科目 | 設備投資勘定 |
部局等の名称 | 西日本電信電話株式会社本社 |
低速専用線回線終端装置の概要 | 一般専用サービス等の回線を収容する装置 |
購入物品 | 低速専用線回線終端装置 215台 |
購入費 | 2億4257万余円 | (平成12年度) |
節減できた購入費(台数) | 7140万円 | (62台)(平成12年度) |
1 購入物品の概要
西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」という。)では、加入者が申し込んだ区間の通信サービスを専用の直通回線(以下「専用線」という。)により安定的で高品質なものとして、毎月一定額で提供する専用サービスを行っている。
この専用サービスには、電話、ファクシミリ通信及びデータ伝送に適した一般専用サービス、音声からデータや映像までさまざまな情報を高速で伝送することができる高速ディジタル伝送サービス(通信速度64キロビット/秒から150メガビット/秒まで14種類)などがある。
一般専用サービス並びに高速ディジタル伝送サービスのうち通信速度64キロビット/秒及び128キロビット/秒のサービス(以下、これらを「一般専用サービス等」という。)を提供する専用線は、加入者から設備センタビルまでを接続するアクセス網と設備センタビル相互間を接続する中継網から構成されている(参考図参照)
。そして、一般専用サービス等に使用する通信ケーブルには、電気信号を伝送するメタリックケーブルと光信号を伝送する光ファイバケーブルがある。
一般専用サービス等の通信設備には、通信ケーブルの種類に応じて、次のような形態がある。
ア 中継網とアクセス網がともにメタリックケーブルの場合
双方を接続する設備センタビルにおいて、中継網のメタリックケーブルとアクセス網のメタリックケーブルとを直接接続している。
イ 中継網が光ファイバケーブルで、アクセス網がメタリックケーブルの場合
電気信号と光信号を相互に変換したり、光信号を多重化又は分離したりする装置である低速専用線回線終端装置(Low speed Data and analogue voiceband Subscriber LineTerminal。以下「LD−SLT」という。)を設備センタビルに設置し、これを介して中継網の光ファイバケーブルとアクセス網のメタリックケーブルとを接続している。
ウ 設備センタビルから配線点(注1) までの区間又はオフィスビル、集合住宅等(以下「オフィスビル等」という。)までのアクセス網が光ファイバケーブルで、その先の端末までの区間がメタリックケーブルの場合
配線点又はオフィスビル等にLD−SLTを設置し、これを介して端末までのメタリックケーブルと設備センタビルからの光ファイバケーブルとを接続している。
NTT西日本では、光ファイバケーブルによる高速な通信サービスの需要に対応してアクセス網の光ファイバケーブル化を進めている。また、メタリックケーブルではISDN回線でのサービスが提供できない区間や加入電話等の需要増加が見込まれる区間への対応などのためにも光ファイバケーブル化を行っている。
しかし、設備センタビルから配線点までの通信ケーブルは複数の区間の回線を収容しており、光ファイバケーブル化に当たっては需要のある区間の回線から順次行うこととしていることから、当面、既設のメタリックケーブルでサービス可能な区間の回線は既設のメタリックケーブルを存置して収容することとしている。
また、ADSL接続サービスの提供開始に伴い、これに必要なメタリックケーブルを撤去するときは、接続に関する協定を締結した事業者に対し、原則4年前までに撤去の情報を提供する必要があるとされていること、メタリックケーブルでなければ提供できない一般専用サービス等の回線があることなどから、NTT西日本では、当面、既設のメタリックケーブルを存置することとしている。
以上のことから、アクセス網の光ファイバケーブル化が行われつつも、当分の間は多数のメタリックケーブルが存置されることが見込まれる状況である。
2 検査の結果
前記のとおり、LD−SLT は、光ファイバケーブルを利用して一般専用サービス等を提供する場合に設置する装置である。また、アクセス網のメタリックケーブルは、当分の間かなりの広範囲で存置される見込みである。そこで、アクセス網を光ファイバケーブル化する際に、既設のメタリックケーブルを有効に活用することなどによりLD−SLTの調達数量が適切なものになっているかに着眼して検査した。
大阪支店ほか26支店(注2) 管内において、平成12年度に購入され、配線点に設置された215台(購入金額2億4257万余円)を対象として検査した。
検査したところ、上記215台のうち106台のLD−SLTについては、新規開発地域に設置していて既設のメタリックケーブルがなかったり、再開発地区に設置していて既設のメタリックケーブルの撤去が計画されていたりしているため設置する必要があった。また、47台についても、既設のメタリックケーブルでは抵抗、損失等の条件を充足できない一般専用サービス等の回線があるなどのため設置する必要があった。
しかし、京都支店ほか11支店(注3)
管内に設置された残りの62台については、既設のメタリックケーブルにより一般専用サービス等の提供をすることとすればLD−SLTを設置する要はないと認められた。
したがって、アクセス網を光ファイバケーブル化する際は、一般加入電話回線、ISDN回線等を光ファイバケーブルに収容し、一般専用サービス等の回線については既設のメタリックケーブルに収容することとすれば、相当数のLD−SLTの購入費が節減できると認められた。
上記により、一般専用サービス等を既設のメタリックケーブルを活用することにより提供したとすれば、12年度に配線点に設置された 62台の LD−SLTは購入の要はなく、約7140万円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、支店において、一般専用サービス等を既設のメタリックケーブルで提供可能かなどについて十分検討することなくLD−SLTを調達していたことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、NTT西日本では、13年9月に、各支店に指示文書を発し、LD−SLTの設置については、一般専用サービス等の提供が既設のメタリックケーブルで可能か否かを十分検討の上、経済性等を十分に考慮して実施することとし、既設設備を有効に活用して購入費の節減を図る処置を講じた。
(注1) | 配線点 加入者線交換機等を設置している設備センタビルから加入者までを結ぶケーブルは、設備センタビルを出た直後は地下の管路に敷設される。そして、加入者まである程度の距離に達した地点で分岐して、以後は方面ごとに加入者まで配線される。配線点は、このケーブルが分岐する点をいう。 |
(注2) | 大阪支店ほか26支店 大阪、京都、神戸、奈良、滋賀、名古屋、静岡、岐阜、金沢、富山、福井、広島、鳥取、島根、岡山、山口、愛媛、香川、徳島、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各支店 |
(注3) | 京都支店ほか11支店 京都、神戸、奈良、滋賀、名古屋、静岡、金沢、富山、鳥取、岡山、佐賀、宮崎各支店 |