科目 | (一般勘定) (項)海外技術協力事業費等 |
部局等の名称 | 国際協力事業団本部 |
人件費の補てんの概要 | 開発途上地域において技術協力等を行う専門家の派遣を容易にするため、派遣する専門家に給与を支給する法人等に対して、その費用を補てんするもの |
人件費の補てん額 | 88億9067万余円 | (平成12年度) |
上記のうち検査した補てん額 | 13億5496万余円 | |
低減できた補てん額 | 1億6930万円 | (平成12年度) |
1 制度の概要
国際協力事業団(以下「事業団」という。)では、条約その他の国際約束に基づく技術協力等を実施するために、公務員や法人等に在籍する者などを専門家として開発途上地域に派遣する専門家派遣事業を実施している。そして、専門家の派遣を容易にするため、専門家が在籍する法人等(以下「所属先」という。)が当該専門家に対して派遣期間(前後の準備等のための期間を含む。)中も給与を支給する場合には、所属先に対して人件費の補てんを行っている。
事業団では、平成12年度に延べ5,218人の専門家を開発途上地域に派遣しており、そのうち2,173人を対象に、計765の所属先に対して総額88億9067万余円の人件費の補てんを行っている。
事業団では、人件費の補てんに当たり、「専門家所属先に対する人件費の補てん等に関する要綱」(以下「人件費の補てん要綱」という。)を定めている。これによれば、補てん額を当該専門家のために使用することが人件費を補てんする前提となっており、その1箇月当たりの補てん額は、所属先から提出を受けた申請書類に記載された給与の支払額等を基にして、次のように算定した額の合計額(上限80万円)となっている。
〔1〕 所属先が専門家に支給した給与のうち、国家公務員に支給される俸給、扶養手当、調整手当及び住居手当に相当するものの合計額
〔2〕 賞与相当分として、〔1〕の額から住居手当に相当する額を控除するなどして算出した額に120分の37.5を乗じて得た額(以下、この算定方法を「定率算定方式」という。)
〔3〕 社会保険料事業主負担相当分及び退職給与引当金相当分として、〔1〕及び〔2〕の合計額にそれぞれ100分の10、100分の8.5を乗じて得た額
さらに、事業団では、専門家の所属先が会社等である場合には、別に定めた「専門家所属先に対する諸経費の支給に関する要綱」に基づき、所属先の一般管理費等のうち専門家の人材提供に見合う経費として、上記により算定した補てん額の40%を加算して支払うこととしている。
2 検査の結果
近年、雇用の多様化等が進展する中で、各企業においては、年俸制が導入されるなど給与体系に変化が見受けられている。
そして、事業団では、人件費の補てんに当たり、賞与相当分については、上記の定率算定方式により算定することとしているが、その運用に当たって、申請書類の添付書類である給与規程等に賞与の不支給が明記されている場合には賞与相当分を補てんしないこととし、それ以外の場合には一律に定率算定方式により賞与相当分を補てんすることとしている。そこで、このような算定方法が所属先の支給の実態に適合しているかどうかに着眼して検査することとした。
検査に当たっては、前記765の所属先の中から、専門家の派遣人数等を考慮し、さらに、給与規程等に賞与の支給、不支給が明記されていない会社15社を選定して、これに係る補てん額を検査の対象とした。
検査したところ、上記の15社では、12年度に延べ188人の専門家を開発途上地域に派遣しており、これらの者に係る人件費の補てんを申請し、計13億5496万余円の支払を受けていた。
そこで、専門家に対する賞与の支給状況に関する資料をこれらの所属先から取り寄せて確認したところ、上記15社の188人のうち、67人の専門家に対しては賞与が支給されていたが、15社の121人の専門家に対しては賞与が全く支給されていなかった。このように、15社において、賞与を全く支給していない専門家がいるのは、派遣する専門家に対しては他の社員とは異なる給与体系を適用していることなどによるものであった。
しかし、事業団では、賞与相当分については定率算定方式を採っていて、所属先が専門家に実際に支給した賞与の額について報告を求めるなどして支給の有無を確認することなく、賞与相当分を算定し、人件費の補てんを行っていた。
したがって、専門家に実際には賞与が支給されていないのに、賞与相当分を定率算定方式により算定し、人件費の補てんを行っていたのは適切でなく、所属先における賞与の支給の実態に適合するよう算定方法を改める要があると認められた。
前記121人の中には、賞与相当分を含めなくても補てん額が1箇月当たりの上限額に達していた者が14人いたため、これらを除いて計算すると、14社の107人に係る人件費の補てん額約1億6930万円が低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、近年、雇用の多様化等により、所属先によっては専門家に対して他の社員とは別の給与体系を採用することがあるにもかかわらず、事業団において、賞与の支給の実態を把握して人件費を補てんする方式を採用していなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、事業団では、13年10月に、人件費の補てん要綱の運用方針を定め、賞与相当分を所属先の賞与の支給実績に基づいて算定することとし、14年4月から実施する処置を講じた。