界における各騒音値を基に、これらの合成騒音値を算定する(参考図2参照)
。
〔4〕 〔3〕により算定した合成騒音値が騒音規制の基準値以下であるかを検討する。
2 検査の結果
上記のように機関騒音は自家発電機室の壁等を透過する際に減衰することから、消音器等の選定が自家発電機室の壁等の構造を反映した経済的なものとなっているかという点に着眼して検査した。
事業団において、平成11、12両年度に施行した29件の電気設備工事(工事費総額38億6831万余円)を対象として、これらの工事で設置した消音器等の機器費(総額2億2800万余円)について検査を実施した。
検査したところ、事業団では、設計指針において、前記〔1〕の騒音値の計算に必要な壁等を透過する際の減衰量の算出方法を定めていなかった。このため、建築物の設計に関する参考文献に示されている厚さ16cm程度の鉄筋コンクリート壁の減衰量等を用いて自家発電機室の壁等の減衰量を20デシベルから39デシベルと決定していた。そして、これにより機関騒音値、次いで敷地境界における合成騒音値を算定し、この結果を基に消音器等を選定していた。
しかし、事業団制定の「構造物設計指針」等によれば、終末処理場等の鉄筋コンクリート壁の厚さは上記の16cm程度ではなく21cm以上とすることとなっており、また、自家発電機室の壁は、コンクリート壁とは減衰量の異なる扉や窓もある構造となっていることから、上記減衰量の算定は自家発電機室の壁の構造を反映していないと認められた。
そこで、厚さ21cmの鉄筋コンクリート壁の騒音の減衰量を改めて計算すると42デシベルとなり、また、複数の終末処理場で実測した減衰量もこれと同程度の値であった。そして、この値を基に自家発電機室の扉や窓を考慮して、本件各工事における壁等の減衰量を算定すると、26デシベルから42デシベルとなる。その結果、敷地境界における合成騒音値は、事業団が算定した前記の値よりも小さくなると認められた。
したがって、自家発電機室の壁の構造に適合した壁等の減衰量を算出し、これにより経済的な消音器等の選定を行う要があると認められた。
上記により、本件各工事における消音器等の機器費を修正計算すると1億9375万余円となり、前記の機器費を約3420万円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、事業団において、騒音が壁等を透過する際の減衰量の算出方法を設計指針に定めていなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、事業団では、13年10月に、自家発電設備の消音器等の選定が経済的なものとなるよう、騒音が壁等を透過する際の減衰量の算出方法を定め、同年11月以降に実施設計を行う工事から適用することとする処置を講じた。