科目 | 貸付金 保証債務 |
部局等の名称 | 奄美群島振興開発基金本部 |
貸付け及び保証の根拠 | 奄美群島振興開発特別措置法(昭和29年法律第189号) |
貸付け及び保証の概要 | 奄美群島振興開発計画に基づき事業を実施する中小規模事業者等に対する事業資金の貸付け及び債務の保証 |
取引状況の把握が十分でないまま行われた貸付け又は保証の額 | 貸付金額 | 8249万円 |
補償金額 | 1746万円 | |
計 | 9995万円 |
1 業務の概要
奄美群島振興開発基金(以下「基金」という。)では、奄美群島振興開発特別措置法(昭和29年法律第189号)に基づき、奄美群島(鹿児島県名瀬市及び大島郡の区域)における産業の振興開発を促進するため、次の業務を行っている。
〔1〕 奄美群島振興開発計画に基づく事業を行う中小規模の事業者で、銀行その他の金融機関から資金の融通を受けることを困難とするもの及び政令で定める事業を行う事業者に対する事業資金の貸付け(以下、この貸付金を「事業資金貸付金」という。)
〔2〕 同計画に基づく事業を行う中小規模の事業者その他の者又は奄美群島に住所若しくは居所を有する者が、銀行その他の金融機関から資金の貸付けなどを受ける場合、金融機関に対して負担する債務の保証等(以下、この保証等に係る金融機関の貸付金を「保証付貸付金」という。また、この債務の保証等と上記〔1〕の事業資金の貸付けの対象者を「事業者」という。)
そして、平成12年度末における基金の事業資金貸付金残高は2,075件、136億3076万余円、保証債務残高は2,516件、217億7382万余円、計4,591件、354億0459万余円に上っている。
基金では、「保証又は融資の審査事務取扱要領」(平成2年制定。以下「審査要領」という。)等に基づき、それぞれ貸付け又は保証の別に次のように調査を行い、これに基づいて審査を行うこととしている。
〔1〕 貸付け又は保証の対象となる事業の概要、事業者の財務内容等について調査し、貸付けについては信用調査票(貸付用)に既往の貸付残高等を記載し、保証については信用調査票(保証用)に既往の保証残高等を記載する。
〔2〕 上記の調査結果に基づき、事業者に係る既往の貸付け又は保証の返済状況などについて審査を行う。
基金では、事業資金貸付金が延滞した場合は、管理部門に移管するなどして、延滞債権として管理している。また、保証付貸付金が延滞した場合は、翌月の10日までに金融機関から報告されることとなっており、これにより保証付貸付金の返済状況を把握している。そして、金融機関から事業者に代わって弁済(以下「代位弁済」という。)するよう請求されたときには、基金は金融機関に弁済する一方で、これにより取得した求償権に基づいて事業者に弁済額を請求することになる。
2 検査の結果
基金では、近年、貸付業務において貸付金残高に占める延滞債権額の割合が高い水準で推移しており、また、保証業務において代位弁済により取得した求償権に係る債権残高が増加していることから、貸付け又は保証に当たり、審査が適切に行われているかなどに着眼して検査した。
8年度から12年度に貸付決定を行ったもので、延滞している事業資金貸付金77件、6億0606万余円並びに同期間に保証承諾を行ったもので、代位弁済に係る求償権及び代位弁済を行っていないが延滞している保証付貸付金に係る保証債務97件、11億4208万余円、計174件、17億4814万余円を検査した。
検査したところ、審査要領等に不備があったため、審査において申込みを受けた事業者との取引状況の把握が十分でないまま貸し付け又は保証したものが、次のとおり、計8件、9995万円(貸付件数6件、金額8249万円、保証件数2件、金額1746万円)見受けられた。
すなわち、貸付けをする場合、事業者の債務履行の確実性を審査するためには、既往の事業資金貸付金及び保証付貸付金双方の取引状況を把握し総合的に判断する必要があると認められる。しかし、審査要領では、申込者の既往の事業資金貸付金の返済状況等については調査するものの、既往の保証付貸付金の取引状況については調査することとなっていなかった。
また、保証をする場合にも同様に、申込者の既往の保証付貸付金の返済状況等は調査するものの、既往の事業資金貸付金の取引状況は調査することとなっていなかった。
このため、基金では、前記の8件について、既往の保証付貸付金を延滞している事業者に新たに貸し付けたり、既往の事業資金貸付金を延滞している事業者に新たに保証したりしていた。そして、これらの事業資金貸付金又は保証付貸付金も結果として延滞している状況となっていた。
上記のように、審査において申込みを受けた事業者との取引状況の把握が十分でないまま貸し付け又は保証している事態は適切とは認められ、改ず善の要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、審査要領等において、貸付け又は保証に当たり、既往の事業資金貸付金及び保証付貸付金の残高、返済等の取引状況を調査して信用調査票に記載し、この結果に基づいて審査を行うよう定められていなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、基金では、13年10月に審査要領等を改正し、貸付け又は保証に当たり、事業者に対する既往の貸付け及び保証に係る取引状況等を調査して信用調査票に記載し、これに基づいて債務履行の確実性等の審査を適切に行うこととする処置を講じた。